ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい?   作:ゆうてい

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Help as a friend.

「美味しかったですわね」

 

「金を払ったのは俺だがなァ。それで、どこで話すんだ」

 

「せっかちですわね本当に、すぐに着きますから」

 

 ご飯を食べ終わった二人は、夜道を歩いていた。目的地は白井が風紀委員として活動する上での活動拠点、風紀委員一七七支部であった。

 この建物が近づくに連れて一方通行の表情は難しいものに変化していた。なにか、上条のような苦い思い出でもあったのだろうか。

 

「さて、着きましたわ」

 

「おい待て、まさかこんなところで話すわけじゃねェよなァ」

 

「そのまさかですの。どうせ誰もいないんですから気にしなくともいいんですのに」

 

 とは言われても心配なものは心配だ。正直なところ、闇に通じている白井に対して一方通行からの信用は小さい。

 部屋の中に大勢の風紀委員がいて、とにかく拘束ですの!なんて言われたら支部ごと破壊して逃亡生活が始まるからだ。

 

「……まあいい、とっとと開けやがれ」

 

「本当にせっかちですわね」

 

「はいはいごめんなさいねェ」

 

 ♦︎

 

 特に不自然な様子もなく、白井は支部の部屋の電気をつけていた。蛍光灯の明かりが鋭く瞳を突き刺すが、それでも人の気配はしなかった。

 

「さて、お座りくださいな。ブーブークッションは置いていませんわよ?」

 

「黙れよチビこの野郎」

 

 一方通行は半分くらい本気でムカつきながら、勧められたソファに座る。能力による空間認識を行うが、やはり気になるところはなにもなかった。

 

「そんなに気になりますの?何も仕掛けてなんかいませんのに」

 

「仕掛けてたら今ごろお前は星屑だ」

 

 視線の動きを見て仕掛けを警戒していることに気づいたのだろうか。やはりこの少女は何から何まで全てがふつうとはかけ離れていた。

 それが暗部の最低ラインなのは確かだが、彼女はそれ以上に何かが違う。彼は不思議な感覚に首を傾げた。

 

「さて、まずは暗部への経緯ですわね」

 

「アァ、簡単でいいから話せ」

 

 白井は頷いて話を始める。

 

「半年前、私は闇を見ました。それはとても濃くて、普通の人には耐えられないものです。でも、私はそれを何故か理解してしまったのです。そのときが丁度、風紀委員に対暗部組織が作られる事となったときでした」

 

 今のところ、話におかしなところはない。しかし、話をしている少女が少女なので違和感が大きい。この様子は、宛ら学園都市のブラウン管テレビのごとく、とでも表現するべきか。

 

「私はその当時から事件解決数がトップレベルでしたので、私に話が回ってきたんです」

 

「信じられねェ。だからってクソガキのお前にそんな話が来る訳がねェ」

 

「真実ですのよ?貴方いったい、暗部に子供が何人いると思ってんですの?」

 

 盛大なフリの予感がするが、一方通行の頭にそんな芸人はいない。

 

「そりゃいっぱいだろォ」

 

「三十五おk、なんでもありませんの。それで、だったら何で私は心配するんですの?偶然会ったから?そんなこと、なんの理由にもなりませんのよ」

 

「ッ!あのなァ!風紀委員ってのは、そう言うもんじゃねェだろ」

 

 少しだけ、部屋を静寂が支配した。その後すぐに、声が響く。笑い声が。

 

「おほほほほほ、あなた、以外に優しいんですのね」

 

「あ、アァ?」

 

 急な変わりように彼は対応できなかった。

 

「そうです、よね。風紀委員(ジャッジメント)はそうあるべきですよね。

 私、貴方のことを勘違いしていましたの。いい人だって分かりました。ですから、これから話すことも全て事実ですの」

 

「い、今までのモノも本当だったのかよ」

 

 一拍おいて、白井が続きを話し始めた。

 

「話が回ってきてすぐ、私はその提案を呑みました。それから私が信頼できる人間を四人呼んで出来たのが裏暗班。最初の仕事はそれから一週間後のこと。私はその日初めてレベル5に会いました」

 

「そのレベル5ってのは誰のことだァ?」

 

