宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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今回は長めかな……?


第三十四話 蠢動の響き

【第34話】

 

 

 西暦2201年 7月21日。

地球を出撃したヤマトは太陽系の半ば、惑星軌道の果てに達しようとしていた。

これまで、地球側が把握しきれていなかった外縁天体・第十一番惑星こと炉王星(バルカン)

太陽系へ侵攻したガミラス軍は、この星を「ファウスト」と命名し艦隊拠点を置こうと

考えていたが、開拓のため移送してきた人工太陽に不具合が生じ補助拠点に留めざるを

得なかったという経緯をもつ。地球=ガミラス講和条約締結の折、明確に地球連邦の

主権が及ぶとされ形式上ガミラスの基地施設は撤去されていた……が。

 

 

 

「……右舷前方 距離10万、炉王星を認む。」

 

宇宙戦艦「ヤマト」第一艦橋、コスモレーダー受信席に座るレーダー手が報告する。

現在のシフトでは、席に着くのは西条未来。彼女の声はどこか硬かった。

 

「うむ。」

 

報告を受け、ヤマト2代目艦長の山南修は第一艦橋の天井モニターに映された

同惑星の望遠画像を見上げた。

 

(……ギリシャ神話の鍛冶神バルカンは奇形だと聞いたが……

 ……なるほど、似合いのネーミングという訳だ。)

 

映し出されたのは、暗緑色の大地に氷床か凍結した海洋であろう白い部分が差す星の姿。

しかも、惑星の赤道と思しき中央部には巨大な裂け目が走っている。

お世辞にも美しいとは言い難い天体である。山南がそんな感慨を抱くのも無理はなかった。

 

(……しかし。)

 

山南艦長は、視線と思考を翻す。

現在のヤマトの艦内、特にヤマト艦橋クルーの間で燻っている、

緊張・または塞ぎ込んだ雰囲気についてだった。

先ほどの、西条が報告する声が硬いものであったのもそれに起因している。

 

山南が転じた視線は天井モニタから正面の戦術長席を向いていた。

現在、北野哲也がシフトについているその席を主な任務の配置場とする「ヤマト」戦術長、

古代進がこの問題の中心にいたのである。

 

発端はおよそ2日前、地球を離脱したヤマト艦内で行われた、ガミラス治安回復支援の

詳細を確認する会議の場における、ガミラス国内における現状説明であった。

その場で主な説明要員となったのは、使節団副団長である外務局次官の

クロード・ヴェルニー。抑圧されていたガミラスの民衆を人種関係なく共同体として

民主的にまとめ上げる事業を援助しようという任務には誰からも異論は出なかった。

だが、現状のガミラスでの「デスラー総統の名誉回復」に加担することになるのは

少なくない乗員が眉を顰めることになる。その中心にいたのが戦術長 古代進大尉だった。

 

無理からぬことである。デスラー独裁政権と対峙し、打倒したのは実質的に「ヤマト」だ。

にも拘らず、非道な独裁者アベルト・デスラーを曲がりなりにも肯定的に捉え、

ガミラスの民衆に喧伝するのには抵抗がある。たとえ、彼らが歓迎するとしても。

 

古代大尉が(積極的に発言をしなかったにせよ)このことに対し不満を持つ要因には、

やはりヤマトのイスカンダル遠征帰路の、デスラー総統(())座上の巨大戦艦の襲撃がある。

この事件で、古代大尉は恋仲であった森船務長を一時仮死状態に追い込まれてしまっていた。

しかも、この事件中彼はデスラー総統と思しき人物と僅かながら対面している。

ヴェルニー外務次官の言では、ヤマト(及びガミラス反デスラー政権勢力)が対峙してきた

デスラー総統は親衛隊が本物を幽閉し、権力掌握の為に傀儡として立てていた偽物だったと

説明されたが、古代はそれを信用することができなかった。

 

周囲のクルーも古代や森を慮ったこともあるのか、どうにもこの部分においては

賛同の声が上がらない。それが元となって任務の本質であるガミラスの人民統合・民主化への

支援にも影を落としてしまっている。

防衛軍本部から直々に任を受け、艦を預かる山南少将としては艦のクルー、特に上級幹部が

ガミラスに対するわだかまりや任務に対する疑問を持っている現状は早急に改善せねばならず、

彼自身も「デスラー偽物論」に疑問を持つこともあり対処に頭を悩ませていた。

 

