「宇宙戦艦ヤマト2202 if 猛虎咆哮す」、始まり始まりィ~~~ッ!!
【第58話】
"ガミロニアⅧ"と名付けられたガス惑星は、銀河系オリオン腕の最外縁に位置する
辺境恒星系の一画に存在しており、同惑星の直径の数分の一ほどの伴星を有する。
周囲にはガス星同様に赤色に見えるガスが漂い、この恒星系が未開であることを
見る者に否が応でも理解させる。
しかしガス惑星ガミロニアⅧの大気層内には、重力に引き寄せられて
惑星内に捕らわれた岩塊の群れに混じり、この星系___どころか、
この宙域でも唯一と言ってもいい人工物が浮かんでいるのだった。
共和政ガミラス国防軍の銀河系派遣部隊が掌握領域の端々に設けた前哨基地群の一つだ。
浮遊大陸級の岩塊にまたがるように急拵えの補給用ステーションが建設されており、
ガミラスが進出したオリオン腕領域へ侵入せんとする外敵を警戒するパトロール艦隊や
同盟国・
周囲の空間監視システムの情報をガミラス軍オリオン腕展開部隊の本部へとリレーする
前線監視所の役割を兼ねたこの基地は惑星名の通り、8番目に建設されたものである。
だが今や、その基地は新たなる主を迎え入れ、真逆の役目を課されようとしていた……。
時に、西暦2202年12月2日。
ガトランティス艦隊がガミロニアⅧ基地を制圧したという急報が伝わってから三日。
地球に司令部を置いているガミラス銀河系展開部隊(第14機甲軍団)は早急に対応、
警邏巡航でガミロニアⅧ基地から離れていた隙を衝かれた格好となってしまった、
辺境警備を主任務とする軍団麾下の第三八空間師団艦隊を急遽同星系に向かわせ、
ガトランティス艦隊をガミロニアⅧに封じ込めるべく惑星近傍宙域に常時張り付かせ
敵艦隊への動向監視・基地奪回のポージングを行わせていた。
そんな緊迫した情勢下の辺境恒星系に、新たな艦隊が転移してくる。
ワープアウトの際に発生、空間に描かれる光の波紋は色の違う2種類が混在。
ガミラスと地球、軍事同盟関係を結んでいる両国の宇宙艦艇がそこから姿を現した。
ガミラスの艦は、空間へ縦に入った赤い切り込みが膨らむように紡錘形に変化して
出来た亜空間の出口から回転を伴わず通常空間に進出する。
地球軍の艦艇は青白い発光から飛び出し、ワープ中に艦体表面に生じた薄氷を
剥離させ、空間の歪みを利用した航法の負荷を振り切りつつあった。
機関や慣性制御技術の発達により、地ガ両軍の艦がワープ直後に行う
通常宇宙での航行へ移行するための挙動は簡素化の一途を辿っている。
斯くして赤い宇宙ガスで満ちた宙域に、およそ300隻のガミラス増援艦隊と
地球連邦防衛軍・宇宙海軍所属の艦隊約50隻が到着したのだった。
「全艦ワープアウト完了、脱落艦なし」
「……何とかここまで、無事に来れたという訳だ。」
地球艦隊の旗艦である
艦隊の指揮官は安堵に胸を撫で下ろす。
地球人類が組織した宇宙艦隊による、史上初の戦闘目的での太陽系外への
ワープ航法による進出という初めてづくめの事態という点は勿論だが、
それ以外にも
不安要素が存在していたのである。
「何にせよ、同盟国に痴態は見せられませんからな。」
冷汗を拭いつつ艦隊司令に応じたのは、旗艦の艦長を務めるジェームズ・ハーモン少佐。
彼の言葉を首肯しながら、ワード大佐は視線を艦外へ___並進するガミラス艦隊、
その旗艦である改ゼルグート級戦艦の巨大な艦影へと向けた。
ガス惑星ガミロニアⅧの基地がガトランティス軍に占拠された、という事案に対する
根本的な対処は、第一報が入った11月末日のうちに至極当然の結論が下された。
艦隊戦力による敵艦隊撃滅/占拠された基地の奪回である。
ガミロニアⅧに限らず、ガミラス銀河機甲軍が天ノ川銀河系内の掌握宙域外縁に
複数建設した補給・前哨基地には、ガミラス国防軍艦隊が航海、訓練、
そして実戦で消費する諸物資の自動製造・貯蔵設備が置かれている。
地球防衛軍からの技術提供を基に開発されたガミラス版のOMCSというべき
