宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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皆様、明けましておめでとうございます!
本年も拙作をよろしくお願い致します。



第四十七話 巨艦遥遠より還る

 

【第47話】

 

 

 西暦2201年11月15日。

宇宙戦艦ヤマトはアクション提督の護衛艦隊とともに無事にガミラス星へと到着する。

再びバンパレラ湖貨物港湾基地に入港した同艦は入念な艦体損傷検査・整備を行ったあと、

主砲・副砲の装填部にされた栓など武装の封印を解除した。

その後ガミラスの各界VIPが催した送別パーティーを経て、連絡・交渉窓口役として残留する

一部の団員を除いたロドニー・ムベキ団長ら外交団はバレラスを離れ11月17日にヤマトへ乗艦。

翌18日、入港時と同じく軍港の特別ステージに集まった何万人もの群衆に惜しまれつつ、

壮大な式典と共にガミラス星から送り出され最終寄港地である惑星イスカンダルへと向かった。

 

 

同日中にイスカンダル首都・イスク=サン=アリアの埠頭に入港した宇宙戦艦ヤマトを迎えたのは

皇女ユリーシャ・イスカンダルと侍従武官のメルダ・ディッツ。

彼女らが伴ってきたイスカンダロイドの案内によって、ムベキら外交使節団は

イスカンダルの女王スターシャへの謁見のため宮殿へと向かい、

入れ違いにユリーシャとメルダはヤマト艦内に足を踏み入れる。

この間、大半のヤマトクルーには久方振りの休息が許されたのだった。

 

 

「久しぶり、ユキ」

 

「えぇ、本当に久しぶりね。ユリーシャ」

 

ユリーシャは二代目ヤマト艦長山南らと挨拶を済ませた後、

食堂を貸し切って伴ってきたメルダ、森船務長や航空隊の山本三尉らと共に

2年前のような“女子会”を開く。

ヤマトが2199年時にイスカンダルを発って以来に顔を合わせる皇女ユリーシャは、

相対する森雪らにとって急激に大人びた印象を抱かせ戸惑わせたが、

テーブルに供されたマゼランパフェを見ると2年前と変わらぬあどけなさも見せる。

 

「……何!マコトとカトウ隊長が?……本当なのか、アキラ。」

 

「ホントホント。しかもね……」

 

2年前同様、マゼランパフェに目を輝かせたのは皇女侍従武官のメルダも同じだった。

彼女はテーブルの対岸に座る山本と、ヤマト航空隊長の加藤三郎と衛生科の原田真琴の

結婚に関する話題に花を咲かせていた。

 

一方、第一艦橋では皇女との面会を終え、外交団を送り出した山南艦長が紅茶で一息入れている。

OMCS製の紅茶を口にしながら、彼は面会の際のことを思い出していた。

 

皇女ユリーシャとの挨拶が終わった直後、ヤマト戦術長の古代大尉がある申し入れを行ったのだ。

兄の古代守をはじめとする駆逐艦「ユキカゼ」乗員の墓参りをさせてくれないか、と。

無論、ユリーシャは快諾し付き添っていたイスカンダロイドの一部を古代たちの案内役としたのだ。

 

(……古代大尉も、墓参りが外交団と被らないように気を遣ったのだろう)

 

地球側外交使節団もスターシャ女王との謁見の後に殉難地球軍人の墓地へ向かう予定だった。

私的な意味合いを含む古代たちの墓参は重要な公的行事に重ならないよう配慮されていた。

 

(……本来なら私も墓前で手を合わせたいが、艦を留守にするのは、な)

 

空いたティーカップを皿に乗せると、山南は目を瞑る。

冥王星海戦を共に戦い、異邦で散った戦友たちを心の中で悼むのだった。

 

 

 

 

 

 

その頃、イスク=サン=アリアの宮殿へと招かれたロドニー・ムベキ団長ら使節団は

遂に地球人類の大恩人たるこの星の女王、スターシャ・イスカンダルとの謁見に臨まんとしていた。

 

イスカンダロイドが玉座の間の扉を開く。

 

その向こうにはかつて地球へ送られてきたメッセージカプセルで見たことのある、

長い金髪の女性の姿が。

 

「ようこそおいでになられました。」

 

厳かに口を開く女王に対し、使節団は、ガミラス出発前に外交関係者から教えられた

マゼラン式の作法で女王の前に恭しく跪いた。

 

「ーーー貴国のご厚意によって、我々地球人類は滅亡を免れました。

 この御恩は到底筆舌に尽きるものではありませんが、地球人類を代表し、改めて御礼申し上げます。

 これから先も地球人類の続く限り、御恩を忘れることはありませんーーー」

 

地球から、遥か16万8000光年の彼方の星に使者として遣わされた黒人の老爺は

重厚な響きを持たせて異星の恩人へ感謝の念を伝えるのだった。

 

