宇宙戦艦ヤマト2202 If 猛虎咆哮す   作:モアンゴル

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最終話 猛虎咆哮せり

 

【最終話】

 

 

時に、西暦2203年12月31日。

 

極東管区はこの日、天候に恵まれ、よく晴れている。

既に、対ガトランティス戦争の終結から半年以上が経過しており、

戦時体制は解除され、地球の市井には平時の活気が戻っていた。

 

戦時体制の解除は7月半ばである。

ガトランティス追放船団を遠巻きに追跡・監視していたガミラス艦隊から

船団が天ノ川銀河圏を脱し、その後も戻ってくる様子もないという報告が届き、

地ガ両国は正式にガトランティスが脅威でなくなったと判断したためだ。

 

2190年代以来、久方ぶりに、地球は外敵を抱えていない状態となったのだ。

 

 

___とは言え、決して安穏としてばかりの情勢という訳でもなかった。

 

ガトランティスという共通の敵を失った地球・ガミラスの友好が

危機に瀕するのではないかという想定が浮上したこともあり、

地球・ガミラス両国は互いへの軍事的意図がないことを示すため、

2203年晩夏に大規模な軍縮条約を締結した。

地球側は5000隻(戦闘で数十隻喪失したが)あった波動砲船団の解体、

現有のガトランティス鹵獲艦の廃棄・民生用資源化などに踏み切り、

ガミラス軍は銀河機甲軍・特にオリオン腕に展開する

第一四空間機甲軍団の規模縮小、旧親衛隊討伐艦隊の全面撤退に動いた。

さらに、炉王星沖に浮遊するガトランティス巨大艦隊残骸は

基本的に地球側が所有・資源としての採掘権を有するとしつつも

その利用時についてはガミラス側との一応の協議を要する旨、

時間断層工廠についても軍事利用への制限や両国経済への影響を懸念した

過剰生産防止策を規定する旨、波動砲不拡散条約厳守の旨を盛り込み、

二度と地ガで戦端が開かれないよう注意が払われた。

 

 

が、再び地ガ戦争の火種になりかねない"爆弾"が、直後に転がり込んできた。

 

紆余曲折あってガトランティスの虜囚として生きていた、

()()のアベルト・デスラー総統の存在が公表されたのである。

地球・ガミラス両国内に、激震が走った。

 

この事態の収拾・鎮静化に尽力したのは、

何処よりもこの事態を予測していたガミラス秘密組織「救国軍事会議」と、

デスラー偽者説・親衛隊悪玉論を最初に企図した地球連邦外務局、

そして何より、デスラー総統本人であった。

 

彼は、自身が本物か、独裁体制の復権・地球への報復を

狙っているのではないかと疑念の目を向ける地球人類に対し、

件の"偽デスラー・親衛隊元凶説"のシナリオに則る形で

これまでの自身の経緯を説明した後、

『自らの不徳によって、影武者や親衛隊の専横を許し、

 地球に対する侵略戦争を引き起こさせ、地球人に多大な犠牲を

 もたらしてしまったこと』につき、地ガ大戦終結後3年を経て正式に謝罪した。

 

地球人の中には、デスラーの言を信じずあくまで憎悪を向ける者も

少なからず存在するが、地球の民意は概ね彼に好意的であった。

謝罪における真摯な態度や、裏切り者や長年の敵国に囚われ苦労したという

同情に値するストーリー性、それの裏付けになるように刻まれた眉間の皺や

隈を浮かばせていても、なお意志の光を失わない瞳などといった

ルックスの良さから、彼がガミラスに帰還することを支持する世論が

強く形成された。これには、後述の理由も作用している。

 

 

"本物"のデスラーは、ガミラス市民に対しては前述の経緯を説明すると共に

自身が、"影武者"を擁する親衛隊に拘禁・幽閉された理由として

ガミラス星に迫る危機を公表しようとしたためであると語り、

デスラー派秘密組織「救国軍事会議」に掌握されたヒス首相率いる民主政府も

「デスラーから提供された情報を基に調査した結果、

 彼の語る"危機"は真実である」というお墨付きを与えてしまった。

 

