宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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大変遅くなりましたことを、謹んでお詫び申し上げます。

2205後編と、それ以降のリメイクヤマトシリーズにも光明が見えたことは
喜ばしい限りです。わたくしも誠心誠意筆を振るいたいと存じます。

因みに、ここの芹沢副司令は2205の副司令とはまた異なる人物像になると思います。
期待していた方には大変申し訳ありませんが……



第三章 艨艟賛歌
第三十一話 静かなる幕開け


【第31話】

 

 

 

「……これが「ヤマト」か……。」

 

見上げるその船は、巨大だった。

かつて、この船が所属する管区の前身となった国家の軍歌には水上軍艦に対し

「浮かべる城」という表現が歌詞の中にあったと聞くが、

この船はまさにそれに相応しい威容を備えている。

 

かつて自分は地球と、地球人類の未来をこの艦に託したことがあったが、

実際の姿を見るのはこの時が初めてだった。

 

 

 

旧国際連合で、対ガミラス戦時下において最後の事務総長を務めた黒人の老紳士、

ロドニー・ムベキはトラック環礁内のモエン島に設えられた岸壁で、沖合いに浮かぶ

地球を救った巨大戦艦を眺めている。

 

西暦2201年 7月中旬。既にガミラス外交団は、地球連邦政府に窓口役と護衛の少数を残し

大マゼラン銀河への帰路について久しい。

彼らが船を留めていた太平洋トラック環礁の礁湖内には、宇宙戦艦ヤマトや

太平洋に面した各管区から送られてきた宇宙船が投錨している。

環礁の島々の様子も、地ガ間交渉が行われた時と大きく変わっていた。

 

ムベキの近くには、数人の男たちの姿がある。みな、ガミラスへの使節として

これからヤマトに乗り込み、遠路はるばるマゼラン銀河へと赴くのである。

暫くすると、ヤマトから人員輸送用の艦載機、97式輸送機コスモシーガルが島へと飛来し、

使節団らを洋上の巨艦へ移送する。

 

 

 

遣ガミラス地球使節団は、ヤマトに足を踏み入れると応接室へと通されることになる。

そこで、二代目ヤマト艦長 山南修 少将と、同艦副長 真田志郎中佐が彼らを応対した。

 

「『ヤマト』にようこそ、ミスター・ムベキ。

 本艦の艦長を拝命しました、極東管区駐留艦隊の山南であります。」

 

「これはどうも、キャプテン・ヤマナミ。航海の間、宜しくお願いいたします。」

 

穏やかな白髪の黒人老紳士と、飄々とした洒落者の艦長が互いを代表して挨拶を交わし、

航海における艦内生活での各種注意事項などについて説明が行われた。

進入不可の危険区域がどこか。万一の戦闘など非常時における対応。

安全に関わる事項のため、とりわけ力の籠った説明がなされる。

 

「……航海中のお食事ですが、使節団の皆様にもクルーと同じく

 艦内のOMCSをお使いになっていただきますが、よろしいでしょうか?」

 

「無論です。地球の復興も軌道に乗り始めたばかり、我々だけ贅沢はできません。」

 

使節団も、地球を救ったヤマトとそのクルーには大きな信頼を寄せている様子で

和やかに一連の説明が終了。

山南艦長は真田副長に対し、使節団に艦内を案内するよう命じる。

 

「……本艦の出航は、今夕2000時(チューク時間)です。

 艦内の確認を終えられたら、それまで御随意におくつろぎください。」

 

「……使節団派遣航海についての全体会議は、明日以降ということでよろしいですかな?」

 

山南艦長へ問いを向けたのは、眼鏡を掛けた白人男性、使節団の副代表だ。

 

「はい。各管区より遥々お越しになった皆様には、

 まず本艦の乗り心地を体験なさっていただきたいのです。」

 

ニッと人当たりの良さげな笑みを見せる山南艦長。

傍らの真田副長も同意するとばかりに表情を綻ばせる。

山南少将はヤマト艦長に就任していまだ数ヶ月だったが、その間にも

すっかり乗組員からの信頼を得ている模様だった。

 

責任者級同士の初会合の終わり際、ムベキ使節団長は締めくくりの言葉として語る。

 

 

「……地球と、彼方の友邦ガミラスの文字通り未来を左右する航海となります。

 各々がたには、重ねて宜しく申し上げたい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、地球を遠くはなれたマゼラン銀河。

