ようこそ請負人のいる教室へ   作:型破 優位

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協力関係

「今日は一つ連絡がある。先日起きた学校のトラブルについてだが、DクラスとCクラスの生徒が特別棟で喧嘩したというものだ。訴えはCクラスから。しかし両者の話が食い違っているため学校としては目撃者を募っている。誰か目撃した者はいるか?」

 

 翌日、学校側のトラブルというものが真嶋によって明かされた。

 有難いことに昨日坂柳に話した予想と一致している。これでもし大外れでもしたら俺の面子が保てなくなっていたところだ。こんな立ち位置にいる時点で保つような面子はそもそも存在しないが。

 結局Aクラスには目撃者がおらず、事情を知っている者は来週火曜日の朝までに話に来るようにと真嶋はこの話題を締めた。

 結果的に見ればAクラスにとっては全くの無関係であり、この話題に下手に関わるような人もいないため早く解決だけして欲しいという気持ちだけが共有されるだけのイベントに過ぎない。

 だがこれはあくまでAクラスでの話であり、当事者であるCやDクラスはそうもいかないだろう。特に今回訴えられたDクラスは躍起になって目撃者を探すことが容易に想像できる。

 

 俺もこの件について関わっていくつもりだ。

 だがあくまでも静観というスタンスを取る。

 去る者は追わず来る者は拒まずの精神だ。

 勿論誰も来なければ寂しく一人で追わせてもらうが、十中八九来るだろうと踏んでいる。

 あの時Dクラスにテストを渡したのは正解だった。Dクラスと予め関わりを持っておき、何か起きたら依頼を貰おうと考えていたがまさかこんなに早く事が起きるとは。我ながら素晴らしいタイミングだ。

 そうやって自画自賛を決めながら今回の方針を決めた俺だったが、内容が知らされた翌日の朝に早々と揺らぎかけていた。

 恒例の早朝ランニング。

 話題としてその件が出るのは、当然だった。

 

「坂田君、CクラスとDクラスのことについてどう思う?」

「どう思うって、何がだ?」

「昨日の放課後にどうやらうちのクラスにDクラスの人が来ていたみたいで、喧嘩についての目撃者を探しに来ているみたいなの」

「Aクラスにも平田が来ていたな」

 

 昨日帰宅間際にその一行にすれ違った。

 勿論何知らぬ顔で横切ったが。

 

「Dクラスは無実を証明したいみたいなんだよね。私達もCクラスに何度かやられているし、今回の喧嘩はCクラスが仕組んだものだと思っているんだけど、坂田君はどう思う?」

「まあ間違いなくCクラスだろうね」

「私Dクラスに協力しようと思うんだけど、坂田君はどう?」

 

 悪いが一之瀬、来るものは拒まないがお前が来るのは拒みたい。

 Dクラスの問題にはDクラスの人から協力を受けたいのだ。

 Bクラスの問題のために関わっている一之瀬から受けては意味が無い。

 どうしようか悩んでいた俺はつい無言になってしまったがそれを一之瀬はどのように勘違いしたのか、自分たちが関わる理由を説明し始めた。

 

「こういう事件は誰にでも起こるからね。今回のは明るみに出た最初の事件というだけで、今後も起きないとは限らない。早いうちにトラブルの可能性を少しでも減らしておきたいんだ」

「一つ、一之瀬に言っておきたいことがある」

「うん? 改まってどうしたの?」

 

 仕方が無い。

 少し早いがいつかは分かることだ。

 Bクラスのリーダーである一之瀬には、俺という存在を知ってもらういい機会かもしれない。

 

「俺はあくまでもAクラスとして一之瀬に協力する。それでいいか?」

「クラスが違うなら考え方も変わるのは仕方ないよ」

「そういうことなら分かった。協力することは構わない」

「ありがとう! 坂田君が居れば心強いよ!」

 