糧食製造装置ならびに原材料である有機物(繁殖効率性が極限まで高められた
遺伝子改造植物)の培養設備に、宇宙魚雷などを生産する弾薬廠、
艦艇の機関や武装・艤装の各種修理用部品の製造工場などがそれだ。
ガトランティス軍は小マゼラン銀河などでガミラス国防軍との長きに渡る戦いを
繰り広げる中で、ミサイルや部品の規格を合わせたり緩めたりと、
これらの設備を利用する術を獲得していた。つまり、ガミロニアⅧの補給基地は
そのままガトランティス侵攻艦隊の補給拠点として流用され得るのである。
また、ガミロニアⅧの在する星系は天ノ川銀河系オリオン腕の中では辺境だが、
そこから決して遠くない宙域をマゼラン銀河と太陽系を往還する輸送船団が
航路として利用しており、ガミロニアⅧの基地を抑えることは銀河間航路を
遮断することに直結するのだ。現に、西暦2202年11月下旬時点で地球連邦が
マゼラン銀河へ鉱物資源の買付けに送り出した輸送船団が帰路の途上にあり、
もうすぐ天ノ川銀河に到達するというところまで戻ってきていたのだが、
ガミロニアⅧ基地失陥により急遽足止めを喰らうことになっている。
事態の早急な打開を図るべく、即日中に地球連邦政府及びガミラス大使館、
地球連邦防衛軍司令部とガミラス第14空間機甲軍団司令部間で調整がなされ
地球・ガミラス両国の連合艦隊による占拠された基地の奪還作戦が策定された。
しかし、その裏では別な思惑も働いていたことは明白だった。
その事情は、地球・ガミラス連合艦隊の陣容に如実に反映されている___。
地球連邦が対ガミラス戦役後、地ガ安保条約に基づいた初の実戦のために
送り出したのは「第一特務艦隊」と名付けられた艦隊で、編成は以下の通り。
◎地球連邦宇宙海軍・第一特務艦隊
○第九巡防艦戦隊
・改K級装甲宇宙巡防艦
「タイコンデロガ」「ハバードトン」「シュガーローフ・ヒル」「サラトガ」
・改M級宇宙巡防艦
「ファリス」「パターソン」「ファラガット」「ジョーエット」
○第一無人戦隊
・改
○第二無人戦隊
・改
○第三無人戦隊
・改
○第一無人航空戦隊
・改
一方で、ガミラス第14空間機甲軍団ひいては銀河機甲軍が差し向けた戦力は
第14機甲軍団の中核とも言うべき第七空間機甲師団艦隊から抽出した戦力を
軸に編成した戦闘集団であり、同軍団/師団長のフラーゲ中将が直率している。
◎共和政ガミラス国防軍・フラーゲ戦闘集団(フラーゲ艦隊)
○戦闘集団司令部
・改ゼルグート級航宙重戦艦「ツェルベロク」
○第七宙雷戦隊
・クリピテラ級航宙駆逐艦:96隻(2個宙雷大隊)
○第四二駆逐戦隊
・デストリア級航宙重巡洋艦:8隻
・ケルカピア級航宙高速巡洋艦:16隻
・クリピテラ級航宙駆逐艦:48隻
○第一無人装甲戦隊
・改デストリア級無人航宙重巡洋艦:12隻
・改ケルカピア級無人航宙高速巡洋艦:36隻
○第二無人装甲戦隊
・改デストリア級無人航宙重巡洋艦:12隻
・改ケルカピア級無人航宙高速巡洋艦:36隻
つまり、地球連邦防衛軍もガミラス国防軍も無人艦を主体とした艦隊で
ガトランティス艦隊を撃破、ガミロニアⅧ基地を奪回しようというのだ。
両軍の艦隊、殊に地球軍の第一特務艦隊は殆どが無人艦で占められている。
それもその筈、この艦隊が帯びる"特務"とは有人艦によって制御される
無人艦隊が実戦においてどこまで能力を発揮できるか、その有用性の確認で、
要するに同部隊は研究目的の実験部隊だった。
この地球艦隊において唯一の有人艦部隊である第九巡防艦戦隊は、
元々は防衛軍宇宙海軍の第五艦隊に所属していたが、11月後半に新鋭戦艦の
「アポロ」など新造艦が就役、それらによって増強された第一航空艦隊が
新たな第五艦隊として改組され、旧来の第五艦隊所属部隊は、横滑りの形で
新設の第九艦隊に大部分が配備されたが、第九巡防艦戦隊は
無人戦闘艦の制御艦部隊として通信・管制機能を強化する改装を施され
第一特務艦隊へと配属された。同戦隊は、改K級・改M級各1隻によって
