ジャッジメントですの!に転生したけど おねぇさまぁ!した方がいい? 作:ゆうてい
さてぃ、ごほんごほん。
涙子ぉ〜の病室に『イツメン』が集まっていた。
白井は気になる事があったのか、食蜂を呼ぶ。
「ねぇねぇ、しょくほぉ〜。ですの」
「黒子ぉ〜ちゃん? どうしたの?」
なんなのだろうこの悪ノリは、おそらくこの場の5人以外はそう思っているだろう。
白井に呼ばれた食蜂は首を傾げながら言葉を返した。それに続くように上条、固法、佐天も入り込む。
「上条ぉ〜さんも気になるぞ?」
「私の、ううん! 涙子ぉ〜さんの病室で皆さんは何をしているんですか?」
「今だけは読み方を変えて。こほぉ〜先輩はここで何をするのか知らずに来たのよ」
他の3人の掛け合いによるとどうやら、この場のみんなは白井に呼ばれてきたようだ。
白井は4人に対してこんな質問をする。
「みなさん、病室といえばなんですの?」
「こほぉ〜先輩的には休む場所。かな?」
「こほぉ〜先輩。ブッブーですの」
固法の回答はほぼあっている気がするが、白井はそうは思わないようだ。
続いて上条が質問に答える。
「上条ぉ〜さん的にはもはや俺の居場所。かな?」
「上条ブッブーですの」
どうやら上条の渾身のボケはスルーされたようだ。
しかも、あの悪ノリがなくなっている。お気の毒に。
「しょくほぉ〜様的には私たちの溜まり場。かな?」
「しょくほぉ〜ブッブーですの」
食蜂はこの病室を、みんなの溜まり場だと思っているようだ。たしかにこの5人はこの病室でよく集まっているが、ここを溜まり場だと言うのはなんというか失礼だろう。
「涙子ぉ〜姉さん的には、私の部屋だったはずの部屋。かな?」
「涙子ぉ〜、さてぃんブッブーですの」
どうやら、佐天もこの病室を溜まり場だと思っていたようだ。まず、この病室は佐天の部屋だ。もちろん佐天本人は容認しているが、病院側は見て見ぬふりの状態。ここがあの医者の病院だからでしかない。
そして、この場の全員が問題に間違えた。
だからといって何があるわけでないが、白井は苦虫を噛み潰したような表情になり、4人を睨む。
が、すぐに何事もなかったかのように、表情をいつもの可愛いものに戻した。
「というか少し聞き方が違いましたわ」
毒気が抜けたように優しい表現をした白井は、悪びれることもなくそう言った。用意していた質問と回答がチグハグじゃあ、回答者が間違えるのも無理はない。
白井は大きな声でもう一度問いかける。
「まあ関係ないんですけどね」
なかなか響き渡ってうるさかったが、そこまでしたのに関係がなかったようだ。5人はスッキリしたようで、表情まで清々しいものになっていた。
「じゃあ静かにしてくれるかい? 他の患者さんに失礼だよ?」
ほら、先生が来ちゃった。
「あ、カエル先生。お久しぶりです」
「白井くん。いつも元気なのはいいけど、中には傷に響く人もいるんだよ?」
その通りだ。この病院は比較的ヤバいことになった人たちが入院するような病院、ここで大声を出したらびっくりして傷開いて血ぃだばぁ。なんてことになってしまうかもしれない。
「すみませんですの。
あ、そうだ前話したあれ、もう出来てたりしますか?」
一応一大事なことなのに、その注意を華麗(てきとう)に受け流した白井はカエル先生に、例のあれが完成したか問う。
「あれの事かい? あれは少々危険だと思うんだがね、上条くんが使うのかい?」
「そうですの、使った時の顔を思い浮かべるだけで、白飯が10杯は食えますの」
カエル先生の危ない発言に対して、白井は不自然ににやけながら、箸でご飯をかき込む仕草をする。
「それは良かったよ。まあ、君たちも静かにしておくんだね?」
「「「「はい、わかりました」」」」
白井のご飯発言を、何故か良いと言ったカエル先生は5人に注意をして出て行った。
それに答えたのは4人、しなかったのは上条だ。その理由は言うまでもなくこれから訪れるであろう恐怖に身をこわばらせていたからだ。
