宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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第六十八話 テレザート爆撃戦

 

【第68話】

 

 

波動砲の一閃により、砕け散った封印岩盤。

元から円錐筒に近い形であったことも相まって、惑星外へ向かい

飛散した無数の岩塊は"破滅ミサイル"の威力に苦しむ敵艦隊に直撃する。

装備していた旗艦から外れ起爆した決戦兵器が生んだ、エネルギーの嵐から

辛くも逃れた40数隻のミサイル戦艦は、巨大な質量の散弾に衝突され

またしても、針鼠のように装備したミサイル火力を活かすことなく爆散。

 

それでも、必死の操艦によって僅かなゴストーク級が生き延びる。

ゴーランド艦隊左翼部隊の指揮官・デストールの乗艦もその一隻だった。

 

「『ヤマト』め、おのれ……!」

 

デストールは目に入る惨状に切歯扼腕した。

現状、『ヤマト』からは封印岩盤裏側への小ワープ直前に発射された

誘導魚雷しか直接の攻撃を受けておらず、自軍に至っては迎撃弾と

誤爆した破滅ミサイル以外は一発とて敵に撃っていない。

にも関わらず、『ヤマト』は巧みな戦術でテレザート直衛艦隊を殲滅し

今また、ゴーランド艦隊主力を壊滅させつつあった。

 

「健在な艦は何隻残っておる!?」

 

憤懣を表情に浮かべながら通信手に報告を求めるデストール。

幾分か顔を青ざめさせながら、通信手は告げた。

 

「ほ、本艦を含めて9隻……右翼隊旗艦『ルベルーグ』も健在です!」

 

「むぅ……!」

 

デストールは唸る。

自身と同じ艦隊の中級指揮官ルベルーグが座乗する指揮官名と同名の

ゴストーク級も何とか難を逃れたらしい。『デストール』と同じく

艦隊の端に置かれたことが破滅ミサイルの嵐や岩塊の散弾を避けるのに

有効だったのだろう。他の残存艦も多くは鶴翼陣翼端に位置した艦だった。

 

それにしてもと、愕然とするデストール。

健在であることが知れたゴストーク級ミサイル戦艦は僅か9隻。

元の72隻から考えれば1/8、激減などという言葉すら生ぬるい。

それでも彼は、ガトランティスとしての使命を忘れることなく

恐れず怯まず、『ヤマト』再攻撃のための準備を開始した。

 

「『ルベルーグ』に打電しろ。

 現状、旗艦『ゴーランド』は落伍し行方不明、

 先任順序に基づきデストールが指揮を取る、とな。」

 

デストールとルベルーグは同じゴーランド艦隊の副将という立ち位置だが、

当代のルベルーグは幼生体から元服してよりの期間がデストールより短い。

ガトランティスでも、同じ階級の軍人ならば先任者の方が指揮権を得る。

この規範に基づき、デストールはルベルーグの率いる右翼隊残存艦を

指揮下に収めるのだった。

 

(いくさ)はまだ終わっておらん。

 『ヤマト』め、勝ち誇っておるだろうが目にもの見せてくれるぞ!」

 

戦士(ガトランティス)として、栄光ある「ゴーランド艦隊」の名に懸けて、

必ず憎き『ヤマト』を沈めてやる___

デストールは決意と共に進撃命令を発した。

 

 

 

 

一方、その宇宙戦艦『ヤマト』には急報が飛び込んできた。

 

『こちら航空隊、沢村。

 テレザート周辺の岩盤内壁面にメダルーサ級戦艦複数確認!』

 

「な、メダルーサ級だって!?」

 

仰天の声を上げたのは砲術長席の南部中尉だ。

ヤマト第一艦橋に入れられた報告は、敵ミサイル艦隊への攻撃後、

そのまま敵下方へ離脱し波動砲及び飛散岩盤の影響圏外に抜けた

ヤマト航空隊からの偵察報告だった。

ヤマトをガトランティス超兵器ミサイルの脅威から救ったばかりか、

敵艦隊主力の壊滅にも一役買った彼らは、岩盤外壁すれすれを飛んで

飛散した岩塊を回避し、件の"穴"から岩盤内壁とテレザート星の間に突入、

内部空間を飛行・航空偵察を敢行したのだ。

これは、コスモタイガーの優れた航続距離の賜物と言えた

(念のため出撃時には増槽/高機動ユニットを装備していたが)。

 

