宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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空白期間が長くなりすぎて本当に申し訳ありません。
3199情報公開に伴い、恥ずかしながら帰って参りました!



第六十六話 宇宙の蜂の巣

 

【第66話】

 

 

西暦2203年3月22日。

 

地球連邦防衛宇宙海軍に属する宇宙戦艦「ヤマト」は、

女神テレサが座するとされる伝説の惑星テレザートが存在する星系に到達。

 

同艦はテレザート沖に展開するガトランティス艦隊に探知されぬよう、

星系内に輪を描くアステロイド群(テレザートを除いた星系内の惑星の

成れの果て)に錨泊・息を殺して情報収集を行っていた。

 

艦内の中央作戦会議室には土方艦長を筆頭に艦各部の責任者らが集い、

テレザート進攻作戦の最終ブリーフィングを開始する。

会議はヤマトから射出した偵察衛星やテレザートから送られてきた

敵状のデータを整理することから始まり、進行役は真田副長だった。

 

「観測結果に送られてきたデータを加え、距離による光学時差を補整、

 推定誤差は0.2%。これが、テレザートの現状だ。」

 

副長の一言と共に、足元のモニターに惑星テレザートの姿が写し出されるが、

"テレサ"のメッセージなどで見た青く美しい水の星とは大きく変容し、

まるで継ぎ接ぎの不格好な岩塊とでも言うべき醜態を晒している。

 

「テレザートはガトランティスにより、他天体から運ばれた岩盤で

 包囲されている。これらの岩盤はある種の力場を発生させ、

 テレサの力を封じ込めているのだろう。

 現時点で我々は、テレサからのメッセージを二回しか受け取っていない。

 頻繁に通信を送れないのは、この岩盤に阻まれているためだろう。」

 

画像に、真田の説明が加わる。

これまでの航海の経験でヤマトの乗員たちは皆、テレザートにあり

ヤマトにメッセージを送ってきたのが、人類と同様な知的生命ではなく

かつてガミラス大使が幹部乗員らに語った"伝説の女神テレサ"であることを、

地球に報告こそしないが確信しており、艦内での共通認識になっていた。

 

説明を聞きながら、足下の画像の一点を見つめる古代戦術長。

テレザート星に対する岩盤による包囲は完全ではなく、

一角が丸く開き、手前にはここに嵌められるであろう岩盤が浮いていた。

隙き間からは僅かにテレザート星の青い表面が垣間見えている。

古代同様、下に目線を落としていた「ヤマト」艦長・土方が真田に訊いた。

 

「これが嵌められれば、テレザートの封印が完了するということだな?」

 

「はい。推察するに、岩盤によるテレザート完全封印まで

 およそ6時間ほどしか残されておりません。」

 

真田は、明確なタイムリミットを示す。

土方はその言葉に静かに頷くと、場にいる全員に宣言した。

 

「三時間後、本艦は小惑星帯より出撃。

 テレザート星沖へ進出し、解放作戦を実行に移す!」

 

真田、古代、森、島、徳川、南部、相原、太田、

新見、加藤、斎藤、そしてキーマン。

艦長の言に威儀を正した面々の表情が、一様に険しくなった。

この航海で、最大級の激闘が予想されるためである。

土方からの意を受け、真田がガトランティス軍部隊の配置をモニターへ。

岩盤に包まれたテレザート星は簡略化された3Dの輪郭線画像に変わり、

岩盤は凸凹したブロックに、穴へ向け嵌め込まれようとしている

最後の封印岩盤は荒いワイヤーフレームになった。

単純な表示は回転、テレザートを覗く丸い穴と、その蓋として嵌められる

最後の岩盤を側面から見る形となる2D表示の断面図へ変わった。

 

「運搬作業中の最後の巨大岩盤は、テレザートの公転軌道面にある。

 テレサから送られてきたデータにもあった敵の守備艦隊の存在は、

 こちらの偵察衛星からも望遠観測され、確認されている。」

 

真田が説明を進め、タブレットデバイスで床面モニターの画像を動かした。

断面図周辺に、ガトランティス艦隊を示すアイコンが浮かび上がる。

最初に現れたのは、巨大岩盤の"外側"に位置するガトランティス艦隊。

岩盤前面に距離を置いて張り付き、門番さながらに展開していた。

 

「望遠画像やテレサからのデータによると

 岩盤外部、公転軌道面に沿って展開する敵艦隊は、

 "ゴストーク級ミサイル戦艦"72隻。」

 

