宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

69 / 90
第六十七話 燃える門衛

 

【第67話】

 

 

西暦2203年3月22日。

後に「テレザート星沖海戦」と呼称される一連の戦いは

地球防衛軍の宇宙戦艦『ヤマト』が行った

岩盤に覆われ封印されつつある惑星テレザートへの

速度30エスノット超という高速での猛突進から幕を開けた。

 

かつてテレザートと同じように恒星系を周回していた惑星の末路である

小惑星帯から飛び出してきた『ヤマト』は、テレザート公転軌道上に

浮かぶ惑星封印のための最後の巨大岩盤前面に陣取る

ガトランティス軍守備艦隊前衛の探知距離内まで、瞬く間に進出した。

 

艦橋のモニターに映し出された『ヤマト』の望遠画像を見やり、

ガトランティスの前衛ミサイル艦隊を指揮する提督・ゴーランドは

獰猛な笑みを見せつけた。

 

「ここまで来るとは見事だ、『ヤマト』。

 お前には()()"ゴーランド"の武名の欠片になってもらう!!」

 

ゴーランドの傍らに立つ、幼生体ノル・ゴーランドも表情を引き締める。

先代が『ヤマト』を討った勇名はいずれ自分が引き継ぐものなのだ、と。

 

「『ヤマト』、我が最大射程内へ入ります!」

 

「ゴーランド、攻撃しますか?」

 

旗艦の索敵手(オペレーター)たちの報告を聞き、ノルが訊いた。

これに対し、ゴーランドは薄く笑って答えた。

 

「本腰を入れて攻める必要はない、各個に迎撃に徹せよ。

 この動きは奴が岩盤の裏に跳躍するまでの陽動、牽制に過ぎん」

 

この間にも『ヤマト』の突進は続き、更なる動きを見せた。

 

「『ヤマト』、誘導魚雷発射!」

 

地球(テロン)戦艦に対峙する彗星帝国(ガトランティス)軍のミサイル艦隊は

複横陣に近い緩やかな角度の梯形列(各8隻)を、前後左右上下に八列、

ゴーランドの旗艦含む旗艦集団8艦は梯形陣を左右に四列ずつ配する中央に

前後4隻ずつの単横陣を敷いて巨大岩盤や岩盤間間隙の遥か手前にある。

『ヤマト』が放ったミサイルは前方側の梯形を構成するミサイル戦艦へ向かい

命中するか、他のガトランティス艦同様針鼠のように装備した

防空兵器の火線に絡め取られるかで、鮮やかな爆炎を生み出す。

 

迎撃に失敗、被弾し自艦のミサイルが誘爆・轟沈した艦の存在を

旗艦の通信手が報告するが、それは司令官(ゴーランド)の耳には入らなかった。

敵ミサイルの着弾とほぼ同時に、索敵手が予想外の事態を報告したのである。

 

 

「岩盤後方から重力干渉波複数!空間跳躍と思われます!」

 

「「何!?」」

 

2人のゴーランドが目を見張った。

"蓋"となる岩盤の後方に(ヤマト)が跳躍してくることは予測していたが、

当の『ヤマト』はまだミサイル艦隊の前から突っ込んでいる途中だった。

それに、探知された反応は"複数"とある。

 

「まさか、『ヤマト』以外に地球(テロン)の艦が!?」

 

ノルは動揺を隠せぬままモニターを凝視した。

 

「いや、それはない。

 だが、奴の艦載機が空間跳躍するとは……!?」

 

ゴーランドも慌ただしく思考の整理をしていた。

モニターに映る重力干渉波の反応は小さく、

せいぜい艦載機程度の物体が空間跳躍(ワープ)してきたのだとわかる。

しかし、地球(テロン)跳躍(ワープ)可能な艦載機を有するという情報はなく、

ガミロンのように転送システムを有していても『ヤマト』は現在

ゴーランド艦隊と交戦中でそんなことができる状況にはない。

何より、たかが数機の艦載機を送ってきたところでなんの意味もないのだ。

岩盤の裏側には、戦艦を含む73隻もの艦隊が待ち構えており、

跳躍(ワープ)してきた小型機か宙雷艇は即座に叩き潰される。

そう思い直し、ゴーランドは後衛艦隊に打電を命じる。

 

「後衛に伝令!"転移した敵を殲滅せよ"!