そんな彼らからの報告で、当初は空間騎兵隊の降下を計画していた

岩盤内壁に置かれていると予測された敵地上戦力の詳細が判明したのだが、

その実情は極めて意外な物だった。

 

「メダルーサ級が……なんて数だ。」

 

「炉王星の時ほどじゃないが……」

 

航空隊が撮影した画像データが艦橋天井に展開され、幹部乗員らは息を呑む。

そこにはガトランティス軍艦には極めて珍しい、黒や黄褐色で

塗られた艦体色のメダルーサ級5~10隻の集団、それも複数が、

岩盤内壁に布陣しているという恐るべき事実が示されていた。

 

ガトランティスの重戦艦メダルーサ級と地球軍艦で初めて渡り合ったのは、

他でもない宇宙戦艦ヤマトだ。故に、その恐ろしさは身に染みている。

超兵器・火焔直撃砲(地球側は火力転送システムと呼称)に加え、

艦前部の大型砲塔を始めとした大火力、艦尾にはV字型の飛行甲板も

装備されて艦載機を発進させることさえでき、敵とすれば極めて厄介だ。

だからこそメダルーサ級を含む敵テレザート直衛艦隊との直接対決を避け、

波動融合弾で始末したというのに、まだこんな数が潜んでいたとは。

 

「この数から火力転送砲を浴びせられたら、『ヤマト』は……!」

 

「じょ、冗談じゃないぞ!」

 

太田気象長や相原通信長が動揺の声を口走るが、土方艦長は冷静に指摘した。

 

「待て。___なら、何故ヤマトがこの空間に進入したときに

 このメダルーサ級たちは攻撃してこなかった?」

 

「……確かに。

 推論の域ではありますが、これらのメダルーサ級は高度な空間航行能力を

 有していないのかもしれません。

 それに、特殊転送砲も装備していない可能性もあります。」

 

土方の発言を受け、真田がこれらのメダルーサ級の正体を考察する。

 

「ってことは、こいつらはメダルーサ級の船体を転用した

 陸上戦艦ってことですか?」

 

「だから岩盤の内壁にへばりついて、ヤマトを攻撃してこなかったのか……」

 

「なるほど、確かに陸上戦艦なら、船底の特殊砲をオミットして

 地上用の推進システムに換装していてもおかしくありません。」

 

島、徳川、新見が納得して言う。

だが、超兵器砲を装備していなくともあの数のメダルーサ級が

ヤマト艦載の唯一の地上戦兵力・空間騎兵隊の脅威であることに変わりない。

 

(俺は、あんな化け物の前に斎藤隊長たちを放り出す気でいたのか)

 

古代は知らなかったとは言え、仲間を危険に晒す作戦を立てていたことを

省みて、忸怩たる思いを抱くと共に、それにストップをかけてくれた

土方に強い感謝の念を抱く。

そして、あの地上戦艦群をどう始末するかに思考を切り替えようとした時。

 

「レーダーに感!

 敵ミサイル戦艦の残存艦、本艦に向かってきます!

 数、5!」

 

森雪が切迫した声で報告し、艦長席の土方が声を張り上げた。

 

「対艦戦闘用意!」

 

索敵手席のレーダー画面には、飛散した岩塊間を縫うようにして

敵ゴストーク級がヤマトの正面から接近しつつある様が映し出される。

敵は同程度の速力で岩塊空域を進行しており、単横陣に近い隊形だが

漂う岩塊を避けねばならず相互に距離が開き、半ばバラバラである。

そして敵の数も僅か5隻だが、あの重装備を考えれば危険な敵には違いない。

しかも、今のヤマトは小ワープに続く波動砲発射でエネルギーに余裕がない。

 

「技術長、準備はいいか!?」

 

「はっ、いつでも可能です!」

 

無論そんなことは計算済みであり、『ヤマト』首脳部は()()を立てている。

問題は、それが有効か否かだ。

 

「敵、急速に接近!……ミサイルを発射した模様!」

 

雪の声が一層緊張感を帯びたものになるが、

それに覆い被せるように艦長席からの声が飛んだ。

 

「マグネトロン・プローブ起動!」

 

「マグネトロン・ウェーブ放射開始!