その上でデスラーは、「もし人々が再び自分を信じてくれるのであれば

ガミラス星に帰還し、人民が危機を乗り越えられるよう尽力したい」と語った。

 

民主政府は、デスラーが帰還した場合の立場として、

「共和政ガミラス市民の統合の象徴的存在たる"総統"」、

即ちかつてほどの強権を持たない名誉職になる旨を、

アベルト・デスラー総統の帰還を認めるか否かを決める、

大ガミラス史上初となる国民投票実施の決定と共に、全国に布告した。

 

同年10月のガミラス国民投票の結果、デスラーは晴れてガミラス星に帰還。

地球側としても、民主的な手続きを踏まえて復権し、

帰還後も民主主義・共和政治を尊重する"本物"のデスラーを歓迎したのである。

 

 

こうした中で、「ガミラスの危機」__ガミラス星の寿命が50年となく、

純粋なガミラス人はガミラス星以外の環境では長く生きられない__への

対策は、ガミラスの人々にパニックを起こさないように

劇的に演出された発表を挟みつつ進められていた。

 

デスラー総統の復権許可の結果開票と時を同じくして、

地球連邦としても盟邦ガミラスの危機打開に対して最大限助力すると表明。

元はガミラスが供与したと言える、時間断層工廠(戦後に一般人へ存在公表)の

巨大な生産力を以て、危機への対策に必要な諸物資の生産を行うと確約した

(尤もこれは、地球復興時にガミラスから得た援助や借款への返済という

側面も兼ねていたのだが)。

 

そして、その約束はすぐに実現することとなる。

ガトランティスから戦利品として獲得した膨大な医療技術データを基に、

地球連邦厚生省や森田製薬などがガミラス側研究機関と協力して

ガミラス人をガミラス星以外の環境でも適応できるようにする

免疫強化薬の発明に成功したのである。

 

時に、西暦2203年11月のことであった。

 

 

___________________________________

 

 

 

サレザー恒星系第三惑星ガミラス。

 

反デスラー派のテロ対策で、国家と惑星の首都・バレラスから少し離れた、

旧デスラー大公私領だった国立公園の一角にある旧大公別荘が

臨時の総統官邸として宛がわれていた。

 

かつて、叔父エーリクや兄マティウスと訪れたことがある懐かしき場所に、

今日のアベルト・デスラー総統は、甥のランハルト・デスラーを

秘密裏に招いている。

 

ガミラス在地球大使館付武官クラウス・キーマンを表の姿としている彼だが、

この時は「ヤマト」に同行した長期勤務の報酬として、

一年間の有給を得ていた。

 

総統書斎でソファに座った彼に、書斎机のデスラー総統が言う。

 

「……ランハルト、退役を検討しているのは本当か?」

 

「はい。()()()の上官とも話した結果、決めました。」

 

メラン星産の高級紅茶を嗜んでいた若きデスラーは、流暢に答えた。

 

「軍を辞めたら、こちらの伝手で議員秘書になろうと考えています。」

 

「……暫くは、素性を明かす気はないと言うことか。」

 

「えぇ、まずは見聞を広め、経験を積みたいと思います。」

 

ランハルトの受け答えに、デスラーの目が光る。

彼は甥の真意を掴んだようだった。

 

「……総統を継ぐ気でいるのだな、ランハルト。」

 

「……はい。この国は暫く、伝統のあるカリスマが必要です。

 私に叔父上ほどの才覚があるなどと驕ってはいませんから、

 まずは力を蓄え、機を見計らおう、と。」

 

デスラー支持派閥に潜入していた経験から、

何故彼らがデスラーを求めるのか、肌で実情を知ったランハルトは、

いずれ叔父の協力を得て総統後継者に名乗りを上げるまでは

自身に相応しいカリスマがあるかどうか見極めるため、

指導者に欠かせない知見・ノウハウを持つため、市井での活動を志したのだ。

そんな甥に、デスラー総統はかつての兄の面影を見出す。

 

