【第82話】
時は少々遡る。
白色彗星都市帝国、天守閣内部「瞑想の間」にて腕組みしながら思考に浸る
ガトランティス大帝・ズォーダーの下に、同諜報記録長官ガイレーンが現れた。
目を伏せていたズォーダーはちらと来訪者に目をやり、訊いた。
「……彼奴らが、回答を急かしてきたか」
「いえ。」
「なら、何用だ。期限にはまだ少しある筈だが」
老臣の返答を聞き、顔に怪訝の色を浮かべて問いを重ねるズォーダー。
対して、ガイレーンは顔の上半分を覆う仮面に手をかけ、外す。
そして、語りだしたその口調は、「臣下と主君」の間で交わされるには
いささか不適当なものであった。
「……儂とて、かつては"ズォーダー"であった身。
こんな状況で、己が何を考えているかは見当がつく。」
「……」
だが、ズォーダーはガイレーンを咎めることもなく、静かに聞き入っている。
老臣は諜報記録長官という地位以上に、"大帝の分身"という特殊な出自を持つ。
故に、「瞑想の間」に入室を許されるこの二人は、彼らしかいない同室では
こうしたやり取りを(極めて稀ではあるが)交わすことがあるのだ。
ガイレーンは、深く皺が刻み込まれた貌を大帝に向け、続けた。
「……千年前と重ねているのだろう?」
「__ッ」
俯いたまま、拳を握るズォーダー。
"分身"の言う通り、彼の脳裏には、大帝が代々継承してきた
忌むべき、帝星ガトランティスの始まりの記憶が描き出されていた。
敗北と、強いられた選択。そして、絶望___
否が応でも、現在置かれた状況に通じ、ズォーダーの中で重なってくる。
「彼奴らも既に、我らについて知り尽くしていると言えよう。
恐らくは、テレサの導きで。」
ガイレーンの重々しい声が部屋に、ズォーダーに響き渡る。
彗星帝国の情報網を一任されている老臣が判断した理由は、
敵が提示した「降伏条件」にある。
彼らの脳裏に降伏勧告を述べた地球人の男(芹沢虎鉄)の姿が浮かび上がる。
男が口にした、降伏に際する条件として列挙されたのは以下の要求であった。
『即時の戦闘・敵対行動の停止と、ガトランティス全軍の武装解除』
『科学奴隷とした技術者捕虜の解放・返還』
『保有する科学技術ほかの全情報の開示・引き渡し』
『白色彗星要塞都市の放棄、全ガトランティス人の同地からの退去』
__これらはあくまで基本要項であり、停戦後にガトランティスに対する
詳細な戦後処理が
勧告の中で触れられ、具体的な指示の一部は上記の条件と共に告げられていた。
『__なお、彗星都市からの退去時に、地球・ガミラス両国は
ガトランティス側に対し、民族維持のための諸装置群の搬出を許可する。
我が方は許可する装置として、人造細胞培養に関する設備、
並びに
地球人の男が口にした『自壊装置』。
ズォーダーも、ガイレーンも、それが何を指しているかよく分かっていた。
戦闘用人造人間種ガトランティスを創造した古代ゼムリア人が、
ガトランティス人が叛逆した非常時のための保険として用意していた安全装置。
全ガトランティスの人造細胞を破壊し死滅させる歌、滅びの調べを奏でるもの。
かつて1000年前の叛乱の際、真っ先にズォーダーが押さえながらも破壊することが叶わず、
敵の手が届くはずのない彗星都市帝国最深部・玉座の間に置かれた、戦闘民族の要。
___『ゴレム』について語っていることは、瞬時に理解できていた。
ガイレーンの言う通り、
「ヤマト」によって封印を解かれたテレザートの女神・テレサであろう。
テレサが「ヤマト」に与えた啓示が
至極自然である、とズォーダーは結論づける。
その推論は、半分的中していた。
確かに公的には、"ガトランティスの自壊装置"の存在は惑星テレザートへ派遣された