無人艦の1個戦隊を制御していた……。
ガミラス側も、そこまで事情は変わりない。
彼らが地球側から一ヶ所を丸ごと借り受けた時間断層の工廠ステーションでは、
主に銀河機甲軍が使用する弾薬や補修部品の生産が行われているのだが、
地球側に触発されたのか、折からの人員不足対策への延長線上の結果か、
それと並行してガミラス国防軍の航宙艦隊の主力である巡洋艦をベースにした
ガミロイドによる操艦ではない、完全自動運航の無人戦闘艦艇の量産が
ステーションの建艦ドックで行われたのである。こうして出来上がった
2個装甲戦隊分(約100隻)の航宙巡洋艦は、地球艦隊とは対照的なことに
フラーゲ艦隊旗艦の改ゼルグート級が一括制御する仕組みとなっていた。
その改ゼルグート級戦艦「ツェルベロク」の艦橋では、第14機甲軍団長フラーゲ中将が
ガミロニアⅧに進攻した敵艦隊を監視していた第三八空間師団の師団長、
ダス・ルーゲンス少将と通信を交わしていた。
『__敵は浮遊大陸の補給基地を制圧後、惑星外に打って出る様子を見せていません。
出撃した隙に我が艦隊に基地を奪回されることを恐れた物と見られます。』
「戦力的劣勢から積極的な活動を控えているのではないという訳か。
敵艦隊の戦力は先に報告があった通りで良いか?」
フラーゲの手元には、今回のガトランティスの侵攻部隊の数の上での戦力が
半年前に銀河間航路を襲撃した艦隊とほぼ同規模の200隻程度であるという
情報が届けられている。画面の向こうで、ルーゲンスも頷いたが……
『はっ。増援は確認されておりません。ただ……』
そう言って、考え込む仕草をした。
それを見咎めてフラーゲは詳細を訊く。
『……敵艦隊は何やら、惑星内に岩塊らしきものを搬入したという情報があります。
移動陣地などの類いでしょうか?』
「……単に、鉱物資源用の岩塊かもしれんな。
だとすれば、連中はガミロニアⅧに長逗留するつもりか……」
謎の"岩塊"について考えを巡らすフラーゲだったが、迷いを立ちきるように
再び視線をルーゲンスの映る楕円型のモニターに向けた。
「とにかく、我が艦隊は事前の作戦通りに動く。
第三八空間師団艦隊は後詰めとして後方で待機し、戦局が動き次第来援せよ。」
『
腕を垂直に挙げるガミラス式敬礼でルーゲンスとの交信が終わる。
続いてフラーゲは今作戦時に一時的に指揮下に入る地球艦隊に電文を入れるよう命じる。
事前の作戦内容はワープ前に最終確認を済ませており、打電する内容はごく短い一文。
《共ニ征カン、イザ》
作戦開始の合図であった。
地球・ガミラスの連合艦隊は隊列を整え、氷で出来た天王星型の伴星の横を通り、
惑星の中心へ向けて次々に厚い
連合艦隊の陣形は、前衛としてガミラスの無人装甲戦隊2個が並列で進行、
その後方に連合艦隊自体の旗艦である「ツェルベロク」と第四二駆逐戦隊が続き
さらに後方に地球軍第一特務艦隊と、その両側にガミラス第七宙雷戦隊の
1個宙雷大隊がそれぞれ配置されていた。
地球艦隊の旗艦、装甲巡防艦「タイコンデロガ」では秒読み段階に入った
地球連邦防衛軍と未知なる敵・帝星ガトランティスとの激突の瞬間を睨んで
ワード司令、ハーモン艦長をはじめ防衛軍の将兵一同が緊張の色を浮かべる。
全員、防衛軍司令部からの命令で宇宙服を着用していた。人命最優先ゆえの措置だ。
そして、ついに干戈が交えられる瞬間がやって来る。
「先行のガミラス艦より通信、敵艦隊をレーダーで捕捉した模様!!」
索敵オペレーターのモニターには、地ガ連合艦隊の遥か前方、浮遊大陸基地の前面に
壁のように展開した約200隻の敵艦を示す
その大きめの
それに付随するように映された識別データには、火力転送型の特殊砲艦__
メダルーサ級戦艦と表記されている。
「了解。……作戦通りにだ、やるぞ!」
「「「ハッ!!」」」
ワード大佐は覚悟を決めて宣言し、「タイコンデロガ」のクルーも応えた。
他方、地球艦隊の前方に位置するフラーゲ艦隊旗艦「ツェルベロク」では