 何に対して心強さを感じているのかいまいち理解できないが、悪い方向には向いていないというのが分かっただけでも良いか。

 派閥に入っていればこういった協力を求められることはなかったのかもしれないが、そのためだけに派閥に入るのは愚の骨頂だ。

 それに当初予定していた計画とは大幅にずれてしまうが終着点は同じ。それなら変に不審感を植え付けるよりもあくまでAクラスの生徒として受けた方が自然に見える。

 有難いことに坂柳は静観を決めており、葛城は下手に口を出さない。

 まあ変に目立つが仕方ない。

 Cクラスともそろそろ関わりたいと思っていたころだ。

 

「それでBクラスはどうやって動く予定なんだ?」

「とりあえず現場を見ておきたいよね。特別棟なんて普段行かないし」

「確かに。早速今日の放課後行くか?」

「今日の放課後は少し用事があって……明日の放課後でも大丈夫?」

「分かった。空けておく」

 

 それにしても段々と夏が近づいてきているのが分かる。

 つい最近まで肌寒いという日があったのに、それが嘘のように日に日に気温が上がっていく。

 一之瀬も同じことを思っているのか、頬には一筋の輝きが見えた。

 

「それにしても暑いねー」

「そうだな。これくらい暑いと冷房が効くとはいっても流石に外は堪える。土曜日に夏服買いに行くか」

「あ、私も買わないと。折角だから坂田君が良ければ一緒に行っても良いかな?」

「俺は構わない」

 

 噂になっても良いのかと聞こうか迷ったが、本人から誘ってきたのにその言葉は余計な一言だろう。

 それにしても一之瀬の夏服か。

 ……良いかもしれない。

 今週の土曜日を若干楽しみにしつつ、寮への帰路へとついた。

 

 

 

 

♦   ♦   ♦

 

 

 

 

 約束の日の放課後。

 俺は一之瀬と合流するためにBクラスへと向かった。

 Bクラスの雰囲気は非常に良好であり、こうやって間近で見たら担任の星乃宮を含め仲良しクラスと呼ばれている理由が分かる。

 だがいつまでも様子を見ている必要は無い。

 

「一之瀬」

「あ、坂田君。ちょっと待ってね!」

 

 一之瀬はクラスメイトに囲まれながら荷物をカバンに詰めているところだった。

 それにしても視線が集まる。俺の声量は一応教室全体に聞こえるようなものだったため、全員が俺の存在を認知していた。

 Bクラスの生徒にとってここ最近では他クラスの来訪は珍しいことではないと思うのだが、そういう訳ではないのか。好奇な視線と怨念が混じったような視線を感じてあまり気持ちの良いものでは無い。

 そんな中一人、こちらに向かってくる人影があった。

 

「やっほ~。Aクラスの坂田君だよね?」

「こんにちは。授業をしていないのによく俺の名前が分かりましたね、星乃宮先生」

「坂田君は結構有名人なんだよ? なになに、一之瀬さんとはどういう関係なの~?」

「先生が喜ぶような答えはないです」

 

 嫌いだ。

 素直にそう思った。

 しかも何が嫌かと言えば、あくまでも学校側である担任という立場にありながら俺の情報を得ようとしているのが一番気に喰わない。

 

「そうなんだ~。坂田君狙っている女子、結構多いみたいよ? もしかして、もう既に彼女がいるとか!」

「いないです。生徒の事情に干渉しすぎるのもどうかと思いますが」

「つれないなぁ~。先生と生徒のスキンシップなのに~」

「スキンシップにしても本当に触れる必要はないでしょう。肩に手を回すのはやめてください」

「いいじゃん別に~。お、結構鍛えているね坂田君。着痩せするタイプなのかな?」

 

 ジロジロとした視線が気色悪い。

 だが視線はまだ許すとしよう。

 ペタペタと確認するような手つきで身体を確認するのは辞めて頂きたい。

 一歩引いて、星乃宮から離れる。

 厄介な先生だ。

 無駄にメンタルが強いから態度に出すだけでは効果を見込めない。

 加えるなら相手は先生。

 これ以上邪険に扱うのも何かと問題がある。

 今敵対するのも得策ではないし、かといってこれ以上詮索されるのも面倒だ。

 

