宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

8 / 90
真田「モアンゴル、前話を出してから何日経過した」

作者「……えーー、二週間ほどかと……」


\ パ ァ ン /


作者「!!」

真田「投稿が遅い」




第八話 猛虎奔走せり その3

 【第八話】

 

  

 西暦2199年 12月18日。

 

朝焼けの赤に染まる東方の空。

 

水平線の彼方からやってくる暁光は、極東管区最高峰の美しい山容と、

その裾野に錨を降ろす巨艦の威容を影絵さながらにくっきりと浮かび上がらせた。

時刻は現在、午前4時半を回ったところだ。

 

 

 その巨艦、宇宙戦艦ヤマトの艦橋では、粛々と出航の用意が整えられていた。

 

「機関、異常なし。主機・補機ともに正常に稼働中。」

 

機関長・徳川彦左衛門三佐が機関状況良好の旨を告げる。

 

「地上作業隊、退避完了とのことです。」

 

通信長、相川義一三尉が地上からの報告を伝える。

 

「艦長代理、ヤマト出航準備整いました。」

 

そして状況を総括し、場の最高責任者に指示を求めるのは航海長・島大介一尉。

振り返った彼の視線の先にいるのは、元来ヤマト副長兼技術長を拝命していた真田志郎三佐。

彼は前艦長沖田十三の死後、ヤマト運行の責任者・艦長代行を任せられていた。

真田は報告を副長席に座し、瞑目して聞いていたが航海長の言を聞くと小さくうなずき発令した。

 

「よろしい。ヤマト抜錨!」

 

「了解!ヤマト抜錨します!」

 

島航海長がコンソールを操作。それに同期して、着陸していたヤマトの錨が巻き上げられる。

続いて、ヤマト艦底のスラスターが炎を噴き巨大な艦体を大空へと押し上げた。

先ほどまでヤマトが接地していた地表は噴炎と衝撃波で薙ぎ払われ、大きな穴を穿たれていた。

 

 

 

 富士を背景に空へ飛翔したヤマト。同艦は一定高度まで上昇した後、静止した。

その船体は日の出前の赤い光を受けて、堂々と輝いている。

ヤマト第一艦橋・技術長シートに座りヤマトの離陸を指揮していた真田艦長代理は

艦内放送のマイクを取り、艦内の各位に呼び掛けた。

 

「こちらは、現・ヤマト運行責任者・艦長代理の真田三佐だ。

 本艦は先ほど富士宇宙港臨時停泊地を発ち、いまその上空にある。

 本艦、宇宙戦艦ヤマトはこれより地球の各地下都市を巡りエネルギー供給などの

 任務群に就くのは諸君も周知の通りだと思う。この任務が、人類にとっての重要性では

 あのイスカンダルへの航海にも劣らぬものであることも然りだ。」

 

真田は常時と同じく、冷静に告げていく。訓示はさらに続いた。

 

「……世界中の人々の大多数は、今もなお困難な状況下に置かれている。

 彼らはこのヤマトの発進の際に、貴重なエネルギーを提供してくれた。

 我々はその恩義に報い、人々の協力が実を結んだことを示さねばならない、

 ………と、沖田艦長なら仰るかもしれない。」

 

「艦長はご自身の生命をかけてヤマトの前人未到の旅を導いて下さった。

 ……艦長は我々に地球の明日を託し、命の火を燃やし尽くしたのだ。

 だからこそ我々は、行かねばならない。

 先人から託された希望を、未来へと繋げるために……!」

 

「……沖田艦長は、万人から尊敬を集めるに相応しい方だった。

 ……どうか、地球にてヤマトの帰還を待っていた諸君にも参加願いたい。

 現在、本艦は極東管区の地下都市のある方角へ艦首を向けている……。」

 

 

……総員!!沖田艦長へ、敬礼!!