その大部分を名目上支配下に納めている国家、ガミラス共和国。

同国家の首都星であるサレザー恒星系第4惑星ガミラス。

 

地球と友誼を結んだガミラスでは、条約の秘密条項に基づいて国内に対し

『地球側が入手していた記録に基づく新事実』として、親衛隊の上層部が

デスラー総統の影武者を操り、ガミラス全土で圧政を強いていたこと、

本物のデスラー総統は第二バレラスに幽閉されており、混乱の中で落命したこと、

前国家元帥ヘルム・ゼーリックら一部貴族勢力はこの事実に気づいており

本物のデスラー総統を救出するために動いたが、親衛隊の妨害を受けて失敗したことが

明かされ、声高に報道されていた。

 

 

「____ガミラスは騙されていた!悪辣な親衛隊によって、非道なギムレーによって!

 我々政府の人間も、諸君ら市井の人民も!等しく欺かれていたのだ!

 だが、親衛隊の卑劣な策のみに原因を求めるのは近視眼的な解釈だろう。

 我々の側にも、親衛隊がつけ入る弱点があったのだ!

 それは、指導者デスラーを崇めるのみで、彼を知ろうとしなかった!

 総統自身がそうあろうと努めていたとしても、その指針を理解しようと

 するべきだったのだ!……いま、我らガミラスの人間ひとりひとりが

 行うべきことは、人種・階級関わりなく、ガミラスの国家領域に住まう

 あらゆる人々が手を携え、強靭な国家を再建することであると私は確信する。

 それこそが、不幸のうちに落命されたデスラー総統の遺志に沿い、

 最大の慰霊となるに違いないと確信している!____」

 

街頭などのスクリーンには、レドフ・ヒス首相の演説が流されている。

デスラー体制崩壊直後、ヒス首相は陰ながらデスラー総統に圧政の責任全てを

押し付けることによって治安回復・治安維持を試みたことがあったが、

いまやそれは遠い昔の話となったようだ。ヒス首相の工作でデスラー総統に

反感を抱き、デスラー像を破壊するなど総統を貶めていた民衆もまた、

すっかりデスラー総統を再崇拝するに至っている。

 

 

「……かつて、『ヤマト』がバレラスへ突入した際、第二バレラスは

 ヤマトが突っ込んだ総統府タワーに向け波動砲(ゲシュ=ダール・バム)を放とうと

 していたという記録が残されています。しかし、直後に第二バレラスは

 爆発崩壊したのは皆さんもご存じの通り。あくまでも推測の域を出ませんが、

 もしかすると第二バレラスに幽閉されていた本物のデスラー総統が

 波動砲(ゲシュ=ダール・バム)の発射を止めるべく御身を犠牲にされたのかもしれません。」

 

家庭のヴィジョンスクリーンで流される報道番組では、知識人が

このような発言をすることさえあった。

 

地球連邦が要求し、ガミラス共和制府が直面する問題を解決するため決行した

デスラー総統の名誉回復は、ガミラスが元来から抱えていた心理的土壌も作用し

驚くべき勢いで進行、人心に受け入れられている。

故人となったアベルト・デスラーは国家への反逆者から一転して、

悲劇の英雄として祭り上げられていったのである。

 

 

当然ながら、これに反発する者も一定数存在した。

政府・国防軍側の人間、とりわけ体制の転換に大きな役割を果たした

ガル・ディッツ元帥やエリーサ・ドメル未亡人などは難色を示したのだ。

国民を騙す布告について、やはり思うところがあったようだが、

ヒスやドロッぺをはじめとする実務官僚たちの説得と、ガミラスの安定に

寄与するという間違いのない効果の前に折れ、認める運びとなった。

民間側では、強固な反デスラー主義者や過激派分離独立運動家などは

帝国後継国家による懐柔を狙った偽情報だと主張した。(実際それは正しい)

 