 岩塊を敵ミサイルへ向け射出!」

 

真田副長が艦長の声に応え、操作盤(コンソール)から()()を起動させる。

その途端、ヤマトの前方・側方周囲に浮遊していた封印岩盤の成れの果てで

波動砲を射ったヤマトの方へ流れてきた少数派の岩塊が動き出した。

明らかに人為的な動きで、ヤマトの舳先の向く方へ動いていく。

よく見ると岩塊表面には棒状の装置が突き刺さり、赤い光を放っている。

これこそは、人類がまだ波動機関と波動防壁を持っていなかった頃、

移民船を防御するために編み出した船体防御システムであった。

 

艦後部マスト基部にある爆雷投射機から射出した端末(プローブ)が刺さった

岩塊や小惑星は、マストから発される「マグネトロン・ウェーブ」によって

動きをコントロールされ、敵の攻撃に対する防壁となる。

現在運用されているような迎撃的運用の他にも、岩塊のリングを形成したり

船体に密着させたりしての防御に使うことも可能だ。

 

宇宙戦艦ヤマトは、波動砲で最後のテレザート封印岩盤を破壊したあと、

周辺に漂ってきた大量の岩塊にマグネトロン・プローブを打ち込み、

敵ミサイル艦隊の残存艦の存在に備えていたのである。

 

なお、この装備もまた芹沢防衛軍統括司令長官の手配によって

アステロイド空間採掘業のハブとしても開発が計画されていた、

太陽系第11番惑星・炉王星にて積載された「特殊物資」だった。

これらは皆、「採掘用資材」として開発製造され同惑星に送られていたのを

芹沢の手引きによってヤマトへの装備として転用・委譲されていた。

 

「敵ミサイル第一波、全弾岩塊群に命中!

 ……敵艦隊、ミサイル第二波発射!」

 

雪の報告が続く。

どうやら敵は、『ヤマト』が何らかの小細工を施していることに気づいて、

周囲の岩塊を使い尽くすまで飽和攻撃を行うことを決めたようだった。

が、その思惑にわざわざヤマト乗員が乗るはずもなく、動きを見せた。

 

「面舵30!第二波の阻止と同時に攻撃開始!」

 

土方の命令でヤマトが回頭し、3基の主砲が迫り来る敵艦隊へ向いた。

そして先程と同様にヤマト周辺から射出された岩塊が、

遥か前方でミサイルの進路を阻塞し激突、そのまま四散する。

 

「主砲、三式弾!()ぇーッ!」

 

『ヤマト』の48cm砲九門が咆え、赤熱した砲弾を吐き出す。

直後には、ヤマトの艦腹の側方発射管からミサイルが飛び出した。

放たれた砲弾、少し遅れてミサイルは、敵ミサイル阻止を表す黒煙を

突き破って、事前の照準通りにゴストーク級戦艦群へと飛び込んだ。

 

無数の岩塊を掻き分けて『ヤマト』前方に現れた5隻のミサイル戦艦は

敵艦から放たれたミサイルを防ぐべく迎撃ミサイルは発射したものの、

ガトランティスからしても原始的兵器である実体弾については回避しか

対策がない。が、岩塊が多数浮遊する空間を進行中ゆえに回避機動は難しく

5隻中2隻が三式弾の直撃を甘んじて受け、また1隻はミサイルの迎撃を

しくじって艦首大型ミサイルに被弾、火の玉と化した。

 

「照準修正よし!」

 

「第二射、撃てッ!」

 

