宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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2205観て来ました!

ネタバレ抜きでの感想ですが、一本とられたって感じです!(一本どころじゃない)
ニヤリとさせてくれる演出も入っていましたし、皆さんも是非見に行ってください!


なお、この小説はまだ2202本編にも入らんもよう(悲憤)


第二十八話 決着

【第28話】

 

 

 地球とガミラス、両国の戦闘・無国交状態を解消するため

地球防衛軍の輸送船「ユートピア」で行われている二国間外交交渉。

 

その席で、思わずガミラス側代表が声を荒げてしまうほどの要求を地球連邦は

ガミラスへの「ヤマト」派遣の条件に付していた。

果たして、その内容とは……

 

 

 

「………では、その条件に関する地球連邦政府および防衛軍の意図をお話ししましょう。」

 

地球側の交渉団首席である地球連邦外務局長官、チャールズ・C・エバットは言った。

 

「…………!」

 

声を荒げてしまったドロッぺ外務次官をはじめとするガミラス側外交団の面々は

固唾を飲み、耳を澄ませてエバットの次の言葉を待つ。

その姿勢には、一切の妥協を許さないというガミラス側の強固な意志が見てとれた。

 

 

「……最初に、当該条項について改めて確認しましょう。

 

 『大小マゼラン銀河の情勢安定化支援を目的とした、宇宙戦艦ヤマトの派遣に当たり

 ガミラス共和政府は以下の布告を国内へ向け行うこと。』」

 

エバットの眼光は鋭くなり、交渉を決裂させる可能性さえ秘めた劇物と言える案件の

核心部分を口にしようとする。他の地球側代表らも手元の資料を凝視した。

 

 

「『布告内容1』

  

 『ヤマトによる政権崩壊時までに体制の首班であったデスラー総統を名乗る人物は

 デスラー総統の影武者のひとりであったこと。

  

  本物のアベルト・デスラー総統は数年前から拘禁されていたこと。

 

  本物のデスラー総統を拘禁し、デスラー総統の名の下で行われた強権的政策の数々は、

  デスラー総統の影武者を利用したデスラー親衛隊の勢力拡大のための策謀だったこと。

 

  一連の策謀の首謀者はデスラー親衛隊長官ハイドム・ギムレーであること。

 

  本物のデスラー総統は2199年当時、空間軌道要塞都市第二バレラスに拘置されており、

  ヤマトによるガミラス星突入戦の混乱に巻き込まれ死亡した可能性が高いこと。

 

  これら一連の内容を、ヤマトが回収したデータに基づく新事実として公表すること』」

                              

 

淡々と、エバットは内容の一部を読み上げた。

それだけで議場の空気が一気に氷点下まで冷却されたがごとき雰囲気の強ばりが露になる。

 

要約すれば、「ガミラスに圧政を強いていたデスラー総統は親衛隊が権力を握るため

擁立した偽物であり、本物は第二バレラスに監禁されていて戦闘に巻き込まれ死亡した」

ということになる。

 

確かに、これは受け取りようによってはアベルト・デスラー総統の名誉回復になりうる。

 

 

 

不意に、ガミラス側代表団の一人が声をあげた。

 

「……この星では、他国に対しあからさまに内政干渉のような要求をすることが

 常套手段なのですか。他国の弱みにつけ入って、その政治体制に変更を強制しようとするのが

 この惑星における流儀なのですか!?」

 

「言葉が過ぎるぞ、サメル部長。……非礼をお詫びさせていただきます、エバット氏。」

 

地球側代表団へ鋭い言葉を投げ掛けたのは、ガミラス外交団の民政顧問の一人である

ワルツ・サメル民生省福利厚生部長。外交団の中ではダークナス軍事顧問と並び

30代の最若手のエリート官僚は、地球(テロン)が提示した要求内容に加え、

エバット地球側交渉団長の超然とした態度に苛立ちを募らせ激情を露にした。

すぐさま外交団長のドロッぺはサメルを諌め、エバットに部下の失言を謝罪するが、

当のエバット本人はさして気にしなかった。

 

「いえいえ、

 サメル氏の仰るような印象を強く与えてしまうような要求内容であったのは確かです。

 

 ……しかし、これが我々がヤマトを派遣するにあたって最低限必要な重要事項であることは

 ご理解いただこう。」

 

鷹揚にドロッぺの謝罪に返答したエバット外務局長官。

しかしその直後、見たものに恐怖すら呼び起こさせる威圧感を纏った真顔に表情を改め

テーブルの対岸に布陣するガミラス外交団へ宣言した。

地球側も、一歩も引かない構えである。

 

 

「……さて、先程述べさせていただいた条項、『デスラー総統に関する国内布告』の要請を

 なぜ本邦がヤマトをマゼラン銀河に派遣する条件として提示することになったか、

 地球連邦政府並びに地球防衛軍の見解を述べさせていただきます。」

 

エバットは、一先ず表情を再度落ち着き払った柔和なものに変えて説明を続けた。

 