上条ぉ〜は焦っている。自分に何か嫌なことが起こると気付いてしまったのだ、当然だ。
青かったはずの服は、上条の汗により紺色へ変化している。ワックスによってツンツンしていたはずの髪も、心なしか垂れ下がっている気がする。
「なあ黒子ぉ〜様。俺に使うあれってなんだ?」
「そこ、聞いちゃいますの?」
上条は耐えきれなくて聞いてしまう。それに対して白井は嫌な顔をして返した。しかし、上条は怯まずもう一度聴く。
「おう、なんだかとても、不穏な様子だったが?」
「不穏ですの? まあ、たしかに不穏っちゃ不穏ですの」
上条が不穏な様子がするというと、白井はたしかに不穏だと言った。その発言により上条はさらに汗をかき始める。床には少しづつ池ができていく。
「だよな、うん、何をするのか知らんけど、なんか、やめておかないか? 黒子はおにぃちゃんが傷つくのは嫌だろ?」
上条はおにぃちゃんという切り札を提示しやめさせようとする。
「え? 兄妹だったんですか!? 涙子ぉ〜的には驚いたっていうか」
それを真面目に信じた涙子はとっても可愛いと言えるだろう。
「いや、違うわよ、って食蜂ぉ〜は説明しとくゾ♡」
それを的確に否定する操祈も、語尾をいつもとは違うハートにして、なぜか少し萌えている。
「混乱するから静かにしといてって、こほぉ〜先輩は注意しておくわ」
これからの展開を、真剣に推理している美偉はすごく美しい。
「おにぃちゃんが傷つくのは嫌だけど、それ以上にあれは楽しみですの、個人的に」ニヘヘ
「おおおぉぉぉいぃいいぃ!!! その笑顔はなんだぁぁぁぁぁあ!!!」
「ふはははははははははははははは」
上条と白井はカエル先生の注意をしっかりと破り、そのまま少しの間出禁を食らったらしい。
白井のニヘヘの顔はとても可愛い。
危機が迫っている上条には、そんな当たり前のことに気づいていなかった。
上条達四人は、白井の持ってくる『あれ』というものを待っている。あの感じ、どうやらまともなモノでは無いのだろう。
数分経つとシュン、と白井が転移しやってきた。
「上条さんこちらですの」
彼女はドヤ顔で『持ってきたモノ』を掲げる。そして、それを見たこの場のみんなは思った。
趣味悪いわ!!!
そのツッコミも声に出すことが出来ず、四人は白井に対して恐怖する。
それでもこれは上条へのプレゼントだ。もらう本人は一応、これが何のためのモノなのか、聞いておかなければならない。
上条は震える声で白井に聞く。
「ちなみにこの右手はなんなんでせうか?」
「いや、これが上条さんに着けてもらうものですの」
残念ながら彼の、これは置物だ! という常識的ではない考えはどこかへと消えていった。
着ける。その恐怖は何かと比べられるモノではない。
「何故右手!? 誰のだよ! すぐ戻してこい!」
白井が掲げている、その緻密にできた右腕を上条は、どっかの誰かから無理矢理転移させたやつ。とまたちょっと意味のわからない勘違いをしている。
いや、それならまだ納得ができる。これはそう、
「残念ながらお兄様の右手ですの」
「えええぇぇ!? 俺の右手なかったっけ!?」
これは上条の右手だったのだ。上条は己の右腕を恐る恐る確認する。
もしやすると、自分の腕はもうない。そんな恐怖がまた上条を襲う。
しかし、自分の右腕の生える場所には、しっかりと自分の右腕がある。それを確認すると、上条は静かに真顔になった。その顔は死んだ魚の目をして、さらには口を一文字に閉じている。
その顔を見て、白井以外の三人は大声で笑う。それもしょうがない。先程までの焦った顔とは打って変わって、
しかし、白井はそんなことも気にせず、上条の
「いや、本物でも義手でもないですの。手袋みたいに着けるやつですのよ?」
白井は当然のように言ってみせた。だが、周りに納得する者などいない。当たり前のように疑問が残る。