宇宙戦艦「ヤマト」が、同地で接触した文明の遺産である
提供されたデータにより判明、地球・ガミラス側が把握したことになっている。
だがその情報は、地球防衛軍の統括司令長官である芹沢虎鉄大将の
"未来視"による知識を、宇宙戦艦「ヤマト」による報告として捏造し
地球・ガミラス陣営に広めたものというのが真実である。
さしもの統制・諜報タイプとして最高峰の能力を誇る人造人間ズォーダーでも、
存在したはずの"未来"を知る男が敵陣の司令部にいるなどとは夢にも思わなかった。
ともあれ、敵がガトランティス人最大の弱点を把握しているという事実は
ズォーダーを大いに動揺させていたことに違いはない。
敵が"滅びの方舟"を機能完全喪失にまで追い込み、
そんな裸城を今なお無数の"大砲"の門前に置いているという現実と併せて鑑みれば、
ズォーダーが『継戦』を選択した場合、
敵は躊躇いなくガトランティス人を一人残さず滅ぼし尽くすだろう。
それが"大砲"によるものにせよ、ゴレムによるものにせよ、結果に大差はない筈だ。
少なくとも、ガトランティスの大帝にそう確信させていた。
では翻って、
1000年前、ズォーダーに悪魔の選択を強いた挙げ句に裏切ったゼムリア人の如く、
虐殺・絶滅させない保証はあるだろうか___ない。
多数のガミラス兵を屠っている。その怨みは根深い筈だ。
対して、
何しろガトランティス軍は、宇宙戦艦「ヤマト」を筆頭とする
まるで損害を与えることが出来ていないからだ。
それ即ち、彼らが流した血が多くないとも言え、
敗者に対する寛大な処遇をする可能性が少なくない。
どうやら、ガトランティスへの降伏勧告は
戦場が
地球側の意向、ガトランティスへの穏当な処置が全うされる可能性は高い。
否、そうであってほしいという願望が大いに含まれている。
……現状に対する結論として、
降伏した場合でもガトランティスの存続は完全には保証できないこと、
犠牲の少ない地球側の温情に期待する他無しということ、
継戦した場合はまず間違いなくガトランティス人は絶滅することが、
彗星帝国の統治者の頭脳からは弾き出された。
そして、岐路に立たされた男・ズォーダーは、瞑想の間の天井を仰いだ。
1000年の間、代を重ねながら続けてきた自らの行いが
今まさに否定され、打ち砕かれようとしている。
それも、自らが人類に課していた「選択」を突きつけられる、
1000年前の"始まり"と似通った、皮肉な形で。
___自分は元来、何を願っていたのか。
事ここに至り、ズォーダーは自省の念を深める。
『真実の愛』を広める。
目先の感情に惑わされ、争いを繰り返し宇宙を汚す愚かな人類に滅びの罰を与え、
個体の感情による影響を受けないガトランティスが
『真実の愛』を宇宙にもたらす。
__否、それらはあくまで建前である。
ズォーダーの行動原理の本質は復讐と、後悔によるものだ。
戦わせるためだけという身勝手な理由で
幸福を享受することを許さず迫害し、嘲笑った人類に対する復讐。
時折ズォーダーが人類に対し投げ掛ける『悪魔の選択』は、
人類に対する意趣返しに加え、ズォーダーが1000年前のあの時、
ゼムリア人に課された『選択』に乗ってしまったことへの後悔と自己嫌悪から、
__あるいは、
当時の自らに対しての自己正当化の意を含んでいる。
帝星ガトランティス、否、その大帝・ズォーダーが、
『感情』に精神を左右されることを厭い、人間と別の存在で在りたがるのは、
上記のように『個体の感情・"愛"を持つ人間として選択してしまった』ため、
家族と部下たちという護ろうとしたものの双方を喪う結果の反省によるものだ。
『個体の"愛"を持たない、合理的選択をする存在なら、護るべきものを護れる』___