 ……『ヤマト』め、小細工をしたところで……」

 

ミサイル艦隊指揮官は後方に空間跳躍してきた敵艦載機は、

『ヤマト』がミサイル艦隊の撹乱のために放ったものと判断した。

そんなものに惑わされるものか、と傲然と構えるゴーランド。

 

だが、直後にその余裕は打ち崩される格好となった。

 

 

「岩盤後方で巨大なエネルギー反応を感知!!」

 

「こ、後衛艦隊との通信途絶!!」

 

「な、何だと!?」

 

旗艦の索敵手と通信手が同時に叫び、

さすがのゴーランドも驚愕の表情を顔に浮かべた。

その動揺は、側にいた"後継者"にも伝播する。

 

「い、いったい何が……」

 

初陣で全く想定外の事態が連発し、ノル・ゴーランドの表情には

ガトランティスには禁じられた"感情"、怯えの色が滲む。

 

「くっ、狼狽えるな!」

 

そんな様を見て、ゴーランドは自身や周囲への叱責・鼓舞の言葉を吐く。

司令部の動揺は敵に好機を与える___

提督ゴーランドもまた、自身が幼生体ノルだった頃に先代から学んだ

戦場での鉄則に従い何とか落ち着きを取り戻すべく務めたが、

それが遅かったと言わんばかりの報告が届けられる。

 

「『ヤマト』、空間跳躍しました!」

 

「………!!」

 

 

_________________________________

 

 

敵将が自らの失態に歯噛みしている頃、

敵手たる宇宙戦艦ヤマトは移送中の封印岩盤の裏側、

テレザートと周辺の封印岩盤群の重力均衡点にワープアウトする。

このポイントであれば、惑星重力圏へのワープ時に発生する

グラビティダメージを免れることができた。

 

「『ヤマト』、ワープアウト!」

 

「船体・艤装へのダメージ、確認できず!」

 

同艦第一艦橋では、宇宙服を着たクルーたちが小ワープによる

影響がなかったことを確認、奥側の艦長席に座る土方へ報告していた。

 

「周辺に敵艦の残骸多数。

 健在な敵艦は……確認できません!」

 

森船務長が僅かに喜びを滲ませた声色で告げると、

艦橋の各席から「おぉ……」とどよめきが漏れた。

 

彼女の言葉通り、艦橋の窓(厳密には防御シャッターで閉じられており、

映っているのは合成映像である)から見える惑星テレザートと

ガトランティスが外部から移送した封印岩盤の内壁との間の空間内には

白と黄緑色で塗られた、船体構造物や武装などの残骸が多数浮遊している。

中には原型を留めたものもあるが、それらからエネルギー反応は検知できず

死んだも同然の状態で漂っていた。

ワープしてきた『ヤマト』を迎撃するべき敵後衛艦隊は、

事実上壊滅していたのである。

 

「芹沢の土産が役に立ったか」

 

この光景を目の当たりにして、土方艦長は僅かに口角を吊り上げた。

 

「よし、予定ポイントへ移動!

 機関状況回復次第、波動砲エネルギー充填開始!」

 

矢継早の命令を下す土方。

ヤマトはスラスターを吹かして回頭し、補助エンジンで移動を始めた。

 

……宇宙戦艦『ヤマト』がテレザート解放のため立てた作戦。

その第一段階である封印岩盤後方への進出と敵直衛艦隊の撃滅には、

現地球連邦防衛軍司令長官・芹沢虎鉄が手配し、炉王星の宇宙軍港で

ヤマトに積載させた「特殊物資」が惜しげなく用いられていた。

 