これでヤマトの正面に残るガトランティス戦艦は2隻となったが、

地球戦艦は容赦なく追撃をかける。

南部砲術長の報告を聞くや否や、今度こそと古代戦術長が吠えた。

呼応するように、甲板に屹立する巨砲は砲炎を噴く。

 

極限まで加速された砲弾は進路上にいた異星軍艦の円盤状船体を穿ち、

あるいはそれに山のごとく装着された噴進弾を薙ぎ倒し、爆砕する。

比較的被弾面積が小さいはずの前面から艦体に大穴を空けられるか、

武装部に巨弾を叩きつけられたゴストーク級はたちまちのうちに轟沈または

火だるまになって制御を失い周囲の岩塊に激突した。

 

これで、邪魔者は消えた___

第一艦橋の大多数の幹部乗組員たちが考えたが、

そう判断するのはまだ早かった。

 

 

「12時方向より新たな敵艦4!急速に接近してきます!」

 

雪がレーダーに捉えられた艦影を見て、警告を発する。

現在の『ヤマト』は波動砲を射った方角、

即ち封印岩盤の穴に正対する角度から右側に艦首を向けている。

そこから12時(正面)方向より新たな敵残存艦隊が突っ込んできたのである。

 

可能な限り高速で飛散した岩塊群を迂回し、岩盤の外壁近くから

"穴"に突入するため単縦陣を組んでいたガトランティス艦隊は、変針して

艦同士の連携を取りつつゴストーク級の火力を最大限に発揮できる

梯形陣に隊列を組み換え『ヤマト』へ向かってくる。

艦列最後尾のゴストーク級ミサイル戦艦は『デストール』だった。

 

「ルベルーグ、よくやったと褒めてやる!」

 

全速力でヤマトに迫るゴストーク級の艦橋で

ゴーランド艦隊の副将デストールは、先程乗艦と共に宇宙の塵と化した

年若い同僚に餞の言葉を贈った。

そもそも、ここまでの状況はデストールが思い描いた通りのものである。

まずルベルーグが率いる部隊を『ヤマト』正面から進撃させ、

その耳目を引き付けているうちにデストールの隊が飛び散った岩塊を

迂回して側面から急襲し挟撃する、という筋書きだ。

誤算だったのはデストール隊の到着よりも早くルベルーグ隊が

全滅したことだったが、それを差し引いても『ヤマト』が岩塊を

コントロールして攻撃を防ぐ術を有していることを明らかにしたこと、

さらには岩塊での防御や実弾攻撃をしなければならない程に

ヤマトのエネルギーが低下していることを示した功績は大きい。

デストールは『ヤマト』を葬り自軍(ガトランティス)を最終的な勝者とすべく

攻撃命令を発した。

 

「全艦、ミサイル発射!

 まずは岩塊の盾を剥ぎ取ってくれる!」

 

ガトランティスのミサイル戦艦各部から多数のミサイルが発射される。

さしもの『ヤマト』と言えど、この量に対する防御には

制御下に残る全ての岩塊を投じなければ防ぎきることはできまい。

岩塊での防御が出来なくなった所で数の利を活かして飽和攻撃を浴びせ、

ヤマトを宇宙の藻屑とするのだ。

 

かくして、『ヤマト』はデストールの思惑通りに艦周囲に追随する

全ての岩塊を前面へ投射展開し盾とした。

岩塊群にミサイルが飛び込むと閃光と、紅蓮の炎が発生し

ヤマトの"大砲"で封印岩盤が砕かれたものである岩塊をさらに粉砕する。

デストールは勝利を確信し、『ヤマト』への追撃を下令した。

 

「死ね、『ヤマト』!!」

 

ゴストーク級戦艦艦首に上下2基設置された、

"破滅ミサイル"ほどではないにせよ巨大なミサイルが放たれ、標的(ヤマト)へ向かう。

発射された8基のうち3基は、敵の主砲が放った実弾(ミサイル進路上で

爆散したため、散弾だったらしい)に撃ち落とされたが、

残りは引き続き『ヤマト』へ吸い込まれていき、巨大な爆炎を

ゴストーク級群の舳先の彼方に描き出した。

 

