宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

34 / 90
セリフ劇になりつつあるような気がしますが、どうでしょうか?

感想欄でどしどしご意見くださると励みになります!


第三十三話 復活への道

【第33話】

 

 

 

 芹沢の執務室に呼び出された、造船技官・藤本喜雄。

彼が語られている話は、防衛軍の宇宙艦隊の今後の戦略ドクトリンに関わる物だった。

藤本が手渡された資料には、将来的に建設される新連邦防衛艦隊の構想が描かれている。

 

 

「……まぁ、さすがにいますぐこのような大艦隊が建造できるわけがない。

 しばらくは改設計型艦船で防衛艦隊の再建を形だけでも成し遂げる必要がある。」

 

そう言った芹沢は、乾いた舌を潤すためかコップの再生水を口に含んだ。

藤本には、芹沢から語られた新設艦隊の編制案と書類に記載される整備調達予定の艦隊表が

いまだに信じられない。こんな大それたものが地球に造れると本気で思っているのか。

そもそも、改設計型艦船だって建造できる造船所を再建せねばいけないというのに、

既存艦の改設計型以降の新設計艦について考える余裕が地球にあるわけがない。

講和条約を結んだガミラスからの支援を当てにしているのだろうか?

相当量の資源を賠償として譲渡させるとは聞いたが、すぐに工場も軍艦も造れはしない。

 

とはいえ、芹沢防衛軍副司令官ともあろう男が、大統領をも交えた防衛会議が、

こんなに現実離れした艦隊の調達案を何の考えなしに決定したとも考え難い。

藤本は書類から芹沢へ視線を向けた。

 

「……うむ。考えていることはわかる。地球に、こんな艦隊が整備できる力はない、

 たとえガミラスの支援があろうと。そう考えているだろう?」

 

「……はい。」

 

芹沢はその視線に気づき、藤本の心中をズバリ言い当てた。

そして、再び語り始める。

 

「……確かに、地上の造船所は壊滅し、地下のドックも修船機能のみで

 艦の新造ができるものは極めて少ない。それ以前に、基盤となる資源生産や

 各種工業力が大きく落ちている。だが、それを完全に補える算段が既についているのだ。」

 

「え……?」

 

「資料の中盤を読んでみたまえ。」

 

芹沢の返答に戸惑う藤本が、続く上官の促しによって紙の束をパラパラとめくる。

すると新たな条文や、グラフなどデータ表、画像が現れる。

その内容は藤本が知り得ず、また信じがたいものだった。

 

「……反重力特異点……時間断層……

 ……何です……これは……何なんですか!?」

 

とうとう脳内へ注がれる情報が飽和し、悲鳴を上げる造船技官。

落ち着きたまえ、という低い響きとともに芹沢は棚から取ったコップに、

壁に備えられた再生水を供するサーバーから水を注ぎ、藤本へ出してやる。

藤本が会釈とともに口をつけると、説明を始めた。

 

「……軍機であるし、科学的な詳細については私も門外漢であるから話せんが、

 要約すれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()といったところだ。」

 

「……時間が10倍の速度で流れ……ガミラスの支援によりこの場所に無人工場を……

 これは……本当のことなんでしょうか……!?」

 

「防衛軍も政府も、資料文書に夢幻や願望を載せようとするまでおかしくはなっていない。

 信じがたいことはわかるが、これは事実だ。この時間断層に建造される工廠によって、

 ……艦隊の整備計画について、時間と、生産する工場の問題は解決できると考える。」

 

髭の防衛軍No.2は再び執務机の席に腰を下ろし、話題を継続する。

 

「この時間断層に置かれる工場の他にも、地表にも工場は新設される。

 ガミラスが賠償物資として、ユニット分解させた各種工場を地球に回してくれる。

 当然、技術習得のための指導工員を伴ってな。

 

 報告では現在、各管区にある地下都市地表出口の近くに建設された復員拠点も、

 大半は完成しているらしい。地表の開発は更なる住宅やインフラを建設する

 工場の設置に推移しているようだ。これらも数年いや数か月のうちには軍需物資の

 生産ラインに加えることができるはずだ。

 

 ガミラスの賠償船団が到着すれば、時間断層工場も地表の工場群も稼働し始めるだろう。

 少なくとも既存艦艇改設計タイプの艦隊であれば、そこから1年といらず揃えられる、と

 政府と軍はにらんでいる。」

 

「……生産設備面については見通しがついておられる、と。

 では、艦隊を再建・新造するための資源についてはどうなのでしょうか?」

 

藤本は反駁した。芹沢へ向ける彼の目には、困惑と疑念が漲っている。

すでに普段の気弱さは失せて、艦船設計の時のテンションになっているようだった。

 

「そこについても問題はない。地球の環境が再生された際に、地球に埋蔵されていた

 鉱物資源も戻ってきている。人類がそれまでに消費したものも含めてな。

 これを、ガミラスから供与されるものも含めた採掘・精錬設備群で掘り出す。

 当然ながら、太陽系内の各天体の鉱山も再稼働させる予定になっている。

 