そんな艦内情勢を気にすることもないように、宇宙戦艦「ヤマト」は宇宙を快走する。

山南の意識が思索から艦長席へ戻るころには、炉王星を近くから望む場所へ遷移していた。

そこで、山南は炉王星の陰に隠れて見えなかったものを目にする。

 

 

「……ほぉ、あれが“人工太陽”というやつか……」

 

それは、ガミラスが旧第十一番惑星を前進根拠地として開拓するために遠くマゼランから

移送牽引してきた、巨大な光源・熱源用の人工天体であった。

薄く緑色をした天体の外殻から、山南は炉王星の大地の色に相応しく緑色の光を

放つのだろうか、と予測していたが現在のところ人工太陽は輝く様は見せず

表面の所々から幾重もの格子状の内殻構造があらわになっていた。

 

この人工天体は、移送したところまでは良かったものの、いざ稼働してみると

不具合を連発し、艦艇や機器を麻痺させてしまう現象を起こしてしまうことから

太陽系へ進駐したガミラス軍もこの星には木星浮遊大陸の物と同程度の補給基地しか

建造しえず、メ2号作戦後にはザルツ義勇旅団艦隊の壊滅もあって放棄されてしまった。

その後は、地球=ガミラスの間で講和条約が結ばれたことで太陽系全域に地球人類の

主権が及ぶことが確認されると同時に朽ちるままになっていた基地施設の解体が決定される。

だが。

 

 

「人工太陽を拡大投影できるか?」

 

「了解。メインモニタに出します。」

 

山南の命に応え、ヤマト天井モニタは人工太陽の詳細を描き出した。

そこにあったのは、遠目からでも見えた稼働停止中の人工太陽の姿だけではなかった。

人工太陽の表面には、数隻の平たい葉巻型の宇宙船が停泊し、何らかの作業を行っている。

 

「艦種識別完了。ガミラスの重工作船です。」

 

動かなくなって久しい人工太陽の輪郭に張り付き、ガミラス工作船団は修復作業を行う。

その理由は、ヤマトの今次の航海と深くつながっている。

 

地球とガミラスが講和条約を結ぶ折、地球への一層の復興援助を実施する代わりに

独裁と抑圧を破壊しガミラスを民主化へと舵を切らせた民衆の()()()である

宇宙戦艦「ヤマト」をマゼラン銀河へ派遣し、過激な分離運動を鎮静化させ、国家を

再び統合させることに協力するという密約が交わされた。

しかし、「ヤマト」は現状の地球防衛のための最後の戦力と言って差し支えなく、

同艦を外宇宙へ派遣することは地球を丸裸にすることに等しい。

派遣にあたって、地球連邦政府は「ヤマト」の代替となる太陽系の防衛戦力提供を条件付け

ガミラスはこれに同意した。

 

しかし、いまだにガミラスの艦艇を地球へ駐留させることには地球人の心理的抵抗が大きいと

両国の政府と軍部は考える。また、太陽系の内部寄りにある地球に戦力を置くことは

太陽系外から来寇する敵に対しての早期警戒の観点からあまり推奨はできない。

しかし、旧ガミラス地球攻撃艦隊が主基地として使用していた冥王星基地はもう跡形もない。

この点はかつて木星のガス圏に浮かんでいた浮遊大陸の実験及び補給基地も同様だった。

 

こうした条件から、唯一ガミラスの太陽系防衛派遣艦隊が基地としての使用に適するのは

放棄されていた炉王星(ガミラス側名称ファウスト)の補給基地であった。

当然、放棄され荒廃していた基地を使用する以上使用に耐えうるよう再整備せねばならず、

それには光熱源たる人工太陽の修理・改修も含まれていた。

したがって、「ヤマト」クルーも人工太陽をガミラス工作艦が修理していることには

何の疑問も持たなかったのである。

そもそもガミラス派遣艦隊の到着を待って、ヤマトは発進したのだ。

 

 

 

「艦長、炉王星より通信が入っています。」

 

「む、そうか。映像に出してくれ。」

 

