ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい? 作:ゆうてい
一方通行は計画を潰すことを決めた。当たり前のことだ。この計画は彼に二万人という大量の
一方通行の明らかに実験に反する行動に、エージェントと研究者が慌てながら問う。
「何をしている!早く殺せ!」
「おォい、言葉には気をつけろって習わなかったのかァ?」
睨め付ける一方通行に、研究者が怯む事もなくもう一度叫んだ。それは薬物を摂取しているかのような表情で、それだけこの実験に命を賭けているのが理解できた。
「だ!か!ら!早く殺せと言っているんだ!」
ブチリ、と人間からは聞こえてイケない音がした。
「しっかり捕まっとけェ!」
そう言って、少女を抱えた一方通行は能力を全開にし、殺せと言った研究者のいる部屋に穴を開けて突っ込んだ。轟音と共に、瓦礫が出来て行く。
彼がこちらにまで危害を加えるなどとは、研究員は思ってもいなかった。驚きのまま、彼らは頭を抱え、しゃがみ込んで恐怖に震えていた。
一方通行はその頭を掴み顔を上げさせた。
「殺せだァ?テメェは誰に向かってモノ言ってンだ」
研究員の目の前で赤い瞳が輝いた。普段なら美しくも見えるはずのそれは、今ではどろりとした血を連想させて恐怖の象徴となっていた。
「テメェらもだ」
一方通行が屈んだ体勢から立ち上がり、周辺の研究社とエージェントを睨みつけた。エージェントは腰から取り出した銃を彼に向けるが、銃口はブレにブレて的が定まっていない。
「あ、
一人の勇気ある研究者が質問を投げかけた。
「この計画は俺の賛同がなきゃスタートにすら立たねェだろォ?そうだなァ、気が変わったからとかどうだァ?」
考えるような動作をし、その後に続いた子供の癇癪のような言葉に唖然が支配した。それも束の間、一方通行は抱えていた少女を床へと降ろすと、自身の片足を上げそれを研究者に向けた。
「一方通行!殺してはイケません」
「お前には聞いてねェよ」
少女の静止も効かない。ヒッ、と研究員の息を呑む音が響く、そのはずであった。その音をかき消すように聞こえたのは爆発音。一方通行の足が打ち付けられた音だった。土煙の煙幕が張られていて辺りを確認することが出来ない。少女の咳き込む音だけが響いていた。
経つこと数分。煙幕が晴れると真ん中に立っていたのは一方通行。そして彼に守られるようにがしゃがみ込む少女だった。煙幕が晴れた事に気づいた少女はゆっくりと目を開いて立ち上がる。目の前にいるのは一方通行だけ。恐る恐る聞く。
「殺したのですか?」
「いや、殺しちゃいねェ」
言われて思い返すが、確かにあれに人を消し飛ばすほどの威力はなかったはず。それに悲鳴も何も聞こえないことは流石にありえない。少女は彼を信じコクリと一度だけ頷いた。歩き始めた一方通行の後をついていく。
♦︎
二万個に及ぶ培養器の前に来た。そこからの眺めはやはり、人を呆然とさせるものがある。一方通行は
培養器に浮かぶ少女と、隣にいるミサカを見比べるが違いは分からない。だが、これで完成なのかどうかは確証がないため判断がつかない。早速研究者を逃した事に後悔する一方通行だったが、それはミサカに聞く事で解決した。
聞いたところ、どうやら体の方は完成しているようだった。問題は資料に書いてあった通り、殺される予定で製造されたために短命という事だ。彼は
頭に手を当て、困ったように言葉を吐き出す。
「この多さだぞォ。二万人、こりゃ大変だなァ」
「何を言っているのですか?まだ五千体しか製造されていませんよ。とミサカは驚愕の事実をお伝えします」
「ンはァ!?」
キャラがブレ始めた一方通行を置いといて、ミサカはさらに言葉を続けた。
「貴方はこの実験を完璧に潰すのでしょう。その場合、残った一万五千体は製造する必要はないのでは?とミサカは至極真っ当なことをお勧めします」
「アァ、それがあったかァ……。いや、元々産まれるはずの命だったンだ」
「はぁ、とミサカため息を零しつつも、ミサカは初めて本当の優しさと言うものを感じ取り感動しています」
「な、急に泣くンじゃねェ」
「嘘泣きですよ」
思わず手をあげそうになったが、取り乱さないように息を整える。彼は人の命を守れた事に大きな達成感を感じていた。ひとりだけの空間であれば頬を緩めていたかもしれない。
「これで、お偉い方々には総スカンっつう訳だなァ」
それでも嫌な顔はしていない。なんなら、憑き物が落ちたような清々しい様子である。ミサカも嬉しそうにする彼を遠巻きにして指差していた。
空気を裂いて何かが現れる音が聞こえた。音のした方向に視線を送れば、ピンク髪の少女が立っていた。彼女に対してミサカは警戒心を表して銃を構えるが、一方通行が味方だと言うと銃を下ろして安心した様子を見せた。
ピンク髪の少女、白井黒子は険しい顔を見せ、一方通行へ詰め寄る。
「どォしたンだァ?」
「あのですねぇ、実験などを潰すのなら私に少しは連絡を頂きたいですの。先程のように『気が変わったァ』の一言だけで片付けられても困るんですの。怒られるのは私なんですわよぉ!?」
「知らねェ知らねェ、つーかお前盗聴してたンだろォ?それについては謝罪もなしですかァ」
白井の頭をグーでゴリゴリしようとするが、彼女はスパッと転移して逃げミサカの後ろへ隠れた。そこで白井は、ミサカさん助けてくださいですのぉ。などと言っていたが、ミサカは急な展開に急な展開を重ねられた事で理解が追いついておらず、あたふたしていた。
そんな姿に二人はクスリと笑う。彼女はそれに不思議そうな顔をする。説明をすると恥ずかしそうに俯いた。
白井がこれに対して、可愛い!と思うのは当たり前のことで、何故白井(原作)が御坂美琴に惚れ惚れも惚れ惚れなのかが少し理解出来た事も当然な事だ。
♦︎
「ああちなみに、彼が逃した研究員は捕まえておりますので安心してくださいな。
あのクズ共は貴方々の短命を治す事に、あくまで合法的に協力的になりましたの。ですのですぐに良くなるはずですわ。
準備が整い次第お呼びさせて頂きます。そしてこちらが貴方専用の携帯電話ですので、連絡をお待ちくださいな」
「わかりました。とミサカは初めて触る携帯にしか視線が行っていない状況で、てきとうに頷きながら答えます」
携帯を手に取ったミサカは、情報でしか知らないそれに興味津々。目をキラキラさせながら携帯のあちこちを触り、その勢いは携帯の故障を心配させるほどだった。
「使い方ならお教えいたしますの」
「助かりますありがとうございます。とミサカは感謝の気持ちを赤裸々に告白します」
「そんな固くなくてよろしいのですわ。えーとですね、これはこれでこれがこれ———」
一方通行を除け者とした二人の話し合いは、一時間に及んだのであった。その間、彼は本当に五千人しか居ないのかと、培養器の数を数えていた。