ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい?   作:ゆうてい

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美琴×操祈 気味(ぎみ)

 

 御坂とルリが同志になってから一ヶ月という濃くて長い時間が過ぎた。この間に変わったことといえば、季節が移ろい制服が冬服から夏服に変わったことだろうか。

 

 ブレザーを着ていては暑いためそれを避ける夏。代わりのつもりなのか、ボタンひとつ留められていない、全開のポロシャツ一枚で出歩くルリが発見されるものだ。男子禁制である『学舎の園』の中なので一応、大丈夫とも言える。

 

 しかし、同学年は既に慣れたものだが、後輩達はすれ違うたびに赤い顔で目を逸らしている。この3年でもはや風物となっていた。

 

 ♦︎♢♦︎

 

 打って変わって、御坂は新たな出会いに胸を躍らせている。

 とでも思っただろうか。御坂はもはや、そういう星の元に生まれたのではないかと疑うほど友達に関して無縁。友達ではなく、因縁の相手が誕生していた。

 

 


 

 

 常盤台敷地内の裏庭。御坂は前を歩く、同じレベル5の少女に話かけようとしていた。好奇心、と言うよりも同じレベル5仲間として少しでも交友を持てればいいと考えていたのだ。

 

 後ろから近づき肩をトントンと叩くと、少女が振り返る。髪が靡くと、風に乗って甘い匂いがした。

 御坂が手を振り、笑顔で挨拶をしようとするが、少女は御坂の顔を見るなり血相を変えた。少女は肩にかけた小さな鞄をぶんまわす。

 

 すると、いつの間にか頭を押さえた御坂が蹲っていた。心なしか頭がぷっくり膨らんでいる気がする。

 少女に何故そこまで拒絶するのかと聞くと。

 

「あなたの顔面の不愉快力が高いからよぉ」

 

 というように、乙女に対して言ってはいけない言葉で返され、またダウンしてしまう御坂。

 

 やはりそこまで言われると流石にキツいものがある。しかし、ほろりと目からこぼれ落ちた涙は、地面を暗い色に変えるだけだ。

 

 レベル5の少女——食蜂操祈からすると、御坂の顔は辛い記憶を思い出させる。なので迷惑に違いないのだが、それを知らない御坂に強制するのは酷というものだろう。

 

「それは酷いですよ!」

 

 そして、御坂の言葉を代弁するかのように、誰かの声が裏庭に響いた。

 

「み、雅葵(みやびあおい)さん!?」

 

 食蜂がそちらを向くと、どうやら見覚えのある顔がこちらに駆けてきている。

 彼女は食蜂と同部屋の少女だ。今現在、食蜂唯一の友達で。いや、そんな悲しい話はやめておこう。

 二人の元まで駆けてくると、雅葵は息をこれ以上なく切らしながら食蜂を叱る。

 

「はぁはぁ、食蜂さん。はぁ、そんな、はぁ言葉はぁ使っちゃ、はぁ、ダメですよぅ!」

 

 しかしそれは、文章になっているのか分からないほど途切れ途切れなモノだった。

 

「だ、大丈夫なの? この子」

 

 御坂は心配すらしていない様子で食蜂に聞く。

 いやダメだと思う。と食蜂に返されると、御坂の肩は徐々に縦揺れを始める。それに呼応するように食蜂の肩も揺れ始め、次第にそれは笑い声に変わっていった。

 

「ふぇ?お二人ともなんで笑っているのですか?」

 

 当の本人は何もわからず、きょろきょろと二人を交互に見ている。その姿まで可愛らしく、二人は微笑ましく思いつつ笑っていた。

 

 十数秒は笑い続け、ようやく笑いが止んだ頃には御坂と食蜂は険悪な仲に戻っていた。これからも二人は喧嘩をして、ときには奪い合うをすることもあるだろう。

 とは言っても、少しは打ち解けたことは間違いなかったはず。

 

「ふんっ、馴れ合いはしないわぁ」

 

「こっちこそ、こんな性格の悪い子とはごめんよ」

 

 しかし、御坂と食蜂の携帯にはしっかりと、新しい連絡先が登録されたのだとか。

 

「てかアンタ、なんであの子を名字と名前も呼んでるのよ」

 

「フルネームじゃないわぁ。雅葵、これだけで下の名前なのよぉ」

 

「今流行りのキラキラネームってわけね」

 

 

 


 

 

 

 何という遭遇率なのだろうかと、食蜂は自分を呪った。あれから次の日、校内をなんとなしに散歩していると御坂と出会したのだ。

 またか、と彼女はため息を吐きつつベンチに腰掛ける。

 これはボッチ同士ゆえに引力でも働いているのだろうか。いくら考えても答えは出ない。

 

「はぁ、雅葵さん助けに来てくれないかしらぁ」

 

「あのねぇ、私がアンタを襲うみたいに言わないでよ」

 

 食蜂が昨日のキラキラネーム少女に助けを求めると、御坂は呆れるようにそれを笑う。

 それが食蜂にはおかしく見えたのか、彼女を丸い目で見つめた。

 