「ランハルト……そうか、お前もデスラー家の使命を背負ったのだな。」

 

感慨深く、呟いた。

だが、直後にあることも思い出し、ランハルトに尋ねた。

 

「……だが、それでは、"アキラ"だったか。

 『ヤマト』のあの娘とはもう会わぬということか?」

 

「!!」

 

まさか叔父の口から、秘かに想いを寄せた女性の名が出るとは

思っていなかったキーマンは、弾かれたように動揺し、赤面しながら言った。

 

「____ッ。

 ……遠くから見守り、幸せを願うという形の"愛"もあると、

 貴方に会って知りましたので……」

 

「……血は争えんな。

 そんなに、あの地球人が好きになったのか、()()()()()()()()()。」

 

人を愛せるようになることは、良いことだ____

そんな思いをしみじみ込めてデスラーは言ったが、ランハルトの方は

いよいよ恥ずかしくなったのか、ソファを立ち上がった。

 

「よ、用事を思い出しましたので、ここで失礼させていただきます!!」

 

逃げるように、足早に去っていくランハルト。

まだまだ青いな、と思いつつ、デスラーは微笑を浮かべた。

自身がいなくなった後も、甥が継いでくれるなら安心だ__そんな思いと共に。

 

 

専用回線による通信が入ってきたのは、

デスラーがランハルトの車が屋敷を発つのを見届けた、すぐ後の事であった。

 

 

『___総統閣下につきましては、ご機嫌麗しゅう存じます。』

 

「……君か。」

 

特殊回線を用いて報告に上がったのは、一人の軍人。

立体スクリーンに浮かび上がるのは中年の男性将官である。

彼は総統に(通信越しと言え)謁見する名誉に、喜色を湛えながら述べた。

 

地球(テロン)で生産された免疫強化薬ならびに

 地球(テロン)より供与された輸送船団第一陣が、サレザー系に到達した旨、

 ご報告申し上げます!!』

 

「……うむ、ご苦労だった。

 引き続き任務に励んでくれたまえ、()()()()()。」

 

『ハッ!ありがたきお言葉!!

 総統万歳(ガーレ・フェゼロン)! デスラー万歳(ガーレ・デスラー)!!』

 

通信に現れた相手は、"グレマン・ゲル"中将。

表向きは、デスラー同様にガトランティスに捕らわれていた将軍で、

彗星帝国からの出奔に貢献しながらも、軍籍の情報が少ない人物とされている。

 

その正体は、かつて旧親衛隊の手引きで刑務所を脱獄し

ワルゴニア星沖で宇宙戦艦「ヤマト」と再戦するも撃沈は叶わず、

そのまま「救国軍事会議」の所属者としてデスラーの復権に協力した男、

グレムト・ゲールであった。

デスラーや救国軍事会議の面々も彼の忠臣ぶりは認めており、

その褒賞として新たな身分を与え、立場を保証することで忠節に報いたのである。

 

現在は地球(テロン)からガミラスへ(復興借款返済の代わりに)供与される、

免疫強化薬剤やガミラス星からの移民時に必要になる当座の各種生活物資、

それらを運ぶ移民用輸送船(白色彗星を撃破した波動砲(ゲシュヴァール・ダム)の搭載艦を改装したり、

波動砲(ゲシュヴァール・ダム)そのものを解体して輸送船に仕立て直したらしい)も含む

危機打開のための支援船団の運航を任されており、

彼が失脚した2199年当時と同じく銀河間航路が任地となっている。

 

なおガミラス共和政府(とデスラー)は、ガミラス人の体質改変技術の確立に伴い

銀河系でのガミラス人に適した移住先の発見から、

既に手中にある大マゼラン銀河内天体への移住に方針を切り替えており、

サレザー恒星系からそう遠くない位置にある、

ラドン=エジラ恒星系の第三惑星ゴアを移住予定地に定めていた。

同惑星は既に農業プラント惑星として開発されていたが、

諸々の条件の一致から「(ノエン)ガミラス」として

各種政府機能・都市が移転させられることになったのだ。

 