「第1に、ヤマト派遣を国民に向け発表・理解を得るのに必要な措置であることが理由です。

 あなた方もお分かりでしょうが、やはり本邦の市井の人々が貴国へ向ける視線には

 厳しいものがあります。彼らに対し、理解してもらうための理由付けが必要なのですよ。

 戦争開始時のガミラスの国家指導体制が歪であり、ヤマトがそれを矯正した……

 そうした背景を造り上げなければ、地球防衛の最高戦力を旧戦争相手国へ遠路はるばる

 派遣させることを国民は許しはしないでしょう。」

 

説明を受け、ガミラス側出席者の雰囲気が気まずいものとなった。

考えてみれば地球側の言い分も当然だろう。ガミラス遠征軍は地球(テロン)に対し苛烈な攻撃を加え

その総人口が1/3になるほどの殺戮を行っている。

そんな怨み深い旧敵国にどうして地球(テロン)の国民が自国の希望の象徴(シンボル)たる戦艦を

派遣することに賛同などしようか。ドロッぺ外務次官も苦い表情を浮かべる。

 

「我が政府の立案グループは、当条項の布告が行われることで地球連邦市民も

 支配側・被支配側関係なくガミラスの方々に、同情と共感の念を寄せるはずだと分析しています。

 

 ……無論、捏造を疑う声があるでしょうが、その対策としてヤマトの名声(ブランド)を利用します。

 関係者には固く箝口令を敷くことになっており、その折には貴国にも協力をお願いしたい。」

 

地球の強かな外務局長官はそう続けた。

老紳士の言葉を耳に入れつつ、青肌の外交団長の頭脳は全力運転で稼働する。

 

(……地球(テロン)市民がガミラス人(われわれ)を見る目が変わる、ということか。

 権力の頂点にいたのは悪逆極まりない親衛隊。諸悪の根源は権力の私物化を目論み

 統治者を傀儡にすげ替えたハイドム・ギムレー。地球人が憎むべき相手をすり替えるのか。

 いや、地球人だけではない……!)

 

ドロッぺの脳が思考を続けようとしたとき、

まさに引き継ぐようにエバットの発言が会議場内に響きわたる。

 

「……そして、この図式は植民星の被支配民族との間にも適用することができます。

 被支配民族であった植民惑星の民衆にも同様に、元凶が親衛隊勢力であったことを

 印象付けることができれば離反運動を牽制することに繋がり、ヤマト派遣時の

 安全確保に役立つ上、派遣を行って得られる共和制ガミラスへの植民星の帰順効果も

 一層高まると見て良いのではないでしょうか。これが第2の理由です。」

 

 

……これまで、ガミラス共和政府は単純にデスラー政権の被害の保証や共和制の優性を

謳うことで国の結束を保とうとしてきたが、地球側が提示してきたのは

国民(青き肌の有無に関わらぬ)のほぼ全員が共有できる、憎しみを向ける先の『敵』を

明確にすることであった。ガミラスに比べ、地球は民主主義の歴史が長い。

人心を操作する分野では一日の長が地球人にあることはガミラス外交団も認めざるを得なかった。

 

エバットの説明に、ガミラス外交団のゲルップ産業顧問から質問も混じった反論が挙がる。

 

 

「……植民星の、旧二等ガミラス人階級の人間の一部は青い肌であるだけで敵視してくると

 報告が挙がっている。果たして、彼らと本当に結束することが可能とお思いか?」

 

「植民惑星の人々も、大多数が本気で自主独立を考えていないとはあなた方もお思いでは?

 そちら側から提供された情報からでは植民星はやはりガミラス星に技術力や防衛力などを

 頼っている状況であると判断できます。それを捨てることはしないでしょう。

 

 彼らの民族感情、ガミラス民族への反感は旧体制時の明確な差別待遇に

 端を発しているという考察はそちら側からの情報に記載されていました。

 仮にその体制や差別文化を助長したのがやはり親衛隊であり、もしもガミラス人が

 他民族と緊密になった場合に親衛隊に処罰されるという背景を描き出せれば、

 種族間対立も漸減するのではないかというのが地球代表としての意見です。」

 

「……なるほど。確かに親衛隊であれば民族関わりなく弾圧したでしょうな。

 オルタリアで入植団もろとも星を灼いたのがいい例だ。

 私の心配事には、対応策があるとの事で安心しましたぞ。」

 

 

地球側の描く青地図に関する理論武装は、相当に強力であることが明らかになり

ドロッぺらガミラス外交団の面々は押し黙る。説明は最後の段階へ入った。

 

 

「……第3の理由に、総統支持派閥の取り込みです。

 理由としてはこれが最も大きな比重になるかもしれません。

 貴国からの資料では国内の対立勢力に旧総統体制を支持する派閥があるとありました。

 デスラー総統は非常にカリスマ性が高い人物であったためその思想基盤は堅牢で、

 軍人の中にも隠れて支持している人間はいまだに数多く潜伏しているとされ

 既存の方法では簡単には和解・懐柔あるいは打倒できないと資料に記載されていました。

 デスラー総統個人の名誉が回復されれば同派閥勢力との融和が進むものと我々は考えています。

 別条項の、故ゼーリック元帥の名誉回復も旧貴族層への同様の効果を見込んでいる物です。

 反面、親衛隊は支持している勢力がないため遠慮なく貶めることができます。

 