片方は敵の旗艦と思われる、2隻のメダルーサ級戦艦の動きを捉えていた。
だが、ガトランティスの
「敵火力転送砲艦、エネルギー反応増大!」
オペレーターが緊張の色を声に滲ませ、艦橋の中央に座る司令官へと告げた。
「恐らく目標は……」
「本艦だろうな、間違いなく」
旗艦艦長の言葉を引き取り、フラーゲは肩をすくめて口角を吊り上げた。
直後、索敵手が悲鳴じみた声色で報せる。
「敵戦艦2隻より発射反応!!」
空間を歪ませ彼方に弾道なき攻撃を送る転送投擲機という弩と、
星をも焦がす灼熱が矢どころか槍となって撃ち出される砲を組み合わせ用いる
メダルーサ級という怪物__それも2匹__は、新たに自分達の巣窟となった
星へとやってきた愚かな青虫の頭を抉り取るべく、必殺の一撃を見舞う。
恒星の紅炎にも似た砲撃は空間の揺らぎと共に現れ、
迸る先にあるもの全てを焼き尽くし、薙ぎ払うのである。
斯くして、火焔直撃砲は炸裂する。
地球・ガミラス連合艦隊の遥か後方で___。
「ワープ誘導阻害装置群、全機健在・機能正常。」
ガミラス艦隊旗艦の艦橋には、安堵の雰囲気が広がる。
言うまでもないことだが、ガミラス艦隊はガトランティス艦隊の中に
メダルーサ級が存在することを既に把握していた。
フラーゲ中将もその情報に基づき万全の対策を取っていたのだ。
それが、バラン星沖海戦で利用された強制ワープアウト装置をさらに研究、
改良して製作されたワープ誘導阻害装置である。
既存の装置から進化した点は、任意の地点に強制的にワープアウトが可能な点だ。
例えワープアウト予定地点が装置より近かったとしても強制的に引きずりこむことが
可能なのだ。加えて、装置自体の耐熱・耐衝撃性能も格段に向上している。
装置自体が被弾する地点にワープアウトさせることはないにしても攻撃の余波で
故障が起きる確率を下げるための策だ。
ガミラス軍は自作の技術を敵に盗用されたことを逆手に取り、その兵器の
強みを打ち消し、完全に無効化してしまう装置を造り上げたのだった。
同装置はガミロニアⅧと連星を成す伴星との重力均衡点に置かれており、
単純に遠い上、厚いガス帯に阻まれたガミロニアⅧ内部からでは狙撃不能、
メダルーサ級にとってはどうにもならない事態だ。
「なれば、転送投擲機を用いず直射で狙い撃てば良いわ!!」
だが、艦を任された鸚緑色の肌の戦士たちは火焔直撃砲を火焔砲に単純化して
ガミロンの青虫とそのオマケに対する攻撃を試み、我に続けとばかりに
2隻のメダルーサ級を前進させ、未だ遠い敵艦隊を火焔砲の射程に捉えんとする。
メダルーサ級の総合的な加速性能は軽快艦のラスコー級やククルカン級より劣るが、
突発的な事だったためメダルーサ級は護衛艦艇から一時的に突出してしまった。
これこそが、連合艦隊が待ち望んでいた展開であった。
突如として2隻のメダルーサ級の下方にある濃いガスの雲を突き破って、
十数機のニ式無人空間攻撃機コスモレイブンが出現。地球艦隊有人艦の指令で
改
地球軍のパイロットたちのデータを学習したAIが操る重武装無人機は
絶妙なタイミングで翼に懸架した多数のミサイルを発射し対空砲火を尻目に離脱。
その"絶妙なタイミング"とは、即ち火焔砲にエネルギーが充填されている真中。
砲口の先で火球が成長しつつある中で剥き出しの砲身に多数のミサイルが叩きつけられ、
あっという間に元来は盗掘品である火焔砲の耐久力は限界に達した。
本来ガミロン共に向かうべきエネルギーは行き場を失い、その場にて炸裂するのだ。
砲身から瞬時に、火山のごとく溢れだしたエネルギーが上方に位置する
メダルーサ級の船体を真っ二つ、"ジャックナイフ"というべき形でへし折る。
2隻の怪物戦艦が自らの吐き出す火焔に包まれるまで数十秒とかからなかった。
こうして、地球連邦と帝星ガトランティスの本格的な初戦である
「ガミロニアⅧ海戦」は豪快な応酬で幕を開けたのである。
To Be Continued →