その言葉に続いて、岩盤の"内側"、テレザートや岩盤に囲まれた

内部空間に新たなガトランティス艦隊を表すアイコンが示された。

 

「更に、こちらからは観測できなかったが、

 テレサから送られた情報によれば、岩盤の後方にも

 テレザート星を直接封鎖する艦隊が布陣しているようだ。」

 

アイコンと共に、"後衛"の敵艦隊の陣容が表示される。

旗艦とおぼしきメダルーサ級戦艦1隻に、ナスカ級空母4、

ラスコー級巡洋艦17、ククルカン級駆逐艦51で構成されていた。

つまり、惑星テレザートは百数十隻にも及ぶ敵大艦隊が守っている。

それだけではない、と真田は言った。

 

「テレサからの情報でも確認できていないが、岩盤の内壁や、

 テレザート地表に敵の陸上戦力が展開していることも想定される。」

 

断面図に映っている、既にテレザートとの斥力均衡点に配置された

封印岩盤の内側(テレザートに面する側)や、惑星テレザート地表にも

ガトランティス部隊の所在を示すアイコンが出現する。

敵地上部隊の予想兵力は全く不明で、予想もしない兵器の存在もあり得た。

総括として現状のテレザート星は、極めて危険な"宇宙の蜂の巣"とでも

言うべき存在と化していたのである。

 

到底、宇宙戦艦1隻の手に負えるものではないのだが___

 

 

「宇宙戦艦『ヤマト』は()()()()()()()()()()()

 惑星テレザートへ降下、"テレサ"を救出する。」

 

土方艦長は明快に断言する。

それから、視線を古代へ向けて一言。

 

「戦術長、作戦計画案を説明してくれ。」

 

「ハッ!!」

 

古代は堂々と応答し、他の幹部乗員たちの方へ向き直った。

 

 

_________________________________

 

 

その頃、外宇宙と比しては僅かばかりの宇宙空間を隔てた先では。

 

 

「ふぅむ……」

 

鸚緑色の禿頭で口髭を蓄えた武人が、目を伏せ腕を組み、思案に暮れていた。

男の傍らには、前部中央を除いて剃りあげたばかりの禿頭の青年が立つ。

そこは、彼らが"ミサイル戦艦"と呼ぶ宇宙艦艇の艦橋であった。

男の名は"ゴーランド"。

彼の任は、来襲するであろう敵・"宇宙戦艦ヤマト"を撃滅し、

伝説の惑星テレザートの女神・テレサの封印を完遂することだ。

 

ゴーランドは、ガトランティス生え抜きの闘将である。

帝星開闢以来、何代にも渡って宇宙艦隊を指揮し、敵を破った。

当代とて、その例外ではない。

西暦2203年の今日、ゴーランドの名を持つ男は側に控える青年、

次代ゴーランドである幼生体・ノルを見事に元服まで育て上げ、

"ノル・ゴーランド"の名を授けた。

"後継"は、艦橋の窓を隔てて目前を移送中の岩盤地表で、

巨大な猟銃で砂龍狩りを行い、"ガトランティス"としての心得を

先達から教えられ、これから始まる戦いが初陣となるはずだった。

 

ノル改め、ノル・ゴーランドは、先任者が思考に沈む様相を静かに見つめる。

まだ宇宙戦艦の戦いを率いたことのない彼は、自らの未熟さを知る故に

ゴーランドが何を考え、何をするのか、逐一自らに刻もうと試みていた。

 

「ゴーランド」

 

艦隊指揮官が伏せていた目を開き、後継はその思考を知ろうと声をかけた。

 

「……見よ。」

 

ゴーランドはノルに顔を向けると、手元の操作盤(コンソール)

艦橋の大型モニターに友軍が観測した宇宙戦艦ヤマトの姿を映す。

 

「……我らの敵、『ヤマト』は"大砲"で第八機動艦隊を退けたばかりか、

 帝星から生きて脱出し、テレザートまでやって来ようとしておる。

 "ゴーランド"が対する中で、最強の敵と言ってもよい。」

 

「最強の、敵……」

 

宇宙戦艦ヤマトに対するゴーランドの評に、ノルは身を引き締める。

それに対し、ゴーランドは不敵な笑みを浮かべた。

 

「だが、彼奴はただ一隻。

 それが身軽という強みでもあるのだが、やはり数には弱かろう。」

 

