結果だけを貪る「地球復興・対ガトランティス戦RTA」はーじまーるよー(絶望)
【第七話】
12月17日、午後3時。
宇宙戦艦ヤマトは極東管区の地下都市への電力供給作業を完遂。
地下都市中の蓄電プラントは2、3日前とは見違えたように溢れんばかりの電力を蓄えていた。
地下都市そのものにも全区画に電力が行き渡り、多くの集合住宅で明かりが灯っている。
飢餓が危惧されたのはいつのことやら、OMCSへのエネルギー・有機物供給は
かつての会議の席上で芹沢虎鉄が言ったとおりに十分すぎるほど行われ、
食糧配給センターにて生産された食品群が各世帯・施設へと届けられていく。
このようにエネルギー問題・食糧問題という目下最大の課題は解決された。
そのため12月15日の午後以降、デモや暴動は完全に停止したといってもよい状態にある。
これには、過日の藤堂行政局長がヤマト帰還発表の際に行った演説の効果もあるようだ。
懸念されていたその他の諸問題の一部にもある程度の目処が立ちつつあるし、
解決が現状困難な課題にも近いうちに解決法が出てくるだろうと人々が考えるように
なるくらいには、大衆心理は安定しており、
地下都市はかつてないほどの穏やかな雰囲気に包まれていた。
物資の欠乏が目立たなかった地下都市生活初期も地表にはガミラスの放つ遊星爆弾が降り注ぎ、
度重なる国連軍の敗戦によって出た戦死者の遺族がデモを行い、悲痛な声を上げていたため、
同時代の地下生活は飢えや不便こそ少なかったが、恐怖と悲嘆に満ちていたのだ。
今となっては、恐るべき侵略者の拠点・冥王星は救世主たるヤマトによって破壊され、
地下を侵しつつあった植物兵器もヤマトのもたらしたという機械によって駆逐された。
地下都市住民は安全と安心を手に入れたうえで、物資の枯渇からも解放されたのだ。
これまでの暮らしを思えば、ここまで落ち着くのもある種当然の帰結といえよう。
さて、無限の力を生み出す機関を用い、より直接的な形で地下都市住民を救ったヤマト。
富士宇宙港に着陸しているその艦では、15日以来大規模な人員の移動が行われていた。
下艦の主な対象となったのは、戦闘の恐れが対暴徒などを除き今後しばらくの運用で無くなり、
お役御免となった戦術科。また、当然のことながら傷病者や士官候補生も下艦した。
それと入れ替わるようにヤマトの甲板に足を踏み込んだのは電源部門などの各種技師や
汚染調査チーム、警備のための陸戦部隊であった。彼らが使用する機材も積載される。
同艦の出航は各種準備・確認が完了する18日の朝、0500時であった。
この日、地下都市においては前ヤマト艦長・沖田十三宙将の葬儀が行われる。
状況は好転しつつあるが、情勢を鑑みて葬儀は近親者のみによる軍葬となる予定だ。
この葬儀の席に、ほとんどのヤマトの乗員が参加することはない。
葬儀の前に、ヤマトは極東管区を出航し、窮乏する海外管区の救援へ向かうのだ。
当初、司令部においてこの決定に反発する意見はいくつも見られた。
“地球を救った英雄なのだから、もう少し形を整えるべきでは”
“たとえ映像だけであっても、艦長との別れに部下たちを臨席させるべきでは”
……などである。
だが、これらの意見は空間防衛総隊司令官で、沖田の親友でもあった土方竜によって退けられた。
沖田はそうはのぞむまい、と。
故人と深い仲であった彼がそう言う以上、それ以上反論を続けられる者はいなかった。
ヤマトのクルーらも、この決定に一応の理解を示した。
同艦の乗員のうち沖田とは古い仲で、特に親しかった徳川機関長などは、
“いまだ地球の大多数の人々が苦しんでいる中、
自身の葬儀で時間を浪費するな、と一喝されてしまいそうだ”
と故人を懐かしむように語ったという。
それでも、葬儀の日の朝の出航に際して、ヤマトによる弔砲がおこなわれること、
ヤマトを下艦したものの中で最高位の二等宙尉である南部康雄砲雷長が代表者として
葬儀に参列することが認められた。
(なお、南部二尉の下艦には彼の実家の要望が働いたようだ。)
この沖田の葬儀に、芹沢軍務局長は出席しない。
沖田と芹沢が対立していたのは水面下でのことだが、それを知らない司令部スタッフはいない。
