ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい? 作:ゆうてい
日が沈みカフェを出ると、そこには場違いなほどに汚い男たちがたくさん集まっていた。何人かは見覚えがある。このカフェに来る時にボコしたスキルアウトだ。髪はモジャモジャになり、顔だけでなく服まで真っ黒焦げの炭男状態。
男たちはお決まりのセリフである「よくもやってくれたなぁ」的なことを言って御坂たち二人に襲いかかった。もちろん十数人いたはずのスキルアウトは一人残らず電撃によってさらに黒焦げになり、地面に突っ伏していた。
「私の妹に手ェ出したらどうなるか覚えておきなさい」
「か、カッコ良かったです。お姉ちゃん!私一人だったらどうなっていたことか……」
「大丈夫よ。アンタは絶対に私が守るんだから」
「ぐすん。ミサカは、ミサカは姉の暖かさに感動しています」
御坂は妹にカッコいいと言われて御満悦である。
このスキルアウトを倒したことが、彼女たちの命運を分ける出来事だったとも知らずに。
スキルアウトのリーダーの男はポケットから携帯を手にし、上部組織へと連絡を入れた。
「す、すんません。下っ端が捕まりやがりました。犯人は御坂美琴、それとそいつに瓜二つの女の二人です」
その連絡を受けた男はよくやったと応え、詳細を話すように促す。話を聞き終わったところで、上部組織の
ここで春田sideに移る。電話を切った春田は自身の所属する組織のトップに会いに行く。エレベーターで四階から最上階まで上がり、突き当たりの部屋をノックした。中から聞こえたのは入室を許可する声。その声はかなり苛立った様子で、春田は心臓が凍りつくような想いのまま部屋に入った。
部屋の壁はコンクリートで出来ており、装飾は何も無いため少し寂しく感じてしまう。ドアから数メートル先に進んだところに男はいた。彼──木原数多はチェアーをくるりと回してこちらを向いた。
「木原さん、報告があります」
「なんだ?」
木原は片眉を上げて春田を睨め付ける。苛立った様子のまま低い声で聞き返した。
「
「やっと見つかったか。それで、何処だ?」
イラついた顔を少し和らげ、少し安堵したようにも見える顔で続きを促した。
「第七学区です。発見したスキルアウトの電話を保留していますが」
「スピーカーに繋げ」
携帯のスピーカー機能を付けて、木原にも聞こえるように通話を再開した。
通話の男が言うには、路地裏を通る女を襲うも相手が強く返り討ちに遭い、仕返しをしようとスキルアウトの大半を連れて行ったとのこと。結果は敗北、こうしてスキルアウトは破滅してしまったのだ。
「チッ、全滅かよ。殺しておけ、ソイツらもういらねえから」
木原が全滅した無能たちを殺すよう命令すると、春田は笑みを浮かべた。いたいけな少女たちを潰すための一歩目だ。
♦︎
はぁと息を零しながらに、春田は使えないスキルアウトに銃弾をぶち込み続けた。第七学区の大きなカフェ近くの路地裏は、蜂の巣のように穴だらけの死体と、まるで血の雨が降った後だとでも言うような赤色に染まっていた。
もう一度ため息をつき、死体を一瞥するも男に心の変化はない。ただ、木原数多に従わなければいけないことと死体処理。その両方が面倒くさいという事しか考えて居なかった。
「死体処理班を呼べ。死体は五つだ。ったく、抵抗もしないカスどもを殺すのは楽しくねぇんだが」
了解と返事が返ってくると無線を切る。上司からの指示を待っていると無線に反応があった。
「欠陥電気の足取りはどうだ?」
『今のところ、オリジナルと見られる人物とどこかへ向かっている途中です。そろそろ日も暮れますし、住処とかそんなあたりでしょう』
「そうかわかった、そろそろだな」
作戦実行が近づいてくるにつれて、心臓が高鳴ってゆく。だって今日は、
「何体も殺せるから」