そんな中のことである。

ヤマト通信長相原は目前にある緑色の寒冷惑星からの通信を受信したことを報告し、

山南も即座にこれに対応することを決め、あるスイッチを入れた。

 

 

そして数分とかからずヤマトのモニタには比較的若い女性ガミラス軍人の姿が現れた。

 

「……こちらは、共和政ガミラス 太陽系(ゾル星系)防衛派遣艦隊。

 小官は、部隊指揮官のネレディア・リッケ大佐。」

 

女性士官はそう自己紹介する。

彼女は、ヤマトとガミラス艦隊が共闘してガトランティス軍に立ち向かった際の

第8警務艦隊の指揮官であり、シャンブロウ沖海戦の生還者である。

彼女自身は艦隊の指揮権をフォムト・バーガー少佐(当時)に移譲し、

空母「ランベア」にいたため戦闘へは参加しなかったが、海戦終盤に

ガトランティス艦隊の旗艦戦艦に狙われたところを「ヤマト」に救われ、

ヤマトと地球人に対して好感を持っていた。

 

「初めまして、リッケ大佐。こちらは地球連邦防衛軍、宇宙戦艦「ヤマト」。

 小官は艦長の山南修少将です。」

 

山南も艦の責任者としてリッケに自己紹介を返す。

 

「貴艦がこの惑星(第十一番惑星)の近傍を航過されると聞き、

 挨拶をさせていただきたいと思い、通信を送りました。

 応答いただけて感謝します。」

 

画面向こうのネレディア・リッケは、軍人に相応しい実直さと彼女生来の優雅な

振舞いでヤマトへ告げた。この通信には、軍人的な儀礼以外にも、

彼女自身が「ヤマト」に救われたことに感謝しているのも関係しているのだろう。

 

「……失礼ですが、貴艦のコダイ戦術長は艦橋にいらっしゃいますか?

 シャンブロウ海戦の際に、小官とバーガー大佐がお世話になったのですが」

 

「あぁ……古代大尉は現在シフト外です。申し訳ありません。」

 

「いえ、こちらこそ私事でした、面目ない。」

 

 

シャンブロウ沖海戦に由来する親地球の姿勢から、太陽系防衛派遣艦隊の

司令官に選ばれた彼女は、氷に閉ざされた惑星の旧ガミラス基地跡にほど近い

凍結した海洋に着陸する旗艦、ゲルバデス級航宙戦闘母艦「ミランガルⅡ世」の

艦橋から通信を行っていた。戦闘空母の周囲にもメルトリア級巡洋戦艦や、

デストリア級重巡、ケルカピア級軽巡の戦隊が分厚い海氷の上に降着している。

また、復旧工事が進行する旧ガミラス基地の溝状の宇宙船発着場には、

人工太陽の修復を行っている艦と同型の工作艦・重機材輸送艦や、

丸いタンクを縦列に3つ接続した船体の前後に艦橋とエンジンノズルを

それぞれ設置したタンカー船、タンカー船に似た構造ながら、より軍艦に

近い流線的デザインでタンクもタンカー船のものより一回り小型のものを、

5個縦列に並べたのが断面すると三角形になるよう立体に3列の計15個の

球形コンテナを持つガミラス艦隊型補給艦が停泊する。

艦隊の兵站を担うこの船団は、ガミラス艦隊には不可欠なサービス部隊だった。

一方で、クリピテラ級は少なく僅かに8隻のみ。航続距離が短いことと、

主兵装である魚雷やミサイルの補給が望めないために極力編成から外されていた。

 

戦闘空母2隻、巡洋戦艦4隻、重巡洋艦16隻、軽巡洋艦20隻、駆逐艦8隻、

補給艦12隻、工作艦20隻、輸送艦32隻からなるガミラスの派遣艦隊が、

「ヤマト」なき太陽系、「ヤマト」なき地球を守る戦力であった。

 

 

 

 

「ヤマト」の艦体が炉王星の軌道へ差し掛かり、緑色の凍えた惑星を真横に

望むころになり、リッケ大佐との通信は終盤へと移行する。

彼女は、これだけは言わせてほしいと言わんばかりに表情を引き締め、

主に彼女に返答する「ヤマト」艦長の山南を見据えた。

 

