ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい? 作:ゆうてい
名付けて股間アイスだとか、逆○○プだとか騒いだ数日後、白井と初春は
まず研修の第一歩として、一番多いケースである迷子に道を教えるための知識を教えた。地図の読み方である。読めない漢字が多いだろうと、白井は少年少女たちのために平仮名表記の地図を持ってきていた。初春の知らぬ間に、白井の好感度がまた爆上がりしていた。
小学五年生にとって地図を読み取ることは、歴史の偉人の名前を覚えることと同じくらい難しいものだった。
十数分程度で彼らが覚えられたのは現在地である第七学区周辺の地理。今回の研修であれば十分過ぎる範囲である。
「さて、それでは今度こそ実践ですわよ!」
発破を掛ける白井に、初春を含めた子供達が拳を掲げた。
迷い人は人の多い場所にいるだろうと目安をつけ、駅の方向へと向かうと、辺りをキョロキョロと見渡す少年が視線に入った。
最初は不審そうな目でいた少年も、風紀委員の研修生であると知ると歳が近いこともあってかすぐに話を聞き出すことができた。
本人いわく、第六学区からはるばる学校見学に来たは良いものの、学校の場所を忘れて迷子になってしまったのだとか。
きらん、と地図を持つ少女の目が煌めく。これが私の初仕事なのかと興奮気味の彼女は、少年に学校への道を教えていく。後方腕組みおじさんと化した白井と初春は、少女の手際の良さに感動していた。
「成長って素晴らしいものなんですね」
「私も今、ひしひしと感じているところですの」
頭を大きく下げてありがとうと叫んだ少年が、急いで学校の方へ走っていく。
「なんか風紀委員って感じだった!」
「よくできましたの。将来は優秀な風紀委員ですわ」
白井に頭を撫でられた少女が嬉しそうに声を上げて喜んでいた。白井は
さて、子供特有の第六感とでも呼ぶべき驚異的な感性をご存知であろうか。大人であればそういう事もあるだろうとスルーするような細事を、彼らのような幼い者たちは率直に疑問に思う。思考放棄する大人たちとはひと味違った思考、関心を隠さないのだ。
少年の一人がどこかを指差した。
「あの郵便局なんで閉まってんだ?」
その先に目をやると、そこにはシャッターの降りた郵便局があった。平日の正午を目前にした時間、郵便局が閉まっていることなどそうはない。それ以前に、第七学区の郵便局は午前九時に開くと決まっているのだ。
見たところ臨時休業などのアナウンスはされておらず、違和感があるのは確かだった。二人は嫌な予感を感じていた。
「初春、念の為ですが
「分かりました。存分にヤっちゃって下さい!」
初春が研修生たちを連れて離れていく。彼女の目には白井に対する心配は欠片も無く、それは信頼しているからだろうということは明白だった。
シャッターに耳を当てて中の様子を伺うと、何かが慌ただしく動いているような音が聞こえた。しかし、それだけでは中で何が行われているのかという確証にはなり得なかった。
「足りねぇぞ、このバッグから溢れるくれぇ詰め込めや!」
数十秒の後、男の吠える声が微かに耳に入った。痺れを切らしたのだろうか、声つきが次第に荒らぎ始めた。局員のものであろう焦った足音が聞こえる。
何かが爆発する音が聞こえた。強盗犯の能力の可能性も考えたが、おそらく違うだろう。
白井は原作から記憶を辿る。原作のこの時期にあった郵便局の事件といえば白井の初任務のことで間違い無いだろう。ならば、先程の音は警備ロボが故障した音というわけである。犯人は確か、一人ではなかったはず。
「待ってても仕方ないですわね」
白井は能力で郵便局の中へ入り、すぐに能力を展開する。つもりであった。犯人である男を拘束するための能力を何かが阻害していたのだ。
少し落とした視線の先、彼女の呆れたような目には映っていた。犯人の男に組み伏せられる上条を。
「・・・ふぅ、なんだかどっと疲れた気分ですのぉ」
「く、くろこか?丁度よかった。相手が二人だと思ってなくて」
「あの本当に、風紀委員始めてから半年の人間には思えませんの」
どうせいつも通り強盗という不幸に巻き込まれたのだろう。どうせ正義感に駆られて強盗を捕縛しようとして、もう一人の強盗に脅されて組み伏せられたのだろう。
