宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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第四十五話 狼の後継者

 

【第45話】

 

 

「ガミラシウム弾頭魚雷、敵メルトリア級巡洋戦艦に命中。「ヤマト」依然健在。」

 

親衛隊クローンのオペレーターが発する不気味なほど落ち着いた報告を聞き、

親衛隊残党襲撃艦隊を指揮するグレムト・ゲールは忌々しげな表情で吐き捨てた。

 

「チッ!余計なことをしよってからに……!」

 

ゲールが指揮を任された親衛隊残党艦隊は、旗艦のガイデロール級戦艦「ゲルガメッシュ2世」の他、

デストリア級重巡洋艦12隻、ケルカピア級軽巡洋艦16隻、クリピテラ級駆逐艦24隻の合計53隻。

この他に先程、宇宙戦艦ヤマトとバーガーの旗艦「バーゲルスト」を攻撃したFS型宙雷艇20隻が

ヤマト撃沈作戦の切り札として配備された"ガミラシウム弾頭魚雷"と共にゲールの指揮下に置かれている。

 

"ガミラシウム弾頭魚雷"は、親衛隊と軍需省兵器開発局の一部によって開発が進められていた高威力兵器だ。

弾頭には大マゼラン辺境で発見された放射性物質ガミラシウムを精製したものを使用しており、

目標に命中するなど一定以上の強力な物理的衝撃で強力な融合反応を起こし敵に大損害を与える。

魚雷自体も対艦徹甲弾として堅牢に設計・製造されておりガミラシウムを利用して強化された

帯電磁加工(ミゴヴェザーコーティング)により迎撃機銃程度であれば命中まで持久できる上、

計算上では実体弾として波動防壁(ゲシュタム・フィールド)をも貫通可能な仕様になっている。

デスラー体制崩壊後に一部の試作品が離反艦隊によって持ち出され、今回のヤマト攻撃に使用されたのだ。

 

だが、ガミラシウム魚雷攻撃はヤマト自体の迎撃とヤマトの護衛についていた艦隊の旗艦らしき巡洋戦艦が

ヤマトの盾になったことで同魚雷によるヤマト攻撃は失敗したと言わざるを得ない。

だが、ゲールはむしろこの事を好機と捉えていた。

敵護衛艦隊旗艦、尤も有力な巡洋戦艦が艦隊を離脱しガミラシウム魚雷を受けて撃沈確実な損傷を受けたのだ。

すでに護衛艦隊の残存艦は浮き足立っている。

艦隊を二分しその一方だけでも動きを封じることは容易い。もう一方でヤマトを追撃し、撃沈すればよいのだ。

無論、ヤマトを攻撃する艦隊は自分が率いる。

自らの手で宇宙戦艦ヤマトを葬り去れる絶好の機会を得たことに、ゲールは内心で歓喜していた。

 

「ふふん、無駄なあがきだったな。

 さぁヤマト、いよいよ年貢の納め時だ!

 地獄の底から総統閣下にひれ伏し詫びるがいい!!」

 

ゲールは指揮仗を振り上げ、艦隊によるヤマト追撃を命じんとする。

今の宇宙戦艦ヤマトは波動砲は無論の事、主砲・副砲は封じられ射撃可能な武装は弾数に限りがある

ミサイル・魚雷と対艦戦闘では効果が望めない対空機銃(パルスレーザー)のみ。

艦載機を発進させることも難しいだろう。つまり、無防備に等しい。

しかもガミラシウム魚雷を受けて沈没寸前の巡洋戦艦が至近にあり身動きも満足にできない。

ヤマトはもはや狩りの獲物どころかまな板の上の鯉、執行を待つ処刑台の罪人も同然だった。

 

 

「艦隊前s__」

 

ゲールが命じかけたその時。

突如として外部からの通信回線が開かれた。

 

「な!?おいッ、誰が接続を許可した!?」

 

『兵を責めるべきではありませんよ、ゲール提督。

 彼らは親衛隊の上官であれば最優先で通信回線を開くように訓練(プログラミング)されていますからね。』

 

「あっ、貴方は……!!」

 

通信先から聞こえてきた声に、ゲールは一瞬震え上がった。

ゲールをこの勢力に引き入れた元凶であるデスラー親衛隊残党艦隊の現トップ、ゴロラー・ケス親衛隊中将。

秘密主義者ゆえ、通信で流れてきた声も加工が施されている。

しかし、何故今のタイミングで通信を入れてきたのだろうか。

 

『ゲール提督。伝えていた通り督戦していたので状況は把握していますが、その上で命じます。

 直ちにヤマト撃沈作戦を中止し、全艦隊を以て帰還してください。』

 

「……はぁ!?」

 

あまりに予想外な通達に、つい礼に失した反応をしてしまうゲール。

だがそんなことが気にならないほどに次の瞬間、彼の中で憤懣と困惑が煮えたぎった。

 

「そんなバカな!あと一歩、あと一歩で憎きガミラスの仇、宇宙戦艦ヤマトを撃沈することができるのです!