 

 

「!!」

 

直後、デストールは目を見開き驚愕した。

黒灰色と赤で塗られた艦首が黒煙を裂くようにして現れ、

やがて健在な『ヤマト』の無傷の姿がモニター画面に映し出された。

艦体の周囲には、かすかに青白い輝きが灯っている。

間に合わなかった___あるいは、間に合ったのだ。

 

 

「反撃に出る!砲撃用意!」

 

再び回頭し、敵艦隊に対し丁字を描く進路を取る『ヤマト』。

その第一艦橋では土方艦長の号令一下、敵艦隊への報復が準備されていた。

 

「舷側ミサイル発射管、ショックカノン、用意よし!」

 

()ーッ!!」

 

『ヤマト』艦上の5基の砲塔が、一斉に青い光条を撃ち放つ。

 

4隻のゴストーク級のうち、梯形の最前・最左方に位置した艦に

陽電子の束が突入し、一挙に貫通。

間も無く火焔を噴き上がらせ、大爆発させた。

 

予期せぬ敵の猛反撃に泡を食って転舵回頭を試みた

2番目のゴストーク級は、続いて来襲した敵のミサイル複数を被弾、

推力を失って急減速し、回避運動が遅れた後続艦に激突。

2艦揃って艦上のミサイルが誘爆して果ててしまう。

 

結局、舵を切って『ヤマト』との同航戦に持ち込めたのは

隊列最後尾にいた『デストール』だけだった。

同艦はミサイル発射後のミサイル砲塔をビーム砲へ切り替え、

諦めることなく砲撃戦を挑む。

生ある限りガトランティスの戦いは継続される、その原則に忠実に、

または帝国最精鋭のゴーランド艦隊の矜持から、戦いを捨てなかった。

 

対する宇宙戦艦ヤマトも、これに砲撃で応じた。

敵艦はこれで最後、このまま決める__と言わんばかりの

猛射撃が艦首ミサイルを放って全長がかなり短くなった敵に浴びせられる。

 

そして、『デストール』上甲板のビーム・ミサイル両用砲列に飛び込んだ

ショックカノンの一撃を以て、短くも壮絶な応酬は唐突な終わりを告げた。

 

致命的な被害を負ったことを明かすように、爆炎が被弾部から噴き出し

艦の上部全体を焼き始め、まもなく他の被弾部の火焔とも艦を裂いて打通した。

 

「ば、馬鹿な……

 無敵の、ゴーランド艦隊が……!」

 

火に包まれた艦橋で、瀕死のデストールが言い得たのはそれだけだった。

『デストール』は減速して同航砲戦を演じたヤマトに追随できず、

そのまま封印岩盤の"穴"の中で四散した……。

 

 

_________________________________

 

 

かくして宇宙戦艦ヤマトは、敵テレザート守備艦隊百数十隻を

ただ一艦で打ち破るという、史上稀に見る偉業を達成したが、

現時点で同艦が完全な勝利を収めたとは言い難かった。

 

惑星テレザートを包む封印岩盤の内壁には、

メダルーサ級を改造した陸上戦艦が無数に布陣している。

陸上戦艦の原型が航空戦艦であることを鑑みれば、航空戦力も相当な

数があるに違いなく、陸上戦艦が搭載する戦車などの地上戦力は

もはや見当もつかなかった。

 

テレザート解放作戦の完遂には、この敵地上戦力の掃討も不可欠だ。

しかし、『ヤマト』の地上戦兵力は「二式機動甲冑」を装備する

空間騎兵隊1個中隊のみである。

彼らはヤマトがテレザートからのメッセージを最初に受け取った12月始めに

二式機動甲冑の完熟訓練を済ませた対天体降下作戦の専門家たる精鋭部隊だ。

二式機動甲冑は、歩兵に空挺飛行能力と装甲車並の防御力、携行火力を

付与する重パワードスーツであり、AUユニットの機能拡張ユニットを

ベースとしてガミロイドやガミラスの警備大型ロボットに使われる技術も

利用され試作されていた「試一式機動甲冑」を基として開発された、

地球防衛軍の最新鋭歩兵用陸戦装備であった。

 