原初の行動方針の再確認ができたため、大帝の思考は一旦止まる。
己は何をしたいのか。___『護りたい』のだ。
「……大帝、いや……」
ズォーダーは、視線を傍らに立っていたガイレーンへと向ける。
大帝の"分身"というべき老臣は、仮面を取り明らかになった貌から、
ズォーダーと同じ眼差しを大帝に向けている。
まるで、互いに己自身を見つめ直しているようであった。
__いよいよ、地球・ガミラス連合が提示した回答期限が近づいている。
ズォーダーは胸の中に渦巻いていたものを流すように息を吐くと、
ややあって、ガイレーンに自身の決定を告げた。
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西暦2203年5月8日、地球極東管区時間1830時。
地球・ガミラス連合軍による降伏勧告についてのガトランティス側の返答は、
宇宙戦艦「ヤマト」に"土産"とトランスワープ用の無人駆逐艦を供与し、
同艦と同じくテレザート星から太陽系に向かっているデスラー艦隊の下にも届いており、
同艦隊の旗艦「デウスーラ」の艦橋にも、回答放送の内容が映し出された。
『___地球・ガミラス両国による降伏勧告に対し、
このガトランティス大帝・ズォーダーが回答する。』
「「「……!」」」
艦橋にいるのは、デスラー総統、ヴェルテ・タラン前軍需相、
そして「ヤマト」襲撃後以来拘禁状態にあった彗星帝国側の監視役・ミルの三名。
周辺に控える従兵は、全てガミロイドだった。
彼らは一様に、注意深くモニターに映るズォーダー大帝の顔を見つめる。
『帝星ガトランティスは、両国からの降伏勧告を___全面的に受諾する。』
「な!?」
目を見開き、信じられないとばかりに愕然とするミル。
一方、デスラーとタランはむぅ、と表情を少し動かしたものの、冷静であった。
そも現在のデスラー艦隊は、同じコースでも少数で急進した宇宙戦艦「ヤマト」と違い
大艦隊での統制を保った進撃を続けており、太陽系までまだ道半ばという宙域にあった。
従って、最初に同艦隊に報知されてきたのは在地球ガミラス大使館からの
『ガトランティス本星、地球・ガミラス連合軍に降伏せり』という緊急信であり、
その証拠として降伏受諾時の映像が遅れて転送されてきたのである。
デスラーとタランは最初からガトランティス降伏の報に触れていたため、
動揺しなかったのだ。しかし、
それもズォーダー大帝が直々に降伏を宣言する絵面には面食らわずにはいられなかった。
「……卑劣だぞ、デスラー!!
こんな偽映像を使って私を屈服させようとでもいうのか!?」
ミルが憤然と叫ぶ。
対して、デスラーはやれやれと言わんばかりに肩を竦めた。
「これは本物だよ、ミル君。
我々が偽の映像程度でガトランティス人の戦意が失われると考えているなどと、
まさか本気で思ってはおるまい?」
「くっ……!!」
歯を剥き出しにして睨みつけるミル。
どうしても彗星帝国の降伏__即ち、完膚なきまでの敗戦を受け入れられないらしい。
デスラーは仕方ないといった素振りでタランへ命じる。
「タラン、ミル君の"遮断装置"を外してやりたまえ。
……そんなに信じられないなら、高次元量子通信とやらで大帝に確認してみるといい」
ミルの周囲には、軟禁室から連れ出された時から、彼の
特殊な性質を持った鉱物で製作された、高次元量子通信の遮断装置が浮遊している。
先述の「ヤマト」との交戦直後、デスラーとガミラス艦隊の合流の時から付けられ
白色彗星へ、大帝への精神感応による報告を防がれてきた。
それが、デスラーの言葉によって青肌で口髭を蓄えたデスラーの配下の男が行った
操作を受けて機能を失い、ミルを孤独から解き放った。
(大帝!……大帝!!)
