【第79話】
超大型空母「バルゼー」は、地球軍に鹵獲された"大戦艦"が大挙して
混乱状態から抜け出せていない機動艦隊後方艦列へ突っ込んでくるという
第一報を掴んだ直後から、直属の旗艦集団構成艦共々全速後退に移った。
そのすぐ後、
亜光速ミサイルにも匹敵する速度まで加速した鹵獲カラクルム級2000隻は
統率をほぼ失った第六~第十集団のカラクルム級約7000隻に激突する。
ガトランティス機動艦隊の旗艦指定色である"白"に塗装された巨大空母の
艦橋正面窓からは、最初に遠方の巨大な火球、続いてより手前に無数の火球が
生じる凄惨な光景を一望することができた。
「なっ……くぅぅ……!」
戦果一つ挙げないうちに麾下艦隊が壊滅していく地獄にも等しい様を
見せつけられたバルゼーの表情に、焦燥と恐怖の色が滲む。
だが、それ以上は彼に許されなかった。
より切実な、彼の指揮を求める声が、副官ヴィルホから浴びせられたのだ。
「バルゼー提督!! 敵特攻艦が来ます!」
「……!」
いち早く避退に移ったことが幸いしたのか、
旗艦集団は鹵獲大戦艦の特攻の直撃を受けることはなかった。
しかし、生き残った地球軍特攻艦79隻は今度こそ敵旗艦集団を葬るべく、
彗星帝国第七機動艦隊を宇宙の深淵に紛れて監視していた改FE級索敵艦の
観測支援を得て、三々五々の体で追撃を開始していたのだ。
生き残った鹵獲カラクルム級も無傷ではなく、船体は損傷だらけで、
簡易型機関に多大な負荷をかけたことから船足は大きく落ちていた。
それでも鬼気迫る勢いでガトランティス旗艦艦隊に突撃せんとしている。
まるで、血だらけの手で掴みかかろうとしているようだった。
「___迎撃せよ! 直衛戦艦群、前へ!!」
持ち前の闘志を奮い立たせたバルゼーは、矢継ぎ早に命令を下す。
第七機動艦隊司令部の"旗本"である旗艦集団は、
"ラスコー級"突撃型巡洋艦15隻、"ククルカン級"襲撃型駆逐艦45隻の計64隻に加え、
"カラクルム級"大戦艦8隻を司令部直轄・直衛戦力として有した。
バルゼーは、手持ち戦力の中で個艦としてはアポカリクス級航宙母艦に次ぎ強力な
"馬廻衆"を前面に押し立て、
ただしこのカラクルム級は、2万5000を数えていた機動艦隊主力の構成艦とは
兵装に差異があった。
「直衛戦艦群、
旗艦集団に属するカラクルム級の、塔の如く背の高い艦橋に備えられた三連装砲は
軌道間空間___土星沖の戦場にて破壊された彼我のカラクルム級と共通するが、
その基部にある固定式連装砲は他艦の備えるものよりも一回り口径が太い。
これこそ、通常型カラクルム級の特殊兵器・旋回雷撃砲を廃した代わりに
旗艦直衛部隊のカラクルム級に搭載された決戦兵器・螺旋衝撃砲だった。
「敵特攻艦群、順次射程に入ります!」
「砲撃開始!!」
バルゼーの命が飛び、麾下の"大戦艦"各艦の大口径連装砲が光条を放つ。
発射されたビームの纏う"余波"は、横を向いた竜巻のように幅を増していき、
傷ついてなお敵旗艦を目指す地球軍の鹵獲カラクルム級を、一度に複数隻巻き込む。
すると、ビームが直撃していないにもかかわらず鹵獲大戦艦は爆発した。
一方、ビームがそのまま直撃した大戦艦は、角ばった艦首から艦尾ノズルまでを
串刺しにされるように溶解・貫通され、火球へと変わる。
しかも、"余波"によって近傍にいた艦も諸共に破壊したのだ。
"決戦兵器"に位置づけられるだけある高威力ビームは連射も可能としており、
隻数では旗艦集団を上回っていた残存特攻艦隊は限界に近い状態で突撃を
敢行していたことも相まって、次々と撃ち減らされ、最後の一隻も、沈む。
「敵特攻艦、全滅!」
「………。」
この戦闘が始まって、ガトランティス艦隊は初めて戦果らしい戦果を挙げた。
が、司令長官の表情が晴れることはない。
当然である。本来ならば、このような圧倒的な勝利が封鎖陣を形成している
地球艦隊主力に対して得られるはずだったのが、指一本も触れられていない。
しかも、今しがた破壊したのは元は帝星の艦なのだ……。
だが、そうしている間にも第七機動艦隊の苦境はいよいよ重篤なものとなっていた。
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ガトランティス艦隊の旗艦部隊が目前の敵に手一杯になっている間に、
同艦隊の最前衛集団を半壊から立て直せないほどの崩壊に追いやった元凶である
ワープブースターと波動防壁を備えた惑星間弾道弾は続々と数を増やし、
