宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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新年初投稿です。
今年もどうぞよろしくお願いします。

8日間も間が開いたことについては、土下座してお詫びします。ゆるして


第六話 猛虎奔走せり その1

 【第六話】

 

 あれから三日が経過した、12月12日。

同日の朝七時に、ヤマトに乗艦し艦の検査にあたっていた技師たちからの連絡が届いた。

藤堂、芹沢をはじめ司令部要員が心待ちにしていた報せである。

藤堂は通信要員に読み上げるよう命じる。

 

「“ 発 ヤマト検査隊 

   宛 極東管区軍司令部

 

 ヤマトへ乗艦し、精査を行った結果、艦体・機関・武装等の各部に異常は見られず。

 戦闘による損傷は地球への航海中に復旧されており、

 今後の運用に支障を及ぼすに至らずと判断する。

 またCRS(コスモリバースシステム)の稼働による艦への損害も検査では発見されず、

 この懸案についても運用に問題を生じないと判断する。

 ただし、同装置は機能を停止しており、再稼働は現状不可能であるのが

 ヤマト技術長真田志郎三佐と検査隊の共通見解である。

 

 現状でヤマトに大規模整備を伴わない運用継続は可能であるものとするのが、

 我が検査隊の結論である。

 

 精査の詳細については後日報告書として提出予定。”」

 

 

 通信員が報告文を読み上げると、司令部にはほっとした雰囲気が広がり快哉を叫ぶ者もいる。

 懸念が払拭され、この場の責任者である藤堂も晴れやかな表情で呟いた。 

 

「……これで、我々の課題にも解決の糸口が見えたわけだ。」

 

 

「はい。直ちにヤマトからの給電準備に取り掛からせます。」

 

芹沢はそう言い、幕僚にヤマトへ地下都市地表出入口付近に移動させるように命じる。

動き始めたのはヤマトを誘導する管制部門の人間だけではない。

過日の会議において悲痛な声を上げていた電力部門、糧食部門の人間にも

艦の精査結果についての朗報が届けられ、ヤマトから地下都市への電力供給作業へ

取り組み始めた。

 

かつてヤマトの建造・艤装が行われ、同艦の波動エンジン起動のために世界中から電力が

集中された坊ノ岬の工場は、海洋復活時に浸水が発生してしまいこのとき使用不能であった。

そのため、自動的に地下都市への電力供給作業を行う場所は別の場所になった。

地表がヤマトほどの大型艦艇が係留できるスペースが確保された上、比較的浅深度にあり、

地下都市との電力ルートが繋がっている場所、富士宇宙軍港である。

 

 

 

 12月14日。ヤマト検査隊の報告からさらに二日が経過。

極東管区政府は人的・物的リソースをありったけつぎ込んでヤマトからの給電が

可能になるよう、富士宇宙港に工事を施した。

同宇宙港は幸いにも遊星爆弾や惑星間弾道弾の攻撃を受けることがなかったのに加え

マスドライバー攻撃にも耐えうる堅牢な構造をしているためか、地表を侵し尽くした

敵性植物兵器の侵入を許すことはなく、数少ない無事な浅深度の人類の拠点の一つだった。

 

在泊艦艇は悉く沈み宇宙の藻屑と消え果て、がらんどうになった宇宙艦ドック群は今、

大量のケーブルや変電設備群で埋め尽くされていた。

しかも何本かの物資運搬用のエレベーターのシャフトや、人員輸送用鉄道線には

送電用ケーブルが配されている。これらは地下都市の蓄電プラントに直結されていて、

今か今かと給電の時を待っている。

地表部でも作業は行われた。司令部からの下命後、早々に富士宇宙港の地表部に着陸したヤマト。

その主機・「ロ号艦本式イ400式次元波動缶」と、地下ドックの配電設備とをつなぐため、

事前に森林を伐採しできた土地に変電設備を整えた。

 

一連の作業を行うのに極東管区は二日を費やした。

なけなしの物資と作業員たちの努力の結晶がヤマトの主機からの電力供給を可能としたのである。

 

 

翌15日の給電開始は電源部門の責任者たちや作業員たち、ヤマトから降りて地上の作業員たちと

共同で給電装置群の設置・整備、波動エンジンへの接続を行った技術科員、機関科員らが

見守る中で行われた。

 

その口火を切るのはヤマト側からだった。第一艦橋にいる真田副長兼技術長と、徳川機関長は

変電・配電設備に張り付く技師たちと連絡を密にしながら作業を開始する。

 

「現在波動エンジンの出力92パーセント、異常なし。」

 

「了解。第一、第二仮設変電所、これより120秒後に給電を開始する。準備されたし。」

 

「“こちら変電所、了解。”」

 

徳川機関長は機関室へ地上への接続に不備がないかの最終確認を入れて、

シートのコンソールを操作する。モニターには“艦外への給電開始”の文言が現れ、

その横のメーターはどんどん数値を上げてゆく。

波動エンジンのフライホイールは宇宙を航行するときと何ら変わらぬ回転で波動エネルギーを

電力へ変える。巨艦を飛ばすためでなく都市を満たすため、それを地上の変電設備群につながる

大電圧用ケーブルにのせて送り出す。

 

異星から地球人類に送られた、英知の結晶たる波動エンジン。

それが生み出す莫大な電力を最初に受け取ったのは、超大電力用変換機。

あまりにも巨大な電力のため、二重に変換せねば逆に給電される地下都市や

蓄電プラントを破壊してしまうのである。

丸太ほどもある太さのケーブルから送られる電気は同装置を介して地下ドックに多数配置された

大電力用変換機へとリレーされる。その上で太いケーブルで形成された送電ラインを通じ、

地下都市のための蓄電プラントへと供給されるのだ。

その様はまさに、極東管区地下都市の人々の()()()と言って過言ではなかった。

 