まず『ヤマト』は小惑星帯から出撃する前に、

ガトランティス後衛艦隊を壊滅させた兵器を艦外に展開させていた。

それは、かつてガミラスが地球に賠償物資の技術資料として供与した

FS型宙雷艇の機関を参考に開発された、ワープ可能な無人舟艇だった。

ただの無人艇ではない。波動エネルギー兵器の平和転用を目的とした

物理研究の副産物の一つとして生まれた「波動融合弾」を積載し、

同時に発進した97式空間輸送機コスモシーガルからの制御を受けた

5機の無人艇が封印岩盤の裏側にワープアウト。

狭隘な空間内を無人故に負荷を無視した速度と機動で防御砲火を潜り抜け、

舟艇に搭載するAU型制御AIが判定した敵艦隊へ有効なダメージが与えられる

地点で波動融合弾を起爆させ、敵艦隊に甚大な打撃を与えたのである。

ガトランティス後衛艦隊はメダルーサ級戦艦、ナスカ級空母を中心に

五群に分かれテレザートと封印岩盤の間の空間に布陣していたが、

波動融合弾の炸裂エネルギーと衝撃波によりことごとく戦闘不能となった。

そうして、悠然と現れた『ヤマト』は作戦を第二段階へと進めたのである。

 

 

_________________________________

 

 

岩盤裏側にワープアウトした宇宙戦艦ヤマトの動きは、

ガトランティスの読み通りではあったが、後衛艦隊がヤマトに指一本も

触れられずに壊滅したのは大きな想定外であった。

にも関わらず、ゴーランド提督は平静さを取り戻していた。

 

「ふふふ……後衛艦隊を葬り去ったのは流石だと褒めておこう。

 だが、我らの勝利に変わりはない!」

 

ノルと共に旗艦艦橋に仁王立ちするゴーランド。

その目前には先程の陣形から艦を回頭反転させ、さらに両側の梯形を

前方に進めて鶴翼陣形としたミサイル戦艦の隊列が広がる。

先程は旗艦集団の前列にいた旗艦は、

今度は"扇の要"に相当する隊列最後方に位置していた。

 

「破滅の矢を放て!」

 

ゴーランドは勝利を確信して宣言する。

"大帝"から『ヤマト』撃滅のため与えられた新兵器、テレザートから

吸い上げた反物質エネルギーを充填した巨大な「破滅ミサイル」が

旗艦の艦首に装備されている。

長い砂時計のようにも鉤爪を閉じ合わせたようにも見える外見で、

この戦いが実戦での初使用になるだろう。

計り知れない威力を秘めたこの装備なら、テレザートに現れた小癪な敵を

必ず仕留めることができる__少なくとも、ノルはそう考えていた。

 

(ヤマト)は、テレザートの封印が目前となった今になって、

ガトランティス自身が封印岩盤を破壊することはしないと考えている筈だ。

その盲点をついて岩盤を"大砲"で撃ち、ゴーランド艦隊に散弾として

浴びせようとする『ヤマト』を逆に岩盤もろとも屠り去る。

それがゴーランドの立てた作戦であった。

尤も、これは封印効果がある岩盤を有する惑星の発見、惑星を破壊しての

岩盤の切り出し、岩盤の移送、嵌め込みと、封印作業をやり直さなければ

ならないデメリットもある最後の手段と言ってもよい。

本来ならば後衛艦隊に袋叩きにさせるか、後衛との戦いで消耗した

『ヤマト』を前衛が岩盤の隙間を通って来援し撃沈する手はずであった。

(ヤマト)の奮闘は少なくともゴーランドに非常手段を取らせるまでに至ったのだ。

歴代ゴーランドが相対した中でも最強と言う評価は間違ってはいなかった。

だが、それもここまでだ___

 

「破滅ミサイル、発s…」

 

ゴーランドが、敵艦が裏側に陣取る岩盤に最終兵器を発射せんとした時。

艦橋内にアラートが響き、索敵手(オペレーター)が緊迫した声で報告する。

 

「後部上方より敵機来襲!!」

 

「伏兵だと!?」

 

ノルの声色は焦りで上ずった。

艦が破滅ミサイルの発射に注力していたためか、迎撃の手順は遅れる。

元より、『ヤマト』は封印岩盤の内側に跳躍し"大砲"を放たんとしており、

外側に艦載機を残すような真似をすれば射線に巻き込みかねないと

ガトランティス側は判断していたため、またしても虚を付かれた形である。

 

 

 

そうする内にもヤマトの艦載機__コスモタイガー、コスモゼロ、

合計33機が旗艦「ゴーランド」目掛けて急降下してくる。

 

(シノ)(アキラ)!お前らは両隣の艦を引き付けろ!

