宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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文量も、執筆速度も飛躍的に…………





…………上げたいです(泣)


第二十二話 来訪

【第22話】

 

 

 2201年 2月3日。

 

 この日、地球連邦が最も警戒し、同時に最も待ち望んでいた事態が発生した。

 

 

 

「……状況を確認させてもらおうか。」

 

旧国連軍極東管区軍司令部ビル本庁舎・中央司令室。

かつて藤堂平九郎 極東管区行政長官が座していた最高位席に座る、

地球連邦大統領 エイブラハム・ダグラスは重く響く声で告げる。

危急の事態により集められた連邦の要人達は、その耳のイヤホンで母国語に翻訳された

大統領の言葉を聴くのだが、翻訳機に通されて大統領の肉声を模した

合成音声すらも重厚な響きを持っているように彼らは錯覚する。

だが、同時に彼らはプロフェッショナルでもある。即座に大統領の意に応じて、

現在起こっている事象・地球連邦が置かれている状況を説明した。

口火を切ったのは、薄いブロンドの角刈りの男。壮年から中年に差し掛かった

彼は、旧国連体制から新連邦で軍の文民統制(シビリアン・コントロール)の要である

アーサー・C(チェスター)・ペリー国防局長である。

 

 

「……本日未明の0328時から、各管区の地表部に置かれた対宙観測所が相次いで

 地球外からの電波を受信しました。同電波は明らかに人工のものであり、

 観測所群は直ちに防衛軍本部へこれを報告しました。」

 

「電波には地球の英語と日本語が用いられておりました。内容としては、

 『こちらは、ガミラス共和国。我に敵対意志無し。本邦は貴国との

  停戦ならびに友好条約の締結を望む。』との事。」

 

「……解析により、電文はマゼラン方面の火星軌道圏から発信されたものであると判明。

 該当方面への光学観測を行ったところガミラス軍の艦艇3隻が確認されました。」

 

 

 

ペリー国防局長の他、防衛軍本部で対処方針を議論中のプリエーゼ統括司令に代わり

大統領との会合に出ることとなった芹沢副司令や参謀本部の首席参謀ジャーベル准将を

はじめとした参謀や高級士官が場に集っており、大統領へ情報を提示する。

大統領は端末上に映る、光学観測されたガミラス艦を凝視し、嘆息した。

 

 

「……随分と気を遣われたものだな。現在の地球の防衛体制は丸裸と言うべき状態にある。

 地球至近から勧告しても良かろうに。」

 

「……彼らは、本当にガミラス共和国の正当政府の艦艇なのでしょうか?」

 

「……ジャーベル准将、なぜそう思う?」

 

「……ガミラス全体に地球の座標情報が広がっていたとは考えがたいですが、

 ガミラス軍銀河方面集団の離反分子や、何らかの理由で情報を得た非正規部隊が

 正規の使節に先んじてやって来た可能性は否定できません。」

 

首席参謀のジャーベルは、無防備に等しい地球に現れたガミラス艦が正規の部隊ではない

可能性を示唆する。別の参謀がそれに対して質問した。

 

「ですが、確認されているのは巡洋戦艦1隻と巡洋艦2隻です。

 こちらに宇宙戦艦ヤマトがあることを考えれば、戦力的に少なすぎるのでは?」

 

「…確認された3隻が全戦力ではない可能性がある。後続に大艦隊が控えていても可笑しくはない。」

 

その通りだ、と芹沢は内心で頷いた。

確かに今のところ、ヤマトは整備を終えて出渠し稼働状態にある。

船足の差などから考えてガミラス艦隊に接触を図るとしたらヤマト単艦で行くのが妥当だ。

だが敵が正規軍ではなく、ヤマトを誘いだし大艦隊で撃滅するための罠であったとしたら……

現在のヤマトには波動砲もなく、一定以上の戦力で攻撃された場合は撃沈されてしまうだろう。

そうなれば正しく地球は丸裸となる。大統領や軍人らは重苦しい雰囲気に包まれた。

 

「……だが、彼らを無視し放置しておくわけにも行くまい。本当に使節艦隊であれば

 我々に戦争を継続する意志があるととられかねんし、

 万一敵であった場合地球へ艦砲射撃を実行するかもしれん。

 現在、地表には復員拠点に軍の人員や民間人が上がってきているのだ。」

 