とは言え、いくら何でも500mを超える陸上戦艦多数を擁する

大部隊を相手取るのは無理がありすぎる。

宇宙戦艦『ヤマト』の艦砲支援や同艦艦載航空隊の近接航空支援を

受けたとしても極めて過酷な戦いを強いられるのは想像に難くない。

 

よって、宇宙戦艦『ヤマト』の土方艦長以下首脳部は、

艦隊戦勝利後の選択肢(オプション)の一つとして存在した、

封印岩盤内壁への降下制圧作戦を達成困難・大損害を受ける

危険性大と判断し、放棄。

別の手段(アプローチ)を探るため一旦、岩盤の"穴"から外部へ離脱。

この間にかなり負担の大きい役割を任せた、ヤマト航空隊を収容した。

 

 

そして、それから一時間ほど後。

新たな方針を策定した『ヤマト』は、行動を開始した。

 

新作戦は、敵地上軍の排除をすっ飛ばしての、封印岩盤そのものの破壊。

土方らは、敵の陸上戦艦があまり高度な空間航行能力を有さないことに

着目し、敵が足場としている岩盤自体を破壊してしまうことで

岩盤もろとも敵陸上戦艦群を抹殺しようと計画したのである。

高度な空間航行能力を持たない陸上戦艦は、崩壊する岩盤上から

満足に脱出することができず崩壊に巻き込まれる可能性が高い。

言うなれば、敵の土俵に上がらないどころか

敵を土俵もろとも吹き飛ばそうとしていたのである。

 

幸い、テレザート封印岩盤の破壊は元から決定されており、破壊手段も

テレザート星から二度目のメッセージを受けとり同惑星の制圧状況を

知らされた時から用意されていた。

 

それは、解放寸前の余剰次元を内部に置いた一種の超小型波動機関で、

同じく波動エネルギー兵器の平和的利用を目指した研究の成果である

「波動融合弾」と同じく大エネルギーを発生させることのできる爆弾、

「波動掘削弾」である。

これもまた、炉王星で積載された防衛軍長官からの手配物資であり、

"史実"で真田副長らヤマト乗組員が艦内工場で製作したものよりも

小型化され、より対地貫通弾頭型に近い形状となっている。

これが岩盤へ投下されれば、ガミラスの特殊削岩弾のごとく表面のドリルで

岩盤の深層、事前に計算された岩盤崩壊のための最も有効なポイントまで

掘削潜航するのである。

 

宇宙戦艦ヤマトは封印岩盤上を爆撃機のごとく飛行し、

第三艦橋前方にある艦底部ドームの高圧対応格納庫を爆弾槽として、

これら波動掘削弾を8基、次々に岩盤外壁側に投下していった。

外壁側の敵防衛戦力は小さく、設置型の砲台が置かれるのみで

投下前の艦砲射撃によりあっさりと封殺されていった。

岩盤外部の防衛は、先に破れ去ったミサイル艦隊に依存していたのである。

また、内壁の敵陸上戦艦は空間航行能力の不足や、内壁からの出口たる

"穴"が岩礁空域と化していることから外壁側で活動するヤマトに

阻止行動を起こすことができなかった。

 

投下された波動掘削弾は順調に起動し、予定の岩盤深部地点へ到達。

そして、安全圏へ移った『ヤマト』からのコントロールにより起爆。

 

威力が最大限に増幅される、最適化された位置へ投下された掘削弾は

爆発時に衝撃波を岩盤全土へ放出。8つの深層から放たれた衝撃波は

互いにぶつかっては合わさり、威力を増して岩盤を蝕んだ。

 