 残りは俺についてこい!あのデカブツを射たせるな!」

 

ヤマト航空隊隊長・加藤三郎は隊員たちに指示と檄を飛ばす。

隊長命令に従い、篠原・山本が率いる小隊が敵旗艦の両舷前方に位置する

ミサイル戦艦から遅ればせながら撃ち上げられてきた対空砲火を

引き付けるべく左右に分かれ、残りは一直線に『ゴーランド』へ、

ひいてはその艦首の破滅ミサイルへ向け突っ込んでいく。

 

戦闘開始前、『ヤマト』が波動融合弾を乗せた無人艇を放つのと並行して

同艦の航空隊もまた、艦外へ発進させていた。

航空隊は敵の探知圏手前までヤマトに追随すると、推進機を停止し

浮漂・慣性飛行しつつ好機を待っていた。戦域からは遠方ではあるものの

ヤマトが小ワープ前に射出した空間ソノブイからの情報は、無人艇の

ワープを制御したコスモシーガル経由で各機に伝達、戦況を一定程度

把握しており、敵艦隊の超兵器使用の兆候を察知し急遽駆けつけたのだ。

 

当初、戦術長の古代大尉が立てたテレザート解放作戦案では、

航空隊は『ヤマト』が岩盤内壁空間へ進出した後すぐに、

空間騎兵隊の機動甲冑を積載して内壁上空を飛行、これを上陸させ、

敵地上戦力攻撃を行う機動甲冑の支援を行う予定となっていた。

だが、これに土方艦長が待ったをかけた。

土方は上陸の絶対条件である制宙権の確保、即ち敵艦隊の完全排除を優先、

ヤマトの全力を集中してガトランティス艦隊との対決に臨むことに。

 

「複数の敵を同時に相手取れるほど我々の戦力は潤沢ではない。

 特に、地上戦力たる空間騎兵隊は代替しがたく、無為に失うことは

 許されない。ここは、慎重かつ確実に段階を進めるべきだろう。」

 

との事で、テレザート解放作戦は敵艦隊の撃滅を第一に置いていた。

それに加え、土方はガトランティス軍が過去の戦闘で敵の排除のために

いかなる犠牲を厭わない傾向があることを挙げ、テレザート封印のための

岩盤もまた、戦局次第では破壊を試みる可能性があると指摘。

波動砲での攻撃前に未知の兵器による岩盤破壊が外部から行われた場合、

岩塊の散弾は『ヤマト』に向かうため、これに対する備えとして

航空隊を敵艦隊後方からの伏兵として残置したのだ。

 

そして今、その見解の正しさは実証されようとしている。

 

「全機、叩き込め!!」

 

加藤の駆る隊長機の先導で、20機を越えるコスモタイガーから

無数のミサイルが旗艦目掛けて放たれる。

 

「各機、このまま離脱!」

 

第一次イスカンダル航海時からのメンバーである小隊長たちが怒鳴る。

かつてのシャンブロウ星沖海戦での経験から、長時間機体を砲火に

晒し続けるのは危険だが、下手に機体を翻せばそこを狙われてしまう。

まだ経験不足の搭乗員が多い現状のヤマト航空隊ではなおさらだ。

そこでコスモタイガー隊は、そのまま加速を続け敵艦下方へすり抜ける。

幸い、敵の旗艦部隊は周囲の梯形と違い上下に艦を配しておらず

攻撃した敵艦の下部砲塔と下方の敵艦の上部砲塔の挟み撃ちに合うことはない。

敵艦の下部対空砲塔は油断ならないが、遠ざかる敵に狙いをつけるのは

容易ではない___経験豊富な隊長らの判断が隊員たちを生還させるための

最も優れた一手を編み出し、旗艦へ集中攻撃をかけた加藤以下の部隊も、

敵の砲火を分散させるため左右の敵僚艦に向かった篠原・山本両小隊も、

何と被撃墜機を出さずに敵艦隊周辺を離脱することに成功した……。

 