大統領が苦りきった表情で言葉を絞り出す。

控える軍人たちも悩ましげに腕を組み顎に手をつく。あまりにも判断材料となる情報が少ない。

地球の置かれた立場がどこまでも弱者であることに怒りと悔しさを感じる者もいた。

 

「……出すしかありませんな、ヤマトを。」

 

「……うむ。……どのような結果になったとしても、これが我々の最善の選択肢のはずだ。」

 

数分の沈黙が過ぎると、芹沢は大統領に言った。

取り得る選択肢はこれしかない、との意を込めて。大統領もやむを得ぬ、と同意した。

 

斯くして、

火星圏へ進入したガミラス艦と接触すべく、宇宙戦艦ヤマトは再び宇宙へ発進するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球時間 2月3日 2200時。

 

宇宙戦艦ヤマトは早くも火星軌道圏へ進出しつつあった。

随伴艦はない。波動機関搭載艦と従来の核融合機関搭載艦の速力性能は大きく異なり、

行動を共にさせては迅速な火星軌道圏への到達は不可能である。

また、万一ガミラス艦からの攻撃があった場合、従来艦は撃沈は不可避であるとされ

ガミラス艦隊との接触任務から外されたのである。

 

 

「コスモレーダーに、ガミラス艦の反応を確認、数3!」

 

「……どうやら最初に確認された位置からは動いていないようだな……」

 

ヤマト・第一艦橋内。コスモレーダーの表示モニターに3隻の艦影が捕捉したことを報告する

同艦船務長の森 雪大尉。航海長である島 大介大尉が反応して、呟いた。

 

「……司令部から通達された通り、ガミラス離反勢力の罠である可能性も否定できん。

 …全艦、対宙監視を厳とせよ。」

 

一階級昇進し、艦長代理を引き続き拝命した真田志郎中佐は技術長席から発令。

艦橋内は緊張感に満たされている。

 

既にヤマトは、イスカンダルからの帰路・バラン星沖にてガミラスの離反部隊からの

襲撃を受けたことがある。彼らのような部隊がヤマトや地球への報復を目論んで太陽系へ

侵攻してくることは決して夢物語ではないーーーー

彼らはその警戒を骨身に染み渡らせている。

バラン星での襲撃に続いた亜空間ゲート内における、前ガミラス総統 アベルト・デスラーが

座乗する巨大戦艦の襲撃では艦内での白兵戦によって、地球への帰還を目前にしながら

幾人もの仲間を失ったのだから。

 

厳戒態勢にあるヤマトは、それでもガミラス艦隊が陣取る座標へと接近していく。

第一艦橋天井の大型モニターなどには光学観測されたガミラス艦3隻の姿が映し出される。

シルエットは、地球の獰猛な水棲生物である鮫を彷彿させる。

艦体は、ガミラスの"国防軍"のパーソナルカラーである深緑。

地球人類、特に旧国連軍関係者にとってはあまりに忌々しく、過日の絶望を呼び起こす姿だ。

かの艦艇が放つ赤色のビームは国連軍の艦隊をいとも容易く屠り、太陽系を地球人類の血に染めた。

地球人の科学を結集して造られた艦隊の光線は通じず、魚雷や決戦兵器とした陽電子衝撃砲を

用いて何隻かを沈められたに過ぎない。地球人の大多数には、いまだ恐怖の象徴なのである。

 

……だが、ヤマトクルーの乗員たちはそうした感情も無論持ちながら、幾ばくか異なるものを

胸中に秘めていた。ヤマトは、航海中に幾度もガミラス軍と干戈を交えてきたが、

ガミラス艦隊と舳先を共にし、共闘したこともある。惑星シャンブロウでの戦いがそれだ。

シャンブロウでの戦いで、実質的にヤマトの戦闘指揮を執ったヤマト戦術長・古代進大尉。

彼は、モニタに映し出された艦の姿に自身やヤマトクルーらが初めてガミラス人と

邂逅した時のことを思い出した。

 

(……ガミラスの巡洋戦艦、か。)

 

