【第54話】
空間が歪み、光る。
そこから沸き出たのは、泡のようなエネルギー残滓。
そして白と黄緑に塗り分けられた宇宙艦艇がスラスターで回転に制動を掛けつつ出現。
1隻や2隻ではない、数十隻にも及ぶ規模の艦隊が虚空に姿を現した。
紛れもない、帝星ガトランティス軍の先遣艦隊の一群だった。
時に西暦2202年、7月2日のことである。
「どうなっておる!?
ガミロンの船団が隠れておる星系に到達する筈であったろう!」
「は……何らかの異常が生じた模様!」
艦隊指揮官らしきガトランティス人が声を張り上げ、作戦計画と現実の乖離を指摘した。
航法の管制員らしき兵士は原因不明を訴えつつ、現在位置を特定した。
「現宙域は、目標星系手前の空間のようです。」
「むぅ……ならば再度、空間跳躍の準備にかかれ!」
モニターに映し出された艦隊と目的地の図を目にするや、指揮官は艦隊に対し
再度のワープをさせようとする。
だが、率いられるガトランティス将兵らがその命令を実行に移す前に事態が急変する。
「
前方に、ガミロンの艦隊!……数、我が軍の倍以上!」
「何だと!!」
ガトランティス艦隊の遥か前方には、深海魚を彷彿とさせる艦形フォルム、
深緑の艦体色をした、宇宙艦隊が陣を張っていたのである……。
「敵艦隊、エネルギー反応増大。戦闘態勢に移行した模様」
展開するガミラス艦隊の旗艦艦橋では、オペレーターの報告を受けた参謀が呟いた。
「こちらに気付いたようですな。」
「うむ。」
腕を組み、不敵な笑みを浮かべたのはこの艦隊__
ガミラス国防軍・第二空間機甲師団艦隊の司令官である、バレルド・アクション中将。
彼は来襲が予期されるガトランティス艦隊を待ち伏せるため、
師団司令部直属の装甲戦隊と1個宙雷戦隊のうち2個宙雷大隊、
そして旗艦であるハイゼラート級航宙戦艦「アンクシャール」からなる戦闘団、
約150隻の艦隊を率い、MG03輸送船団が漂泊している星系の周辺宙域に駆け付けていた。
「敵艦隊編成、空母4、巡洋艦15、駆逐艦45、合計64隻!」
「第五空間機甲旅団の護衛部隊とほぼ同数か、これも予想通りだったな。」
オペレーターが出現した敵艦隊の詳細を報じると、アクションは頷きながら言った。
「しかし船団を守りながらでは、苦戦、いえ、敗北は免れなかったやも知れません。」
師団参謀長の意見にアクションも同意する。
万が一に備え、元より船団護衛についていたガミラス艦隊は後方の星系内で
仮泊中の船団から離れず睨みを利かせており、敵艦隊と相対している隊列にはいなかった。
「敵、動きます!」
オペレーターの声で、アクション以下艦隊司令部の面々は
一斉に視線を彼我の艦列を示すモニターへと向けた。
敵艦隊を示すアイコンが徐々に右方へ、敵から見て左側へとずれていく。
「敵艦隊、我が軍の右舷側を迂回し星系に向かう模様!」
モニターが示す敵の動きをオペレーターも報じる。
どうやら敵は船団への攻撃を___
ガミラスのバラン防衛戦力の誘引を諦めていないようだった。
参謀が言う。
「せめて我々だけでもこの宙域に引き留めて置こうという心づもりなのでしょうな。」
「違いない。」
ガミラス艦隊の眼前で、敵は急速に回頭し加速している。
バレルド・アクションはどこまでも冷静に命じた。
「作戦案C2号を発令する。各部隊は所定の行動へ移れ!」
「「「
一方で、ガトランティス艦隊の指揮官は焦燥を隠しきれなかった。
これではガミラスの船団を攻撃することなど夢物語である……。
だが、既に作戦は動き出しており後戻りはできない。気付かれていたならば尚更だ。
(おのれ……あの小癪な攻撃艇に見つかりさえしなければ……!)