だがやはり、国民ら全体の流れとしては

『悲劇の英雄が望んだ、全国民統合国家の建設』に熱狂していた。

そんな雰囲気がそこかしこから漂うガミラス星の中心都市・バレラスの市街を

1台の浮揚車(エア・カー)が走り抜ける。暗灰色の車体カラーは、警察関係の官用車であることを示す。

スモークガラスに似た作用の窓により外部からは伺い知れないが、

車内には運転手の他、二人のガミラス人の男が乗っており、

流れ去る街の光景に眼をやりつつ向き合っている。

一人は赤みがかった茶髪の壮年で、もう一人は白髪頭の老人。親子のような年齢差である。

壮年のガミラス人は、同乗する老人が見やる方向に顔を向け、彼方にあるものを認める。

バレラス市内でも屈指の規模を誇る大型宣伝スクリーンだ。

そこでは、ガミラスの国営放送が流れていた。映っているアナウンサーの女性は、

現在ガミラスにおいて屈指の人気を誇る美人広報官、イローゼ・シャベラスター。

ガミラス広報省(宣伝情報省より改称)を束ねる、ヨゼル・ゲパルス大臣の腹心の部下である。

スクリーンは遠く、浮揚車(エア・カー)が防音仕様なのもあって彼女が話す内容は

車内には聞こえない。だが、男たちは既にそれを知っていた。

なぜなら、浮揚車(エア・カー)に乗るずっと以前から同じ放送を何度も聞き、

完全に内容を覚えていたからだ。赤茶髪の壮年男は、独り言のようにそれを呟いた。

 

「……ガミラス国民の皆さん、遺恨を越え手を取り合い、新国家建設に共に邁進しましょう。

 ……()()アベルト・デスラーの遺志に報いるために……。」

 

「……。」

 

皮肉げな響きを持たせた呟きに、老人は反応しない。

壮年男はため息混じりに続ける。

 

「……数ヶ月前まで、やれ民主化だ、国民のために、デスラーの独裁は唾棄すべき悪だ、

 どこからもそんなスローガンばかりが聞こえてきましたが……

 いまやデスラー総統は『()()()()()』だ。

 全く、とんだ茶番劇ですな。」

 

「……そう言うな。この国は長らくカリスマの手で纏められてきた。

 そこから脱却するのには一朝一夕とはいかんよ。

 土壌が整うまで、頼らねばなるまい。いくら実像とかけ離れた偶像であってもな……」

 

老人はここに至って壮年に向き直り、致し方なしと言うようにかぶりを振った。

実際のところ、一連のデスラー体制についての()()()の公表・布告は

植民星群の共和制ガミラスへの帰順や人種間和解・治安回復に大きな役割を果たしている。

国民の精神的依拠たる存在が復活したことで、人心に余裕が生まれたと言えるか。

 

「……無論、理解しています。有効だからこそ、上層部(うえ)も決断したのでしょう。」

 

赤茶髪の壮年の言葉を老人は黙って受け止めた。

彼の彫りの深い顔の双眸には、射抜くような、見定めるような眼光が宿っている。

少しの沈黙のあと、老人は表情を緩めて告げた。

 

「うむ。……やはり、君にこそ()()()()は任せるべきだろうな。

 改めて確信を持てた。」

 

「恐れ入ります。」

 

この老人、ガミラス内務省の直轄部門である保安情報局の局長グルス・デリュゲは、

対面する部下に向かい任務を簡便に語った。

 

「……それなりに情勢は快方に向かっている。だが、いまだに共和制の脅威となり得る

 勢力の健在は否めん。地下に潜った旧親衛隊の連中も相当数が行方知れずだ。

 こうした状況において、君には過激なデスラー信奉派閥の監査を主導してもらう。

 子細は追って話すことにしよう。いいかね?」

 

丁度、バレラスの高架高速道路を走る浮揚車(エア・カー)は、ビル街を抜けて湾岸地区へ、

外殻が屋根のように頭上を覆うエリアから、惑星の外を見られるエリアへと出た。

ガミラス内殻の海洋は、サレザーの陽光を浴びて静かな波を立てている。

ガミラスの治安幹部二人が乗る公用車にも、光は特殊素材の窓を通じて差し込んだ。

灰暗い車内は多少明るくなり、乗っている者の姿もはっきりと映し出した。

デリュゲ保安情報局長と同乗していた赤茶髪の男、ローレン・バレルは

自信を覗かせる表情で上司に応じた。

 

 

「はっ、力を尽くさせていただきます。」

 

 

 




ガミラス人民がそう簡単に報道に踊らされやすいわけないだろ!
という意見が出るのはこちらも了承していますが、カリスマと目してきた指導者を
(習慣的に)求めていたこと、民主制が浸透しておらず、情報統制に慣れていたため
一般大衆は素直に信じてしまった……という設定にしておきたいと思います。
どうか、ご勘弁ください……

次回は早めに投稿したいと考えております(なお実現性)
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