♦︎
それから数分。春田は木原と無線により連絡を取り、欠陥電気の尾行を開始する旨を伝えた。
春田達
「どうやらオリジナルと別れたようです」
『ああ、見てた。分かってるだろうが欠陥電気だけを追えよ。今回に限ってオリジナルに価値は無い』
「了解」
通信の後も男たちと黒塗りの車はミサカを付けていく。
遂に行き着いたのは廃ビルが多く立ち並ぶ地域。第十九学区、通称
「あーれぇ、結局ここなのかよ。最初からここ潰しときゃよかったなぁ」
当たり前な話だが、ミサカ達を製造する機械はかなり大きい。そのため場所は移動しなかった。することが出来なかったのだ。だが、同じ場所に居続ける筈がない、という勝手な勘違いで今まで最悪の事態をスルー出来ていたのである。
「対象が建物に入った。無防備だな、何か罠があるかもしれない。気をつけろ」
春田の一声で気を引き締めた
『春田の言う通り静かすぎるか。ってなると
「了解」
凄みのある声で命令され寒気が体を貫いた。血の気が失せる感覚である。いや、体を貫いたのも、血が失せたのもただの比喩などではなかった。カメラの映像が突然エラーを放つ。かろうじて生きていた無線機能が、誰かの声を拾う。
「あァ、木原くンの手下共はこンなに弱っちィンですかァ。こりゃ期待はずれだなァ、わざわざ色々隠す必要もなかったかもしンねェ」
黒塗りの車の中、木原の表情が一変した。鬼が威嚇でもしているかのようなそのオーラは、その車の運転手のハンドルを誤らせるほどに恐怖を感じさせていた。
一方通行の足元、何かが接続されるような機械音が響く。
『よぉ一方通行。俺の手下を全員潰してくれちゃった感じかぁ?』
「さァねェ?そんなカス共、俺はしらねェよ」
『ちっ、おい餓鬼そこで待ってやがれ、マジでぶち殺してやるからよォ』
「クカカカ、お前にゃ出来ねェだろ」
無線を切ると木原は、一方通行の待つ廃ビル群へと車を最高速度で走らせた。廃れたビルの間を突き進む大量のエンジン音。それは彼の手下、
♦︎
移動すること数分、目的地に着いた猟犬部隊は建物に向けて兵器を並べた。濃厚な火薬の匂いが男たちの股間を膨らませる。それは破壊衝動という欲求であり、破壊することでしか発散できない。
地を揺るがすような爆発音のあと、残るのは瓦礫だけであった。
「これでビビって出てきてくれりゃ良いんだけどよぉ」
すっかり見渡しの良くなった景色の向こうに、人影が見えた。体の線は細く、猫背気味の華奢な人間だ。それは黙々とこちらへ歩みを続ける。誰かがポツリと零した。あれは一方通行ではないかと。もしやと考えていた者も周りの反応に確信を持ち、それならばと銃を構えた。
「発砲の許可を」
「いやアイツは俺が直々に殺すからよ。オメェらはクローンを探しにいけ。んで、見つけた場合は徹底的に鉛玉喰らわせてやれ」
銃の隊列が真ん中で二つに裂け、それぞれに散らばっていく。彼らはその全員が殺しを娯楽だと捉えていた。
そんな隊員たちを見逃し、木原と久方ぶりの対面を果たした一方通行は、彼は軽めの挨拶だと言うように軽く足を上げて軽く地面に叩きつけた。
その軽々しい行動とは裏腹に、転がっていた瓦礫一つ残さず吹き飛ばされ、残ったのはひび割れたアスファルトの地面に少しの粉塵だけ。
更に見渡しは良くなり、遮蔽物の無くなった二人はさらに距離を近づけた。
「木ィ ハ ラ くゥン
ギャハハハッ‼︎久しぶりじゃねェかキハラくんよォ、俺のツラァ見ンのが怖かったインテリちゃんには見えねェよォ‼︎」
「はぁ、俺としてもテメェのいる可能性がある場所には行きたくなかったんだけどな、アレイスターに言われちまって仕方なかったんだよ。計画があぁだこぉだで手段選んでる暇ねぇんだ。
だからまあ、どっかでおねんねしててくんねーかな」
盛大に煽っていた筈が、大人の対応で返される。はぁ、とつまらなさそうにする一方通行は口を開こうとする木原の言葉を待った。