「……我々ガミラスが、あなたがたにこのようなことを依頼する権利は、

 本来無いのかもしれません。しかし、お互いの未来の為に。

 ガミラスのことを、よろしくお願いします。」

 

ネレディア・リッケの軍人として、ガミラス人の一人としての真摯な言葉に、

山南も相応の礼を尽くして応える。

 

「……ご安心を。本艦はそのために出発しました。

 友邦との友誼を、地球がないがしろにすることがないことの証明として。

 宇宙戦艦「ヤマト」は、ガミラスの民主化と国民統合の支援任務を全うします。

 

 そのために、こちらからも貴艦隊にお願いする。

 ………地球のことを、どうか、頼みます。」

 

 

山南の言葉に、安堵の表情を浮かべるリッケ。

彼女は、右手を挙げるガミラス式敬礼を行い、通信の締めくくりの言葉を述べた。

 

「……地球は、我々ガミラス国防軍が必ず護ります。

 貴艦の航海の安全を祈ります!」

 

山南も、彼女に対し地球式敬礼を送る。

天井モニターはそれきり、元の状態へと戻ったのだった。

 

 

 

……実は、この山南とリッケの一連の通信はヤマト全艦に放送として流れていた。

山南は通信前に、艦内放送のマイクをオープンにしていたのである。

 

そのため、ヤマト第一艦橋にいなかったこの男も、当然ながらやり取りを聞いた。

ヤマト戦術長、古代進大尉である。彼はヤマト舷側の展望室にいた。

座席に座り、過行く第十一番惑星・炉王星を眺める古代大尉の目からはもう、

これまで溜められていた迷いと鬱屈の曇りは取り払われている。

 

古代は、トラック環礁でバーガーと語らったことを思い出していた。

地球とガミラスの未来の為に、互いに力を尽くすという誓い。

過去の真実がどうであれ、今は歩を前へと進めなければならない。

こんなところで立ち止まっている暇はないーーーーそう言わんばかりに、

古代の瞳には強い意志の光が宿っている。彼が立ち上がったその時。

 

「古代君。」

 

「雪……!」

 

古代のことを気遣って、他のクルーは展望室にいなかったのだが、

そこに森船務長が入室してきたのである。

 

彼女は優しげに微笑んでおり、吹っ切れた古代に対し安堵しているようだった。

デスラー総統(?)の襲撃により、仮死状態に追い込まれた当人である彼女だが、

自身はそのことに頓着していなかった。

また、デスラー総統と長く接触していたのも彼女であったが、

森船務長自身も偽ユリーシャとしてガミラスで振る舞っていたため、この問題に関して

あまり口出しできたものでもないだろうと考えている。万が一コトが露見して

自身がユリーシャの偽物としてデスラー総統(?)に協力していたなどと

見られてしまってはたまらない。よって自身はこの問題に対しては黙っていようと

決意していたのだ。……その中で、自分のことを引きずる古代を案じていた。

 

「……私のことで、悩ませちゃったみたいね。」

 

「……すまない。」

 

「ううん、いいの。……行きましょう、古代君。」

 

「……ああ。」

 

 

二人は軽くなった足取りで展望室を後にする。

以降、ヤマトの中に醸造された不穏な雰囲気は薄らいでゆくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーヤマトが向ける舳先の果て。

 

大マゼランでも随一の発展を遂げた、惑星ガミラス。

共和政治へ構造を変えた巨大国家共同体の首府である同惑星の一角。

惑星の中核都市であるバレラスの郊外の、とある海辺。

ガミラス星の中では比較的上位の面積を誇る内殻海洋に面した湾は、星の巡りによって

宵闇に包まれていた。しかし湾岸からは、湾の沖に浮かぶ重刑務所島が灯りを目一杯つけて

波の静かな海面を照らしつけている様がはっきりと確認できた。

 

しかし、これはあの島の普段の営みではない。

あの島に築かれていた重刑務所は、建設以来初ともいえるレベルの危難に晒されていた。

 

 

 

「何がどうなっている!?状況を説明しろ!」

 

