宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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デスラー総統のミドルネーム「アベルト」にはカインとアベルの兄弟寓話が
反映されていて、2199時点からデスラー家で弟だったように思うモアンゴルです。

脚本の人そこまで考えてないと思うよ(例の画像)




第二十四話 勇躍の兆し

 

 

【第24話】

 

 

 舞台は極東管区に所在する、地球連邦の最高行政府が集う庁舎。

 

この一画の大会議室にて、ガミラス外交団先遣隊が地球へ届けた外交文書や、

来るガミラス外交団との交渉に備えた諸事が議論されている。

 

 

 

「……青天の霹靂とはこのようなことを云うのだろうな。」

 

 

地球連邦大統領ダグラスは、開かれたガミラスからの外交文書の内容を確かめ、唸った。

居並ぶ高官たちもそれぞれに、同意の頷きを見せる。

ガミラス外交文書の内容は、会議室の大型モニターに地球言語(英語)に訳され映されていた。

 

 

その条文は、以下の通り。

 

……

 

『ガミラス共和政府(以下本邦) 遣地球(テロン)外交団は、講和及び平和友好条約締結の

 席を設けるに先立ち、本邦の希望する条項を総括した当文書を地球(テロン)政府へ贈る。』

 

『本邦の遣地球(テロン)外交団が到着し、講和会議を始める前に、

 地球(テロン)政府は貴国の要求する条項をまとめ、文書として外交団へ提出することを希望する。』

 

……

 

『第一条項

 本邦から地球(テロン)政府に対し、デスラー独裁政権の拡大政策の下、

 貴国へ意図的な挑発行為を行い、戦禍をもたらしたことについて公式な謝罪を行う。』

 

『第二条項

 本邦と地球(テロン)政府が、双方対等な国家として平和友好、開かれた星間通商、

 相互不可侵・安全保障などを目的とした国交条約を締結することを希望する。

 詳細な内容については貴国の要求を鑑み講和会議の席にて決定する。』

 

『第三条項

 本邦から地球(テロン)政府に対し、前政権のもたらした戦禍への賠償として

 物資的・経済的・技術的な各種供与及び援助を行う。

 具体的な供与及び援助内容に関しては貴国の要求を鑑み講和会議の席にて決定する。

 

 第三条項追加文

 現時点(地球歴換算2200年12月21日)において、大小マゼラン銀河情勢は

 地球(テロン)政府に対する賠償行為が行える政治的・軍事的・経済的安定状態に無く、

 本邦の貴国への賠償は大小マゼラン銀河での不安定状態が解消した後に行わざるを得ない。』

 

『第四条項

 本邦から地球(テロン)政府へ、上記の大小マゼラン銀河の不安定な情勢を

 解消し早急な賠償を行うため、貴国所属の宇宙戦艦ヤマトを大小マゼラン銀河へ

 派遣されることを希望する。』

 

                               ……

 

 

外交文書は、これら要求条項の下に続けてガミラス共和政府や大小マゼラン銀河情勢の

事情などを列挙した参照資料が書き連ねられていた。

 

 

ハァ、とダグラス大統領がため息をついた。

彼ら地球連邦政府にとって、外交文書の第一、第二の条項については何も問題はない。

むしろ願ってもないことであった。……当然、予想もされていたことでもあったが。

 

第三条項も高官らによって(第一条項の謝罪と同じく半ば当然とも考えられていたが)予測済で

ヤマト帰還後にガミラス帝国の領域が混乱状態に陥った可能性大という報告があったことも

併せて、賠償が情勢不安の終息後になるという可能性も高いと判断されていた。

しかし、実際に予測が的中し賠償が遅れるということになるのは地球政府にとって困り事だった。

 

何よりも地球の首脳陣らが予測し得なかったのは、ガミラスから彼らの領域で

起きている情勢不安を解決するために地球に対しヤマトの派遣を要請してきたことだった。

 

もちろん、図式や理屈については理解も、そして予想もできた。

ヤマトがイスカンダルへの航海に出た際、ガミラス天の川銀河方面軍を次々に

打ち破ったことがガミラス支配下の植民地惑星などに伝わり、抑圧されていた被支配下の

民衆たちが叛乱や暴動の呼び水となってしまったのだ。ヤマトがバラン星にある、

亜空間ゲートシステムのハブに損害を与えたことも事態悪化に拍車をかけており、

デスラー独裁体制で水面下に広がっていたガミラスへの反発が、ヤマトの登場により

一気に顕在化した格好になる。

 

これらの叛乱分離運動を起したガミラス植民地惑星では、ヤマトは英雄視されており

都合のいい神輿となっているようだ。

ガミラス新政府がこうした叛乱の鎮圧にヤマトを利用しようと考えるのは至極当然である。

 

だがヤマトが地球にとってほぼ唯一の、ガミラスやガトランティスのような星間文明の軍に

対抗可能な軍艦であり、手放そうとは考えないであろうことはガミラス新政府にとっても

分かり切っているはず。その上で、要請せざるを得ないほどかの地は危機的なのか……?