使節団は外交儀礼を十分にこなし、持参した紅茶茶葉を献上。

それから、地球政府から指示されていた伝達事項の開示へと移る。

 

 

「……それでは、我々が政府から猊下にお伝えするよう命じられた事項を申し上げます。」

 

スターシャから立って拝謁することを許された使節団はイスカンダロイドに預けていた荷物を

受け取ると、団員たちが中にあった外交文書を取り出して内容を読み上げだした。

 

「ーーー2199年12月8日、宇宙戦艦ヤマトの地球帰着と同時にイスカンダル星より受領した

 CRS(コスモリバースシステム)の作動を確認、後日調査にて地球表層における人類の生存が可能な環境の回復を認める。」

 

地球使節団の前に座するスターシャは目を伏せ、少し俯いたようだった。

まるで、悼むかのように。

 

「されど、その事前に宇宙戦艦ヤマト艦内にて発生したCRS(コスモリバースシステム)に関する

 事案(トラブル)が生じたことを地球連邦政府はスターシャ・イスカンダル女王へ報知せるものとす。」

 

だが、それに続いた言葉にスターシャは驚いたように目を開き顔を使節団へと向けたのだった。

一方、CRS(コスモリバースシステム)に関わるトラブルに彼女が反応したのを見た使節団員は、ムベキ団長と顔を見合わせる。

 

「……猊下、私からヤマト艦内にて生じた、問題を説明させていただきます。」

 

「……はい、よろしくお願いします。」

 

ムベキが使節団員から地球からイスカンダルに伝えるべき事項の口頭報知を引き取った。

対するスターシャは、表情に憂いを滲ませ僅かに眉根を寄せていた。

 

「……宇宙戦艦ヤマトの地球帰還前、同艦は()()()()デスラー総統の影武者が座乗していたと

 おぼしきガミラス軍離反分子の大型宇宙戦艦と遭遇、これと交戦しました。」

 

「……!」

 

スターシャは絶句する。

彼女の下には、ガミラス共和政府側からデスラー総統の行方についての最新の見解、

即ち地球側による入れ知恵で公布することになった「親衛隊による本物のデスラーの監禁と

親衛隊の傀儡である影武者との入れ替え、ヤマトによるバレラス襲撃に伴う両者の死亡」が伝えられていたが、

デスラー本人と親交のあった彼女はそれが真っ赤な嘘であることは分かっていた。

しかし、国内情勢が混乱するガミラスを纏め上げるための共和政府の方針に対しては口出しせず、

デスラー総統の実際の行方については何も知らなかった。

 

それが今になって(ある程度濁した形だが)判明し、しかもイスカンダルを発ったヤマトを

襲ったという内容に衝撃を受けたのである。

 

「……この襲撃については物証の大半が消失したこともあり不明な点が多く、

 詳細についてはお話ししかねますが、連邦政府並びに防衛軍は()デスラー総統、ひいてはデスラー親衛隊勢力が

 理由は不明ながらCRS(コスモリバースシステム)の奪取を目論んでいたのではないか、と考えております。」

 

「…………。」

 

スターシャは痛ましい、と言わんばかりに強張らせた顔を伏せた。

何故なら彼女は全てを知っていたのだから。

 

ムベキはその様を見て、「失礼」と一言置き咳払いをひとつ。

 

「……でありまして、イスカンダルの皆様方としても旧デスラー親衛隊残党に対しては警戒されますよう、

 連邦政府として申し上げる次第であります。なお、ガミラス側には既に秘密裏に共有済みであります。

 ……そして、襲撃により生じたヤマトの問題を説明いたします。」

 

「……はい。」

 

再びスターシャが表情を使節団へと向けた。

ムベキの口は動く。

 

「襲撃により生じた艦内白兵戦は、こちらに少なからぬ犠牲を生じさせました。

 その中に、ヤマト船務長の森雪大尉も入っておりました。」

 

「……!」

 

スターシャは眼を見開いた。

2年前の記憶に刻まれた顔が浮かび上がってくる。自分たちとよく似た姿の彼女が……。

その彼女が、アベルト・デスラーによって殺されたのか。

スターシャ・イスカンダルは言いようのない感情のうねりを自らの中に認める。

だが、悪意はないであろう地球の使者たちは、更なる事実をスターシャにぶつけてきた。

 

「森雪大尉は、襲撃後しばらくは重体で生命維持装置に入れられ延命措置が図られていましたが、

 ヤマトの地球帰還直前になり死亡が確認されました。生命維持装置が記録しております。しかし……」

 

 

 

スターシャは今ある記憶を探った。

モリ・ユキという地球人は、傍目から見ても彼に、コダイ・ススムに好意を抱いていた風に見えた。

その逆の様も、彼女は見ていた。

そして思い至る。

 