天井大型モニターの映像に映るのは、ガミラスでメルトリア級というクラスネームが

付けられた巡洋戦艦である。地球側にとっての初確認は火星沖海戦における敵増援艦隊に

数隻が混じっていたのを確認した時だ。

しかし古代にとって同級を見るときに抱く想いは、ヤマトが亜空間に迷いこんだ際に

出会った、ヤマト同様遭難したメルトリア級「EX178」や、同艦に乗務していた

メルダ・ディッツ少尉のことだ。

 

(……あれがきっかけになって、ガミラスとは理解し合える存在だと、

 俺たちが考えられるようになったんだ。)

 

「EX178」とは、互いに信頼・協力して亜空間を脱出することができた。

「EX178」は残念ながら直後に友軍である筈の艦隊の砲撃を受けて撃沈されてしまったが、

難を逃れたメルダ少尉はその後も協力者として再乗艦し、ヤマトの航海を助けてくれた。

肉親をガミラスとの戦いで喪った古代にとって、これら一連の出来事は

シャンブロウでの出来事に並ぶガミラスへ好印象を持たせる記憶である。

 

古代は後方の真田が指示を飛ばした声で、記憶の世界からヤマト戦術長席に引き戻された。

 

「……間もなく相互の通信可能圏に入るはずだ。

 通信長、あの巡洋戦艦に呼び掛けてくれ。」

 

「了解しました。」

 

ヤマト通信長・相原義一(よしかず)少尉が艦長代理の命令に応じ、通信座席の操作盤(コンソール)に向かう。

 

「……こちら地球連邦防衛軍、……旧国連宇宙海軍、宇宙戦艦ヤマト。

 ガミラス艦隊へ。応答願う。……繰り返す………」

 

相原がガミラス艦隊の旗艦と思しき巡洋戦艦へと呼び掛ける。2、3度呼び掛けを繰り返すと、

相原は気色を湛えて真田や艦橋クルーの方へと振り返った。

 

 

「……ガミラス艦から反応あり!映像付きの通信回線開放を求めてきています!」

 

艦橋クルーはおぉ、とどよめく。

少なくとも、ガミラス艦が敵である可能性は大きく低下した。

 

「……よし、回線を開け。映像は天井モニターに回すんだ。」

 

「はい!」

 

いよいよ、ガミラスとの再接触だ。

通信回線とモニターシステムが稼働してガミラス側の映像が送られてきた……。

 

 

 

 

 

 

「……さっきの声はアイハラだろう?……久しぶりだな、ヤマト!」

 

 

天井メインモニターに映し出された人物の声と姿に、ヤマトの艦橋クルーは声をあげた。

特に古代は、思わず席から立ち上がってしまうほど驚き、目を見開いた。

忘れがたい、戦友と呼ぶべきガミラス人だ。

 

 

「バーガー!!」

 

「よぉ、元気だったか?コダイ」

 

 

左頬に縫合の跡が残る、青紫色の髪を七三分けに整えた青年士官。

彼はフォムト・バーガー。第6空間機甲師団、人呼んでドメル艦隊の幕僚として

勇将ドメルの分艦隊を預かりカレル163星域、七色星団の両海戦でヤマトの前に立ち塞がった。

だが、七色星団の死闘を生き延びた彼は数奇な巡り合わせから「星巡る方舟」こと

惑星シャンブロウへと到達し、同じく漂着したヤマト乗組員と共同生活を送り、更には

襲撃してきたガトランティス艦隊にガミラス艦隊・ヤマトの共同戦線を張りこれを撃破している。

 

……そのバーガーは、久方ぶりに地球の士官たちと再会したことを喜んでいたが、

すぐに軍人としての任務を思い出したように姿勢をただし右手を挙げるガミラス式敬礼をする。

 

「……と、失礼した。……本官はフォムト・バーガー()()

 共和制ガミラス、遣地球外交団護衛艦隊の副司令官兼、同先遣艦隊の指揮官だ。」

 

「……こちらは、宇宙戦艦ヤマト艦長代理 真田志郎中佐です。

 貴艦隊は、()()()()()()()と自称されたが、使節は乗せておられないのか?」

 

バーガーの敬礼と自己紹介に対し、ヤマトからも同艦の最上級士官の真田が自己紹介を返す。

同時に真田はバーガーが自称した艦隊の名称に疑問点を見いだし、質問した。

 