地下の蓄電プラントにて、給電を受ける装置に向かっていた技術者は装置についている、

電力・電圧など給電状況を示すメーターが見たことのない速さで振り切れたのを目の当たりにし

驚きとも喜びともつかない叫び声をあげる。

からっぽに近い残量だったのがウソのように電力がみるみるうちにたまっていく。

それはプラントの技師たちにとって信じがたく、胸を熱くする光景であった。

むろん、地表や地下ドックの技師たちの心中も同様だ。

 

 

 そして、それは地下都市の極東管区の司令部においても……。

 

 

現場の映像が映し出される司令部の大モニターを目にし、歓喜の声を上げる職員たち。

司令部には食料部門の責任者や医療部門の人間なども臨席しており、

彼らの瞳はモニターにくぎ付けになって動かない。 

立ちはだかっていた高い壁が崩れていくような、固く閉ざされた扉が開いていくような、

形容しがたい感慨と他の職員たちより一層大きな喜びを噛み締めているのだ。

 

その中で、藤堂は芹沢にヤマトのさらなる先の運用について確認を始めた。

 

「……芹沢君、たしかヤマトからの報告ではこの給電作業は二日ほどで完了する予定だったな。」

 

「ハッ。連続給電で五十時間が、配電装置群及び波動エンジンに不具合を出さず、

 かつ最速で蓄電プラントの最大容量を満たすことができる最適ペースであるとヤマト副長や

 送電技師長が申しておりました。給電完了予定時刻は、明後日17日の正午となります。」

 

「うむ。然る後に、ヤマトは他の管区に飛び、同地の給電作業に従事するのだな。」

 

「はい。極東管区の給電完了までの二日間で現在のヤマトの乗員のうち、

 艦の運行・給電作業などに要しない者を降ろし、代わりにこちらの電気技術者・給電装置を

 艦に載せます。これで目的地での作業を円滑に行えます。」

 

ヤマトの乗員のうち、作業に従事しないものを降ろすのは、単純なスペースの確保とともに、

大航海を成し遂げた勇者たちへのねぎらいの念があったことは言うまでもない。

芹沢はさらに、ヤマトの今後の運行が電力供給以外の任務も兼ねていることに言及する。

 

「また、同地の汚染物質残留確認のため、調査部隊を乗艦させることが決定済みです。

 加えて、OMCSなどの装置の故障を予想して、専門の技術者と部品を若干数。

 そして、過激化した暴徒から艦を守るための陸戦隊の乗艦も検討しています。」

 

「……できれば穏便に済ませたいが、みな困窮している。過激な者もいるかもしれん。

 ヤマトは()()()()だ。人類同士の内紛で失わせるわけにはいかん。

 最善を尽くしてくれ。」

 

「ハッ。」

 

 

ヤマトの他管区行についての確認がひと段落つくと、藤堂は嘆息した。

 

「……我が極東管区の蓄電プラントの総計容量は他の管区よりは劣るがそれでも大きいものだ。

 それをたった五十時間で満タンにすることができるとは、やはり異星の技術は凄まじい。

 その一言に尽きると、改めて思ったよ。CRS(コスモリバースシステム)しかりだ。」

 

「まったくです。」

 

藤堂の言に頷きつつ、芹沢は思う。

 

(その通りだ。波動エンジンは地球人類が生み出したものではない。組み立てこそ行ったが、

 心臓部たる波動コアはイスカンダルからのものを使っている。未来においては、

 地球は大量の波動機関搭載艦艇を就役させているが、そのための波動機関増産体制を

 三年のうちに整えねば。あの記憶と同じく……いや、それ以上に!

 

 あのガトランティスとかいう人造種族は地球はおろかガミラスさえはるかに凌駕する

 物量と、アケーリアスとかいう超古代科学文明の遺産を用いて攻めてくるのだ。

 

 なんとしてでもイスカンダル、そしてガミラスなど異星文明の先進科学を取り入れ、

 地球防衛に役立つようにしなければ……!……期限はそう長くはない……!)

 

 芹沢は、今はきっと遥か宇宙の果てにいる人類への脅威に思いを巡らせつつ

三年という限られた時間を使いいかに復興し、軍備を整えるか考えを練っていた。

 

 

 

 

 西暦2199年、12月15日。

 

 

ヤマト帰還から一週間が過ぎたが、いまだ人類のほとんどは再び地球の大地を踏むことなく

地下にて日々の生活に追われていた。

極東管区の司令部員たちはヤマト帰還のその時より一層の激務を強いられている。

彼らは地下都市の人々を守るべく、その希望を叶えられるようにするべくその職務を全うする。

 

それは今、希望の船(ヤマト)からもたらされるエネルギーという形で結実しつつある。

極東管区だけではない。

ヤマト出発時・波動エンジン起動時にエネルギーを送った地球中の管区にも、

送った何倍ものエネルギーが()()()の形で供給される。

 

 

分断され、孤立していた人類は、再び繋がろうとしている。

 

 

それは即ち、我らが芹沢虎鉄の戦いの舞台が極東管区から、

地球全体へ移ることと同義でもあった……。

 

 




そうは書いてますがまだまだ芹沢さんは極東管区でやることがあるようです。
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