順繰りに気息奄々の第七機動艦隊主力艦列へ突入しては爆裂。
艦隊縦列前方を成し、波動融合弾攻撃を辛くも生き延びたカラクルム級の群れを
永遠に戦力外へと追いやっていった。
最初の一発も含め、ガトランティスの前方艦列を捉えた巨大爆発は計12回。
天体クラスの高熱、爆圧で漂流した僚艦や破片との激突に加え、
制御を受けるための必須要素である通信艤装や艦橋・機関など操艦に要する
部位の損壊による事実上の無力化で、1万2500隻を数えた第一~第五集団所属の
カラクルム級大戦艦群の残存艦は、限りなくゼロに近づいた。
状況は、第六~第十集団からなる後方艦列でも大同小異であった。
2000隻の鹵獲カラクルム級による集団特攻は、
減じてなおその3倍以上はいた残存無人艦の戦闘力をほぼほぼ削り取る。
超高速で突っ込んだ特攻艦は直線上にいた複数の大戦艦を道連れにし、
その高速の破片は数倍する艦を損傷させる。そんなことが2000近く起きれば
万単位を数える戦力集団であってもたまったものではない……。
その反面、
元は根絶対象であった
再び大宇宙へと出撃し、この日見事に"同胞"と相討ちになり果てて、
ガトランティスの旗の下では得られなかった任務達成の本懐を遂げたのだった。
土星沖と呼称可能な、天王星・土星軌道間空間の内側寄りの宙域の戦場を
今や、ラッパや暴発した散弾銃のような様相を呈している。
縦隊列前方の大戦艦群は艦列の中心軸上で起きた爆発により、
中央部にいた艦は蒸発、外縁部にいた艦は外側四方へ漂流を始めた。
縦隊列後方に位置した大戦艦列は、
徹底して
カラクルム級の墓場を形成しており、これらを併せて見ると
横向きの漏斗状に艦艇の残骸が広がっていた。
この情景は、戦場にある地球艦隊の旗艦・宇宙戦艦「ムサシ」でも確認されており、
同艦CICの第二連合艦隊司令部では、万単位の敵に壊滅的損害を与えた快挙に沸いていた。
「おめでとうございます、長官! 《プランC》、成功です!」
ワイアット・G・ロバーツ参謀長も喜色を隠しきれず、弾んだ声で告げている。
一方、連合艦隊の司令官であるマーカス・J・パエッタ中将は安堵の面持ちであった。
「……そうだな。だが、完全に敵が掃討できるまで油断はできん。」
「はっ!」
防衛軍参謀本部、同盟国・共和政ガミラスの銀河系派遣部隊司令部が
一丸となって立案・策定した対ガトランティス巨大艦隊迎撃作戦は、
「
その実態は戦場で実現した通り、力押しで正面から襲い来ると読んだ
"火力の檻"の中へと誘い込み、殲滅を図るものである。
作戦は見事に結実、敵艦隊を崩壊させつつあったが、パエッタの言う通り
ガトランティス艦隊との戦いはまだ終わってはいなかった。
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最優先対処事項だった地球軍鹵獲大戦艦の特攻を退け、
改めて第七機動艦隊が蒙った夥しい被害に直面した司令長官バルゼーは、
2万5000隻の大戦艦が悉く喪失または戦闘不能に陥った事実に愕然とする。
傍らの副官ヴィルホが震える声で、度重なる攻撃を受けてもまだ生き残り、
なお行動可能な艦隊主力集団群に属する"大戦艦"の制御掌握を指示する一方、
バルゼーは脳内で、ここまでの地球軍による攻撃方法を振り返った。
この彗星帝国軍の提督にとって、敵の戦法にどこか既視感を感じていた。
歴代のバルゼーが戦い、攻め滅ぼしてきた文明のものに通じるのか___違う。
敵の同胞の屍を利用し自爆させる……これは紛れもないガトランティスの戦法だ。
そこには、作戦を立案したであろう人間の皮肉と悪意が見え隠れしている。
まるで、「人間を虫ケラ同然に踏み躙ってきたのだ。同じように虫ケラとして死ね」と
嘲笑うかのように___。
「おのれぇ~~~~!!」
それに気付いた瞬間、遂にバルゼー提督は激昂した。
充血し紅潮した表情が、怒髪天という表現さえ生易しくなるほどの憤怒を振り撒く。
この時バルゼーは、持てる艦隊戦力の大半を失い、任務失敗・即ち敗北が濃厚という
見下していたはずの僚将メーザーとほぼ同じ立場に置かれている。
人間という不出来な存在と同じ領域に堕ちるとされ、禁忌とされていた筈の感情が
沸き上がり、それに駆られた点まで共通していたが、バルゼーは全く気付かなかった。
怒りのままにバルゼーは、
旗艦集団を中心とした、第七機動艦隊の全残存戦力に対して怒鳴り、発令する。
「全軍、突撃せよ!!