 

このことに対し、外交のプロであるエバット外務局長官が自身の見識を述べた。

 

「……このガミラスの要請は、『ドア・イン・ザ・フェイス』と呼ばれる手法でしょう。

 この方法は、最初に交渉相手に対し受け入れがたい要求を行うことで、そのあとの

 ハードルを下げた、彼らにとって本命の要求を受け入れさせやすくするためのものです。」

 

「……となると、ガミラス新政府は地球にヤマトをマゼラン銀河へ

 送らせようとは考えていないということかね?」

 

これにペリー国防局長官が反応し、返した。

 

「ヤマトをマゼラン銀河へ派遣してもらえれば彼らにとって最善であることは変わりません。

 しかし、地球の事情を考えてそれは不可能であると結論付けていると考えられます。」

 

「……本音では、ヤマトを送ってほしいが地球の事情を考えると不可能。 

 それでは次善の案を確実に我々に受け入れさせるためにこの手法を使ったというわけか。」

 

「そう考えていただいて間違いはないと存じます。」

 

大統領とエバットはともに重々しい声で話した。

少なくとも、ガミラスの混乱が収まらない限り地球は自力復興を強いられる。

大統領らを始めとする高官の脳裏では既に遠き異星での混乱収束がいつになるかを計算し、

絶望的なまでの時間をかける必要があると結論付けていた。

 

しかし。

 

「……セリザワ副司令、意見がおありかね?」

 

「はっ。」

 

未来視により、近い将来にガミラスを遥かに上回る大宇宙の脅威・ガトランティスが

太陽系へ、地球へ向け到来することを知る地球防衛軍統括副司令官 芹沢虎鉄は挙手した。

 

2203年の未来において、ガミラスの援助なしに地球が戦うことは不可能だった。

その未来をより良い物へ変えるならば、なおさらガミラスとの関係性を好転させておく

必要性があったのである。

会議場中の地球連邦の高官たちが芹沢に対し怪訝な視線を向ける中、彼は怯まず語りだした。

 

 

「小官は、彼らの要請通りヤマトをマゼラン銀河へと送り出すべきであると考えます。」

 

「「「!?」」」

 

 

芹沢の発言に、会議場は一様にどよめいた。

彼はこの会議の場において防衛軍の最高位参加者である。

誰もが、芹沢もヤマトが地球防衛の要であり、外部派遣を認めない姿勢であると考えていたのだ。

 

「大統領、そして皆さん。

 

 あくまで()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

続けて放たれた言葉には、顔をしかめる者さえいた。

この場の少なくない人間は、ヤマトに対し戦艦以上の意義を見出だしているのである。

 

「……そのたった1隻の戦艦に対し様々なものが見出だされていることは確かです。

 地球での例としては救世主、希望の船。ガミラス支配下の民衆らも同じく、

 宇宙戦艦ヤマトに対し解放者や正義の使者の幻想を見たことでしょう。

 

 ……しかし現実として、宇宙戦艦ヤマトに認められるのは地球連邦にとって1隻の、

 されど現時点最強の宇宙戦闘艦であるという事実のみです。」

 

「そして、宇宙戦艦ヤマトのみを以てして地球防衛など不可能であると断言させていただきます。

 1隻の戦艦は1隻の戦艦分の戦術的価値しか持ち得ません。

 波動砲という決戦兵器を失っている以上、なおさらです。

 ここに地球人類を救った救世主という肩書きは一切意味を持ち得ないのです。」

 

地球防衛軍No.2が、それもヤマトが所属している極東管区出身者が

ヤマトに重ねられる幻視を容赦なく振り払っていく。

必要なことではあったが、彼が言葉を重ねる度に会議場の空気が冷えていくことは明白だった。

ペリー国防局長官が反論を試みる。

 

「……だがヤマトはガミラスの大戦力を突破し地球へ帰還したのだぞ?」

 

「それは……」

 

「それはヤマトがあくまで戦闘を第1義とせず、往路ではイスカンダル、復路では地球と

 目的地への到達を目標としたからです。加えて、現在我々の懸案でもある

 ガミラス内部での動乱が味方していました。

 いくらヤマトであっても、ガミラスの艦隊戦力と正面から戦えば撃沈は免れなかったでしょう。

 かの艦の航海は、終始薄氷を踏むものだったのです。」

 

芹沢がペリーに対し応答しようとしたとき、他の何者かがその声に重ね、

芹沢の代わりに反論した。その声は芹沢がよく知るものだった。

 

「……君もセリザワ副司令と同意見かね、トウドウ行政長官。」

 

大統領は仰け反るような調子で唸る。

声の主は、ヤマト計画を主導した男、藤堂平九郎だった。

 