 何故です!?」

 

全艦隊を以て帰還せよと言われた以上、外様の自分が親衛隊を差し置いてヤマトを撃沈するのが

気にくわないと言うわけではない。どういうわけか、ケスはヤマトを見逃そうと言っているも同義だった。

ゲールにとって、とても認められる筈のない話だった。

 

『現時点では詳細を話すことはできませんが……情勢が変わったのですよ。』

 

ケスは何でもないように言ってのけるが、抗命どころかそれ以上の反論も許さない意を言外に示していた。

 

「……ッ」

 

ゲールが辺りを見回すと、クローン兵が銃のホルスターに手を掛けているのが目に見えた。

このまま続けていては、撃ち殺されるのがオチだ。何しろ、艦隊も将兵も、親衛隊からの借り物なのだから……。

 

「……了解(ザー・ベルク)。直ちに帰還いたします……」

 

実に悔しいが、さりとてゲールも生命は惜しい。

彼は艦隊に"攻撃中止、現宙域から撤退せよ"と命令。

これがワルゴニア沖海戦の事実上の閉幕宣言となり、襲撃艦隊はその後ワープで離脱した……。

 

 

 

 

 

対して、ガミラシウム弾頭魚雷という新兵器による攻撃を受けた巡洋戦艦「バーゲルスト」では。

ミサイルが着弾した艦首部はまるごと消滅し、第一主砲塔近くまでごっそりと艦体が削げ落ちていた。

さらに巨大なエネルギーによって以後の艦体各所にも亀裂や破孔が生じており、

その向こうでは火災炎が明滅している。誘爆と延焼が大破した艦体前部から発生し艦全体を侵しているのだ。

これが後部の機関まで到達したが最後、艦が文字通り微塵に爆発することは疑いない。

今、メルトリア級巡洋戦艦「バーゲルスト」は断末魔の最中にあった。

 

爆発による即時潰滅を免れた同艦艦橋からは、総員退艦命令が発された。

事前に艦の中央以後に退避を完了していた同艦の乗組員たちは生還のための戦いを繰り広げている。

衝撃で傷を負った者を無事なものが背負い、あるいは肩を貸しながら迫り来る延焼や爆発を避けるべく

区画を離れ、隔壁を閉じ、艦の下部にある航空格納庫にて健在な脱出艇に搭乗し、次々と離艦していく。

歴戦の勇士達は焦らずも早急に整然と動く。長らく生命を預けてきた艦で、相応の愛着もある。

日常の舞台でもあった乗艦を喪うという非常事態に心乱されながらも、兵士たちは挙動への表出を

極小へと抑える意識・無意識の努力を行っていた。

司令官が操艦要員を極力機械兵士(ガミロイド)と入れ替えたことが功を奏し、脱出は円滑に進む。

 

その司令官、バーガー大佐はリデム艦長ら艦橋にいた乗員と共に最後の内火艇に乗って、

燃え盛り今にも爆沈しそうな旗艦から脱出しようとしている。

この艦を駆り、名将ドメルの旗のもとで小マゼランや銀河間空間で戦ってきたバーガーと艦長リデム。

胸の中に去来したのは数々の戦いと日常の記憶。訓練の日々、小マゼランでの蛮族との攻防、

そしてカレル163におけるヤマトとの激突。それら全てに、この艦はバーガーたちと共に臨んだのだ。

二人は脱出艇へと乗り込む寸前、惜しむように振り返る。

 

「……ここまで世話になった。ありがとよ「バーゲルスト」……!」

 

「……さらばだ戦友!!」

 

内心では、"彼女"を一人きりで逝かせることに胸を裂かれるのにも似た痛みを覚えている。

だがそれは出撃前、"彼女"にも聴かせただろう誓いの言葉に反してしまう。

それを望む艦ではないという想いが、彼らを再び走らせる。

 

脱出艇のドアが閉ざされ、内部の人間は小型艇特有の浮遊感を感じた。

大型艦とは正反対の不安定感だが、心情的な要因はそれを何倍にも増幅させている。

二人は「バーゲルスト」最後の離艦者となり、司令及び艦長の最後の義務を果たしたのだった。

 

 

 

 