既に移住計画はスタートしており、

総統としての権限は2199年時から見る影もないほど縮小されたとはいえ

未だ衰え知らずのカリスマ性・取り戻された国民からの人気を誇るデスラーと、

総統から回収した各種権限を有し国民からの信頼も篤く、

「ガミラス人の新天地移住の実現」というデスラーと共通の目的を持つ

ヒス首相率いる共和政府が協同しているため、

2205年までには全ガミラス人の移住完了・ガミラス全都市の移設完了が

見込めるという結論が出されていた____。

 

 

ここでふと、デスラーは考える。

ランハルトとの会話や、ゲールの報告でも言及された、

旧帝政時代から「ガミラス人移住計画の鍵」であり続ける、

現在はガミラスの友邦である彼方の惑星・地球(テロン)についてだ。

 

そして、とある興味深い地球(テロン)人のことに思い至った。

自分に頭を下げさせた「(ティガル)」は、今どうしているだろうか、と。

 

 

______________________________________

 

 

 

デスラーの脳裏に現れたその男・芹沢虎鉄は、その時、車上の人であった。

 

対ガトランティス戦争を勝利に導いた第一人者であると共に、

地ガ戦後軍縮条約の締結、地球による「ガミラスの危機」への積極的支援、

"本物"のデスラー総統による一応の地球への「謝罪」の実現を成し遂げた

大功ある防衛軍統括司令長官の彼は、9月の人事異動でその職を辞した。

 

何も、連邦政府が「英雄」になり過ぎた彼を疎んだわけではない。

彼だけでなく、2203秋の人事交代で、地球の国防に携わる顔ぶれは大きく変動した。

そもそも、ガミラス大戦の後遺症で地球政府・軍の高官は高齢者が多いため、

激務続きだった戦時中に高位役職にあった軍人たちは多くが

体力面への懸念からほとんど自発的に退任しており、芹沢もその一人である。

 

事実、芹沢の髪はすっかり総白髪へと変わってしまっていた……。

 

______________________________________

 

 

・国防局長官

 アーサー・C・ペリー → 藤堂平九郎

 

・極東管区行政長官

 藤堂平九郎 → 高野弥三郎

 

・防衛軍統括司令長官

 芹沢虎鉄(大将) → パウロ・D・タナカ(大将)

 

・防衛軍統括副司令官

 アリー・エル=メディ(大将) → プラヤー・パノムヨン(大将)

 

・防衛軍参謀総長

 デューイ・ジェファソン(大将) → 楊于建(ヤン・ウーチェン)(大将)

 

・防衛軍参謀次長

 楊于建(中将) → ジャン・M・ダニガン(中将)

 

・宇宙艦隊司令長官

 パウロ・D・タナカ(大将) → ジョセフ・ボイス(大将)

 

・宇宙艦隊副司令長官

 ジョセフ・ボイス(中将) → マーカス・J・パエッタ(中将)

 

・地上軍司令長官

 プラヤー・パノムヨン(大将) → 井上玄三(大将)

 

・極東管区駐留軍司令官

 井上玄三(中将) → 藤堂信乃(中将)

 

___________________________________

 

 

だが芹沢は、統括司令長官職をタナカ前宇宙艦隊司令長官に譲り、

自身はジェファソン前参謀総長と共に軍事参議官に退く際、

エイブラハム・ダグラス連邦大統領から、ある「贈り物」を受け取る。

それは、地球連邦防衛軍史上初となる「元帥」号の授与であった。

 

連邦政府は、芹沢の命を削った地球人類への献身に、

軍人としてこれ以上のない名誉をもって応えた。

それと共に特別に誂えられた勲章を大統領から受ける際、

芹沢虎鉄は万感の思いと共に男泣きに泣いたのである。

 