「はい。仮にヤマトが地球防衛に当たったとしても、襲来の可能性がある

 ガミラス反体制派の艦隊が一定以上の戦力を擁し、戦略的な機動を行った場合

 ヤマトは撃沈され、地球は間違いなく壊滅します。

 証拠として、ヤマトの航海記録のカレル163でのガミラス艦隊との交戦では

 ガミラス中枢での政変によって敵艦隊が撤退しなければヤマトは確実に撃沈されていた、と

 報告されています。」

 

「……敵が、ヤマトを足止めする戦力を残し地球そのものを攻撃した場合

 地球防衛に当たるのはガミラス艦に対する有効兵器が少ない在来の軍艦少数と、

 同じく宇宙艦への打撃力に欠ける航空部隊・地上部隊のみで、とても抗し得ません。

 ヤマトと在来艦艇の共同運用などもっての他です。」

 

藤堂の説明に続けるように、芹沢もヤマト頼りの地球防衛がいかに非現実的であるかを説いた。

 

それをひとしきり語ると、芹沢は掩護射撃をしてくれた藤堂へ感謝を示し、頭を下げた。

 

こうした説明を受け、エバット外務局長官は噛み砕くように2,3度頷くと芹沢に言う。

 

「……では、貴官はヤマトを地球防衛のために太陽系に留めるよりは、ガミラスの要請に応じて

 マゼラン銀河へ派遣した方が有効かつ有益である、と言いたいのかね?」

 

これに芹沢は我が意を得たり、とばかりに自信に充ちた笑みを浮かべた。

 

「その通りであります。」

 

 

 

議場がざわめき出す。

いままで非現実的であると思われてきたヤマトのガミラス派遣が急に現実味を帯びてきたのだ。

こうした中で、オブザーバーの一人が質問を出してきた。

 

 

「……ではお聞きしたいが、ガミラス反動分子の地球への報復が予測されるなかで

 ヤマトを派遣する以上、その代替たる地球防衛のための戦力はどうされるおつもりか!?」

 

「ガミラス国防軍に、ヤマトの代わりになる艦隊を派遣してもらうのが現実的でしょう。」

 

 

事も無げに云う芹沢にさらにどよめく会議室内部。

地球の防衛を異星人に、それも1年前まで敵対し、地球人類を絶滅に追いやりかけた

ガミラスに委ねるというのか。

参加者の間に憤りの感情が芽生えていく。だが、それを一刀両断するがごとく芹沢は断言した。

 

 

「…………現在、我が地球連邦は、地球人類は非常に弱小です。

 ただ1隻の戦艦か、かつての仇敵に国防を委ねねばならぬ程!

 諸君も私と同じく屈辱を、情けなさを感じているはずだ!だが、これが紛れもない現実なのだ!

 

 宇宙戦艦ヤマトがマゼラン銀河へ派遣されるとすれば、それは我々の子供たちが、

 未来の地球人類がその辱しめを受けぬための礎になるためなのだ!!

 

 ガミラスの賠償、ガミラスの援助、ガミラスの供与!

 これら無くして地球の復興と将来の独立はない!!

 

 ガミラスとの友好関係の確立こそが地球の興廃の分岐点であることは疑い無い事実だ。

 条約締結に際してもより我らが地球人類にとって有益であるものにするために、

 地球防衛軍統括副司令 芹沢虎鉄はガミラスの要請に応じて

 宇宙戦艦ヤマトを大小マゼラン銀河へ派遣するべきであると主張いたします!」

 

 

芹沢の熱弁に、圧倒される一同。

 

最初に声を出すことが出来たのは、ダグラス大統領だった。

 

 

「……時期尚早であるかもしれないが……ヤマトの派遣は決定事項としていいかもしれん。

 ……当然、市民たちに受け入れてもらえるようガミラスにも相応に取り計らってもらう

 必要はあるだろうがな。」

 

「……大統領閣下……!」

 

 

地球連邦大統領、エイブラハム・ダグラスは芹沢をはじめとした高官たちに、

不敵な笑みを見せた。彼は、議場によく響く声で告げる。

 

 

「…我々が担っているのは2年や3年先だけではない、100年先の地球人の未来だ。

 今日の舵取りが、100年後の子孫が健やかに暮らせる明日を造るはずだ。

 明日生きる子供たちのため、今日生きる我々は屈辱に耐えねばならない!

 

 これより、各部局は講和・条約交渉とその後を見据えた行動に移ってほしい。

 今後の会議では更に細部を詰められるよう、諸君らの働きに期待する!」

 

 

この宣言を以て、地球連邦政府のガミラス外交団との講和・条約締結のための

準備会議の第一回は終幕を迎える。

 

 

時に、西暦23世紀初頭のことであった。

 

 

 





アーサー・チェスター・ペリー国防局長官

名前の元ネタはダグラス・マックアーサー米陸軍元帥、チェスター・ニミッツ米海軍元帥、
マシュー・ペリー米海軍提督から採らせていただきました。

容姿のイメージは、アニメ「OBSOLETE」のボウマン隊長で、
イメージCVもそのまま田中正彦氏です。
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