「なんで手袋なのよ」
「実は上条さん、今日誕生日だったりします?」
食蜂と佐天が聞くも、上条は産まれがみずがめ座なので、7月の今じゃ半年近く差がある。なのでもちろんそれは違う。
早速行き詰まった四人は顎に手を当て考える。すると、固法がなにかを思いついたように手を叩き、少しニヤけながら言った。
「恋人なんじゃないかしら、付き合って1ヶ月とか?」
ニヤけ顔をドヤ顔に変え、四人にどうどう? と聞く固法。それを肯定するように佐天が言い、さらに食蜂が固法を褒める。
「お〜! 固法先輩、合ってるんじゃないですか?」
「固法先輩ったら頭いぃ、褒めてやってもいいんだゾ☆」
「ありがとうみんな!」
そう素直に称賛を受け止め、満面の笑みで言う固法美偉は、もうほんとに可愛いとしか言えないのだ。
しかし、それを白井と上条が否定した。
「断じて違いますわよ。今はですが」
「あのな、俺は幼女趣味なんてないの」
きっぱりと断言する白井は、最後の一言を誰にも聞こえないような声で呟く。隣にいたカエル先生にはどうやら聞こえてしまったようだが、優しい顔で微笑むだけだった。
そう、
「あら、初対面では卑猥な目で見てきたのにも関わらず言い逃れですの?」
やはり彼女はこのネタを、死ぬまで擦り続けるようだ。いやーな顔をした白井は、上条から身を守るように自分の肩を抱いた。
いつだって女のいうことが正しくなる。今日の被害者は上条だったよう。白井の言葉を聞いて、この場の女子それぞれが非難の声を上げる。
「上条さんそうだったんですね。」
「違うぞ佐天さん!」
上条は必死に否定するが、佐天は全く信用していない。
「上条くん、やっぱりあの時逮捕しといたほうがよかったかしら」
「固法先輩!?」
上条は必死に違うという目で固法を見つめるが、固法はその目を逸らしてもう目を合わせたくないと言いたげだ。
「やたら見てくると思ったらそういう事だったのねぇ、軽蔑するゾ」
食蜂に関してはもはや、軽蔑を口に出してしまっている。
「食蜂まで!? 違うぞ騙されるな!
俺は寮の管理をしてくれるようなお姉さんキャラで、学校の間に部屋の掃除までしてくれて、その時エロ本が見つかっても、うふふ大人になったのね。って逆に褒めてくれる人で、疲れて帰ってきたら、おっは〇い揉む? って聞いてくれる、お母さんの片鱗的なのを見せてくれる、最高のお姉さんが俺のタイプなんだ!」
言い終わったあと、上条ははあはあと息を整える。しかし、数秒経たぬうちに自分が言ってしまったことを後悔した。
(あれ? 俺ってばなかなかキモいこと言ってない?)
御名答。今の上条のキモさはレベルで言えば、優にレベル100分の100を超えている。
この場の女たちは鳥肌を身に纏い、上条を批判する。
「上条さん、よくそんな事大声で言えますね」
佐天は顔を引き攣らせながら、上条を人間だと思っていないかのような顔にらめつけた。
「上条さん、どっちにしろキモイゾ☆☆☆☆☆☆☆☆」
食蜂はいつもより☆を多くつけてそれだけ引いてることを演出し、女の敵ね! という感じでにらめつけた。
「そういえば最初会った時もそんな事言ってたわね」
固法は頭の上に、雲のようなものを浮かべながらその場面を思い出す。少しすると思い出したのか、頭上の雲を振り払い、そのまま視線で焼けるほどにらめつけた。
「お兄様、自業自得ですの。
さてどうでもいいのでつけちゃってくださいな」
白井はさもありなん。というように、どうでも良かったのかすぐに話を切り上げた。
手袋を着けるよう催促し、上条に押し付ける。
「ひどい! まあ付けるけど、本気でこれなんなんだ?」
「まあまあ、早く着けるんですの」
付ければわかる、と言って白井は上条を落ち着かせた。この場にいる3人のガヤはその上条の扱いを見て、さすが白井さんね。
とか、黒子ちゃんはまだまだこんなもんじゃないわ。
とか、白井さんはなんでも出来るんですね!