西暦2201年11月6日午後7時33分。

メルトリア級巡洋戦艦「バーゲルスト」は全乗員の脱出を見届けたのち、機関誘爆により光の中に消えた。

即時轟沈もあり得た大損害を受けたにも関わらず予想以上に粘ったその最期は、

あたかも主であるフォムト・バーガー大佐の諦めの悪さが艦にも移ったようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、「バーゲルスト」の全乗員は近傍にいた宇宙戦艦ヤマトや敵艦隊の謎の撤退によって

対峙から解放された護衛艦隊により救助される。損害軽微な艦艇はあれど、他の喪失艦は無かった。

バーガー大佐はデストリア級重巡に移乗して護衛艦隊を再編・周囲を厳重警戒しつつワープ予定地点に移動し

そのまま国防軍基地がある惑星までワープした。15隻に減った艦隊は直ちに基地へと入港し、

沈没艦の負傷者がヤマトや護衛艦隊各艦から降ろされ基地併設の軍病院に運び込まれていった。

 

 

 

そして、地球時間11月8日午前2時。

ヤマトと護衛艦隊が入港した基地のある惑星は夜明けを迎えていた。

宇宙戦艦ヤマトの会議場では、ヤマトに同乗していた外交団員と山南艦長を始めとした幹部クルーが

今後のヤマトの運航を如何にすべきか論を闘わせている。

 

「……既にご存じの通り、外交団本部には護衛艦隊本隊などから親衛隊残党による襲撃の情報が届けられ、

 こちらからも襲撃の詳細と、何よりヤマト健在の報告は送っております。」

 

ヤマトに乗艦していた黒人男性の外交団員が発言する。彼らは襲撃時に貴賓室にいたが、

振動などからヤマトが相当に危機的状況にあったことを察していたのか、かなりやつれ気味だった。

 

「……それで、向こうからはなんと?」

 

真田副長が訊く。彼は基地入港後直ぐに行われた艦体損害の精密検査の監督から戻ってきて間もない。

 

「はい。本部からは艦の無事が確認でき次第、可能な限り早急に出港し、

 待機中の新護衛艦隊と合流、ガミラスへ向かってほしいということです。」

 

「……あーー、主砲装填部の栓はまだ外すなと?」

 

外交団員の答えに、山南艦長が確認する。

その声色は普段とそう変わらないものだったが、目深に被った艦長帽の下から窺える表情は険しかった。

 

「は……はい。時間を要する上、共和政府との取り決めは履行したいと……」

 

「待ってくださいよ!!

 そのお陰でヤマトは危うく沈められかけたんですよ!!」

 

堪えきれずに口火を切ったのは砲雷長の南部中尉だった。

古代戦術長ともども敵宙雷艇及びミサイルの対処を管制した彼は、親衛隊残党の襲撃が想像以上に巧妙かつ

本気でヤマトを葬り去るという意志に裏打ちされたものだということを、

護衛艦隊を引き離した上で戦闘機動に影響し視認性も低いアステロイド帯に追い込み

機動力に優れた小型艇に襲わせるという戦術と、これまでに無い爆発の規模から推察される

ミサイルの破壊力から読み取っていた。

 

「まだガミラス星まで距離もあります。護衛艦隊を信用しないとは言いませんが、先の事態のように

 艦隊が引き剥がされるような状況になった際、自衛火器がミサイルと機銃だけではやはり厳しすぎる。」

 

真田副長が眉間の皺を深めながら語る。

ヤマト艦体の精密検査では微細な破片の衝突による凹みなどが発見されたものの航行に影響はないと

結論付けられており、外交団本部の指示通りにすればヤマトはそう時間を置かず出港することになる。

だが真田は先の戦闘を目の当たりにしてヤマト主砲封印の解除の必要性を訴えるのだった。

 

「……無論我々もヤマトに乗艦させていただく以上、艦の自衛の重要さは重々承知の上ですが、

 ガミラス側から打診がない限り、地球側の判断で武装の封印を解くべきでないという指示は無視できません。

 それはガミラス艦隊の護衛を、いえ、ガミラス政府を信用できないと言っているのと同義ですから……。」

 

憂悶の表情で外交団員が言う。

ヤマトの一挙一足がそのまま、今後のガミラスとの関係に影響しかねないのである。

あのタイミングでの親衛隊残党の奇襲はまさしく地球側・ガミラス共和政府側にとって"あり得ない"ことで

奇襲の第一報に際した関係者たちは一様に青天の霹靂として急報を受け取ったのだ。

だからこそ、ここまで安全とされた復路の計画が一挙に水泡に帰しヤマト乗員を含む方々が頭を悩ませている。

 