ガトランティス艦隊の作戦は、概ね銀河機甲軍司令部が予想した通りだった。
まず、このガトランティス艦隊の一部隊が船団を襲撃しバラン星に展開するガミラスの
空間機甲師団艦隊を誘い出す。もしガトランティス軍の襲撃戦力の規模が
判明していなければ、1個師団をバランから引き剥がすことも出来ただろう。
手薄になったバラン星の亜空間ゲートをガトランティス艦隊の主力が叩く、という
手筈になっていたのだが、最初の段階から頓挫したのである。
この分遣部隊の指揮官は、現状__作戦が失敗に帰した原因を既に察していた。
マゼラン銀河の外縁で、敵の無人偵察艇に発見されたことである。
恐らく敵は、偵察艇でガトランティス艦隊の総数を把握し、狙いがバラン星の
亜空間ゲートネットワークであることを察知したのだ。そこから戦力差を覆すために
陽動として輸送船団の襲撃を企てることも読み、予め迎撃部隊を配置していたのだ。
それも、バラン星の防備が手薄にならないような塩梅で!
この指揮官はマゼラン外縁で敵偵察艇を沈めた際、艦隊司令に作戦の見直しを具申したが、
にべもなく却下されていた。その事を思い出し、切歯扼腕しても最早どうにもならない。
今はただ、船団を襲撃する動きを見せて眼前の敵を引き付けておく他ない__
分遣隊指揮官の脳内で、そう思考が巡っていた矢先のことだった。
「何事か!?」
突如として、旗艦である巡洋艦の前方を進んでいた駆逐艦や空母が爆発し、
その衝撃と光が旗艦艦橋にも伝わる。しかし、ガミラス艦艇特有の紅い
ビーム砲の輝きや、空間魚雷の軌跡は見えなかった。
彼が先行した艦を沈めた原因を知ったのは、索敵要員の報告からである。
「前方に、無数の浮遊物!
……これは、宇宙機雷です!!」
「な、何だと!?」
いつの間にか、ガトランティス艦隊の進行方向一帯の空間には、
厚く広大な宇宙機雷原が現れていたのである。
「何故だ、我が艦隊の進行路をここまで正確に予測できる筈がない……!」
ガトランティス部隊指揮官は、目を向いて前方の虚空、
死の罠がばらまかれた空間を見つめた。
敵がこちらの来襲を予測していたならば、確かに機雷を敷設していてもおかしくない。
だが、自軍艦隊があの地点に
そこから星系に向かうコースなどいくらでもある。敵艦隊を迂回するため、
ある程度限定されたとしてもだ。敵が敷設できる機雷とて限りがあるだろうし、
敵も船団を星系から出さねばならない以上星系を囲むように機雷を撒くことなど不可能だ。
では、なぜ我が艦隊はピンポイントで敵機雷原にぶち当たったのだ?