ーーーコダイ・ススムは、あの艦(ヤマト)に設えたCRS(コスモリバースシステム)のコアであるエレメント、

遥か地球より一人、約束の星(イスカンダル)へ流れ着き、自らも想いを寄せた者のーーー

 

そこまで思考が巡ったとき、彼女の口は開く。

声は出ない。出しようもなかった。

が、薄い唇は「まさか」と形づくっていた。

 

 

「……ヤマトの航海記録データによりますと、その際に突如としてCRS(コスモリバースシステム)が独りでに起動、

 時を同じくして件の生命維持装置が森雪大尉の蘇生を記録しました。」

 

 

スターシャの目から、熱いものが一筋零れる。

彼女の精神は、もはや一杯一杯の状況だったらしい。

 

だが、ムベキは冷静に続けた。

 

「……そして、記録ではCRS(コスモリバースシステム)はそこから短時間の間完全に機能を停止したとのことです。」

 

「…………!」

 

彼の言葉で、感慨の海からスターシャは引き戻される。

確かにそうだ。

エレメントがこの次元に再臨させられる事象の回数は限られている。ある種の世界の摂理だ。

モリ・ユキが蘇生し、さらに地球が救われたというのなら、()のエレメントの代替となったのは……?

答えは直ぐに示された。

 

「艦内医の報告では、そうしたヤマト帰還直前の状況下、ヤマト艦長の沖田十三提督が病死した、

 とのことでした。CRS(コスモリバースシステム)が復旧したのはほぼ同刻だと記録されていました。

 ……我々の幼稚な科学力では計り知れないことですが、仮説として沖田艦長の残留思念が

 CRS(コスモリバースシステム)を再起動させたのでは、と言われているようです。」

 

ムベキの言葉に、スターシャが答えることはなかった。

薄々分かっているのであれば、あえて明かすこともないだろう……。

そして、地球使節団はヤマトのトラブルについての伝達事項は以上である、と告げた。

政治的意図はなく、ただ事実として報告せよと地球政府から言伝を預かってきた、とムベキは言う。

 

しかし、国連事務総長(2199年当時の地球のトップ)を務めた地球黒人の老爺はこうも続けるのだった。

 

 

「……女王猊下。

 この場において、使節団長の立場を冠しないロドニー・ムベキ一個人として、

 言葉を発するのをどうかお許しいただけないでしょうか。」

 

随行の使節団員たちは一様に驚きムベキを見る。小声で団長を止めようとする者も中にはいた。

それに対しスターシャは、先程まで怒濤のごとき情報で内心をめちゃくちゃにされたことなど

感じさせない、威厳に満ち溢れた声で応じる。

 

「……どうぞ、発言なさってください。」

 

「お計らいに、心より御礼申し上げます。」

 

彼はそう入れて、私人として語りだした……。

 

 

「ーーー我々地球人類は、こうして再びの平穏を得るまで甚大な犠牲を払ってきました。

 平穏が破られ、これ以上の喪失を被ることは到底受け入れられるものではありません。

 しかしヤマトに対する()デスラー総統の襲撃やCRS(コスモリバースシステム)の勝手な再起動に伴う

 危機などでお伝え申し上げたように、現実とは予測できないことばかり生じるものであります。

 貴女方に、そして犠牲となった同胞たちに生かされた我々は、この先も命を永らえさせて

 記憶を紡ぎ、直面してきた苦難に報いていくことを望むでしょう。志を無為にしないために。」

 

ムベキの眼光がひときわ鋭くなる。

 

「己を守り、世界を動かしていくには、言葉よりも行動こそが重要であると考えます。

 そのためには"力"と、"意志"が不可欠である。これは宇宙万古不変の真実であると言えましょう。

 ……幸福に生きようとすることは、他者を害しない限り誰にも否定される謂れのないことだと思っております。

 それは幸福を守るために必要な力を得て、必要なときに振るうことも例外足り得ない。」

 

「……。」

 

老爺の弁に熱が入る。

そしてその視線は、対面する異邦の女王の双眸を捉え、逸らすことを許さなかった。

ムベキはいざ締め括りとばかりに、宣言するような調子に変えて告げる。

 

「スターシャ・イスカンダル女王!

 地球人類は、これからも生き延び続けます。

 過去に報いるために、そして何より、幸福な未来のために。

 貴女方が救った文明がいかなる道を辿るのか、是非、ご照覧あれ!」

 

 

 

 

斯くして、宇宙戦艦ヤマトの2度目のマゼラン派遣航海は(危うい橋を渡りながらも)全ての任務を完遂。

2201年11月20日、同艦は厳重さを増した警戒の中で、トランスワープ航法を利用し

16万8000光年先にある、青く美しい環境を取り戻した母なる地球への帰途へ就くのだった。

 

 

 

そこで、彼らの想像を絶する事態が進行しているとは知らずに……。

 

 

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