「第五位の食蜂操祈さんですの」

 

 一方通行は考える。先程、彼が提案されたのは食蜂操祈の捕縛。それに対する報酬は、それが事実ならば学園都市が揺らぐモノだ。もし食蜂の捕縛が白井の初仕事と関係があるのならば、事は重大。

 

「詳しく話せ」

 

「なに、簡単な事ですの。レベル5の素性の再確認です。今では一位を争うほど仲がいいんですけどね」

 

「じゃあ、これもその内の一つってわけか?」

 

「いいえ、貴方と会ったのはただの偶然ですの。貴方みたいに闇にどっぷりとハマっていそうな人間に、私を会わせたくは無かったんでしょうね」

 

「ひでェ言い様じゃねェか」

 

「おあいこですのよ」

 

 話はその後も長々と続いた。とある男の為に暗部を二つ潰したことや『アイテム』と言う暗部組織と接触しかけたこと、そして、今絶賛とある暗部の人間を壊滅へ導いていることまで。

 

「そのとある人間ってのは誰なんだ?」

 

 もちろん、その事に一方通行が興味を持つことも含めて白井の考え通り。

 

「それは明日のお楽しみですの。携帯を出してくださいな」

 

「どういうつもりだァ?渡すつもりはねェぞ」

 

「貴方が渡さなくとも、転移が出来ますの」

 

「お前は触らなきゃ転移が出来ねェ。違うか?」

 

「流石の推察力ですの。でも、触ればいいんですの」

 

 一方通行は先程エージェントを転移させる際、白井がエージェントをわざわざ触れていたことを見ていた。それによって触れる必要があると気付いたのだろう。流石の目敏さだ。

 

「俺に触ったらどうなるかは知ってんだろォ?」

 

 ただ、白井が彼を触れられないのも事実であった。

 

「はぁ、いいから携帯を出してください。ただの連絡先交換ですから」

 

「そんなことかよ、わかりやすく言いやがれ」

 

 また呆れるように言葉を言い放ち携帯を出した。そうして連絡先を交換する。

 

「はい、また明日ですの。明日の夜九時、ここまで来てくださいな」

 

「ったく、意味が分からねェ何でこの俺がわざわざ出向く羽目に」

 

「いいですから、何だったら家まで送りましょうか?」

 

「いらねェ、俺はガキかってんだ」

(どうせ、俺が話に食い付いたことも大凡の計画通りなのかもな。まァ、この可哀想なガキに少しくらいは付き合ってやってもいいかもなァ)

 

 レベル5の頭脳は、スーパーコンピュータと同等かそれ以上の情報解析能力を持っている。そんな彼からすれば、白井の考えていることはそれこそ透視でもしているようにバレていた。

 まだ、一方通行の方が上を行っているようだ。

 

「デート楽しみにしておりますのぉ」

 

「デートじゃねェよ!」

 

 支部の防犯カメラには、白髪の男が勢いよく振り返る場面が、しっかりと記録されていた。

 学園都市の誇る第一位でさえ、白井にはたじたじであることに変わりはなかった……。

 

 

 


 

 

 

 指定通りの時間。午後九時に風紀委員一七七支部のドアに手をかける男、一方通行(アクセラレータ)。彼は勝手に部屋に入ると、少女来るのを待っていた。

 待つこと数十秒、ドアがガチャリと開いた。そこには昨日と同じ見た目の少女。連絡先で知ったことだが名前は白井黒子、今日は彼女とデート。そんな筈がある訳もなく、とある暗部の人間を潰すことが目的であった。もちろん一方通行は白井には人を殺してほしくないと思っている為、殺すのは彼だ。

 

 

「お待たせしましたの。あら?今日はおしゃれな服を着ていますが、もしかして私に惚れてしましましたの?」

 

「はぁぁぁあ黙れ。いいからそのとある暗部の人間ってヤツのとこまで行くぞ」

 

「本当にあなたってせっかちですわねぇ、嫌われますのよ?」

 

「もう十分嫌われてる。さっさと教えろ」

 

「そんなことありませんのに。はいはい、場所は天体水球です、行きましょうか」

 