「ん、なによ」

 

「いいや、何でも無いわぁ。ただ、自動販売機を蹴ってる人が人は蹴らないとは思えなくてぇ」

 

「アンタの分も取ってあげたんだからいいじゃない」

 

 いいわけがないじゃない。と叫ぶ食蜂であったが、御坂は気にせず、自販機の中では当たりのヤシの木サイダーを飲んだ。

 呆れた食蜂は渡された"濃縮栄養飲料"を一口飲む。口に入れた瞬間、強烈な酸味が目を覚まさせる。

 

「くぅ〜!やっぱレモンよねぇ」

 

 彼女は身体中に栄養が回り始めるを感じ、体を伸ばした。

 御坂としては、初めて見たその缶を嫌がらせ気味に渡したのだが、どうも思ったより美味しそうに飲んでいる。

 御坂は味が気になりこんな提案をした。

 

「そうだ、アンタそれ飲ませてよ。これあげるからさ」

 

 もしかすると彼女はそういう趣味を持っているのかとも思った。

 

(そ、そんなはずないわよね!)

 

 顔を伺えば、彼女は純粋な笑顔を見せていた。この行為にそのような特別な意味(百合)はないはず。食蜂は勇気を振り絞って缶を御坂に手渡した。御坂はそれをゆっくりと口に運ぶ。食蜂には、彼女のジュースにより潤った唇がとても妖艶に見えた。

 御坂の嚥下に合わせ、ゴクリ。と息を呑む。

 

「ぷはぁ!んー、結構酸っぱいわねこれ。私は苦手かも」

「あ、ありがとう」

 

 食蜂は缶の飲み口を見つめた。縁の部分に御坂の口に触れた跡が残っていたのだ。その様子に、彼女の心臓の鼓動が速まっていく。深呼吸をして心を落ち着けようと効果はなかった。

 食蜂は返された飲み口に何度か口を近づけようとするが、結局できないでいる。

 

「飲まないの?それなら私が飲むけど、勿体無いしね」

 

 食蜂は手から離れていく缶を切なげに見つめる。口元からは微かにため息が漏れていた。

 飲むわよぉ。と彼女は即座に言葉を返すが、心の中では少し勇気が足りなかった。間接的ではあるものの、キスだと言う事実が彼女を苦しめていたのだ。乙女同士であっても、いや、乙女同士であるからこそ憚れた。

 しかし飲まないわけにも行かず、ゆっくりと缶を口にやり、ゴクリと一口飲み込む。

 

「んっ」

 

 口から胃へと飲み物が流れていく。ビリビリと痺れるような刺激が体を包んだ。もしやなにかを仕掛けたのか勘繰ったが、やはりさっきの燻りのない笑顔でそれはないだろう。

 

「ぷはぁ」

 

 御坂の飲んだ飲み物には電気が流れるのだろうか。

 もう一度飲んで強めの刺激を楽しむ。

 そしてもう一口。ピリピリするのが気持ちよくてたまらない。

 

 ふと気づく。これは売れるのでは?炭酸とはまた違う新たな刺激。

 商売心に火がつきかけるが、そんな不埒な事が今出来るわけがない。

 また飲みたいと言う心を押さえて御坂に缶を押しつけた。

 

「じゃあね御坂さん。それはやっぱりあげるわぁ」

 

 押し付けられた缶を落とさないように持ち直した御坂は、去っていく彼女にありがとうと声をかけながら最後まで見送った。

 ゴクリと音を立てて渡された缶を飲み干す。

 酸っぱいはずのそれは、なんだか甘く、青春を感じた。

 

 まあ、そんな訳がないのだが。

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 その姿を遠いところから見ていた食蜂は、強い衝撃を受ける。

 自分はあんなに飲むのを渋ったのにも関わらず、あの女は気にもせず飲んだのだ。

 しかし、それよりも、

 

「わ、私の飲みかけを飲んだ。しかも二回も」

 

 それが食蜂の心、思考を埋め尽くした。

 鼓動が高鳴り、頭に血が上っていく。

 ぶつっ。と何かが切れる。すると鼻から血が出てきた。

 

「ほ、保健室に行かなきゃだめね」

 

 全身が血だらけになりながらそこへ向かった。

 そこで、不思議な出会いをしたらしいのだが。

 

 


 

 

 対して御坂は、新たな出会いにうつつを抜かすこともなく、教室で授業を受けていた。

 周りの生徒たちは初見の問題に手こずっているが、彼女の類稀な頭脳からすれば簡単なもの。指名される度に答えを当てる御坂に、学友達は心の中で拍手を送っていた。

 

 しかし、彼女の能力強度(レベル)や能力自体を信じていない者は、鬼のような表情で歯を剥き出し、御坂を睨みつける。これには御坂も苦笑いをした。

 

 授業が終わるとすぐに潔斎と共に帰寮の準備をする。

 今は派閥間の空気があまりにも悪い。

 少し、悪い予感がする。

 

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