 

 

そして、今。

軍事参議官となって退役の時を待つばかりである芹沢元帥は、

長く自分の腹心を務めている下村光二郎と共に、気晴らしの行楽に出ている。

 

対ガトランティス戦争の趨勢を決した地球側の切り札『G計画』を指揮し、

その結晶たる超波動砲艦「ガーディアン」の()()も務めた下村は、

その手腕と活躍が認められ少将へ昇進。南アフリカ管区駐留軍司令官に

推補・転任したフランク・ゴーサ中将に代わり、防衛軍建設部長に就任した。

 

将官となり多忙さを増した彼だが、

自身を引き上げてくれた芹沢への恩は一日たりとも忘れたことはなく、

自身の年末休暇に、気力体力の衰えの兆しが見える芹沢を

外へと連れ出したのだった。

 

 

「見えてきました、閣下! あれが『新都西総合公園』です!」

 

「ほう、あれがか……」

 

首都メガロポリス郊外に広がる荒野に敷かれた幹線道路を快走中の、

黒い浮揚車(エアカー)のフロントウィンドウ一面に植物の緑が映し出される。

自らハンドルを取る下村と、後部座席から身を乗り出した芹沢は目を見張る。

 

前方に、広大な人工の森林を周囲に抱えた透明な巨大ドームが現れた。

対ガトランティス戦後、軍備増強のため低調となっていた地球未開発エリアの

再開発事業に軍縮で浮いた予算がつぎ込まれ、整備されたものの一つだ。

下村のかつての同期が建設を手掛けたのだという。

 

地球が民生に力を入れ始めたこと、

ひいては復興の第一段階が完了したことを象徴する『新都西総合公園』は

過密気味な首都の住民のための自然公園・運動施設などが複合された施設で、

開場してまだ日が経っていないこと、大晦日でイベントが行われていることから

駐車場には多くの車があり、盛況さを伺わせていた。

 

「では、参りましょう」

 

「うむ。」

 

二人は、防衛軍高級軍人とはまず気付かれない私服姿で、

駐車した浮揚車(エアカー)を降り、施設の入場口へと歩き始める。

 

(……このドーム、どこかで……)

 

芹沢は、公園のドーム建築物を見上げて既視感を覚えた。

既に"未来視"をしてから4年近く経っており、

重要なものであってもその記憶は薄れつつある。

___それでも、芹沢は脳裏をまさぐり、記憶を探り当てた。

 

(……炉王星、いや、第十一番惑星の入植市街にあったドームか。)

 

()()()()()では、終ぞ本格入植がなされず、

そのおかげでガトランティスによる犠牲者を出さなかった第十一番惑星に、

芹沢が見た未来___既に過去となった"史実"において

同惑星開発のため建設された入植施設にドームは酷似していた。

おそらく、設計者や使用された技術が共通しているのだろう___

 

そんなことを考えていると、芹沢が気付く。

 

(そういえば、あの時見た最後の記憶は、本来今日起こる筈の出来事だったな)

 

芹沢が視た"史実"における最後の出来事は、日付にして2203年12月31日。

それを思えば、ずいぶんと違う未来に漕ぎつけたものだ……と、

芹沢は感慨深さに目を細めた。

 

「閣下? どうされました?」

 

「あ、あぁ。少し考え事をな……ん?」

 

そこで、足を止めていた芹沢を心配した下村が声をかけてくる。

慌てて誤魔化す芹沢だったが、そこであるものを目にした。

 

___________________________________

 

 

「あ、あの! 『ヤマト』の古代戦術長と、森船務長ですよね!?」

 

「こら、竜介! ……ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」

 

「いえいえ。」

 

「……君は、防衛大の学生かな?」

 

「は、はい!!」

 

 

周りに人のいない駐車場の片隅で、ある若い男女が、ある親子と会話している。

男女の方には芹沢にも見覚えがある。

宇宙戦艦「ヤマト」乗組員であった、古代進と森雪だ。

彼らの傍らには、ピンク色のオープンカー型浮揚車が停まっている。

 