「先の戦いでは、ガミラス護衛艦隊が身を呈してヤマトを守ってくれました。

 その情報は艦内に既に広がり、乗員たちの士気は危惧されたほど落ちてはいません。しかし___」

 

山南艦長が言葉を切り、ヤマトの艦橋クルーらに視線を投じた。

先の海戦までヤマト直衛艦隊の指揮官を務めていたのはヤマトとの親好が深いバーガー大佐だった。

それだけに山南としても信頼ができていたわけだが、バーガー艦隊は損害のためこれ以上の同行はできない。

護衛を引き継ぐ艦隊の司令部とは連絡をとっているがバーガー艦隊ほど信頼がおけるのか___

その意がこもった視線だった。

 

「問題はないかと考えます」

 

「「「!?」」」

 

 

答えづらい雰囲気の中で発言したのは、古代戦術長だった。

彼の言葉に、艦の主要クルーはぎょっと目を丸くする。

訊いてきた山南も意外という表情をとった。

 

「……戦術長、その根拠は?」

 

「バーガー大佐から、そう聞かされました。」

 

臆すること無く返した古代。

彼の頭脳は、会議直前まで会っていた戦友(バーガー)との会話をありありと思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

護衛艦隊の臨時旗艦としていた重巡洋艦を降りたバーガーは、基地司令部の一室のソファに一人で座っていた。

ソファの前面の壁は一面が窓になっており、ドックに入渠している艦船を一望できた。

無論、彼が愛してきた乗艦を犠牲にして守り抜いた宇宙戦艦ヤマトも。

ヤマトを見つめるバーガーの表情は、背後のドアを開けて入室してきた古代からはついぞ見られなかった。

 

「失礼する」

 

「……おぉコダイ。来ると思ってたぜ」

 

「あぁ、探したんだぞ」

 

振り返ったバーガーは既に快活な笑顔を作り上げて出迎えたのである。

多少の疲労感を滲ませたものだったが。

 

惑星基地の司令部ラウンジを貸し切りにした二人は、部屋に備え付けられたドリンクサーバーから

ニバダというカバにも似た牛のような生物の乳の粉末ホットミルクをカップに淹れて、ソファに並んだ。

 

「……昨日の件、ヤマトの乗員として、本当に感謝する。」

 

「あ?何だよ水臭ェな。ありゃ護衛艦隊としての責務を果たしたまでのことだ。

 お前さんから言われるまでもねぇさ」

 

「……そうか。なら君の友人として言わせてもらおう。

 ……あんな無茶は、これきりにしてくれ。」

 

「……コダイ。」

 

表情を曇らせた古代に、バーガーは困惑する。

異邦の友人のナイーヴな姿を見るのは初めてでもないが、いざ心配されてみると面食らうものがある。

そこで古代は再び隣に座るバーガーに苦笑する顔を見せた。

 

「……とは言っても、必要とあらばそうするんだろうな、君は。

 シャンブロウでもそうだった。」

 

「……まぁな。守るべきものがあるなら、躊躇はしない。

 ドメル司令だってそうしただろうからな……」

 

ホットミルクに口をつけ、一息いれるとバーガーはずっと遠くを見て呟いた。

 

「……なぁ、コダイ。」

 

「……どうした?」

 

「さっきバレラスの司令部から呼ばれてな、何て言われたと思う?」

 

今度は古代が当惑する番だった。

バーガーは嘆息と苦笑混じりに語り始める。

 

「……今回の一件に箝口令が敷かれるだろうってことはお前さんもよく分かってるだろうが、

 司令部は俺に対しては口止め料のつもりか准将に昇進させるつもりらしい。

 ったく、とんとん拍子ってやつだな。たった数年で将官に、ネレディより上になっちまった。」

 

「バーガー、閣下か。いいんじゃないか?」

 

「そんなことされなくたって、黙ってるってんだ。

 俺よりも部下たちに__は、勲章と文字通り口止め料が出るそうだが」

 

「君は昇進に相応しいことをしたんだ。貰えるなら貰っておけよ」

 

「……だな。」

 

古代は純粋にバーガーの勇気と、あの場で出来た最良の采配(及び事前の備え)を称賛し尊敬していた。

そんな古代の言葉に口元を綻ばせると、バーガーはまた遠い目をして話した。

 

「……で、だ。箝口令をしつつ俺を昇進させ部下たちにも勲章をとらせるとなると一苦労する。

 まさか安全な筈の場所でヤマトが襲われたのを死守した、なんて言える訳ねぇからな。

 沈められた「バーゲルスト」についてもいつまでも秘密にはできねぇ。」

 

「……確かに。」

 

「……誰にも言うなよ?