__
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「敵艦隊より艦載機の発進を確認! 数、500以上!」
FE級宇宙輸送艦改造のステルス偵察艦部隊「
地球連邦防衛宇宙海軍・第二連合艦隊と彗星帝国軍・第七機動艦隊の戦いが
「こちらも、迎撃機を発進させますか?」
「いや、
敵艦隊のデブリゾーンになるだろう。そんなところで有効な空戦はできまい。
先ほど同様、艦隊の対空砲火で迎撃する!」
ロバーツ参謀長の問いに即答し、堅実な迎撃プランを採択するパエッタ中将。
彼は、司令部の通信オペレーターに向き直って告げた。
「それと___防衛軍総司令部ならびに、
"《プランC》成功せるも、敵旗艦含む残存艦隊が健在。
我、これより敵艦隊に決戦を挑まんとす。" ___送信急げ!!」
ここまで来たからには、かならず勝利する___そんな意気込みが、
パエッタ司令長官の昂然とした面持ちから溢れ出ていた。
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バルゼー艦隊の旗艦・アポカリクス級空母「バルゼー」と、その直衛集団に属する
4隻のナスカ級中型空母から出撃したのは甲殻攻撃機デスバテーター約700機。
大多数は戦闘序盤で撃破された自滅型特攻艦と同じく、旗艦空母の飛行甲板が
船体ごと
地球軍鹵獲艦の特攻で壊滅した艦隊後方集団の脇を航過し、惑星間弾道弾の爆圧で
前方集団の無人の大戦艦とその残骸が漂流・形成されたデブリ帯へ突入する。
「……今だ!
無人打撃艦群、ミサイル攻撃を開始せよ! デブリ諸共吹き飛ばせ!!」
旗艦「ムサシ」CICのモニターに、敵攻撃機隊の先頭集団がデブリゾーンへと
進入する様が図表状の
ガトランティスの剣型特攻艦を迎撃した際と同じく、指揮官の命令は直ちに
改FE級無人
来襲する敵機は先の特攻艦の数倍の数に及ぶため、
戦術AIの勧めを受けた士官の判定により1隻につき20発もの融合弾頭ミサイルが
数波に分かれ、デブリ帯に、ガトランティス艦載機隊に向けて飛翔した。
順繰りにデスバテーターと迎撃ミサイルが、地球艦隊前方に環状に広がる
第七機動艦隊前方部隊の成れの果てであるデブリ帯に突入していき、
デブリ群も巻き添えに火球となり、あるいはその炎に呑まれていく。
デブリは攻撃隊の隠れ蓑でもあったが、回避機動を阻む障害でもあった。
三回から四回、デブリ群の中で計1600発のミサイルが炸裂し、甲殻攻撃機を焼き尽くす。
それでも元の多さが功を奏したのか百機程度が生き残り、デブリに紛れて
レーダーを撹乱して追撃を遅らせ、地球艦隊へ肉薄することに成功。
そのまま、ミサイルを射ち放つ。
「敵ミサイル接近!」
「迎撃しろ! 旗艦をやらせるな!」
とうとう敵の攻撃が直接
対空ミサイルが発射され始める。「ムサシ」も煙突VLSから迎撃弾を発射した。
「打撃艦56号、37号被弾!……12号轟沈!」
そして、地球側にもついに喪失艦が生じた。
ガトランティス攻撃隊は濃密な迎撃網を潜り抜け、あまりに低い確率を引き当てて
地球艦隊に一矢報いることに成功した___が、そこまでであった。
「敵ミサイル及び敵残存機、全滅です!」
「前列無人艦部隊、沈没8、損傷14。後列の有人艦隊に被害はありません。」
狙いをつけやすかった艦隊前方の無人艦に着弾した一部を除き敵ミサイルは撃墜され、
攻撃を終え、機銃射撃を加えるべくさらに艦隊へ接近を試みたデスバテーター群も
速射ショックカノンやパルスレーザーの猛烈な火線に絡めとられ粉砕される。
「前方の敵残存艦隊に、強力なエネルギー反応!!」
「何!?」
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やはり地球艦隊の防御を崩せず、軽微な損害を与えるに留まった艦載機部隊。
だが、バルゼーにとってはそれでも十分だった。
「破砕ビーム、発射ァ!」
ばっ、と左手を前へ振り向けて命じる機動艦隊の司令長官。
同時に、巨大空母「バルゼー」の艦首に突き出た2本の砲門から
航路啓開用障害物破砕ビームが前面に漂う濃密な残骸群を吹き飛ばす。
旗艦護衛部隊に属する8隻のカラクルム級からも螺旋衝撃砲が連射され、
短時間の間に第七機動艦隊後方集団群の
ガトランティス残存艦隊が航行できる
「全艦突入!