ゴーランドは操作盤からモニターに自軍の陣容を映し出した。

テレザート星を完全封印するための最後の岩盤を挟んだ両面に、

艦隊指揮官の名を冠した旗艦「ゴーランド」以下ミサイル戦艦72隻と、

封印岩盤の移送艦隊も兼ねていたテレザート直衛艦隊73隻が展開し、

戦闘に備えている。

 

「ノルよ。お前が『ヤマト』の指揮官ならば、

 どのようにして我らゴーランド艦隊の殲滅を考える?」

 

「!」

 

ノルは、ゴーランドからの問いに目を見開く。

それから、テレザート周辺に展開する自軍艦隊の陣容図を凝視する。

封印途中のテレザートから、『ヤマト』へ向けコスモウェーブによる

通信が放たれたことはゴーランドらも知っていた。

恐らく、ゴーランド艦隊がどう展開しているかの情報は敵に知れ渡っている。

それを踏まえ、『ヤマト』の艦長が何を考えるだろうか……

ゴーランドは、指揮官に必要な"敵の意図の予測"を

ノルに学ばせようとしていた。

 

「……『ヤマト』は、我が艦隊を分断し各個撃破を試みるのではないでしょうか。」

 

少しの逡巡を挟み、ノルは考えたことを口に出した。

少しずつ出力し、補足、または修正していく。

 

「恐らく、岩盤を壁として前衛と後衛に分断し一隊ずつ撃滅……

 艦艇の数では前後の隊は同じですが、

 前衛は全て"ミサイル戦艦"なのに対し、後衛は"巡洋艦"と"駆逐艦"が

 大半のため……攻めるのは後衛から……空間跳躍での転移を目論む筈……」

 

ノルの答えを聞き、ゴーランドの口元が緩んでいく。

 

「そして……後衛を退けた『ヤマト』は"大砲"で岩盤を砕き……

 前衛に対する散弾にせんとするのでは?」

 

「よく出来たな」

 

「……!」

 

どうやらゴーランドと同じ思考だった、と安堵の色を顔に浮かべるノル。

一方ゴーランドは「だが」と呟き、ノルが推測した『ヤマト』の狙いが

現実的に不可能であると語り出した。

 

「第一に、いくらヤマトとて空間跳躍直後の戦闘で、70数隻もの艦との

 戦闘は無茶が過ぎるというものよ。よしんば後衛を撃滅できたとて、

 戦闘の損害で我が前衛との対峙や"大砲"の発射など出来るとは思えん。

 何より、封印岩盤の移送艦隊は相応に精鋭、容易く打ち破れはせぬ。

 前衛が岩盤を迂回し戦域へ突入する時間を稼ぐことは可能だろう。」

 

一つ一つ要因を挙げていくゴーランドに、ノルは相槌して納得する。

そして、ゴーランドは身を翻して艦橋の外、艦首方向に目を向けた。

 

「それに、だ。

 『ヤマト』がどうして()()()()()()()()()()()()ことを予測できよう?」

 

2人のゴーランドの視線の先には、旗艦以外のミサイル戦艦には

装備されていない、外装がなく骨組みや内部が剥き出しで、

砂時計のようにも見える鋭角的なデザインの巨大ミサイルがあった。

 

 

_________________________________

 

 

一方、惑星テレザートが座する星系外の空間にて。

 

全体が青く染め上げられた、悪魔が翼を広げたような姿の巨艦が、

深海魚のようなフォルムをした濃緑色の宇宙艦多数や、

それらより一・二回りも大型の宇宙戦艦、宇宙空母を従えて虚空を行進する。

彼らの舳先もまた、"伝説の星"へと向けられていた。

 

これらの艨艟総てを統べるのは、

黄金色の頭髪に、気高い青色の肌をした壮年。

男は巨艦の玉座に身を預け、黄金のグラスに注いだ美酒を口に含む。

 

「……その力と意志が、"伝説"に届きうるか。

 見せてもらおうじゃないか、()()()()()()……」

 

男は口元に微笑を浮かべ、"仇敵"の姿を脳裏に思い描いた。

 

 

 

 

まもなく、テレザート宙域は沸騰の時を迎えようとしていた。

 





ゴーランド艦隊大幅増量!
なお、本世界線のゴーランド艦隊はカラクルム級の大量就役によって
それまでのガトランティス機動艦隊の主力だったゴストーク級戦艦が
余剰になったのを転用・集中配備したためこんな編成になっています。
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