ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい?   作:ゆうてい

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そんな生き様

 十一月にしては暑い空気を肌に感じながら、一方通行は路地裏を抜け、エージェントに促された車に乗り込む。冷房のひんやりとした風が体を流れる。シートの光沢からは高級な匂いが感じ取られ、そう言う面には気を使っている事がわかった。……その割にタバコの匂いが車には充満しているが気にしない。一方通行であっても呼吸は止められないのだ。

 

 彼はこの車に乗るまで、計画に関する説明はほぼ受けていなかった。これがもし罠だった場合でも何事もなく生還することができる。そんな能力があるからだ。

 そうとはいっても、彼にとって気になるものであることに変わりはない。

 

「それで、そのレベル六ってのはどうやったらなれンだァ?」

「すまないがそれは言えない。なんて言ったって、俺もよく知らないからな!」

「アァ?舐めてンのかテメェらはよォ」

「す、すまない。本当に聞かされていないんだ、です。俺が知っているのは計画名だけ」

 

 胸を張るように無知を晒した男が、計画名を何処かから出したホワイトボードに書いた。振り仮名まで丁寧にである。

 

「『絶対能力者進化(レベルシックスシフト)計画』。それが計画の名前だ」

「ハッ、安直なこったぁ」

 

 彼はどうやって絶対能力者(レベル6)へと進化するのかを知らない。

 

 


 

 

(まさか、考えが一つも当たらねェとはなァ)

 

 一方通行は見渡す限りのクローンの姿に、唖然とするしかなかった。

 こうなってしまった理由を説明するには、少し前に戻る必要がある。

 

 

 ♦︎

 

 

「もうすぐ着くぞ」

 

 その言葉に一方通行は目を覚ました。あまりにもつまらないこの車内に辟易していたため眠ってしまっていたのだ。やはりタバコの匂いが鼻につく。鼻腔を蹂躙される気分であった。

 彼が覚醒してから一分も経たない間に車は止まった。エージェントの降りろという言葉でドアを開き、外へ出た。しとしとと降る秋の雨がさっきと打って変わって寒い空気を感じさせた。

 

(反射だ反射ァ)

 彼の能力の前では天候でさえも無力である。

 

 先導する、隣に座っていたエージェントに合わせて歩いて行く。

 男が入って行った建物へ入ると、もう一人の同じような格好をした男が現れた。どうやら計画の詳細を知るのはこの男のようで、計画について簡単な説明をされた。しかし、その内容も先程と変わらない程度で、レベル六になる為の計画であるとしか話されることはなかった。

 

 突き当たりまで進むと、一方通行(アクセラレータ)様控室と書かれた紙の貼られた部屋。いつの間にか扉がひしゃげていた。部屋の中には白い四角の机が一つとセットの椅子が四つ置かれている。男らが座ったのを見ると一方通行も席につく。

 

「さて、計画の詳細を教えてやろう。この資料を見ろ」

 

 放り投げられた資料の束がテーブルを滑る。手に取った一方通行は眉間に皺を寄せながら、一行一文字をじっくりと読んだ。次第に胡散臭いものを見るような目に変わっていく。

 そこには幾つものあり得ないことが綴られていた。そもそも、ここに書かれていることは再現ができない。特に、超能力者を数百回殺すなんてものは無理だと断言できた。

 

「まあ落ち着け、お前の考えていることはよく分かる。第三位を百二十人も用意することは現状、いやこれ以降も不可能だ」

 

 そんな言葉に彼は騙されたような感情を覚えた。自分の目標のために、この機会は逃したくなかったのに。

 資料によると、一方通行が絶対能力者へと進化するには、第三位である超電磁砲(御坂美琴)を百二十回ほど殺害する必要があるらしい。問題は山積みと言ったところだろうか。まず第三位は一人しかいない。さらに言えば第三位の頭脳は一方通行のそれに近しい、もし殺さずに百回の戦闘に及ぶとするならば、少女は確実に対抗手段を見つけるだろう。そうなれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「じゃあなンで俺を呼ンだンだァ」

 

 怒りのままに、地を揺るがすような声が響く。計画の詳細を知らなかった男は、これだけで椅子から転げ落ちて漏らしている。しかし、もう一人のエージェントはかろうじて正気を保っていた。

 

「落ち着け!まだ続きはある!」

 

 額から流れる汗がテーブルを汚している。

 男のその言葉に気を落ち着かせると、一方通行は席についた。話を続けさせると、資料には書かれていないことが次々と知らされた。

 

「わ、分かった。さっきも言った通り、第三位を百二十人も用意することは不可能だ。だが、お前も知っている通り、お前以外のレベル五は六人いる。第二位に至っては第三位の数十人分もの戦闘経験値が得られる」

 

 第三位は百二十人もいないが、他のレベル五を殺せば、いわば経験値が事足りる。つまりそういうことだろうか。

 

「第四位以下の奴らは第三、二位ほど強くはねェンじゃねェのか」

 

「そういうと思った。だから、さらに代案を用意しておいたんだ」

 

 まだ何かあるのか。そう思わずにはいられなかったが、目標へ少しでも近づけるのならばと頷く。

 

樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)によると、第三位のクローン二万体と戦闘を行えばレベル六へと進化が出来る」

 

 思わずため息が溢れた。クローンは日本国の憲法によって製造が禁止されている。それこそ、憲法違反が出るとしたならば学園都市トップの連中の────あぁ、そういうことか。

 

「メインプラン、そォゆゥことかよ」

 

「は?」

 

「それで、二万体のクローンは本当に居るンだろうな」

 

「あ、あぁもちろんだ。着いてこい」

 

 

 そうして先程の場面へとつながる。

 

(まさか、考えが一つも当たらねェとはなァ)

 

 一方通行は見渡す限りのクローンの姿に、唖然するしかなかった。培養器に入る一人ひとりは、どこかで見たことのある第三位と変わりはおそらく一つもない。見る人が見なければ違いは分からないほどに精巧だと言えるだろう。改めて、学園都市の技術に吐き気がした。

 

「これがクローン、思ってた通り違いが全くわからねェな」

 

「当たり前だ。これは第三位のDNAマップを回収して、培養した物だからな。見た目に違いは絶対ないと言い切れる。違いがあるとするならば、育った環境が環境だけに性格がな」

 

「そンなもンどうでもいい。本当に成れるんだろォなァ」

 

「あぁ、これは樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)による計算の結果だ。今までアレに間違いはなかっただろう?」

 

 彼は信じる事にした。

 

「分かった。その計画に参加する」

 

「いい答えが聞けて嬉しいよ。では早速だが、十日後に実験が始まる。場所はここだ。夜十時に来い」

 

「あァ」

 

 

 


 

 

 

 俺が最強になれば、世界中の人間を恐怖で救うことができる。全人類が絶対能力者に怯えながら、皆、心を合わせて生きるために活きる。誰もが傷つくことのない、本当の平和が享受されるのだと。

 

 気付けば研究施設に着いていた。白衣の男に促されるまま大きな部屋にたどり着いた。その真ん中には第三位のクローンが立っている。一方通行にはそれがとある少女と少しだけ重なって見えた。

 部屋の中に入ると入り口だった扉が閉じられる。スピーカーから声が聞こえた。

 

「第一次実験を開始する」

 

 スピーカーの音が切れると、目の前のクローンが話を始めた。

 

「はじめまして、あなたが一方通行ですね?と、ミサカは念の為確認を取ります」

「あァ、それで合ってる」

 

 流暢な言葉に嫌な感覚を覚えた。

 

「質問なのですが、私は貴方に対する銃の使用が許可されています。本当によろしいのですか?」

「別に、そンぐらい構わねェよ」

 

 あまりにも巨大すぎる違和感、頭を突き刺すような痛みが襲う。いつだか以来の汗が背中をむず痒くさせる。

 

「話には聞いてきましたが、相当な能力者なのですね」

「はっ、お前よりは上等な能力だ」

「そうですか。それでは世間話もそろそろ終えて、戦闘を開始します」

 

 クローンはまるで西部劇のように一方通行から距離を取った。それでも、彼からすれば一秒以内に移動できる距離だ。

 銃を構えたクローンの謝る声が聞こえた。引き金を引かれる。遅く動く視界の中、銃弾は一方通行に当たる前にクローンの方へと進行方向を変えた。

 一方通行は加速する思考で考える。

 これで良いのか。何かおかしいところはないか。

 どう考えても何も思いつかない。

 銃弾が()()の体に飲み込まれる。あまりにも呆気なかった。

 水風船を破裂させたかのように血が吹き出す。少女の体は地面に倒れ込んだ。床には血の池が出来ている。彼女の顔は苦しみで溢れている。

 苦しみ?そんなものはない、あれはクローン。心を持たないただのリアルな人形だ。

 本当にそうなのか?彼女の表情は苦しそうにしている。それが痛みを感じている、心を持っている証拠じゃないのか?

 彼には痛みが分からなかった。分かるのは彼が一番味わった、苦しいという気持ちだけ。

 

(アァ、苦しみかァ。なンだ、分かったじゃねェか)

 

「これじゃねェ。俺が目指したのはこンなのじゃねェ」

 

 少女へと歩き始める。

 

「いや、俺が目指したヤツも間違ってたンだ」

 

 倒れ込む少女の体に触れた。

 

「血流のベクトルを操作して止血する」

 

 血はいつの間にか流れていなかった。

 

「な、何故助けたのですか?貴方は私達を殺す事で——」

「——これは借りだとでも思っとけ」

 

 携帯を取り出した一方通行が、どこかへと電話をかける。

 

「お前のことだから聞いてたンだろォ?病室を二万部屋くらい貸し切ってくンねェかァ?」

 

『あらあら、丁度空き病院を貸し切ったところですの。そんな偶然もあるんですのね』

 

「………俺はそンな偶然があってもイイと思うがなァ」

 

 今、一方通行の物語が動き出した。











一方通行とガロウって考え方似てるんじゃないですかね。
悲しみを知ってるからこその彼らなりの正義(絶対悪)。そんな生き様が。
ちなみにガロウのセリフをもろ使ってます。
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