 

 

「敵誘導弾、防ぎきれません!」

 

「おのれ……!」

 

一方、奇襲を受けた『ゴーランド』は猛烈な近接対空火器の猛射撃により

向かってきたミサイルの1/3程度は撃墜したものの、迎撃の遅れと

数の多さをカバーすることはできず艦上に多数の閃光が走り、

衝撃が艦全体を揺るがす。

だが、これは始まりに過ぎず、直後から被弾部周辺に装備されている

各種ミサイルに火焔が迫り始める。

 

「くっ、ミサイル投棄を急げ!」

 

ゴーランドの怒号が飛び、ただただ自艦の保全のために

安全化もされずミサイル戦艦各部からミサイルが射出され出した。

やがて、軌道の計算もされず切除されたミサイル同士が衝突し爆散。

その中には、ゴストーク級の艦橋前方に装備されたものもあった。

 

「うっ、うわぁっ!」

 

『ゴーランド』の艦橋は激しい衝撃に襲われ、艦橋天井部で小爆発が発生。

艦が生み出す人工重力に引かれて、かなりの質量がある部材が落下。

直下のノル・ゴーランドへ向かう。

 

「ノル!!」

 

「なっ、ゴ……父上!!」

 

自身の"後継"の窮地に気付いたゴーランドは、咄嗟にノルを突き飛ばす。

身代わりになるように、彼は重量物の落下に巻き込まれてしまう。

 

「父上、気を確かに!父上!」

 

ノルは、無我夢中で呼び掛ける。

何故、"ゴーランド"という呼び方をしないのか自分でもわからぬまま、

倒れ伏し、黄色じみた赤い血を流して意識を失った先代の体を圧する

重量物を人工兵士(ガトランティス)特有の怪力で押し退け、寄り添う。

そこに、索敵手が呼び掛けた。

 

「ノル様、艦隊の指揮を!」

 

「……この状態では不可能だ!デストールに指揮を引き継がせろ!」

 

直後に再び艦橋内で爆発が起き、オペレーターたちは軒並み倒れた。

結局指揮権の委譲ができぬまま、ノルはゴーランドの肩を担ぎ、

まだ機能を失っていないらしい艦橋エレベーターへ、

その先にある回復用装置が置かれた部屋へと向かう。

何故、自分がこんなことをしているのか、

何故、ゴーランドが自分を助けたのか、ノルには分からない。

それでも、炎と煙の中で歩みを止めることはなかった。

やがて彼の耳には、艦そのものが悶えるような轟音が入ってくる。

 

 

 

「旗艦より破滅ミサイル脱落!

 旗艦、漂流し隊列を離れます!」

 

ノルが聞いた轟音は、『ゴーランド』艦首の大型ミサイルと、

それと一体化していた切り札・破滅ミサイルが艦から離れていく音だった。

破滅ミサイルに付随する大型ミサイルの一部には炎光が灯っており、

その様はミサイル艦隊の僚艦からも見ることができた。

 

「……旗艦との連絡はつかんのか!?」

 

旗艦から見て左翼側の梯形群を、左翼端・最前に位置するミサイル戦艦から

指揮するゴーランド艦隊の中級指揮官デストールは呻くように言う。

視線の先には炎上し、爆発の反動で艦列から遠ざかりつつある旗艦。

しかし通信手からは依然途絶したままと返され、歯噛みした。

 

「かくなる上は私が臨時に指揮を代行する!ルベルーグにも伝えよ!