 これら太陽系産の資源に加え、ガミラスからも無償か格安で資源を輸入する。

 船体材などの簡易加工品も輸入品目に入るだろう。

 また、本邦の当座の輸送船団主力はガミラスからの供与艦船となるだろうから、

 ガミラスには地球の復興までのお膳立てを一挙に引き受けてもらうことになる。」

 

「……聞いている限り、徹頭徹尾ガミラス頼りになっているように思えます。

 そこまで、ガミラスが動いてくれるのですか。信頼できるのでしょうか……?」

 

当たり前だが、藤本もまた地獄のガミラス戦役を生き抜いた男の一人だ。

かつての敵だったガミラスに対する怒りと不信は根深い。

そんな彼をなだめるように落ち着いた口調で芹沢は話す。

 

「……これまではどうあれ、地球と結んだ条約でこれらのことを彼らは確約した。

 天の川銀河への進出にあたって、橋頭保……いや、友邦というべきだろうな。

 地球に銀河オリオン腕部の軍事的安定を任せておきたいのだろう。

 ひとまず利害一致の関係にあるのだから、利用しない手はないと政府も判断した。」

 

この言葉に、藤本も押し黙った。

 

 

 

「……さて、前置きが長くなってしまったな。」

 

「自分が、余計な疑問を差し挟んでしまいました。申し訳ありません。」

 

「いや、予め明確にしておくべきことだったのだ。

 戦力整備というのは、後方あってのことだからな。」

 

藤本の謝罪をいなすと、芹沢は再び政府と防衛軍が策定した、

「第2次防衛計画」の第2段階に当たる大規模艦隊調達計画について語り始める。

 

「……先も伝えたとおり、既存艦船の改設計艦による防衛艦隊再建は始まりに過ぎない。

 同艦隊は当座の防衛体制確保……すなわち次世代艦就役までのつなぎであると同時に、

 防衛軍将兵の波動機関搭載艦艇への習熟・運用ノウハウの獲得を目的とする。

 現状、「ヤマト」しか波動機関艦艇がないので、初期の波動機関艦艇運用には

 同艦のクルーやガミラスからの軍事・技術顧問を招聘し指導してもらうほかないだろう。」

 

芹沢はここで一度口を休め、水を飲む。次からが本題、新世代艦の建造計画だ。

 

「そして、波動機関艦に将兵がある程度習熟したら、だ。

 防衛軍の、新生防衛艦隊の本命となる新型艦群に移し、太陽系防衛の要とする。

 新世代艦艇が一定数配備されたのちには、改設計艦艇は補助戦力へと移行し、

 銀河間航路での船団護衛や各惑星警備、新兵装試験などの任務にもあたってもらう。」

 

「……新造艦による防衛艦隊は、資料にある通りの編成が基本構成となるだろう。

 まず、有人艦艇を多数配備した主力機動艦隊を3個乃至5個。

 同艦隊を構成するのは「ヤマト」やガミラスの超弩級戦艦を参考に新設計する戦艦と、

 金剛級・村雨級などの既存艦艇を発展させた新設計の巡洋艦・駆逐艦となる。

 これに、戦艦級と同一の船体を有する防空空母も加えることになるだろう。」

 

流暢に語る芹沢の脳裏には、勇壮に宇宙を駆ける新時代の艦艇群がありありと浮かぶ。

そんな上官に、まるで捕らぬ狸の皮算用だ、という思いを抱きつつ藤本が訊いた。

 

「……有人艦艇、と仰いましたが。……無人の艦隊も整備されるということですか。」

 

「その通りだ。正確には、完全な無人ではなく有人の統率艦も組み入れるが、

 編成を構想する艦の大半は無人艦艇でAIが有人艦の指揮を受けつつ操船する。」 

 

藤本はいよいよ天を仰いだ。AIが艦艇を操るとは。

遠い過去にその試みがあったと聞いたが、結果は歴史が証明している。

 

「……無論ながら、技術的な見通しは立っている。

 すでにガミラスはAIロボットが運用する艦船を実戦へ投入しノウハウを得ていた。

 また、椎名博士のチームが推進するAI航空機開発計画の過程で戦闘AI開発は進んでいる。

 2年以内のうちに、AI艦隊は実現できるところまで来ているのだよ。」

 

芹沢の熱弁に、藤本は気圧される。

そこで、防衛軍統括副司令官はスゥと鼻で空気を吸い込んだ。

話は核心へと突入する。

 

「……そこでだ、藤本技術中将。

 君に、これら無人艦艇群の設計を担当してもらいたいと思う。」

 

「……私にですか!?」

 

上官の言葉に、一瞬息が止まった藤本。今日上がった話題の中で、一番驚いた。

今日は意見を聞くだけだ、というのに話が違うではないか。

呆然とする藤本に、芹沢は椅子に身を沈めたまま語り掛ける。

 

「……本来なら、先ほど退室した彼らも合わせたチームで、といいたかったが仕方ない。

 正式な通知は後々行おうと思うが、あらかじめ知っておいてほしかったのでね。

 いや、だまし討ちのような形になってしまったな。すまん」

 

何でもないように言う芹沢。藤本は衝撃のあまり放心しかけている。

無人艦の設計などやったことがない。有人艦艇の流用でもいいのだろうか?