 ドアを開けて、二人は恋人のように他愛もない事を話しながら、水族館へ出向いた。それをとある人が見ている事はいつか話そう。

 

 ♦︎

 

 他愛もない話をしていたと言うのは嘘で、彼らが無言のまま歩き続けて十数分。目的の水族館へ着いた。周りにはカップルが沢山いて、その場にいるだけで二人はむず痒くなってしまう。

 

「おい、本当にここにいるんだよなァ?」

 

「ええ、風紀委員の情報力を舐めないでくださいな」

 

「舐めちゃいねェが、お前は信用出来ねェ。ったく、こんなとこにいる暗部のバカの顔が早く見てェ」

 

「貴方ねぇ、周りがカップルだらけなんですからそんな話はおかしいでしょう?そう言うところもちゃんと考えて欲しいです」

 

 白井にしては正論である。周りのカップルたちは二人の会話に気付いた様子もなく話を続けていた。お互い、一緒にいる相手に夢中と言うことだ。媚薬よりも凄いと言うのも案外嘘ではないか。

 

「さて、そろそろ客も少なくなってきましたわね」

 

「そうだなァ、そンなことよりも俺はこんなにしっかりと魚鑑賞をしている事に驚いてる」

 

 

 ♦︎

 

 

 時刻は十時を少し過ぎたころ、閉店したはずの水族館に二つだけ残る影があった。白井と一方通行である。二人は防犯カメラに映らないよう、白井の能力を使って移動していた。

 エレベーターに向かい、最上階へ上がって行く。エレベーターのドアが開くと、そこには美しい夜景が広がっていた。しかし、ただの夜景ではない。水槽の水によって無数に反射された光が、ステンドグラスのような華麗さを表現していたのだ。

 

「メモメモ、上条さんと今度来ましょうかね」

 

 白井の呑気なお喋りが終わったところで、白井でも一方通行でもない声が響いた。どこか疲労を感じさせる声である。

 

「まさか、まさか、まさか来るとは、私のテリトリーに」

 

「おいおい、何なンだよありゃ」

 

「話に聞いた事はありましたが、本当に魚になっているとは」

 

 二人が思った事をそのまま口に出す。それに応えるかのように、水槽の中で優雅に過ごすシャチは笑った。それでも、どこか疲れが見えていた。

 

「ククククク、わざわざ死にに来てくれるとは、白井黒子、一方通行。まあ、海の王であるこの姿を見て萎縮するのも無理はない」

 

 自信ありげにそう言うシャチに、シャチと話し合うと言う異常事態でも落ち着いている二人。

 その光景は、絵本のお話だと思うかもしれない。側から見ていれば、幻想的だとでも言えたかもしれない。それでも両者の間に蟠るものは明らかにかけ離れていた。

 この街の暗部、それが三人も集まっている。その濃密な黒いオーラが、今にも目に見えるようだった。

 そうしたものを象徴させる、あまりにも不吉な匂いが広がっていく。

 風紀委員の一位を冠するテレポーターは尋ねた。

 

「その脳に達するまでに、どれだけの犠牲を強いましたか?」

 

「まあ色々だな。脳の大きなゾウで試したことがあったが、あれはダメだ。『俺』を定着させるのは難しすぎた。でも、類人猿などでは退化、劣化に近いからな。俺は生物として進化したかったのだよ」

 

 人間とその他の動物で圧倒的に違うのは、その脳の構造だ。ただの小学生でさえ、(あたま)以外では動物に勝てる部分がないと気づいている。

 ただ、それは奇妙だ。人間の脳はどこが優れているのだろうか、単純に言えばゾウには大きさで負けている。体が大きな動物なら当たり前だ。

 でも、人間の頭脳(あたまのよさ)はゾウなんかを軽く凌ぐ。

 では、その不足を補ったとするならば、本当の怪物が出来上がるのだろうか。

 つまり、これがその完成系(カタチ)だと言うことだ。

 

「一ヶ月前『デッドロック』を追い詰め、一方で他の窓口から『簒奪の槍(クイーンダイバー)』を貸与することで、食蜂操祈さんや蜜蟻愛愉さんを犠牲にしてでも『心理掌握(メンタルアウト)』を奪おうと図った、大人達(研究者)の代表」

 