「……あぁ、この先遣艦隊には使節は乗っていない。外交団の本隊の艦に乗って来る予定だ。

 ……ただし、こちらが締結を希望する条約に関する基本的な情報などを記した文書を

 地球政府へ渡すように命令されている。」

 

画面向こうからの返答で明らかになったのは、ガミラス側の代表がいまだに到着していない事実と

ガミラス外交団が交渉に先立って用意した、地球に対する条約に関した要望書の存在。

真田艦長代理は、さして意外の念を持ちあわせる素振りも見せず即座に質問を続けた。

 

「……訊いておきたいが、外交団本隊の到着は何時を予定されているのか?」

 

「……地球時間換算だと、およそ40日後になるな。」

 

ガミラス艦隊からの返答を受けとると、真田は納得したように頷いて予め司令部から

指示されていた、ガミラス艦隊が本物の使節だった場合の対処をとることにした。

 

「了解した。……これより、貴艦隊を地球圏へ誘導する。本艦に続かれたし。」

 

 

……回頭して、ガミラス艦隊を先導するヤマト。

バーガーの旗艦巡戦「バーゲルスト」と、随伴のケルカピア級2隻はそれに後続する。

地球との交渉を目的としたガミラス艦隊の来訪は、緊張を孕みつつあくまで平和的に、

開幕を迎えたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銀河間空間・自由浮遊惑星バラン沖。

強力な戦闘力を秘めた宇宙艦の一団が、マゼラン銀河方面から一路天の川銀河方面へ進む。

 

この艦隊こそ、共和制に移行したガミラスが送り出した地球への外交団艦隊である。

艦列の中央に陣取るのは、ガミラスで二等航宙戦艦に属するハイゼラート級。

新鋭とされる同艦級は、ほぼ唯一ヤマトと砲火を交えたことのない艦船だ。

この艦は、旧情報省所属の「シャングリ・ラー」である。

ミーゼラ・セレステラ前情報相の出奔により機能不全となった同省から、

半ば取り上げる形で国防軍が接収した同艦を、軍の指定色で塗り直している。

 

同艦は大臣クラスの乗艦であるため改造が施され、軍属の同級艦より居住設備に優れている。

故に、長距離航海を強いられる天の川銀河への、太陽系への航海に際する、

外交団の座乗艦へ指定されたのである。

 

地球への外交団出発はバレラスで大々的に見送られるほど注目されていたものであり、

外交団の乗艦「シャングリ・ラー」にはガミラス反政府勢力への警戒から多数の艦艇が護衛につく。

その大多数は長距離巡航に適したメルトリア級とケルカピア級で、襲撃を受ける可能性が

高くなる中間での補給を可能な限り抑えている。

 

艦隊は、出発以来かなりの強行軍で太陽系へ向かっている。

これは、ガミラス政府が早期の講和条約締結を望んでいることを反映したものだ。

必要であるとはいえ、このような強行軍はガミラス軍の歴史上でも稀だとされる。

にも関わらず、艦隊の将兵は疲労の色も、士気の翳りも見せていない。

外交団護衛任務に集められた軍人たちが、皇女ユリーシャを戴くガミラス新政府に忠実な

精兵であることの証左である。

外交団艦隊の旗艦でもある戦艦「シャングリ・ラー」に座乗する

外交団護衛艦隊の司令官 シー・フラーゲ中将は忠実で有能な指揮官の鑑と言うべき人材だった。

右目に眼帯をし、激しい戦歴を伺わせるこの将はガミラス新政府にとって、

とりわけ航宙艦隊司令官であったガル・ディッツにとって特に信頼できる上級軍人であった。

 

 

……そのフラーゲ中将は、現在「シャングリ・ラー」艦内の居住区画、

遣地球外交団の団長である人物が宿所としている個室へと向け艦内通路を歩いていた。

 

(……わざわざ情報相が使っていた部屋を使わぬのは、閣下のポリシーなのか、

 あるいはジレルの亡霊を恐れてのことなのか……まぁ、私の知ったことではないな。)

 

フラーゲは外交団長の部屋の前に立ち、件の人物へ入室許可を求めた。

 

「失礼します、外務次官閣下。」

 