必死に念じ、遥か彼方の
ズォーダーへ呼びかけるミル。
応答は、程なくして来た。
(……ミルか。 デスラーから通信を許されたようだな)
(ハッ。 ……降伏をお決めになられたというのは……)
(そうだ。)
ミルが脳内で言い切る前に、ズォーダーが被せた。
間違いない、決定事項だとばかりに。
(馬鹿な……)
ミルの鸚緑色の肌に冷や汗が浮かぶ。
表情はかつてないほど強張り、息遣いも荒くなる。
(……既に、『滅びの方舟』は死んだ。動力炉を完全に喪ってな。
艦隊も、悉く消失した。 我らが敵に抗う術はもはや、無い。)
(___ッ)
ズォーダーから伝えられる現地の状況は、ミルの想定以上に最悪なものであった。
自軍は艦隊が全滅して彗星都市帝国は丸裸となり、動力炉の破壊により兵器製造も
防御力場を形成することもできないのに対し、敵には"大砲"を備えた大艦隊が
丸ごと健在なのだという。通常の人類なら降伏して当然の状態だが……
(それでも!! 我らはガトランティス!
生あらば最後の一兵まで戦い、死ぬのが習いだ!
大帝、貴方がそう導いてきたのでしょう!?)
(……彼奴らは、『ゴレム』のことまで知っておる。)
(!!)
猛る口調のミルにズォーダーが返した言葉は、彼を青褪めさせた。
『ゴレム』については、彼の情報士官という役職に加え、その
特質についてよく知っていた。
敵がその存在を掴んでいるという意味も、即座に理解できた。
(……儂らガトランティスもまた、人間であった。
我らは"愛"を持たないわけでもなく、"愛"が不要なわけでもない。
人間と同じく"愛"を持つゆえに、"愛"を捨てさせようとしたのだ。)
(記憶を引き継いでいないお前には分らぬかもしれぬが、
これまでガトランティスを、個体の"愛"を持たぬ、
人ならざるモノとする在り方を定めてきたのは、
儂なりにガトランティスを存続させようとしてきたからだ。
だがそれは、儂の愚かな自己欺瞞だった。)
(大帝……!)
滔々とズォーダーの思念が語り掛けるが、ミルはそれを受け入れられない。
独白にも近い大帝の精神波は、さらに神妙さを増した。
(……絶望の余りに、目を曇らせていた。
1000年前に儂らが敗れ、全てを失ったのは単に力がなかったからだ。
その冷厳な事実から目を背け、"愛"を憎むことに逃避した。)
(……。)
ズォーダーの幼生体であるミルは、記憶の引継ぎをまだ行っておらず
歴代大帝が抱えてきた1000年の絶望を知らない。
だが、教育役であるガイレーンよりある程度のあらましは聞いており、
大帝の語る過去は把握できる。だが、自らにない経験を踏まえた
ズォーダーの言に抗弁することはできなかった。
(……人間を、信じるというのですか)
(……信じられずとも、信じねば、ガトランティスは必ず滅びる。
連中がガトランティスを生かしておくことに打算を見出したと
信ずるほかない、否が応でもな。敗北とは、こういうことだ。)
弱ければ、強者によって選択を強いられ、
選択の対価を、強者が誠実に履行するかを信じるしかない。
ガトランティスが、ズォーダーが、1000年以来それを回避してきたのは、
『滅びの方舟』を手に入れ、選択を強いる側に回ったからに過ぎないのだ。
そして『方舟』を喪い、再び選択を強いられる側へ戻った彼らは、
地球人とガミラス人が降伏の代価であるガトランティスの生存という条件を
真摯に守ると、信じるしかなかった。
(……我ら歴代の大帝は、道を違えた。
己の弱さを思い起こさせるものを排するために、1000年を空費した。
その報いが、ついに訪れたのだ。)
ズォーダーの声色が再び変わった。
悲痛な、そして願うようなものとなったのだ。
(……誤った未来へ導いた儂に言う資格はないことはわかっている。)
(だが、ガトランティスは変わらねばならん。
古き欺瞞を捨て、大宇宙に生きる人類種の一つと己を認め、
他者との共存を最大限に図り、他者からの悪意に屈さぬ、
真に強き文明を築かねばならん。)
(何としてでも生き延び、未来を掴む。
……それこそが
(ズォーダー、それは一体どういう……)
大帝の奇妙な口ぶりに、ミルの表情が怪訝さを滲ませたものへ変わる。
(一連の戦後処理を終えたのち、儂はお前に帝位を譲る。
儂は、己の責を果たさねばならん。)
(!?)
