宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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間が空きました、申し訳ありません。

しかし、大きな内容も無い(も)よう(ダジャレ)

本当に申し訳ありません。


第三十二話 再抜錨

【第32話】

 

 

 

環礁の空に、満天の星が瞬く頃。

静かな泊地の一画に、巨大な影は座していた。宇宙戦艦「ヤマト」だ。

その舳先近くでは重い金属音が響き、97式噴進空間錨(ロケットアンカー)が巻き上げられていく。

そして、ゆっくりと艦体は前へと動きだし、トラックの礁湖の中でも島がない一帯へ進んだ。

 

「ヤマト、環礁内離水航走用区画へ進入。」

 

「管制艦「オーウェンスタンレー」より入電。環礁内は現在無風、

 ヤマトの出航の障害となるものは認められず。航海の無事を祈る、との事です!」

 

ヤマト第一艦橋では、出発を目前に際し忙しいやり取りが交わされていた。

モエン島西方海面に位置したヤマトは、さらに西へと向け加速・離水することになっている。

 

「補助エンジン、最大船速へ移行。1エスノットまで20秒(フタマル)!」

 

「波動エンジン内圧力上昇、エネルギー充填100%」

 

月下の海を猛然と駆ける鋼鉄の城。その艦尾に新たに光が灯ろうとしている。

 

「フライホイール始動、波動エンジン点火10秒前!」

 

 

ヤマトが出航すること、それが旧敵ガミラスを援助するための物であることは

大部分の一般市民や軍人には極秘にされている。出航後しばらく後も、

軍や政府は「ヤマト」が地球防衛のための任務に就いている、と深い言及はせず、

市民らに太陽系外縁での哨戒任務などについていると勘違いさせるはずだ。

 

だからこそ、離島の夜間に、人目に触れぬよう出航するのだろう。

地球人類を救った船にも関わらず、その新たな出発には大きな歓声はない。

せいぜいが海上で見送る「オーウェンスタンレー」の乗員たちや、

極東管区地下司令部のオペレーターたちの声援だろう。

 

それでも、「ヤマト」は征くのだ。

 

 

「フライホイール接続、波動エンジン点火!」

 

ベテランの徳川機関長が告げ、島航海長が操縦桿を握り締める。

新艦長となった山南が、満を持して命じた。

 

「ヤマト、発進!!」

 

西暦2201年 7月18日 2030時(トラック時間)。

トラック環礁の礁湖内を疾走した地球最大の宇宙戦艦は南溟の夜空を駆け上がる。

星月夜の光を受けた飛沫が、きらきらとした輝きを纏い水面に散らばった。

 

 

 

ヤマトに座乗する地球連邦政府の遣ガミラス使節団は、貴賓室に集まりシート・ベルトで

身体を固定、無用な事故の防止に努めている。団長を務める元国連事務総長の

ロドニー・ムベキは使節団の副団長、欧州管区(仏分管区)出身の外務局次官

クロード・ヴェルニーから言葉を掛けられた。

 

「始まりましたな、団長殿。」

 

「あぁ。まさかこの歳になって宇宙船に乗るとは思わなんだ。

 しかも、宇宙人の国に使節として赴くなどとは……」

 

感慨深げにムベキ団長は呟いた。貴賓室ではあらゆるものが振動を受けている。

遥かな大気圏外空間に向け急上昇するヤマト。その向かう先に太陽は見えない。

 

しばらく後、ヤマトにかかる衝撃の殆どは落ち着いたようだった。

この艦は、また星の海へと繰り出したのである。

これから臨む旅路はバーガー艦隊を迎えたときのような()使()()ではない。

ヤマトが宇宙に名を知らしめた、あのイスカンダル遠征行と同じマゼラン遠征だ。

守るべき地球を離れ、友邦となった国を蝕む分断を除きに向かうのである。

仕方なき事とは言え、かの国内に分断と混乱をもたらしたのがヤマトだったことを考えれば

それは、一種の()()()とも呼べるものであった。

 

 

「これより、ヤマトは予定どおり大マゼラン銀河に所在する、惑星ガミラスへ向かう。

 今次航海の目的は戦闘ではなく、ガミラス国内の治安回復に対する協力・支援にある。

 ガミラスと矛を交えた諸君らがこの任務に就くのに複雑な心持ちであることは理解する。

 だが、かの国は地球の復興に不可欠なパートナーとなった。

 彼らを助けることが、即ち地球を助けることに直結する。

 どうか、心して任に当たってもらいたい。以上!」

 