 司令部はヤマト護衛任務を離れた後で俺たちの艦隊が親衛隊残党と遭遇して撃破した、

 なんて話をでっち上げて今回の帳尻をつける腹積もりらしい。」

 

「そうか……」

 

バーガーの話を聞く古代としては、どう反応していいか困りつつ相槌を返す。

そこで、彼が話すトーンが変わることに気づいた。

 

「……そんなこんなで俺を昇進させるんだそうだが、

 軍の広報部としては俺にこんな異名をつけて売り出したいと言ってきやがった。

 ……『狼の後継者』だとさ。」

 

「……それが、さっきの答えか。」

 

戦友が向けてきた鋭い視線を正面から見つめ返す古代。

するとバーガーは肩をすくめ、息を吐いて脱力した様子で口を開いた。

 

「……俺ぁ今回の顛末でよーく思い知ったよ。

 英雄なんてものはなるもんじゃない、()()()()()()だってことをな。」

 

「……」

 

古代はバーガーの台詞で、今は亡き沖田十三前艦長のことを想起する。

沖田もまた、『第二次火星沖海戦の英雄』と呼ばれた人物だった。

しかし実際のところ、同海戦はガミラス艦隊を撃退はしたものの地球艦隊も大損害を被り、

痛み分けに終わった。地球艦隊によるガミラス艦隊の初撃退だったことを差し引いても、

損害の印象を薄めるためのプロパガンダとして沖田が賞揚され、英雄として持ち上げられた感は強い___

 

そんな古代の思考を打ち切るように、

バーガーは冗談か本気かわからないような調子で古代に忠告した。

 

「気を付けろよ、コダイ。

 お前さんも気を付けねェといつの間にか英雄に祭り上げられちまうぜ。」

 

「……そうだな、覚えておく。……で、受けるのか、それは。」

 

「……正直気が乗らねぇことこの上ないが、受けることにするよ。」

 

バーガーは再び、真面目なトーンで古代に向き合った。

 

「今の俺だと、ドメル将軍の後継者を名乗るなんて烏滸がましすぎるが、道標として頂いておく。

 でっち上げじゃあねぇ、本物の実績で、いつか___」

 

__正真正銘の、ドメル将軍の後継者になって見せる。

古代はバーガーが続けんとして口に出さない誓いの言葉を聴いた。

 

 

 

 

「……ところでコダイ、お前のデバイス(それ)、なんかメッセージが入ってるぞ」

 

「!?」

 

バーガーが気付いたのは古代のタブレットデバイスにメール着信が入っていたことだった。

地球言語はまだ読めないが、その程度のことはわかる。

指摘を受けて古代は慌ててデバイスへと視線を移すのだった。

 

「……そろそろ戻らないとならないようだ。」

 

「全くせわしねぇな。だが、こればっかりはな。」

 

「ふっ、思ったよりも元気そうで安心したよ。」

 

憩いの時間が間もなく終わると分かり、二人はソファから立ち上がる。

バーガーは飲み干したカップを引き受けると古代に言った。

 

「……引き継ぎの護衛艦隊は、パレルド・アクション中将の艦隊だったと聞いたが本当か?」

 

「あぁ、確かにそう記憶しているが」

 

「……アクション提督は俺の士官学校時代の恩師だ。フラーゲ中将ともども、

 ディッツ派内でもやり手の軍人(ひと)だ、それなら安心して任せられるってもんよ。」

 

「君が言うなら確かだな、ありがとう」

 

部屋の出口に向かいながら思いがけず入手した情報に驚きつつも、微笑で戦友に返す古代。

一方、バーガーは威儀を正して、今回のヤマトの航海でもう会うことはないであろう友人を見送らんとする。

 

「コダイ、ヤマト護衛艦隊の指揮官として最後に。

 "貴艦の航海の無事を祈る"!!」

 

「……!!」

 

乱れなきガミラス式と地球式、それぞれの敬礼が互いに交わされる。

そして、手を下ろしてバーガーはにっと笑って言った。

 

「……で、お前の友人として言わせて貰う。……また会おうぜ!!」

 

「……あぁ!!」

 

 

 

こうしてバーガーへと別れを告げた古代は、

新たな護衛艦隊の指揮官が信用できる人物であるとヤマト艦内会議で断言。

これが決め手となったかは不明だが、この後ヤマトは武装封印を解くことなく、

地球時間11月8日午後10時に基地を出港。翌9日にアクション中将の新護衛艦隊と合流し

再びガミラス星への航海の途に就くのだった……

 

 





ガミラシウム弾頭魚雷は、ガミラス版ハイパー放射ミサイル(放射能散布効果なし)と思ってください。
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