まさか、あの空間跳躍のトラブルが……
「司令!前方に、ガミロンの船です!」
「むっ!?」
思考を遮るような兵士の声で、ガトランティス軍指揮官はモニターに目を向ける。
機雷原の向こう側にいる、ガミラスの輸送や補給、修理を担う葉巻型の宇宙船が
何隻か、望遠撮影機でモニターに表示されていた。
「あれは……敷設艦か!」
ガトランティス船団襲撃部隊を待ち伏せていた、ガミラス第二空間機甲師団艦隊は
師団に属する空間工兵部隊の他、新バラン鎮守府隷下の空間工作部隊を伴っていた。
彼らが保有する輸送船改造型の宇宙機雷敷設艦は機雷が満載されたコンテナを射出、
迅速に巨大な宇宙機雷原を構築することが可能だった。
アクション中将の命令の下、連合工兵部隊が築いた機雷原は、
さながらMG03輸送船団が逼塞する星系への突入を阻む城壁であった。
「後方より、敵艦隊!……急速に接近!」
「何たることだ……!」
動きを封じられたガトランティス艦隊の背後から、ガミラスが誇る空間機甲師団が迫る。
部隊指揮官は獅子吼して迎撃を命じるが、彼らの運命は既に風前の灯だった………
ほぼ同時刻。
ガトランティス艦隊の主目標であるバラン星においても、戦端が開かれようとしていた。
船団襲撃部隊からガミラス艦隊の待ち伏せを受け、陽動が失敗した旨を報告された
ガトランティス艦隊の本隊は、作戦通りとはいかないまでも戦力が引き付けられた
状況を利用するべくバラン沖に姿を現したのである。ガトランティス艦隊は、
船団襲撃部隊と同編成のグループ2個を銀河方面・マゼラン方面と接続する二つの亜空間ゲートを
破壊するため、それぞれゲートに繋がるリングとデブリ帯を突破し突撃する。
それを迎え撃つのは、エーリク・ヘプラー少将の第一五空間機甲師団艦隊と、
アクション中将が後置した第二空間機甲師団艦隊の残存戦力であった。
ガトランティス艦隊一群に対して、各空間機甲師団艦隊に所属する宙雷戦隊や
駆逐戦隊隷下の駆逐大隊・突撃大隊が組み合わされた百数十隻の戦闘団2個が相対。
ヘプラー少将が直率する戦闘団(アクション中将の戦闘団と同編成)は、
万一敵が防御陣を突破した際の最後の盾・予備戦力として後方で待機している。
こうした彼我の動きを、バラン星の大気に浮かぶ浮遊大陸に設けられた司令部では、
銀河機甲軍司令長官ヘルム・ソト大将や、同参謀長フドリク・バウル中将が注視していた。
「全艦、攻撃開始!一隻たりとも突破を許すな!」
そして、砲雷戦が幕を開ける。
前進する2群のガトランティス艦隊の前方を半包囲するように、各戦闘団は左右に展開。
3方向から猛烈なビーム射撃とミサイル攻撃を叩きつけた。
対してガトランティス艦隊は中央突破を計り、進行方向に火力を集中する。
だが、数の差は如何ともし難くガトランティス艦隊は陣形の外縁に位置する艦から
次々に撃沈され、みるみる削り取られていった。
「第一〇二突撃大隊、1隻撃沈、3隻損傷」
「敵空母より艦載機が発進せる模様。」
後方の司令部では続々と前線からの報告が流れ込み、整理され、司令官へ届けられた。
それらに目を通し、耳を傾けながら機甲軍の最高発令者であるソトは表情を強張らせる。
あまりに単純な敵の動きに、不審なものを感じ取っていたが、その予感はすぐに的中する。
「戦域後方に、敵戦艦発見!……例の特殊砲搭載艦です!」
「閣下!」
「……来たか。」
バラン鎮守府の周辺警戒を担う対宙監視部隊や、協同する各師団の索敵大隊が
戦闘宙域から距離を置いたデブリ帯の外側に潜んでいた、ガトランティス艦隊の
旗艦とおぼしき戦艦と、その護衛の小規模艦隊を発見する。
2199年に宇宙戦艦ヤマトや第八警務艦隊が遭遇・交戦し、
初めて存在が知れ渡ったメダルーサ級重戦艦である。
ガミラスが開発した物質転送機の技術を盗用した特殊な火力転送砲が特徴だ……。
「……まさか、気取られておったとはな。」
発見されたメダルーサ級戦艦の艦橋で腕を組みながら呟いたのは、