「てか、その能力は何処の何奴が開発してやったと思ってんだよ」
「なにお前、今更お礼でもして欲しいンですかァ?それともそンな理由で命を見逃してもらえるとでもォ!?」
「はぁ、お前って本当にムカつく奴だよなぁ。あー殺したいわぁ、あァ殺してェなァ」
額に青筋を立て下を向く姿と、先程とは打って変わった言葉遣いは彼がイラついているのを良く示していた。それでもなお、木原を煽り続ける一方通行だが、冷や水をかけられたかのように突然口を閉じた。
真剣な顔付きになった彼は木原の冷たい言葉を自ら浴びる。
「実を言うと、前からそのキレイなお顔をぶっ潰したかったんだよ。そりゃ昔は研究素材だし、何よりガキのガキだったから踏み止まった訳だけどぉ」
木原は強く手を握ることで気を鎮めさせ、血走った目を一方通行と合わせた。
「そんな訳で、殺すわクソガキ」
「アホかオメェ」
バゴンッッ‼︎‼︎
(な……に………⁉︎)
避ける必要もないと思っていた、ただの拳が一方通行の顔にめり込んでいた。
「おいクソガキよぉ、もっぺん言ってやるが、そのクソみてぇな能力は何処の誰が与えてやったと思ってんだ、よッ!!!」
ゴツッッ‼︎
「ほらヨォ、思い出したかー?」
木原は放心状態の一方通行に優しく教えるように耳元で囁く。彼の瞳だけが木原の動きを追っていた。
バキッ‼︎!
幾度となく繰り出される拳は全てが一方通行の顔面を捉えた。拳を受けた顔は鼻が潰れて血だらけになり、既に青痣が浮き出ている。顔の痛みをヒシヒシと感じながらも、一方通行は信じられないと言いたげな顔で呟く。
「おいおいおい、テメェもなのかよ」
一方通行と木原が遭遇する五時間ほど前、学園都市第一位の名を
彼はすぐに裏との繋がりを持つ少女へと通話をかけた。裏で何か大きなことが起こっていないかどうかを聞くが、彼女は何も知らないと答えるだけ。
「クソ、なンなンだこの感覚はよォ」
白井には裏の事を調べておくように言い、彼は個人で出来ることをしようと動き始めた。
まず最初に考えたのは違和感の正体。彼はこれを不幸の前兆のようなものだと考え、未然に防ごうと無くなっては困るものを隠していた。
実験の中止から既に一ヶ月と少し経っており、製造したクローンは一万人に達している。産まれた彼女たちは今、一人を除いて絶対にバレることの無い病院に入院させている。ならばと材料やお金もそこに隠そうと、白井を呼び出しそれらを転移させた。
「それで、アイツらについて調べて何か出てきたか?」
「あぁ、それならそれっぽいのが見つかりましたの」
「ッ!ならさっさと言いやがれェ」
情報を急かすが、出てきたのは彼の望んでいたモノではなかった。
「っとその前に、私を良いように使わないでくださいまし。今回の様な場合ならともかく、御使いじみた細事に呼び出されると仕事が間に合いませんの」
「・・・ちっ、それぐらい守ってやるから早く言え」
「はいはい、言質は取りましたわよ。
それでですが、アレイスターの命令で
「猟犬部隊だと?そりゃ木原の野郎がいるとこじゃねェか」
あっさりと話し始めたことなんかよりも、彼の頭は考え得る最悪のシナリオが支配していた。アレイスター直轄の部隊が妹達を探しているとなると、その目的は明瞭。もし、それが本当に起こってしまったらと考えると、彼は肌が粟立つ思いだった。
「貴方の考えはよく分かりますわよ。でも、絶対にどうにかなりますの」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってやがる」
「天下の第一位、アクセラレータ様ですか?」
「そォゆゥ事だァ。クカカカ、木原クンのアホ面が早く見たくてたまンねェよ」
嵐のような不穏な空気を吹き飛ばすように、
「それと、宿題はお忘れずにー」
「あァ、確か