その言葉通り、白い超大型空母を隊列の先頭として、
彗星帝国艦隊は回廊へ進入、地球軍の封鎖陣へ向けて急進する。
その道中で、旗艦「バルゼー」が制御権を回復した生き残りの無人カラクルム級が
隊列に加わり始め、その総数は116隻を数えた。
(……艦載機隊は全滅したが、敵宙雷投射艦に少なからぬ打撃と混乱を与えたようだ。
ならば、それが回復しきらぬうちに正面突破する!!)
事ここに及び、バルゼーは改めて己れが代々継承してきた戦術へと帰着する。
戦況に対する有効性ゆえの判断だが、同時に司令長官の、あくまでも自分が
提督個体「バルゼー」として戦い抜くという気概や矜持、そして意地も伺わせた。
旗艦集団を中心とする第七機動艦隊残存部隊は、
現在の合計が189隻と往時と比べるべくもないほど撃ち減らされている。
これは地球艦隊の約250隻にも及ばない数だが、残存艦隊のうち124隻は
同級が地球軍艦の倍以上の戦闘力を持つことを鑑みれば、
事実上の総戦力ではいまだにガトランティス側が優勢である。
(構図は未だに変わっておらん! 我らの質量で以って敵を圧し潰すのみ!)
バルゼーは敵が空間跳躍させてくる新戦力が見られないことから、
敵の手札が尽きたと考え突撃を開始させた。もはや脅威と見做すべきは一つ___
「こうなれば、あの旗艦__『
残存艦隊は猛進撃で、射程の長い砲なら地球艦隊を捉えうる位置へと進出しつつある。
司令長官はその初撃目標として、この戦闘で終始脅威と考えていた"大砲"を有する
敵艦隊の旗艦・宇宙戦艦「ヤマト」の同型艦に狙いを定めたのだった。
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「二連艦司令部より命令だ。……波動砲発射用意!!」
標的となった「ムサシ」艦橋ではまさにその時、
突入してくる敵艦隊を撃砕するべく、波動砲発射シークエンスへと移行していた。
「ムサシ」前方に展開していた改FE級無人
発生した隊列の混乱を回復しようとしていたが、敵の猛襲を見て一時有人艦の上下に
配置され直すこととなり、「ムサシ」艦橋窓から見ることはできない。
だが、「ムサシ」の波動砲発射後に残余の敵艦へ飽和攻撃を加える手筈になっていた。
「総員、対
二連艦旗艦「ムサシ」第一艦橋クルーが宇宙服ヘルメットの対閃光用バイザーを下げ、
艦首決戦兵器を使用するための機関の調整、砲の安全装置解除に取り掛かっている。
波動砲の発射トリガーはこの時、尾崎徹太郎艦長が握っていた。
(……初めてだな、俺が引くのは)
ヘルメット内に冷たいものを流しながら、尾崎大佐は引き攣りつつも口角を吊り上げる。
艦長として、やれるだけのことはやった___そんな思いと共に、その時を待った。
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「砲撃開始!!」
バルゼーが命じると、アポカリクス級巨大空母からは先ほどはデブリ除去のため放った
高威力ビームが放たれ、カラクルム級大戦艦8隻からは螺旋衝撃砲が発射される。
高威力ゆえ長距離でも減衰しにくい砲撃を放った後、残存艦隊各艦は隊列を解散した。
(___勝った!これで終わりだ、
バルゼーは長距離砲撃の成功、第七機動艦隊による地球艦隊の蹂躙の成功を確信した。
ガトランティス艦隊でも、敵旗艦に"大砲"を使用する意図があることを、
センサーで検出される機関動力の推移から察知しており、敵"大砲"搭載艦への
集中攻撃を終えた後、念のため敵旗艦の"大砲"射線上からの退避を決めていた。
万が一砲撃を外しても、
砲撃が命中すればそれでよし、命中せずとも"大砲"を回避した後に再度攻撃し、
発射後の隙を突いて敵旗艦を撃沈できれば地球艦隊を崩壊させることは容易い。
(さぁ見せろ、「
しかしバルゼーは、たった今の砲撃が"「ヤマト」"を葬り去ることを確信しており、