 

 ……これら以上の事が、貴国にヤマト派遣の条件として問題とされた要請を行った

 理由とさせていただきます。」

 

 

長い説明を終え、エバット老人はガラスの水差しからガラスのコップへ移した水を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……なんと恐ろしい。我々はとんでもない種族と手を結ぼうとしているのでは……)

 

一方のドロッぺ外務次官らガミラス外交団は練りに練られた地球側の戦略に舌を巻く。

他星人と思えないほどガミラスの状況に対し真摯に向き合っている。

あまつさえ、地球(テロン)人にとって英雄視されるヤマトの航海すら確信犯的に

政治利用し尽くしている……。

 

 

大半のガミラス外交団員の心中では、緻密な地球側の策略に乗るべきなのではという

想いが沸き上がり、受け入れがたかった筈の条件に好意的な眼差しが現れ始める。

 

だが、ただ一人雰囲気に逆行して挙手し、エバットらに質問を投げ掛けた者が。

……外交団の軍事顧問、ダークナス少将だった。

今さら何を聞くのだという疑問を地球・ガミラス双方から言外にぶつけられつつ、開口する。

 

 

 

「……貴国から提供された映像などの資料では、亜空間回廊内で総統座乗艦とおぼしき

 我が軍の戦艦と交戦したという情報がありました。情報には同艦はヤマトの攻撃で

 撃沈されたとありますが、仮に総統が座乗しておりヤマトと、ひいては地球(テロン)

 何らかの接触をしていた場合、総統のガミラスへの帰還の為の布石としてこのような条項を

 提示したという可能性があります。……現在の地球が実は存命するデスラー総統と

 密約を交わしガミラスにデスラー復権の土壌を作ろうとしているというような

 見方もできなくはありません。もしもこの布告が捏造と明らかになった場合、

 共和政府の信頼は失墜してしまう!

 デスラー派のつけ入る隙を作るためこの条項は設定されたのでは!?」

 

「何をいうのだダークナス少将!!」

 

ドロッぺが慌てて咎めるほどダークナスの質問はあまりにも明け透けだった。

が、同時に一定の妥当性・説得力を持ち合わせている。捏造が明るみになった場合の

ガミラス共和政府が抱えるリスクがそれだ。

この詰問に対し、エバットは応じた。

 

 

「……ふむ、ダークナス閣下はかなり豊かな想像力をお持ちなようだ。

 この捏造が明かされぬよう我々としては万全の情報統制を敷くつもりです。

 貴国にも情報管理を徹底していただければ危険は小さくなります。

 ……そして、デスラー総統との接触などについての点ですが……本気でそう思っておられるのか?」

 

 

飄々とした口調で言葉を紡いでいた老人だったが、最後の一文の声色は違った。

声を荒げこそしないが、聴くものの心胆を寒くするくらい強烈な"怒り"の色が滲んでいたのだ。

 

 

地球側からの返答を聞いたダークナスは気圧された。自分がエバットの、いや、

地球(テロン)人の逆鱗に触れたことを悟ったのだ。

地球を滅亡の縁にまで追いやった元凶のガミラスの指導者と手を組んでいるのではないか、

という疑惑を向けられることを無礼と感じたのだろう。

ダークナスは一刹那の逡巡ののちに深く頭を下げた。

 

「……あまりに考慮の足りぬ発言をしてしまったことをお許しください。」

 

ダークナスに続き、ドロッぺもまた地球側へ頭を垂れて詫びる。

 

「……外交団長として、重ね重ね不適切な発言をさせてしまうことに改めて陳謝します。

 

 しかし、当条項が本邦にとって難しい案件であることもまた事実なのです。

 我々外交団に付与された権限を逸脱しています。本星政府との確認の上で、

 改めて協議させていただきたい。」

 

「ええ、もちろんです。前向きなお返事が頂けると信じておりますぞ」

 

ドロッぺが望む、複雑な問題である条項について、本星側の意見を伺った上で再協議を

あっさりと容れるエバット。先ほどの怒りを完全に微笑のベールで覆い隠しているところに

ドロッぺは彼の不気味さと、交渉相手としての恐ろしさを感じていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西暦2201年 3月25日。

 

 

度重なる協議と擦り合わせの上で、地球とガミラスの両国は終戦並びに各種国交の条約を

締結したことを国内外に知らしめた。

 

 

各種条約の内容は、地球・ガミラス両国の要求が全面的に受け入れられたものとなっていた。

 

 

各種条約の発効は予備期間の後の西暦2201年 4月1日からであるが、

終戦協定については即座に実施され、地球市民に向けてガミラス外交団による

謝罪と賠償の確約が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

10年にも及び、

地球に巨大な災禍を(もたら)したガミラス戦争は、今ここにようやく決着の時を迎えたのだった。

 

 




まだ、外交戦編は終わりません……!
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