「ほう、やはり分かっていたか。だがもう遅い、お前達二人の脳も私が解剖してやる。特に一方通行のものは俺がさらに進化するために必要不可欠だ。さあ、さあ潔く脳をよこすんだな」

 

「いいえ、却下しますの。

 蠢動俊三、貴方は風紀委員としてではなく、彼女たちの友達として拘束しますの!」

 

「ガキ如きが大きく出たな」

 

 蠢動の声が掻き消えるほどの、凄まじい噴射音が炸裂した。

 ジェット機のような爆音の出どころは十字状に配置された出入り口から転がってきた、一方通行の身長を大きく超える直径の球体の群れだ。全周を囲んでいる深い穴の奥から強烈に空気を吐き出す事によって、一トンを超える物質を自由自在に動き回せる仕組みとなっていた。

 それらは、あっという間に子供二人を取り囲んでいく。

 

「『鋼の臼歯(モラトゥース)』と呼んでいる。盾や武器、果てには心理圧迫効果まである。色々と重宝してるよ」

 

「「・・・・・・・・・・。」」

 

「ククク、怖くて声も出せないか、まあ、子供だからしょうがない。死ね、俺の為にな」

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、もう少し調べがついてると思っていたのですが」

「まさかな、暗部の人間が俺の能力を知らねえとは、お笑い(ぐさ)だ」

 

 静寂を二人の声が喰い荒らす。それ以外の物音は、それを許さない。

 一方通行(アクセラレータ)は手を伸ばした。

 ただ、それだけだった。

 

 少し前まで二人を囲んでいたはずの球体は粉々になり床に積もっていた。能力の奔流の名残なのか、荒々しく流れる風が粉を煙に変えた。

 

「な、ん!?」

 

 蠢動は知らなかった。自身の力を過信しすぎていたのか、学園都市第一位と言う子供を舐めていたのか。これほどの力の差があるとは考えもしなかった。

 放心状態の蠢動のいる水槽へ白井は拳を殴りつけた。穴から流れ出る水をどこかへ転移させると、水槽の中にはぴちぴちと跳ねるシャチ一匹だけになっていた。

 白井と一方通行は呆れたように蠢動へ呟く。

 

「自分の力を過信する者の末路としてはもはや、テンプレのように馴染んでしまっていますわね」

 

「暗部のクソにしては優しすぎる結末だがなァ」

 

「く、くうぇ〜」

 会話用の機械の損傷により人間の言葉が話せなくなった蠢動である。

 

「・・・とはいえ、助かりましたの」

 

「いやァ、俺がいなくても転移して避けてただろォ」

 

 どこか恥ずかしそうに、少女の力を信じているような言葉を放つ。白井は思わず目をガンギマらせていた。誤解がないように言い直すと、目を見開いていたと言うことである。

 

「それを言ってしまえば、私たちがこんな事をしなくとも、何とか一族の何とかさんに目を付けられていたようですけどね」

 

「・・・木原一族かァ?」

 

 そうだと頷き会話を終える。一方通行は一人帰路へ着いた。

 その一週間後、彼は白井のレベル四以上認定お祝い会に参加させられることとなる。

 

 残った白井は、とある協力者のいる場所へ電話をかけた。

 

「一匹シャチはいりませんか?偶然手に入れたのですが」

 

『シャチかぁ、そりゃ良い。よし貰おう!サイズはどんくらいだ?』

 

「全長は十メートルを超えていますの」

 

『おぉ!そりゃデカイな、うちで出す事にするよ。そのサイズなら、えーと、三千万はくだらないな。いつもの口座に送っとくよっ!』

 

「ありがとうございますの。では第三倉庫に送っておきます」

 

『こちらこそありがとうね、いつも助かるよ。今回みたいなのは特に珍しいからな!』

 

「ええ、それでは」

 

 今夜はお寿司だけは食べないでおきましょう。流石にそこまでヤバいやつじゃ無いですからね、私めも少しくらい、常識はあるのですからぁ!?

 

 ♦︎

 

 次の日とある魚市場で、それはそれは大きなシャチが並んでいたとかいないとか、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いないです。

 

 






食蜂蜜蟻編の消化試合ですのであっさりと。
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