室内から許可の声が聞こえる代わりに扉のロックが解除される音が聞こえ、

フラーゲは扉脇のスイッチを押し、扉を開放した。

 

扉を開けたフラーゲの鼻腔を、甘美な香りがくすぐる。

 

「……やぁ、よく来たね。フラーゲ中将」

 

扉の向こうで紅茶を淹れているのは、ふくよかな体格の中年男性。

彼こそが、この外交団の団長を務めるガミラス外務次官である。

 

「かけてくれ、我ながら()()()()だ。」

 

「……では、失礼します。」

 

外務次官の勧めに従い、彼の個室内のL字ソファの一つに掛けるフラーゲ。

彼の前に出されたソーサー上のティー・カップには琥珀色の液体が注がれ、

熱い湯気を立ち上らせている。

 

「…………独特の香りに、軽やかな渋み。メランとは違いますが、素晴らしい味だ。

 お見事な腕前ですな、閣下。」

 

フラーゲは慣れた手付きでカップをとり、茶を賞味する。

彼はその風体に似合わずよく紅茶を嗜んでおり、知識もある。

しかし、その彼をしても外務次官から出された茶は初めて味わうものであった。  

 

「ははははは、世辞を心得ているな、中将。

 だが、味も分かっている。いい茶葉だろう?

 

 ……あの男も紅茶を飲んだそうだが、この繊細な味は分かるまい……!」

 

L字ソファの一方に腰掛けた外務次官はフラーゲから茶を称賛され、屈託ない笑いを見せた。

だが、直後に顔を背けて自身のカップを覗き込むと、何かを思い出したかのように呟いた。

琥珀色の水面には、先程の穏和な顔が嘘だったような険しい憤怒の表情を見せた。

 

彼はその怒りを抑えるように繕うと、再度フラーゲに顔を向けた。

 

 

「……この茶葉はね、中将。……弟が私に送ってくれた、オルタリアの茶葉だ。

 ……あのギムレーめにオルタリアが灼き尽くされる前の、最後のな……!」

 

静かな、されど激情の籠った告白に気圧されるフラーゲ。

幾度もガミラスの敵と戦ってきた将をも圧する深い怒りが、外務次官の中にはあった。

 

 

「……閣下。」

 

「……済まないね。しようのない感傷だが、勘弁してくれたまえ。」

 

言葉の掛けようのないフラーゲに対し、ばつの悪い表情を示す外務次官。

フラーゲはようやくの思いで彼の部屋に足を運んだ理由を語りだした……。

 

「……ところで、閣下。バーガー大佐の先遣艦隊から秘匿回線で報告がありました。

 ……"ワレ、地球側トノ接触ニ成功セリ"、だそうです。」

 

「……おぉ、それは何より、結構なことだ。……そうだ、あの星は緑が甦ったそうじゃないか?」

 

外務次官の表情が、打って変わって明るくなり安心するフラーゲ。

安堵そのままに、微笑をにじませた表情で彼の問いに応える。

 

「はい、バーガー大佐の報告では、そのように。」

 

フラーゲからの情報に、外務次官は満足そうに頷く。

 

 

「……うむ。できればメランや、このオルタリアの茶葉のような、

 美味な茶葉があの星にあることを祈ろう。

 ……無論、あの星との条約も、美味なものであってほしいものだな…………。」

 

 

 

共和制ガミラスの外務次官を務め、遣地球外交団団長を任された男。

 

その名はヤヒメル・ドロッぺ。

 

かつてオルタリア叛乱の際に親衛隊により処刑された、

オルタリア総督リベル・ドロッぺの実の兄である。

 

彼はまだ見ぬ交渉相手の星を思い浮かべ、柔和に笑う。

だがその瞳には、射るような眼光を宿していた……。

 

 




はい、2202だとほぼチョイ役だったバーガーさん(2205に期待)と、
ヤマト2でデスラー総統の下に馳せ参じた提督の一人、シー・フラーゲ提督の登場です。

リベル・ドロッぺの(名前の)元ネタはナチスドイツ外相リッベントロップなので、
オリキャラであるドロッぺ(兄)の名前はリッベントロップの名前のヨアヒムを
捩っています。容姿はドロッぺ(弟)の髭をイングリッシュ・マスタッシュにしたものと思ってください。
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