葬儀の場の雰囲気を乱すことに配慮し、自ら藤堂に申し出て参列を見合わせた。
献花や弔辞などは部下に一任しているし、
だいいち芹沢はすでに沖田に別れを告げており、彼自身に未練はなかった。
その芹沢は、執務室でとある人物と連絡を取っている所だった。
画面に映るその相手は、ヤマトに乗艦させた汚染調査部隊の責任者。
現時刻は12月17日の夕刻。
ヤマト艦内は艦、備品・積載物、乗員などの各種確認作業に追われている。
この汚染調査隊の隊長も地上との最終確認をおこなう、と偽って秘密裏に
司令本部ビルの芹沢と通信を行っていた。ヤマト艦橋から通信先を確認されても、
汚染調査部隊の本室があるのは同じビルの為怪しまれることはないだろう。
尤も、またヤマト艦内でクーデターを起こそうとしているわけでもないのだが。
芹沢が対面している調査隊長は、芹沢がイズモ計画を策定していた頃に知り合った者だ。
その男は、基地などを担当する土木・建築部門に属し、地下都市拡張などに従事し
同分野においてその才能を認められていた。その経歴もあってか、
彼は地球環境の復活など不可能であることを熟知しており、イズモ計画派に与した。
その後、ヤマト計画が持ち上がったあとも内心でイズモ計画を支持していたため、
芹沢の信任を得、事実上の芹沢の子飼いとなった経歴を持つ。
ヤマト帰還後は部門の出世コースから外されたが人員不足によって呼び戻され、
人類が生存可能な環境が復活した地表に、遊星爆弾と植物兵器によりもたらされた
毒性物質が残留していないかを調査するチームの責任者として任務にあたっていた。
先日の藤堂によるヤマト帰還発表時、地表の環境が修復された証拠として映し出された
富士宇宙港の地上部分において、調査を行っていた部隊を率いていたのも彼だ。
彼はその後上層部から、ヤマトに乗艦し海外管区の地表における汚染の初期調査を行い
現地の部隊にデータを提供、除染方法などを教導することを命じられていた。
それと並行して、現職に留任できた芹沢軍務局長から密命を与えられていたのである。
「……局長、こちらの準備は万全であります。なにかご指示に変更はありませんか?」
「うむ、今のところ変更はない。前回の指示通りに頼む。」
「ハッ。では本来の任務と並行し閣下の密命を遂行いたします。」
「すまんな、人類が窮地を脱しようとしている今になってこのようなことをさせて。」
「いえ、恩義ある閣下のためです。喜んでやらせていただきます。」
画面の向こうで恭しく首を垂れる調査隊長。
この男が現場に呼び戻されたのは芹沢が働きかけたことが大きい。
芹沢は調査隊長に頭を上げるように言い、続けて語った。
「……地球も、地球人類も、ついでに我々の進退も、ここからが正念場だ。
こちらも最大限現場の要望に応えるゆえ、ぬかりなく頼むぞ。報告を待っている。」
「は!!」
調査隊長との通信は切れる。
芹沢は続いて、彼の秘書官を務める士官を端末の画面に呼び出した。
「局長、どういったご用件でしょうか。」
「……うむ。アポを入れてくれ。相手は………」
執務机に腰を下ろす芹沢は秘書官と言を交わし、希望のアポ日時を指定。
机の引き出しからメモ用紙一枚と万年筆を取り、アポの時間を記入する。
「はっ、では先方にお伝えしておきます。しばらくお待ちください」
「頼むぞ。」
通話が終わり、今度は端末の電源も切られ執務室には再び静けさが戻る。
芹沢も暫時瞑目していたが、突如として再度万年筆を握り、
先ほどのメモ用紙の裏側に別の
地表では間もなく日が暮れる。
太陽が再び極東管区の地を照らすころ、ヤマトは飛び立つだろう。
旧イズモ派重鎮、芹沢虎鉄の思惑を知ることなく……。
あらかじめお断りしておきますが、「宇宙戦艦ヤマトという時代 2202年の選択」
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」において本作と矛盾するどんな新設定が出たとしても、
この小説には一切関係ありません。
ヤマトワールドはマルチバースらしいので(某高次元存在談)、
この小説はそのような(新設定の)経緯を経なかった世界線と
いう設定で通させていただきます。あしからず。
公式の後付け設定は二次創作最大の天敵だからね、しょうがないね