衛星軌道を抜けるヤマト艦内に、艦長の訓示が響き渡る。

イスカンダル遠征行でガミラスと戦い、戦友を喪いながらも生き延びた

クルーたちの内心は伺い知れない。だが、少なくとも不平を声に出す者は現れなかった。

 

艦長席に設えられたマイクを元のホルダーに戻す山南。

彼は同艦の航海長、島大介大尉に指示する。

 

「航海長、ヤマトは現針路を維持。地球重力圏を抜け次第、第二戦速へ加速せよ。」

 

「了解。」

 

若き航海長が握る舵に基づき、地球・ガミラス両国が『希望の船』と目する

宇宙戦艦は果てしなき宇宙空間を進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その、ヤマトが今しがた去った惑星・地球では……

 

極東管区時間、2010時。

同管区の地下都市にある、地球連邦 防衛軍司令本部。

庁舎内の廊下を数人の士官グループが歩いていた。

その中央にいるのは、藤本喜雄造船技官。周りにいる数人は彼の部下の造船技師たちだ。

彼らはしばらく歩き、やがてとある部屋のドアの前で停止する。

地球連邦防衛軍・統括副司令官 芹沢虎鉄大将の執務室だ。

このグループの代表格である藤本は、憂鬱げにドアを見つめると、意を決したように

息を呑みこんで扉にノックした。中から、重厚な将の声が響いてくる。

 

室内からの操作で、扉が開かれ技師のグループが室内へと続々と入っていく。

彼らを迎えたのは、執務机に身を置く芹沢だった。

 

「ご苦労。そこのソファにかけてくれ。」

 

恐縮しつつ、藤本らはソファへと座ることになる。芹沢が続けて切り出した。

 

「……さて、どうだった?()()()での会合の方は。」

 

「はっ!……各局からの情報共有がいっそう強力となり、今後の技術開発の進展と、

 技術の幅広い応用が期待できるかと。」

 

「そうか……。」

 

 

芹沢の執務室へやってきた藤本ら技官グループには共通点があった。

それは、防衛軍の技術開発本部所属であると同時に2201年6月に新設された地球連邦 科学局へ

出向していた面々という点だ。

 

この科学局は、地球連邦の各技術開発部局が集結して設立されたもので、

藤本らのように出向元の組織のポストと掛け持ちしているものもいる。

これは急遽設置された局であるゆえの措置のようで、いずれは是正されるものと見られている。

そもそもの設立目的として、ガミラスとの講和・国交条約の締結があった。

この条約の条文に記載されていたガミラスからの技術輸入という項目に対し、

地球側の技術者たちが効率よく技術を吸収できるよう、事業を推進・監督するのが

同部局の役割だ。防衛軍はガミラスの先進技術導入を推進する立場で、科学局へ

人員を供出するのは必然であった。

 

ただし、軍人だからとは言え科学局内での差別はない(心情面ではそう言いきれないかもしれないが)。

各部局の技術開発のエキスパートの集合体と言うことは、各方面で尖った手腕の持ち主が

集っていると言うことと同義で、上手く統制が取れねば烏合の衆と化し技術導入などままならない。

各部局の人間をまとめ上げるため余計な区別は排する必要があった。

 

 

 

さて、そんな彼らが何故防衛軍のNo.2に呼び出されたのか。

じつは、呼ばれた藤本たちにもよく分かっていなかった。

 

 

「……諸君らには、現用宇宙艦船の波動機関化を前提とした改設計に携わってもらったな。」

 

おもむろに芹沢が話だし、慌ててグループの最高位者の藤本が代表して返答する。

 

「は、はい。その通りです。しかし同改設計について我々が関与したのはあくまでも草案のみで

 より緻密な細部の検証などは別の技術陣が行っており、説明させていただくにはあまり……」

 

「いや、いい。こちらの方で改設計艦船の情報は把握している。

 君たちに意見を聞きたいのは別の件についてだ。」

 

恐るべき上司の口から出た言葉に目を丸くする藤本とその部下たち。

かつて芹沢が直接指示してきた現用艦船の波動機関搭載を見越した改設計の素案作りの

案件でないとすると、何なのか……彼らにはとんと想像がつかなかった。

 

 

「ここからの話は、防衛軍の戦略の根幹に関わる重要な話題になる。語るに当たって、

 口外しないと誓ってもらいたいが、どうか?」

 

そう続ける芹沢の眼には、有無を言わさぬ凄みが宿っている。

技官たちはざわつく。自分たちが直面しようとしている案件は想像を絶するスケールらしい。

その様子を見かねたのか、藤本は言った。

 