「あ、もしかして照れちゃった? 結構ウブなんだね~。可愛いとこあるじゃん!」

「俺の反応を見て照れていると評するのはこの場で先生だけですよ」

「そんなことと思うよ~? ねえ?」

 

 周りを巻き込むな。

 困惑しているだろう。

 急にそんなことを聞かれたら俺でも困るわ。

 

「お待たせー。星乃宮先生と何を話しているの?」

 

 女神が来たかのように思えた。

 神なんてものは信じていないが、今祈りを捧げるなら一之瀬に捧げていたかもしれない。

 勿論行動には移さないが。

 いきなり女子生徒を拝む男子生徒とか変人以外の何者でもないからな。

 

「他愛もない世間話だ。早く行こう、一之瀬」

「あ、待ってよ坂田君!」

「女の子を急かしちゃ行けないんだよ〜?」

「星乃宮先生また明日!」

「はーい、一之瀬さんもまた明日〜」

 

 それにしても逃げるように離れたものの、厄介な人に目を付けられたかもしれない。今背後から感じる熱い視線は決して気のせいではないだろう。

 

「ごめん一之瀬。星乃宮先生から早く離れたかった」

「ううん。星乃宮先生フレンドリーで悪い先生じゃないんだけどね……」

 

 Bクラスに対してだけだぞ一之瀬。

 先生という立場を利用して情報を集めるなんてとんでもない先生だ。

 決して口にはしないけど、思わず口に出かける程度には我慢した。

 星乃宮も見えなくなり一之瀬が追い付いたの確認した後、ペースを落として特別棟へと向かう。

 それにしても今日は非常に暑いな。

 

「まだ七月になったばかりなのに、本格的に暑くなってきたな」

「そうだねー。Dクラスは熱中症で倒れたりしないのかな」

 

 この学校は夏服をポイントで買う必要がある。

 今年のDクラスにとってこの仕様は堪えるだろう。

 俺にはポイントを貸そうという親切な心は持ち合わせていないが、一之瀬ならもしかしたら貸してしまいそうだ。いや、Bクラスのリーダーである以上は流石にそこまではしないか。

 それにしても暑い。

 特別棟に近づくにつれて熱量が上がっていくのと同時に、ふと人の気配を感じた。

 

「一之瀬、誰かいる」

「……本当だ。声が聞こえる」

 

 別に声を聞かれても構わないのだが、気分的にボリュームを下げたくなるのは分かる。だがこんな蒸し暑いところで潜入捜査なんてごめんだ。

 早々に誰がいるのかを確認する必要がある。

 少し足早に身体を出して誰がいるのかを確認。

 一人は茶色毛色の男子生徒で、一人は長い黒髪の女子生徒——って、普通に知り合いだった。

 

「綾小路と堀北だったのか。久し振りだな」

「坂田か」

「え、坂田君知り合い?」

「ああ、顔見知り程度だけどな」

「そうなんだ。私はBクラスの一之瀬穂波です。堀北さんとは図書館で、綾小路君とは二回程会ったことあるよね」

 

 一之瀬も物覚えが良いみたいだ。

 正直綾小路は客観的に見たら印象に残るような人物では無いのだが、もしかして一之瀬も綾小路が只者ではないことに気が付いているのだろうか。

 そうだとしたら一之瀬の評価を幾分か上げなければならない。

 

「それで貴方達は一体何しにここへ来たのかしら」

「勿論事件について調べるためだ。堀北もそのためにここにいるんだろう?」

「私は彼に付いてきただけよ」

 

 堀北は睨みつけるように綾小路へ視線を向けると、綾小路は相変わらずの無表情でひょうきんな事を言い始めた。

 