この遠征艦隊を率いているガトランティス軍のチャグラム大都督。
武人然とした緑肌の顔を不愉快とばかりに歪めつつ、彼方で繰り広げられている
麾下艦隊とガミラス空間機甲師団艦隊との戦闘を見やる。
彼の考えた陽動作戦が成功していれば、自軍130隻に対し敵は約400隻で
1対3の戦力差だったのだが、敵は陽動を看破して予想より多くの兵力で
迎え撃ってきたため、ガトランティス艦隊は想定以上の早さで撃ち減らされ、
擂り潰されつつある。これが全滅する前に手を打たねばならなかった。
「だが、せいぜいぬか喜びしておるが良いわ。最後に勝つのは我らよ!」
チャグラムは歯を剥き出しにして嗤うと、高らかに命じた。
「火焔直撃砲、発射用意!!」
旗艦下部のダンパーが展開し、巨大な砲口が現れる。
それと同時に、二又状の艦首に設置されたガトランティス版物質転送機__
転送投擲機がワープ光線を放ち始めた。
バラン鎮守府司令部でも、この動きは捉えられていた。
「まさか、艦隊を丸ごと囮にするとは……」
バウル参謀長が忌々しげに唸り、吐き捨てる。
銀河機甲軍司令長官がそれに返した。
「それほどまでに、価値がある標的ということだ。」
ソト大将は、モニターに映された敵旗艦を示すアイコンを凝視する。
アイコンの横には敵艦のエネルギー反応増大、即ち敵が超兵器の使用兆候を
示している旨が表示されている。敵旗艦の向く方角から推測すると、恐らく照準は__
機能を停止していないの銀河方面亜空間ゲートだった。
敵のゲート破壊のための切り札・火焔直撃砲の砲口にはその名の通り
火焔を思わせるプラズマエネルギーの球が生成され、次第に大きさを増していた。
間も無く臨界に達する
「火焔直撃砲、発射用意よし!」
兵士からの報告に、チャグラム大都督は獰猛な笑みを浮かべて発する。
「放てェ!!」
メダルーサ級戦艦から標的へ向け、弾道を描くことのない必殺の一撃が送り出された。
チャグラムは口角を一層吊り上げる。ガミロンの青虫共の慌てふためく姿が
目に浮かぶようだ__とでも言わんばかりだった。
そして、空間の歪みから光熱の塊が飛び出す。
それは一瞬のうちに、眼前に存在した"装置"を破壊したのだった。
「何事だ!?」
チャグラムは先程までの余裕をかなぐり捨ててその場の将兵らに怒鳴った。
憤怒だけではなく、戸惑いも多分に含まれている。
「は………転送投擲機は正常稼働しております!」
「恐らく、目標前方に何らかの阻害物が存在していたかと……」
将兵たちも困惑気味に報告や所見を述べる。
何が起こったのか?
旗艦艦橋の窓から見える銀河方面への亜空間ゲートは今のところ傷ひとつつけられていない。
火焔直撃砲の一撃は、発射位置と目標との中間地点にワープアウトし、
見たところ虚空を照らすだけに終わっていた。
「ガミロンめ、小賢しい真似を……!!」
だが、チャグラムも大都督に任じられただけはある判断能力によって
火焔直撃砲の攻撃が失敗した原因がガミラス軍によるものであろうことを察知した。
そもそも、火焔直撃砲の肝要部である転送投擲機を開発したのはガミラス人なのだ。
ガミラス人が対抗策を立てていて何らおかしいところはない……
銀河機甲軍司令長官ヘルム・ソトの浮かべた不敵な笑みが、それを物語っていた。
鎮守府司令部に詰めていたオペレーターが歓喜と共に報告する。
「敵の転送砲撃、我が阻害装置の干渉を受けた模様!」
「亜空間ゲートに損害、認められません!」
銀河間航路の最重要拠点と目されたバラン星には、新バラン鎮守府の開設及び
銀河機甲軍本部の設置とその隷下部隊進出に伴って、共和政ガミラスの首都である
惑星ガミラスが属するサレザー恒星系外縁部に設置されているものと同じ
ワープ阻害装置が配備されていたのである。
同装置はワープを検知するや作動し、強制的にワープアウトさせる機能を有している。
銀河機甲軍司令部は、第二空間機甲師団にバラン配備のワープ阻害装置のうちの