砲撃後に敵射線から降下した乗艦の、艦橋天井モニターにその様が映るのを待った。
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「敵の砲撃、来ます!!」
波動砲シークエンス最終段階に突入した「ムサシ」の電測手が叫んだ。
波動砲発射準備中は全エネルギーを集中するため無防備となり、回避もできない。
ミサイルなら僚艦が迎撃できるが、迫り来るのはエネルギー砲撃だ。
艦橋正面窓に灯り、次第に大きさを増す閃光。
尾崎大佐も、発射準備を進めていた士官たちも、
艦橋から転送された映像をCICで見るパエッタ中将も、ロバーツ少将も、目を見張る。
ここまでか___。
突然、ガトランティス艦隊が放った砲火の前面に、青白い輝きが現れた。
それは膜のように、地球艦隊を守る壁のように青い光の波紋となって広がり、
破砕ビームや螺旋衝撃砲を受け止め、爆発する。
「___
そう呟いたのは、第九艦隊司令官ルーベン・ワード少将であった。
彼が新たな旗艦に定めた「コングレス」を始めとした改
艦首に特殊兵器・重力子スプレッド砲を一門装備しており、
艦全体のエネルギーの大半と引き換えに、射出先に重力フィールドを形成できる。
これまでの戦闘ではエネルギー損耗が激しいデメリットで投入する機を逸していたが、
ここ大一番で旗艦を狙った一撃から、見事に「ムサシ」を守り抜いたのだ。
そして、それは直後に、決定的な
「総員、対
「___照準よし!」
「波動砲、発射ァ!!」
尾崎艦長がトリガーを引き、「ムサシ」艦首から青い閃光が迸る。
それは一直線に、艦列を崩してまで射線から離れたガトランティス艦隊へ向かうが___
________________________________________
「___!!」
バルゼーは、モニターに、次いで旗艦艦橋の正面窓に映った光景を見て己の目を疑う。
短時間のうちに、現実はバルゼーの目算をことごとく裏切っていた。
旗艦空母と直衛戦艦群という艦隊の中枢戦力が分散回避前に放った砲撃は、
"「ヤマト」"に直撃すると思われた矢先、寸前で放たれた未確認の敵兵器で防がれた。
その爆煙が晴れると、敵旗艦は"大砲"を発射。
第七機動艦隊は敵の予測射線上から退避しており、巨大な光芒は虚しく通過するばかりと
バルゼー以下ガトランティス艦隊の全将兵が信じていた。
ところが。
発射された砲撃は一定地点まで進むと数十、数百にも拡散し、
射線上から脱したはずの艦隊各艦に向けて正面から飛び込んできたのである。
無論、彼の座乗艦、
白い超大型航宙母艦「バルゼー」もその例外たり得なかった。
今、旗艦艦橋の窓には分散した"大砲"の光が真正面に映り、刻々と強さを増している。
直撃は、避けられない___。
形となって現れた、避けがたい「死」に、バルゼーの表情は歪む。
それでも彼は、提督としての、
迫り来る必殺の輝きから目を逸らすことも、目を瞑ることもしなかった。
ひたすらに光を、自分が滅ぼすべき敵がいる正面を睨みつけ、獅子吼した!
「___死して、大帝にお詫びをォォォーーーーー!!」
次の瞬間、バルゼーの意識は燃え上がり、その身体は青白い破壊の奔流に呑み込まれ、
彼の名を冠した巨大空母も、主もろともに叩き割られ、粉砕される。
100隻以上のカラクルム級も有人・無人を問わず同様に消滅していく。
隊列の後方に占位していたナスカ級やラスコー級・ククルカン級もだ。
第七機動艦隊の残存部隊は、この一撃の下に叩き潰されたのである………。
巨大なエネルギーの氾濫が去り、そこには大宇宙の静寂が残された。
追撃として用意していた無人打撃艦のミサイル飽和攻撃が無用となったため、
地球連邦防衛宇宙海軍・第二連合艦隊は早くも艦列の再編を始めている。
次の、主敵である白色彗星に備えてだ。
戦いはまだ、終わっていない。