 

 

ヤマト艦内の者たちは元よりのヤマトクルーも、

技師や調査チームや陸戦隊などの新規乗船者たちも関係なく、一様に

艦首方向、すなわち沖田の遺体がある地下都市へ向けて敬礼を捧げた。

 

同時に、ヤマトの第一・第二主砲が最大仰角をとり、砲声を轟かせた。

弔砲である。

予め準備されたプログラムにより自動で撃ち放たれるヤマトの48㎝主砲。

一基につき三回、計六回十八発、朝焼けの空に厳かな轟音が響き渡る。

富士宇宙港の地上部でヤマトを見上げている作業員たちには、

まるでヤマトそのものが沖田の死を嘆いているように見えた。

 

 

しばらくして、弔砲の残響も曙光に燃える彼方へと去っていく。

ヤマトクルーたちも、気持ちを切り替え為すべきことに向ける。

 

「ヤマト、回頭完了。新針路設定よし。」

 

「うむ。進出目標、ユーラシア大陸。ヤマト、発進!!」

 

「ヨーソロー、ヤマト発進!!」

 

エンジンノズルが唸りを上げ、放たれる大推力が巨艦を彼方へ走らせる。

舳先は西方に向けられ、ヤマトは一路ユーラシア大陸へ発進した。

 

 

 

 

「では、ヤマトは予定通りに発進したのだな」

 

「はっ。0530現在、同艦は朝鮮半島上空を通過中です。」

 

極東管区地下都市・国連軍本部ビル内部会議室にて。

芹沢軍務局長とその幕僚数人がヤマトによる各管区への支援計画について合議する。

一同は床面のモニターに表示された東アジアの地域図に視線を落としていた。

画面上で日本の富士宇宙港にあたる地点から延びる線は、ヤマトの通過コースである。

 

「それなら、東亜管区地下都市にも定刻通りの到着が可能か……」

 

「……問題は、東亜管区側の状況ですな。」

 

幕僚の内一人が発した言葉に、芹沢やほかの幕僚たちの表情が険しくなる。

予想される問題の原因が現地の状況にあるのはこの場の全員の共通認識だった。

 

「一昨日、短時間ではありますが同管区との通信が一時復旧、情報交換を行いましたが、

 同地の状況はやはり芳しくありません。以前の我が管区と同様にエネルギー・食糧は

 不足し、それがもたらす暴動の規模と過激さは我が管区のものを上回ります。」

 

「これを放置しておけば近く同管区は無政府状態となり、支援が困難になります。」

 

「……だからこそ、地理的な近さと相まって第一の支援先に指定したのだ。

 で、支援する旨は伝えたのだろう。エネルギー供給ができる設備はどうなのだ?」

 

「ハッ。旅順の宇宙軍港に、こちらが送った富士宇宙軍港の仮設給電設備の

 データを参考にして同様の設備群を用意するとのことです。」

 

「……あの情勢下だ、どこまで準備が進められているか…」

 

芹沢は渋い表情を浮かべた。こればかりは現地の人々に託すほかないのだ。

 

「……兎も角、準備が整い給電を開始したと仮定します。」

 

「そうだな、東亜管区は我が管区の倍以上の人口規模を持つ。それ相応の時間がかかるか」

 

 

 ……国連ユーラシア・東アジア管区、通称東亜管区。

その前身は中華人民共和国(以下中国)から数度の政変を経て建国された東亜連邦共和国である。

東亜連邦共和国は旧中国を中心に、台湾・朝鮮・モンゴルが合併した領域を持ち、

その政体は民主主義である。地方分権が相当に強力であったが、火星戦役の際には

団結し、国連宇宙海軍を生産・補給の面で強力にバックアップしていた。

かねてより企業が大きな勢力を持っていたが、沿海部では工業、内陸部では農業工場による

農産を主産業にすることで所得格差などの改善を行って一定の安定を保っており、

その人口はガミラス戦役開始前に25億近くに達していた。

 

が、ガミラス戦役が開始するとそれは一変する。

大都市部などを中心に地下都市整備を行っていた東亜連邦改め東亜管区だが、

膨大な人口を養うには規模が小さすぎた。国土の広さも相まって遊星爆弾の落着も数多く、

直接の犠牲者のほかに植物兵器による死者が逃げ遅れた人々に続出した。

大きな経済規模を誇るゆえに軍備負担も大きかった同管区はガミラス軍との各戦闘に参加、

甚大な人的・物的被害を負い、2199年以前に宇宙艦隊を全滅させられた。

地下にまで進出した植物兵器に対応すべく行った地下都市の拡張工事は厳しいスケジュールが

設定され、過労や事故による死者も頻出した。それでも一応は完成した深層地下都市だったが、

居住環境の劣悪さでの疫病や、急造故の欠陥工事による事故死は相次いだ。

……尤も、これらの状況は他の管区においても同様のものがあったのだが。

 