こういう風な時はどうすれば良いのだろうか。肩に手でもおいて慰めてやれば良いのだろうか。いや、逆に罵倒することで事の深刻さをきちんと知らしめてやるべきなのだろうか。不毛な思考である。
犯人と思われる男は、白井の急な登場に驚きを隠せていなかった——それは郵便局員、客もそうだが——。しかし、白井と上条が呑気に話している間に気を取り直していた。男はこの図太いガキは誰なのかと白井の顔をまじまじと覗き、そしてハッとして目を見開いた。
「ま、まさかお前は!?」
「ふふふ、気付きましたのね、この私のことを!」
「し、知らないはずがない。第七学区に置いて一、二位を争う犯罪検挙率の女!」
「そうその通り!私こそが!」
「白井黒子(だな!?)ですの!」
白井黒子という名前は、もはや伝説となりかけていた。第七学区において、彼女はトップの犯罪検挙率を誇っている。そればかりか、第七学区を抜け出し、第十三学区や第九学区、そして第一学区の検挙率においてもトップの記録を持っているのだ。
曰く、彼女こそが
曰く、彼女こそが
曰く、彼女こそが
男の運命は最初から決まっていた。そう、必然である。
白井から小さな拳が突き出された
男からはパチンコ玉のような金属が数十個も射出された
一体、その差は何だったのか
白井の拳は女子相応の大きさだ。しかし、それに纏う気は遥かに男を超え、凌駕していた
白井の拳は男の
残ったものは、丸かったはずの金属の成れの果て。そして、風圧で気を失った男
誰が見ても白井の圧勝であった
少しの静寂の後、上条が立ち上がり白井に向かってありがとうと言う。それに続くように郵便局員も客も、皆が白井に感謝を言って讃えた。郵便局の中を歓声の嵐が巻き起こる。開いたシャッターの影に隠れる彼女を見た相棒は、ずーっと遠くで、ニコリと笑った。
「さすが私の相棒といったところですね」
御坂美琴は、ヒーローに憧れている。
と言ってもなりたいだとか、本気で憧れているわけではない。ほんの少しだけ興味があるというだけだ。
彼女は気晴らしに散歩にでも出ようかと思い、成り行きで普段通ることのない、よく知らないところまで歩いて来ていた。冬だというのにも関わらず、周りは半袖の子供がはしゃぎ回っている。大して歳の変わらない筈の小学生達に呆れる気持ちであった。
そんな子供たちの間を走り抜ける少年がいた。
目に入ったのは郵便局だ。この地域ならば、この時間に閉店していることはかなり珍しい。見たところアナウンスもなく、異変があるのは明白なことだった。
少し近づいてみると、中からは声が聞こえる。金を出せと。
強盗だ。気付いてすぐに御坂は行動に出ようとした。ポケットからコインを出し、自慢の電磁波で人間の位置を把握、誰も傷つけずにシャッターを壊す。
しかし、電磁波の届かない箇所があった。郵便局だからこその厳重なセキュリティなのか、それが仇となった。
御坂は少しだけ焦った。中に乗り込む方法は幾つでもある。だがしかし、中にいるであろう人質たちの安全は保証ができない。
そう気づいてしまえば、汗が額から少しずつ流れてくる。もう気にせず超電磁砲をぶち込んでやろうかと思ったとき。また、違和感を感じた。
中で何かが起きた。自分の対応のできない状況が、さらに自分を焦らせる。どうすれば良いのかわからなかった。
中で、大声が響いた。
「白井黒子(だな!?)ですの!」
何処かで聞いたことのある名前だった。しかし、心配なのは変わりない。レベル5である自分に出来ないことが出来るのか。そう思うとハッとする。また自分のことがつくづく嫌になった。今はその子に任せよう。心の中で無事を祈った。
以外にも結末は早かった。1分もしない間にシャッターは開き、そこでは小さな少女がいた。こんな少女がやってのけたとは信じられなかった。隣にいるツンツン頭の男が助けた訳でもないのだろう。無傷の少女と気絶した強盗であろう男を見て、中での出来事を予想した。
強盗に勇敢に立ち向かった少女が、手こずることなく強盗を倒したのだと。
「ふふふ」
なんだか面白くてしょうがなかった。
御坂は少し赤い顔で少女を最後に一目見て。自分にしか聞こえない声で呟いた。
「凄いじゃない、小さなヒーローさん」
御坂美琴はヒーローに少しだけ憧れている。
なんか、最終回の〆みたいになった気がする。
ソンナコトナイヨォ