ガトランティスが各地から集め、曳航してきた封印岩盤は接合を解かれ

地溝帯からバラバラになると共に、岩盤自体も無数の岩塊へ変ずる。

封印岩盤はテレザート星から斤力を受けており、岩盤が崩壊するや、

残骸は一挙に外部へと外部へと押し広げられていく。

岩盤内壁にいた無数のメダルーサ級改造地上戦艦は『ヤマト』側の

予測通りに崩壊に巻き込まれていき、テレザート守備艦隊以上に

来襲した外的に対する迎撃に何ら寄与せぬまま壊滅していった。

 

そして岩盤が砕けると、星系の主たる恒星からの光が再びテレザートに

差し込み始め、宇宙の闇の中に、再び青い水の星が現れる。

 

宇宙戦艦『ヤマト』が今次の航海で目指すべき星、

伝説の惑星テレザートがついに姿を見せるのであった。

 

 

_________________________________

 

 

「……おのれ、『ヤマト』…!!」

 

殻のように包んでいた封印岩盤が排除され、

本来の姿を取り戻したテレザートへ向け進んでいく『ヤマト』の姿が

望遠画像としてモニターに映し出されており、青年が怨嗟の声を発した。

 

ここは、テレザート沖海戦で『ヤマト』の艦載機に攻撃され

艦隊から落伍するも、そのお陰で破滅ミサイルの誤爆や

"大砲"による岩盤の破壊の余波を運良く免れることができた、

ゴーランド艦隊の旗艦『ゴーランド』の臨時艦橋である。

 

そこには指揮官代行として立つ、ノル・ゴーランドの姿があった。

 

彼は艦隊指揮官ゴーランドを治療・回復用装置に入れた後、

艦内の火災消火などダメージコントロールの陣頭指揮を取り、

辛うじて旗艦を爆沈の危機から脱させたのだ。

しかし、今のミサイル戦艦『ゴーランド』は武装の殆どを失い、

機関も最低限に近い出力で、漂流しているに近い状況だった。

 

そんな中で、ノルは通信兵からの報告に接した。

 

「ノル様!

 ザバイバル将軍との連絡が取れました!」

 

「何!?」

 

災厄の中での朗報を受け取ったノルは、

即座にザバイバル将軍との通信を開始する。

 

将軍も、『ヤマト』の岩盤そのものへの攻撃によって

麾下の陸上戦艦群を始めとする陸戦師団を殲滅されており、

現在は岩盤崩壊の中辛うじて飛び立った甲殻攻撃機(デスバテーター)で脱出の途にあった。

 

『立派になられたな、ノル殿。

 ゴーランド殿も回復の折りには喜ばれるでしょう。』

 

「……ありがとう。無事の合流をお待ちしている、ザバイバル将軍。」

 

ザバイバルからの言葉を複雑な面持ちで聞き、通信を終えたノル。

ザバイバルの乗機を回収後、どう行動したものか思いを馳せるが___

 

 

「……何だ、あれは……!?」

 

思考を中断させるかのように、モニターに映された多数の艦影が

目に飛び込んできた。その姿は、ノルにも覚えがある。

ガミロンだ。

 

「何故、ここに奴らが……!?」

 

地球(テロン)とガミロンが手を組んだことは、ノルも知っている。

では、宇宙戦艦『ヤマト』はあの大艦隊の尖兵だったのか?

……とてもそうは思えない。

 

幸い、相手は『ゴーランド』が死んだものと見て捨て置いており、

攻撃される恐れはなさそうだ。

 

しかし、ノル・ゴーランドは、テレザートを、テレサの力を巡る戦いが、

いまだ終わりそうにないことを察し、険しい表情を浮かべるのだった……。

 

 





今回使われた「波動掘削弾」は2205でヒュウガがイスカンダルに
撃ち込んだものが先んじて開発されたと言うイメージです。
「波動融合弾」は私の独自設定兵器ですが、イメージは旧作の
波動カートリッジ弾を滅茶苦茶強力にしたものとしています。
「無人ワープ艇」は波動機関と推進機だけついた舟艇で、
ビジュアルは旧作の雷撃艇をイメージしております。

また、拙作における「二式機動甲冑」はR.A.ハインラインの「宇宙の戦士」の
装甲服と2205ver.の機動甲冑を混ぜたようなイメージでお願いします。

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