……以上の理由によってかつて25億を誇った人口は6分の一程度に落ち込み、

その激減した人口すら満足に養えぬほどの困窮を余儀なくされているのが東亜管区の現状だ。

 

 

「……通信による情報交換によりますと、16日の時点で我が管区同様東亜管区は発電施設が

 一律で停止。電源プラントの蓄電電力で賄っていたとのことですが、暴動の余波で

 何か所か機能を停止せざるを得ない状態にあったとのことです。」

 

「……それでは電力供給をしても満足に蓄電ができないということか」

 

「向こうの担当者は供給までに全力を挙げて復旧すると言っていましたが、

 あの状況、しかも給電設備の設営と並行で行う以上、期待はできません。」

 

「では、ヤマトが長期にわたり東亜管区に拘束されてしまうのを覚悟せねばならんな」

 

「はい、残念ながら。しかし同地の行政組織崩壊阻止には不可欠なものです。」

 

「うむ。しかしだ、ロシアやインド、アフリカなどは一層困窮しており、

 すでに行政組織も崩壊している可能性が高い。緊急性で言うなら東亜と変わらん。

 これらの管区への支援も優先されるべきだとは思うが。」

 

芹沢は腕を組み幕僚たちを見回す。地球の全管区の早期復興はいずれ来る

ガトランティスとの戦争に向けて絶対に解決せねばならない問題である。

 

「閣下の仰る通りです。極東管区軍はかねてより閣下の提示された方針に従い、

 ヤマトの来航に先立った各管区の支援受け入れのための下準備を整えさせる計画を

 推進しました。ご覧ください。」

 

幕僚は芹沢にそう返すと、端末を操作し床面モニターに新たな画像を映し出した。

 

「……こちらが計画書です。空間輸送機三機を一組とし、すでに行政組織が崩壊した

 可能性のある管区へ派遣、同地を偵察し全滅していなければ、同地の最大勢力に

 接触し受け入れ準備を行わせます。対象管区は今おっしゃられたロシア、

 インド、アフリカ、南アメリカです。」

 

「それについては報告を聞いたが、出発の方はいつだ?」

 

「本日中に準備が整い、今晩中に各隊発進するとのことです。

 また、通信部門は継続して比較的余力のある管区に対して

 情報交換ができるよう呼びかけを行っています。」

 

「そうか、では当座のところできることはここまでか……」

 

「そうなります。後の経過はヤマトに託すほかありません……」

 

「徹頭徹尾、ヤマト頼りですな……」

 

「仕方あるまい、もとよりそのための船だろう?」

 

副官の嘆息に芹沢が肩をすくめて応じたが、場の空気は硬い。

 

「……どの道、我々は我々にできることをやるしかない。

 軍の物資(リソース)を支援計画に集中できるよう手配する。各部隊の編制、機材などの情報を収集せよ。

 長年の情報錯綜で休眠していた物資などがあるかもしれん。漏れがないよう行え。

 必要であれば藤堂長官にも掛け合って、解隊・配置変更・新編成も行う。

 地表の恒久拠点設営計画に多少の影響が出るかもしれんが、そこは割り切るしかない。

 我々だけ能天気に地表復員などと考えているわけにはいかんからな。」

 

「了解しました。」

 

芹沢は、今後の軍部の行動方針を示し、会議を解散するのだった。

 

 

 

 

 舞台は戻って、ヤマト艦上。同艦は6時きっかりに旅順宇宙軍港上空に到達した。

 

「地表より、誘導ビーコン確認。旅順湾内へ降下します」

 