一体どうすれば……思考が追い付かず、停止している状態だ。

 

「……まぁ、意見を聞きたいというのは口実ではなく事実だ。いいかね。」

 

「あ……は、はい。」

 

思考停止から引き戻された藤本。座する芹沢はまじまじと彼を見据える。

 

「……一口に無人艦といったが、実は君に設計を依頼する船は主用途を輸送船としている。

 まぁ、軍人としては無人戦闘艦としての用途を第一義としたかったが、

 現状の地球の様相を見る以上は仕方ない。」

 

「ゆ、輸送船、ですか。」

 

大分、藤本の硬直は和らぐ。

輸送船を設計し、それを無人艦とするのか……と、一種の安堵が彼の心中に浮かんだ。

 

「……基本は高速輸送船とし、その艦体を流用して無人戦闘艦にできるような艦を

 造ってほしいというのが、軍としての要請だ。」

 

「……は、無人戦闘艦と申されても、どのような艦が想定されているのでしょうか?」

 

芹沢に対し問う藤本。用兵側の要求が分からねば、設計はできない。

 

「うむ。何案かあってな、一方は軽空母だ。搭載機は小型の無人航空機を想定している。

 無人である種の使()()()()をも考慮しているから発艦、いや、射出装備を搭載できれば

 構わないそうだ。これに似た用途としてVLSを多数搭載したアーセナル・シップとする

 意見も出ている。この2案については比較的小さな改装で対応できるのではないかね?」

 

「……そうですね。……他の案についてはどうでしょう?」

 

「……私個人としては、この案を本命としたく思うのだが。

 同案では、船体にそれなりの防御火器と波動防壁を積み、この地球最強の兵器を搭載する。」

 

 

瞬間、藤本の血相が変わった。思わず冷や汗が浮き出る。

 

「ま……まさか……」

 

「波動砲艦、というべきか。自走式の波動砲が近いのだろうな。そのような船だ。」

 

「……しかし、波動砲はイスカンダルとの条約で禁止されたのでは……」

 

「外務局から聞かされた話によると、あの条約にはいくつも不備があるとのことだ。

 ガミラス側も、地球の波動砲再装備に賛同を示しているらしい。

 イスカンダルは、地球を救った恩人というべき存在だが、今後の地球の防備に

 役立ってくれるのかと言われたら、否だろう。

 ……外交面に関しては、外務局がうまくやってくれるそうだ。」

 

「……は、はぁ……」

 

芹沢の言葉に、戸惑いを隠せないながらも飲み込もうと努力するベテラン技官。

その様を見て、踏ん切りをつけてもらおうと芹沢は言う。

 

「……今後の地球人類には、間違いなく波動砲の力が必要になるはずだ。

 積極的に敵を攻め滅ぼすために使うのではない。自衛のための力なのだ。

 地球人類は弱体であり、復興と発展の最中だ。己の身を守るためには、実力が要る。

 地球を救った「ヤマト」とて、その力でもってイスカンダルへの道を進んだろう。」

 

「……「ヤマト」も……」

 

藤本の琴線に触れたのは、自身と師匠・平賀穣太郎が共同で最後に手掛けた艦艇(さくひん)であり

地球を救った戦艦の名。確かに、見送ったあの艦の艦首には波動砲が勇ましく

砲口を輝かせていた。それが、ヤマトの航海を助け、地球人類の希望をつないだ……

 

 

 

造船技師・藤本喜雄の心は決まった。

 

「……わかりました。波動砲の搭載、それに有人輸送船としての使用も前提として、

 多目的無人艦の設計にあたらせていただきます。」

 

「……うむ!設計に関する各種情報・資料の詳細はいずれ届ける。

 その際に今回話した件について、君が選抜したチームに話しておいてくれ。

 ……貴官らの働きに期待する。」

 

 

そうして芹沢は、決意に満ちた表情で去り行く藤本を見送った。

 

少なくとも、波動砲搭載艦隊整備への道筋はつきつつある。

少なくとも、自分が視た未来よりは早く……

 

彼は、再びウォーターサーバーから注いだ水をぐいと飲み干した。

 

 

「さぁ、ここからが正念場だ。」

 




悲報:今作世界線、Ⅾ級バカ量産しない模様

・今回出された無人艦案は、輸送船「きさらぎ」の拡大版(250m級)を母体に、
 (メダルーサ級の火焔直撃砲を参考にした)単体型の波動砲ユニットや、
 A級空母タイプが搭載していた射出型艦載機格納ユニット、ミサイルコンテナを
 搭載する多目的の艦船用素体フレームとなる構想。イメージは米海軍のリバティ船。

なお、今作の主力戦艦Ⅾ級は300m級まで大型化します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。