「……閣下、私が代表してお聞きします。船舶設計についての大抵のことならば

 私一人でも概要をお話しできますから。……詳しいことまで知る必要がおありなら、

 彼らにも同席してもらう必要はありますが。漏洩のリスクを抑えるならば、

 聞く人間は最少に抑えるべきです。」

 

「ふむ。貴官一人ででも問題ないというならよかろう。

 詳細を訊くのはまた別の機会にするつもりだったこともある。」

 

芹沢が藤本の提案を認め、技官たちは安堵の表情を浮かべて退室していった。

それを見届けると、藤本に目線を合わせた芹沢は語り始める。

最初の話題は、藤本たちが手掛けた現用艦船の波動機関搭載改設計が辿った顛末についてだ。

 

「……君らが素案を手掛けた改設計案が、防衛軍本部にて正式に認可された。

 私もそれに立ち合ったが、君たちの設計原案を色濃く残したものだったよ。」

 

「は、恐縮です。」

 

芹沢は、認証された改設計艦船が国防局が製作する第2次防衛計画の第一段階に盛り込まれ、

今後多数が調達されるであろうことを続けた。

 

「そして、ここからが問題なのだ。既存艦艇の改設計艦を配備するのが防衛計画の

 ()()()()と言ったが、当然第二、第三段階が存在している。

 防衛計画におけるドクトリンを策定する、大統領臨席の高位防衛会議が開催され、

 当然私も出席した。」

 

その言葉に藤本は震えあがった。地球連邦のトップまで話題に関わってきたのだ。

部下たちと同じく、自分も逃げだしたいという思いがよぎった彼だが、何とかこらえる。

芹沢は、そんな藤本の心中を知っているのかいないのか、ゆっくりと話している。

 

「……激論の結果、防衛軍・特に宇宙海軍の新たな戦略ドクトリンは次のように決まった。

 基本的な仮想敵はガトランティス及びガミラスから分離した非正規軍。

 後者が活動の中心とするマゼラン銀河が太陽系から離れていることから、

 主敵と見るのはガトランティス軍だ。

 

 今日でこそ鳴りを潜めている彼らだが、小マゼランでガミラス軍と

 一進一退の攻防を繰り広げ、ヤマトとも交戦経験がある。

 このことから、彼らも地球という勢力が存在することをすでに知っているはずだ。

 

 ガトランティス軍の特徴はその好戦性、残虐性、神出鬼没な機動性にある。

 小マゼラン方面に多く出没していたといえ、いつ銀河系へ進出するかもわからぬ。」

 

当然ながら、未来を知っている芹沢は現状明らかになっている情報のみを選別し、

つとめてそこからわかる事実と可能性を語っている。万一未来のことを語れば、

その言葉の信憑性は著しく低下するからだ。

 

「我々は将来的に彼らと衝突する可能性が高い。無論、他の星間国家と事を構える

 可能性も存在するが。だが、いずれの場合も地球より優勢な戦力を持っているだろう。

 ガトランティスとて、精神性からガミラスに蛮族呼ばわりされているが、

 我々より早く波動機関を備えた艦船を多数配備している事実に変わりはない。」

 

芹沢は頭の中で、ガトランティスは種としての生産性を持たないため、波動機関も恐らく

戦闘兵士としてガトランティス人を創造した種族の遺産か、征服・奴隷化した民族の

産物なのだろうと未来視で得た知見を再確認する。

 

「……よって、我が軍の防衛網は比較的太陽系付近に置かざるを得ないとしている。

 最悪の場合、太陽系内での戦闘もあるはずだ。仮にガミラスに援軍を求めるとしても、

 マゼラン銀河は遠いことは先ほども話した通りだ。あまりあてにはできないだろう。

 加えて、対ガミラス戦争の打撃もある。艦艇が払底していることはもちろん、

 動員できる人材も極めて限られている。

 

 ……だからこそ、当座の地球人類の自衛のためにこの防衛計画では、

 再建する宇宙艦隊をこのように定めた。」

 

そういうと、藤本に紙の資料を渡す。これを持つのは、件の防衛会議の出席者のみだ。

 

「……2202年以降に再建される連邦防衛艦隊の編成は、新設計艦船を中核に

 有人の機動艦隊を3ないし5個、無人の補助打撃艦隊を数十個、

 その他任務部隊(航路護衛、惑星守備、後方各種支援)を相当数……という形になる。

 これらを、順を追って説明しよう。」

 

「……よろしくお願いします。」

 

藤本は絞り出す声で言った。重大な内容に、すでに一杯一杯になっていたのである。

 

 




 
次回へ続く。
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