島航海長はヤマトを降下させ、湾内へ着水させた。

旅順軍港は富士宇宙港と違いあくまで既存の洋上艦軍港に宇宙艦用軍港を併設させたものであり、

富士宇宙港と比べ防御力は幾分か劣っていた。地下ドックなど地下設備もあるにはあったが、

遊星爆弾の直撃は免れたものの植物兵器に侵食されてしまい使用不能となっていたのだ。

東亜管区において富士宇宙港に相当する主力軍港は内陸部の青海省にある宇宙軍港だったが、

同基地は東亜管区の地下都市からあまりに離れている上、東亜管区宇宙艦隊壊滅により

存在意義をなくし人員がすべて撤退したため送電設備設営の基地として不適と判断された。

よって、地球環境復活と東亜管区の除染部隊により植物兵器が除去され、

東亜管区地下都市に近い旅順軍港が給電地点として選定されたのだ。

 

「艦長代理、湾の北岸より通信が入っています。」

 

「受け入れ部隊だろう。メインパネルへ回せ。」

 

相原通信長がコンソールを操作しヤマト第一艦橋天井モニターに給電支援受け入れのため

地上へ上がってきた東亜管区の工作部隊隊長の姿が映し出された。

 

「こちらは、国連軍東亜管区第102工作隊、隊長の(リャン)少佐です。

 今回の支援、本当に感謝しています。」

 

「いえ、当然のことです。これより、本艦から技師がそちらに向かいます。

 受け入れ準備をお願いしたい。」

 

「わかりました。では、詳細は後程。」

 

東亜管区側指揮官(リャン)少佐との通信は簡潔に終わった。

旅順湾内に錨を降ろしたヤマト上空を、2機のコスモシーガル輸送機が通過する。

ヤマトがあらかじめ降下着水前に発進させていた機が飛来したのだ。

2機は旅順湾北岸の東亜管区工作隊陣地へ向かう。

真田三佐らヤマトブリッジクルーはその様子を一抹の安堵とともに眺めていたが…

 

「どうやら、懸念されたような事態にはなりそうにないようですな。」

 

「こっちに出番がなさそうなら、それはなによりというべきだな。」

 

ヤマトに新たに乗艦した二人の男が、エレベーターで第一艦橋へやってきたのだ。

一人は極東管区司令部の制服を着た眼鏡の男で、もう一人は野戦服姿のごつい男。

およそ似合わぬとりあわせであり、そんな二人が並んでいる様子は珍妙にも思える。

 

「下村二佐、斎藤二尉、何か?」

 

真田は二人が艦橋に来た理由を尋ねる。

 

「いや、今後の行動指針について相談しようと思いましてね。

 我々はあくまで便乗者ですから。」

 

眼鏡の男、下村光次郎二等宙佐は国連軍極東管区土木部門のエリート士官。

ヤマトには汚染調査部隊隊長として乗艦した。

そう、彼こそが芹沢と密通している男なのである。

 

野戦服の男はかつて月面に駐留していた空間騎兵隊第七連隊に所属し

つい先日まで地下都市にて暴徒に銃を向けることを余儀なくされていた、

斎藤始。彼は警備部隊長としてヤマトに乗艦する折に二尉へと昇進している。

 

彼らはともに芹沢陣営の発案によりヤマトに便乗した部隊の指揮官だが、

芹沢は下村を秘密任務を遂行させるため乗艦させたのに対し、

斎藤については将来乗艦する可能性があるため経験させておこうと考え配属したらしい。

 

「……なるほど、ですがしばらくは本艦は電力供給作業に注力したい。

 貴隊の活動開始はヤマトが電力供給を開始してからにしていただきたい。」

 

「えぇ、理解しています。時間ができたら、詳細をお話しさせてください。」

 

真田の言葉に頷きながら、下村は眼鏡の奥の瞳を細め、口の両端を吊り上げる。

 

 

 

 2199年12月18日。ヤマトは世界中の各地下都市への電力供給支援を開始した。

 

 




オリキャラの下村光次郎二佐は外見は「名探偵コナン」の風見裕也、
声は飛田展男さんで想像してください。
彼の名前の由来は「芹沢鴨」の前名「下村嗣次」、忌み名の「光幹」からです。

東亜管区の梁(リャン)少佐は「宇宙戦艦ヤマト」の原案「アステロイド6」が元ネタです。

感想の方、お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。