芹沢は来園前に目を通した公園施設の情報から、

彼らは公園内にある結婚式場の下見に来て、その帰りなのだろう、と推測した。

 

一方の親子は聞き耳を立てるに、

父親の方は現在も連邦政府統制下にある企業連合体の技術者で、

息子の方は宇宙防衛大学の学生のようだ。

彼らも古代・森の顔を知っているらしく、握手を求めていた。

 

古代と雪は、照れくさそうにしながら、若き宇宙戦士の要望を快諾。

その父親は申し訳なさそうにしつつも、息子を誇らしげに見る。

 

やがて二組は別れ、自動車に乗って公園駐車場を後にしていく。

芹沢は下村ともども、こっそりと一部始終を眺めていた。

 

 

「いいものを見ましたね、閣下。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

下村少将の言葉に同意しつつも、

芹沢は、きっとこの光景も自分の尽力が作り出したものなのだろう___

___そう考え、誇らしげに鼻を鳴らす。

 

(……未来は大きく変わった。私が変えたのだ。)

 

振り返れば、長いようで短い、四年間の日々。

来る戦いの準備のために明け暮れ、碌に休むこともなかった。

当面の脅威が去ったこれからは、しばらく身を休めてもよいだろう___

 

(……これから地球は、どんな未来に向かっていくのだろうな)

 

そうした不安も頭には浮かぶが、

芹沢の"未来視"のアドバンテージは失われ、芹沢自身も退役を待つ身だ。

地球の今後は、新体制となった防衛軍に任せるほかない。

 

(まぁ、問題あるまい。)

 

軍を統御する国防局長官は、芹沢も信頼のおける藤堂平九郎である。

それに____

 

 

現在はモスボール中の「ヤマト」を降り、装甲巡防艦の艦長として

将来「ヤマト」艦長になるための経験を積んでいる古代進少佐。

 

彼の恋人で、現在は防衛軍司令部に転属し、

そこから国防局への連絡士官として出向している森雪少佐。

 

そして、先ほどその二人と握手していた防衛大生の青年___

 

 

「地球の未来は、彼らのような若人が掴み取ってくれるさ。」

 

老人のお節介はここまでだ___そんな思いと共に、彼は歩き続ける。

その足取りはこれまでも、これからも変わらず、確かなものである。

 

 

 

彼らの頭上に広がる、蒼く澄み渡った空には、白く満ちた残月が浮かぶ。

それこそは、猛虎の咆哮が運命を変えたことを示す、何よりの(あかし)であった。

 

 

 

《 「宇宙戦艦ヤマト2202 if 猛虎咆哮す」――― 》

 

 





《あとがき》


どうも皆様、「宇宙戦艦ヤマト2202 if 猛虎咆哮す」作者・モアンゴルです。

この度は拙作を開き、読んでくださり、ありがとうございます。

執筆開始から足掛け四年超、作中において芹沢が動いた時間と
ほぼ同じくらいの期間をかけて、遂に拙作は完結に至りました。

その間は私事も多く、正直エタりかけたことは一度や二度ではありません。
しかしながら、皆様の感想やメッセージなどの声援のお陰で
今日まで書き続けることが叶いました。感謝の念に堪えません。

さて今後ですが、
可能であれば「猛虎咆哮す」世界線におけるその後や、
別のif__例えば七色星団海戦において、シュルツのような旧ドメル麾下の
二等ガミラス人部隊が来援した結果、ドメル軍団が生存する__といったもの、
そもそもドメル以外の軍人が銀河方面軍司令長官となってヤマトと戦うもの、
あるいはもっと一戦場での物語__作中で言及されたゴルニ戦役のような__を
描いてみたいと考えております。

しかし、当面は本家リメイクシリーズの動向を注視し、
暫しの休息を頂きたいと思います。

それでは皆様、またいつかお会いいたしましょう。
改めて、御精読・御声援、誠にありがとうございました!!

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