一つを与えると共に、これを敵の火力転送兵器に対する備えとしていたのだった。
「連中は、やはり新型戦艦を投じてきましたな。」
「あぁ。こんなことだろうと思っていた。
総戦力200隻程度で第10機甲軍団の主力がおるこのバランのゲートを叩くなら、
例の火力転送兵器を用いるくらいしかやりようがないからな。」
してやったり、とソトが微笑みつつバウル中将に応じる。
だが、銀河機甲軍の参謀長は緊張した面持ちを崩していなかった。
「しかし、敵の砲撃地点と銀河方面ゲートの間に設置した装置は1つが破壊されており
残り2つです。敵が攻撃を継続した場合、いつかは防衛網を抜かれてしまいます……」
バウルの懸念は的中していた。
チャグラムは火焔直撃砲の連続射撃をもって敵が配したであろう
空間跳躍の妨害装置に飽和攻撃を加えんとしていたが……
「敵機大編隊、来襲!」
「何ィ!?」
当然ながら、その程度のことはガミラス軍司令部も予測の上だった。
そのため、出現するであろう敵新型戦艦への反撃戦力として、
第二・第一五の両空間機甲師団に属するガイペロン級空母6隻を主軸とする
航空戦隊を予め戦闘宙域外に配置しており、敵新型戦艦を発見次第
攻撃機隊を発進させる体制をとらせていたのだった。
ガトランティス遠征艦隊旗艦のメダルーサ級戦艦と護衛のラスコー級巡洋艦2隻、
ククルカン級駆逐艦6隻へ襲いかかったのはDWG109デバッケ約80機。
メダルーサ級戦艦や護衛艦艇から打ち上げられる猛烈な対空砲火を戦闘機ゆえの
軽快さでかわしつつ、本来は敵機を叩き落とすための対空ミサイルを発射する。
チャグラムは忌まわしげに敵戦闘機を睨み付けたが、即座にその狙いを悟り青ざめた。
「いかん!!
奴らは囮だ、直衛艦の砲火を引き付けるために飛び回っておるのだ!」
彼の正しさを証明するように、索敵手の兵士が血相を変えて報告した。
「下方より雷撃機が接近!!」
羽虫のように鬱陶しく旗艦部隊の周囲を飛び回る戦闘機隊と別に、
敵旗艦下方からFWG97ドルシーラ雷撃機十数機からなる本命の攻撃隊が迫る。
同雷撃機は鈍重ゆえ、戦闘機に護衛艦の対空砲を引き付けて貰った上、
上方と比べやや対空火器の火線が少ない敵戦艦の下部から攻撃を見舞ったのである。
ドルシーラの機体そのものに匹敵する宇宙魚雷が噴炎を上げてメダルーサ級を襲った。
「……!!」
チャグラムはこれまでに経験したことのない激しい震動を感じ取る。
だが、予想に反して自らが艦もろとも爆砕されることはなかった。
しかし、直後の被害報告で旗艦が甚大な損害を被ったことを思い知らされる。
「下方船体に被雷6!……火焔直撃砲、脱落!」
「何!!」
ドルシーラ雷撃隊は、敵旗艦の撃沈こそ出来なかったもののゲートに重大な
危険を及ぼす可能性があるガトランティス超兵器の無力化に成功したのだ。
それは同時にガトランティス艦隊の勝利、即ち目的達成の可能性が潰えたことを意味する。
チャグラム大都督は勝機が消え去ったことを知るや、狼狽気味に命じた。
「ぜ、全軍に退却を命じよ!一時退いて、再挙を期すのだ!
く、空間跳躍、急げ!!」
切り札を失い、傷ついたメダルーサ級は護衛艦をも置き去りにするかのように
急回頭し、健在な機関部をフル回転させてバラン宙域からの脱出に移る。
しかし、他のガトランティス艦がそれに倣えるような状況にないことは明白だった。
既に囮役のガトランティス艦隊主力は2群とも1/4以下にまで撃ち減らされており、
相対していたガミラス艦隊に加え、予備兵力もがソト大将の檄と共に動き出したのだ。
『__銀河機甲軍長官、ヘルム・ソトより全軍に達する。我々の勝利は確定した。
斯くなる上は、戦果拡張の時間である。一艦一兵とも生かしてはおくな。
バランに手を出した報いを、たっぷりと思い知らせてやれ!!』
気息奄々の遠征艦隊は宙域外へ向けて各個に逃げ始め、まさしく潰走の様相を呈する。
もはや、勝敗は決したも同然だった……。