 全艦、漂流する破滅ミサイルから離れろ!誘爆するぞ!」

 

「しかし……」

 

最上級指揮官たるゴーランドの許可なく勝手に動くことが許されるのか、

通信手は伝達を渋ったため、デストールは剣を抜きながら再度命じる。

躊躇いながら通信手が伝令しようとした次の瞬間である。

 

「「「!!」」」

 

 

 

デストールが危惧した通り、

旗艦から外れて漂流した破滅ミサイルがゴーランドが狙いをつけていた

封印岩盤に到達することなく、ミサイル艦隊の鶴翼陣の中間ほどで炸裂。

瞬時に最寄りのゴストーク級数隻を蒸発させ、プラズマ化させた。

テレザートから吸い上げた反物質エネルギーは嵐となって、

ミサイル爆裂時の高熱を生き延びたミサイル戦艦に襲い掛かる。

あるゴストーク級は艦首や艦上に備え付けられたミサイルが

エネルギー流に刺激され誘爆、そのまま大爆発に呑まれる。

別のゴストーク級は激流に流され僚艦と衝突し、仲良く火球に変じる。

大帝から下賜されたゴーランド艦隊の切り札はヤマトを沈めるどころか、

ゴーランド艦隊そのものを()()へ導こうとしていたのだった。

 

 

_________________________________

 

 

敵テレザート守備艦隊を襲った巨大な災厄は、

宇宙戦艦ヤマトにとっては限りない幸運と言えた。

そしてその様相は、小ワープ前にテレザート公転軌道沖に敷設しておいた

空間ソノブイから『ヤマト』へ届けられていた。

 

「敵艦隊と同一空間で、巨大なエネルギー流を感知!」

 

「恐らく、敵が使おうとしていた超兵器が誤爆したのだろう。

 あのエネルギー量が暴発したとなると、

 今の敵艦隊の陣形は大きく乱れている!」

 

「航空隊がやってくれたのか……!」

 

レーダー手席の森雪が敵を襲った異変を目敏く報じ、

真田技術長が事態を推理・考察する。

小さく快哉を漏らしたのは操舵席につく島航海長だった。

そして『ヤマト』艦長土方竜は、戦術長に告げる。

 

「古代!

 ……この機を逃す手はないぞ!」

 

「……はい!!」

 

古代進は迷いなく答えた。

既に、ヤマトは予定地点にて機関出力を回復させつつある。

敵が態勢を整える前に波動砲で岩盤を破壊し、敵艦隊に追撃を与え

完全な行動不能まで追い込まねばならない。

 

ガトランティスの後衛・テレザート直衛艦隊73隻を波動融合弾で、

前衛のミサイル戦艦艦隊のうち相当数を航空隊の奇襲に伴う敵兵器の

暴発によって沈めたものの、1隻でも敵が健在ならばテレザート解放の

障害となることは疑いようのない事実だ。

 

戦闘が長引けば、必然的に乗組員たちの命を危険に晒す可能性も高まる。

犠牲を最小限とし、目的を達成する。

そのために考えうる限りの最善、次善の策を講じ、実行する。

それが軍人、指揮官としての責務。

古代は決然と、力強く言い放った。

 

「目標、正面軸線上の岩盤。……及び、敵艦隊!

 波動砲、発射準備!」

 

古代の宣言と共に、艦橋各位が動き始めた。

 

「波動砲への回路開け!」

 

「非常弁、全閉鎖。強制注入機作動」

 

「最終セーフティ解除!」

 

「薬室内、圧力上昇」

 

「エネルギー充填120%!」

 

「対衝撃(ショック)・対閃光防御」

 

「照準固定」

 

確かに葛藤はある。

それでも、明日を生きるため。

望む未来を掴むため。

現実を歩み、今日を生き抜くのだ。

再び『ヤマト』に乗り込んだときから覚悟はできている。

一人で引く引き金では、きっと、ない。

 

「発射ァッ!!」

 

一瞬の静寂、直後に艦首から迸る青白い光。

空間を押し退け、余剰次元がマイクロブラックホールと化しては蒸発。

その際に生まれたエネルギーは破壊の奔流として突進する。

 

宇宙戦艦ヤマトの前方を閉ざす分厚い岩盤は、

突き破られた穴から瞬時に崩壊していった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。