一際体格のいい、ガミラス治安警察の制服(刑務所職員仕様)姿の男は、

刑務所内の管制室へ入るなり声を張り上げた。彼はこの刑務所の所長である。

およそ5分前、刑務所全体に非常警報が響き渡り、食事中だった所長は急遽管制室へ

足を運んだのだ。既に、刑務所内のガミラス人看守全員が室内へ集まっており、

管制室の周辺には囚人の監視用に残した数体を除いた刑務所配備のガミロイドの大半が

集合している。所長から事態の仔細を訊かれた管制室詰めの看守は報告する。

 

「は、何者かの攻撃を受け、地表部施設の舟艇発着場が炎上しております!」

 

「攻撃だと!?」

 

いかにも信じがたい、といった表情で所長以下職員たちは反応する。

しかし、管制員が同時に出したカメラの映像では確かに発着場が攻撃されたような

破孔を穿たれて炎上している。

 

「まさかこの刑務所が攻撃を受けるとは……」

 

所長はしばし放心したように呟く。

攻撃を仕掛けてきたと思しき"敵"の意図が全く読めなかった。

反政府主義者、独立運動過激派、そして親衛隊の残党……思い当たる組織はあるが、

それらがこの刑務所に攻撃をかけてくるような理由はない。

彼らが解放を目論むような仲間はこの刑務所には留置されていないのだ。

それを把握せずに襲撃を……?……所長が答えのない長考へ陥りかけたのを、

ある幹部職員が引き戻す。その職員は管制員に訊いた。

 

「……それで、近隣の基地に連絡は?」

 

「行いました。航空隊と、陸戦部隊が30分ほどで到着するとのことです。」

 

報告を聞いて、現実に襲撃が起こっていることを認識した所長は所員らに命じる。

 

「……だが、敵は既に島に上陸しているかもしれん。

 機械兵士を前衛として、拘留区画に繋がる地下へのルートを固めろ。

 増援が来る30分後までなんとか保たせるのだ、急げ!」

 

「「「了解(ザー・ベルク)!」」」

 

所員たちは弾かれたように駆け出す。

襲撃に備え用意されていた防衛用重火器を取り、エレベーターを停止し隔壁を閉じていく。

本土配置の警察部隊であるだけに、人員引き抜きにあってもある程度の練度は有していた。

 

 

 

そして、30分後。

刑務所島の周辺基地を緊急発進(スクランブル)したゼードラーⅡ戦闘機が、

島の周辺に無人になって浮いていた、刑務所舟艇発着場に攻撃(対戦車ミサイルと推定)した

舟艇を捕捉し、機銃射撃で撃沈した。

 

それに内火艇で続いた上陸部隊も島へ降り立ち、上陸したかもしれない襲撃者を

捜索したが、刑務所内外のどこからも発見されなかった。

無論、刑務所内で来襲に備えていた看守たちも敵の姿を見ずじまいだ。

この奇妙な結末に、現場の人間が疑問符を脳内一杯に浮かべる。

 

 

 

しかし、その疑問は地下の囚人拘留エリアに残され監視・警戒に当たっていた

あるガミロイドの緊急報告により吹き飛ばされる。

 

そのガミロイドが任務に当たっていたのは地下拘留区画の第3層。

だがプログラムにより一体が念のための確認として、ある抗命軍人の囚人が

たった一人で収監されている下層区画へ巡回し、異変を発見したのだ。

 

看守や増援部隊の将兵が問題の第4層へ向かってみると、その様に絶句する。

第4層の一画には彼らが見たこともない直径7m近い大穴が開けられているのに加え、

収監されていたグレムト・ゲール元国防軍少将の独房は破壊されており

本人の姿はどこにも見当たらなかった。

 

 

 

後に、刑務所の地下拘留区画に空けられた大穴は、水中から発射された

特殊削岩機械(エルク・ドメル提督が爆装し対ヤマト作戦に使用したのが記憶に新しい)に

よるものであることが判明し、この新しい刑務所襲撃方法に対し各刑務所では

それぞれ対策が実施されることになる。

だが、それ以外の点で孤島の刑務所で発生した、襲撃者もその目的も謎の

襲撃・脱獄幇助事件は、脱獄囚のゲール元少将の危険度の低さからあまり重要視されず

事件が起きた刑務所の職員には、規則にのっとった行動を行ったとされ

お咎めはなかった。

 

 

 

 

 

しかし。

 

これが後に、マゼラン銀河を揺るがす

大事件の引き金になるとは誰も予想していなかった…………

 

 




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