ミルは弾かれたように顔を上げた。
耳を__脳内の交信器官を疑う言葉だった。
(ミル。お前が新帝となり、皆を導くのだ。
(そんな……!!)
受け継ぐのはいつか先のことだと思っていた重責が、
思いもよらぬタイミングで背負わされることになったミル。
衝撃は激情と変わり、混乱は衝動に変わった。
「___ッ! そんなこと、そんなことが認められるか!
ズォーダー、貴方は血迷っている! 目を覚まさせてやる!!」
ミルは叫び、ホルスターからピストルを抜く。
銃口は、自身のこめかみへと向けられた。
そんな計算か、唐突なアイデンティティの崩壊からの逃避か、
どちらが
彼は迷いなく引き鉄に指をかけ、そして___
パァン!!!
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乾いた銃声が「デウスーラ」の艦橋内に鳴り響いた。
ガトランティス式拳銃MLLS44がカラカラと音を立てて床に転がる。
その銃口から、硝煙は立ち上っていない。
ガトランティス人特有の、黄色を帯びた赤い血が"御座艦"の美しい床を汚すことはなく、
ズォーダー幼生体の躰が崩れることもなかった。
「……デスラァァァッ!!」
ミルが殺意に近い憤懣を湛えた形相で怒号を浴びせる。
引き金を引いたのは、大ガミラスの総統、アベルト・デスラーであった。
彼の黄金拳銃スマルターPP7から放たれたエネルギー弾は、
自決のためミルが構えた拳銃へ、まさに引き金が引かれようとした瞬間に着弾。
MLLS44拳銃は弾き飛ばされ、従兵ガミロイドに回収された。
ミルの自決を阻止したデスラーは、威厳ある声で彼へと告げる。
「__未来を託された者が、容易く責任を放棄できると思うな。
お前はズォーダー大帝の希望なのだ。立ち上がれ、
アベルト・デスラーの視線は、ゆるぎなくミルへと注がれている。
そのまなざしには、これまで見せていた侮りや敵意の色はない。
むしろ、教え諭すような、励ますような、真摯に向き合うものがあった。
寿命が長くない母星でしか生きられない民族のため、新天地を見つけ出す___
そんな難題を叔父や兄から託され、背負ってきたガミラスの総統に見据えられ、
ミルの精神は限界を迎えた。
「うわあああああああああああああああああああああッ!!!」
涙と共に、悲憤さまざまな感情がごちゃ混ぜになった慟哭が、ミルから溢れ出た。
堰を切ったようなそれは、共有感覚を通じ、遥か彼方の太陽系に在る
ズォーダーの許にも届いていた。
(すまぬ、ミル)
玉座に着き、瞑目するズォーダー。
彼の眼下、彗星天守閣『玉座の間』にある臣下の回廊では
大帝の降伏の意向を渋々承諾したゲーニッツやラーゼラー、
それにガイレーンが彗星要塞各所と連絡を取り、降伏条件の達成に動いている。
操るべき『方舟』が死んだ、幼き"白銀の巫女"シファルは、
静かに制御装置の席に座っていた。
彗星要塞内では、「矛を収めよという天子様の御聖断であれば」と、
残存将兵らはあっさりと降伏を受け入れ、反乱が起きる気配はない。
彗星を見張る地ガ連合艦隊との間にも、最後の戦いを挑まんとする
ガトランティス艦も、航空機も現れず、戦闘が生起する兆しはなかった。
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西暦2203年5月9日0000時。
地球連邦ならびに共和政ガミラスは帝星ガトランティスの降伏を正式に受諾。
地球にとっては約半年、
ガミラスに至っては数十年に及ぶ対ガトランティス戦役は、
ここに事実上の終戦を迎えたのだった。