などと彼女を褒めちぎる声が聞こえたが、2人はそれを無視しておく。
その間にも上条は、右手に趣味の悪い手袋を装着し。
「はいはい…………………………うおっ!」
上条にはとてつもない、おrrrrr感が溢れていた。
「どうですの!?」
白井がすごいテンションで聞く。
が、もう一度言う。彼にはとてつもないおrrrrr感が溢れている。
「なんだか気持ち悪い」
「そりゃそうですの、手に手をはめるって意味わかんないですもの」
白井はすごく普通なことを言ってみせた。この白井、今までまともなことを言ったところを上条に見せたことがないため、それはそれで困惑してしまう。
「…………じゃあなんで付けさせた!?」
どちらに反応しようか少し迷って、上条は無難な方を選んだ。
「はいはい、右手出してくださいな」
「なんだ?」
白井に促されるまま、意味もわからずに手を出す。
すると、シュンと音を残して、白井と上条の姿は掻き消された。
「消えた!? なんでですか!?」
「佐天さん、白井さんはテレポーターなのよ」
「そうそう、確かレベルは3だったかしらぁ」
佐天の驚いた表情に、残った2人はつくづく可愛いなぁと思う。
それをどうにか言葉にせず、彼女の疑問に答え、白井の能力を伝えた。
「でも、おかしいわ。上条くんは何故か能力が効かないはずなのよ」
「たしかに、私の能力も効かなくて驚いたわねぇ。
黒子ちゃん曰く、幻想殺しって言ってあらゆる能力を殺してしまう能力。だったかしらぁ」
続くように二人は、上条の能力も明かした。彼女たちも、この状況に違和感を覚えたのだろう。
「なんですかその素敵な能力は!
ん? 確かこの前見たサイトに! パソコンか携帯貸してくれますか?」
やけに急いでいる佐天に、固法がテーブルの上のパソコンを指差す。
そこには開いたままのパソコンが置いてある。デコレーションから見るに白井の物だ。それを躊躇なく差し出す固法はなんというか、少し抜けているのやもしれない。
「ありがとうございます」
佐天はしっかりと感謝を伝えると、己のタイピング力をフル使用しとあるサイトにアクセスした。そこまで急ぐのは何故なのか。
「ほら! これですこれこれ! どんな能力も効かない男! まさか本当にいたとは!」
佐天が指を指している行には、どんな能力も効かない男。と書いてあった。なんともうさんくさい話だが、さっきまで目の前にいた彼がその男だ。。。
「へぇー、上条くんって意外に有名人?」
固法はあまり違和感を覚えずに、普通にすごいと思った。
しかし、食蜂は少し違和感を覚えたようだ。
「いやいや、能力の詳細がバレバレすぎるわよ、これはただ、てきとうに書いただけだと思うわぁ」
「それもそうですよね、こんなすごい能力本当にあるなんて思わないですもんね」
食蜂はこの記事自体がてきとうなものだと言い、佐天もそれに同意した。
普通の思考ならそうなるだろう。なんて言ったって『どんな能力も効かない能力』。そんなモノがあってしまったら超能力界の均衡が一気に崩れてしまう。
今までこの学園都市が機能してこれたのは、その能力の持ち主が上条だったからに他ならない。
「今度はみつあ————」
そうして、固法が何かを言おうとしたとき、
また、シュンと音を立てて二人が転移した。
帰ってきたのは良いが、なんだか上条の様子がおかしい。
「あら、おかえりなさい。どうしたの上条くん?」
「放心状態って感じですね」
「能力が効くことに驚いてるのかしらぁ?」
ただいまと言った白井の隣には、動くことのない石像のような上条が立っている。しかし、少しすると震え始めたのだ。まるで、ポケモ○が卵から孵化するときのように。
「上条さん? なんか震えてますよ!? 自爆する気ですか!?」
佐天はありえないことを真剣な顔で言う。
その例えがあったか! 白井はふざけたことを考えていた。佐天の可愛さに悶える他三人を他所に。
時を待たずして、上条の震えが止まった。
その声はとても大きく、この場にいた全員の耳がキーン状態になった。その上叫んだ彼自身も喉を壊してしまったので、彼は本当にどうしようもないのかも知れない。
耳キーン状態が終わると、呆れながらに白井は事情の説明をする。
「幻想殺しって能力は、不幸を呼び寄せるらしいんですの。
インなんとかさん曰く、空気に触れるだけ不幸があーだこーだ。
だから、学園都市産の超密着素材で使った右手をつけることによって、空気との接面を0にする。それによって不幸を元から殺しました。
ふふふ、チェックメイトですの。これで上条さんは女性を引っ掛けてこない!」
「へ、へぇ、上条さんって意外にモテるんですね」
「いやいや、モテるだからじゃないですの。助けた人、女男関係なくに惚れられて、その対応に丸一日使ったことがありますの」
「例えば誰とかありますか?」
「1番驚いたのは佐天が引っかかったことですが、1番やばいと思ったのは、統括理事会メンバーの娘さんに惚れられた事ですの」
「へ、へぇ、ソリャスゴイデス(私かかってないですよねこれ?)」
かみやん病に罹る者に境界線はない(ある)ようだ。