「何となくうろうろしていたらここに着いただけだ」

 

 そんな訳あるか、とはさすがに口にしない。

 

「そうなんだ。てっきり喧嘩絡みでここにいると思っていたんだけどなぁ。昨日、一昨日とBクラスに目撃者がいないか探しに来ていたみたいだしね」

「もし私達がその件に関わる調査をしていたとして、貴方達に何か関係が?」

「関係はあんまないね。だけど疑問に思っていることがいくつかあってここに来てみたの。良かったら事情を教えてくれないかな?」

 

 堀北の警戒心が強い。

 一之瀬のこれは本心からだが他のクラスからしたら裏を感じるのだろうか。

 

「ダメかな? 他のクラスのことについて興味を持ったら」

「いや、そんなことはないが……」

「裏があるようにしか思えないわね」

 

 堀北はそう言い放つと、射抜くような視線で俺を見てきた。

 どうやら一之瀬ではなく俺が気に入らなかったようだ。

 綾小路は穏便に済ませようとしてくれたみたいだが、そんなに俺は裏があるように見えるのだろうか。

 

「堀北は何を持って俺に裏があると思っているんだ?」

「逆に貴方に裏が無いと思える根拠が無さすぎるわ。この前のテストと言い、一体何が目的なの?」

「そんな言い方されるようなことをした覚えはないけどな。むしろ俺のおかげで退学者は誰一人として出なかったんだから感謝して欲しいぐらいだ」

 

「その行動が既に怪しいのよ。確かに貴方に渡された過去問で私達Dクラスは誰一人として欠けることなく中間テストを乗り切ることができたわ。でも貴方は何故他クラスを助けるような真似をしたのかしら」

「えっ?」

 

 一之瀬の目が驚愕に見開かれる。

 俺が裏でそんなことやっていたなんて知りもしなかったのだろう。

 

「俺はちゃんと言ったはずだ。坂柳派や葛城派二つの派閥に対しても、知人やクラスメイト、他クラスの人に対しても全て等しく中立であると」

「戯言ね。信じるに値しないわ」

「信じなくてもいいさ。俺はあくまで一之瀬に協力を求められたから、一之瀬が興味を持っているこの事件に関与しているに過ぎない」

「そう。たとえ貴方に裏が無かったとして、彼女に裏があったら結局は同じだと思うのだけど」

 

 矛先が俺から一之瀬へと向かう。

 

「裏って? 暗躍してCクラスやDクラスを妨害する、みたいな感じの?」

 

 心外だなあ、と言いたげな表情を見せる一之瀬。

 その切り替えの良さは素晴らしい。

 

「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないか? 本当に興味本位って感じだし」

「私は他人の興味本位に付き合うつもりはないわ。それに私は彼のこと信用していないもの。綾小路君は何故か彼の言葉を信じているみたいだけど」

「本当のことを言っていると思っただけだ。それに前回のテストで坂田が俺達を助ける理由はない。むしろテストに細工をして退学者を出した方が余程Aクラスのためになるとは思わないか?」

「それは……」

 

 前も感じたが、綾小路はしっかりと分析している。物事を天秤にかけて、どうしてそんな行動をしているのかを見極めているのだ。Dクラスで気を付けるべきは平田や櫛田よりも綾小路だろう。

 

「そういうことだ。話を聞いた後一之瀬が協力するなら俺もAクラスとして協力する―――とはいっても、一之瀬とは違いAクラス全員で協力することはできないけどな。一之瀬に事情を話すだけでも損はないぞ」

 

 そう言って俺は窓辺に向かった。

 俺がいても話し合いは進まないだろう。

 その配慮が効いたのか、綾小路は一之瀬に事の顛末を話し始めたようだ。

 だが俺の後ろをついてくる人物が一人。

 

「ねえ」

「どうした」

 

 堀北は一之瀬についてどうでも良いのか、俺の元へとやってきた。どうでも良いというよりは、先程言った他人の興味本位に付き合うつもりはないというのが実際のところか。

 相変わらず警戒心だけは強い。

 

「貴方、またボイスレコーダーを胸ポケットに入れているのかしら」

「あるよ。何があるか分からないからしっかりと起動もしてある」

 

 胸ポケットからボイスレコーダーを出す。

 最初は違和感があったが慣れるとそこまで気にならない。

 

「そう……Aクラスは貴方みたいな人ばかりなのかしら」

「まさか。俺みたいなやつしかいないAクラスとか絶対に自主退学を選ぶね」

 

 それだけは絶対の自信を持って言える。

 こんな性格のやつなんて学校に一人いれば十分だ。

 

「そう、それなら安心したわ」

「疑わないのか?」

「嘘つく必要が無い場面で貴方は嘘をつかない。そう判断したまでよ」

「正解。まあAクラスは坂柳、葛城がやっぱり優秀だね。他にも三人ぐらい優秀な人はいるけど、それは秘密ということで」

 

 俺やAクラスとしての情報ならまだしも、派閥に入っている戦力案で打ち明けるのはフェアじゃない。それにしても本当に俺のことを疑っていないみたいだ。自分で考えた結果に従っているのだろう。頭は回るみたいだな。

 

「貴方はAクラスに興味がないの? それとも私達Dクラスは眼中にないかしら」

「別にクラスには興味ないね。Cクラスでも良いし、Dクラスでも良い。でも答えるならそうだな。あくまで俺から見た意見で良ければだが、そうだな——AクラスとしてみたDクラスは眼中にないことはないってところか」

「嫌な言い方ね」

 

 目を細めて不機嫌そうな表情を浮かべる堀北だが、相手にされないよりはマシだと思ったのだろうか。以前よりも嫌悪感は少ない。敵に見られていない訳ではないということを理解してもらえたようだ。

 実際のところ一番気にしているのがDクラスなのだがそんなこと言うわけもない。

 それぐらいの含みは良いだろう。

 別に嘘はついていないのだから。

 

「坂田、堀北。少し来てくれ」

「終わったみたいだ。行くか」

 

 無言で綾小路の元へと向かう堀北。

 なんだかんだ言って一之瀬の答えが気になるみたいだ。

 俺も一之瀬の隣へと向かう。

 

「それで、どうなった?」

「うん。事情を聞いてみたら思ったよりも大きい問題だったから、私も協力しようと思うんだ」

 

 話された事情というのがどういうものか気になるが、後で一之瀬から聞いておくとしようか。

 

「一応理由を聞いても良いかしら」

「今回はDクラスで起きちゃったけど、私達BクラスもCクラスから嫌がらせを受けているんだよね。こういうのってはっきりしておかないとまずいと思うんだ」

 

 嘘がついている方が勝ってしまったらより過激化していき、歯止めが利かなくなる。

 手を出しても意味が無いと思わせるためにはここで止めるのが最善というが一之瀬の考えらしい。

 一理ある。

 

「私達Bクラスが証人になれば、信憑性もグッと高くなるんじゃない? 逆にDクラスが被害を受けてしまう可能性も勿論ある訳だけど」

 

 これはCクラスの訴えが本当だった場合だ。

 あくまでも真相をはっきりさせるというのが一之瀬の目的であり、必ずDクラスを助けるという約束ではない。

 それぐらいの方がDクラスとしても信用できるだろう。

 普段から思ってはいたが、一之瀬の本当の強味は話術にあるのかもしない。

 

「後Aクラスである俺も動くとなれば、Cクラスにかなり圧力をかけられると思うぞ。向こうからしたらA、B、Dが入学早々手を組んだことになるからな」

 

 俺も一之瀬の協力関係にあるため援護射撃は行う。

 この同盟は別にあっても無くても良いが、この話が行われたという事実は重要だ。

 今この瞬間、綾小路と堀北はあらゆることを天秤にかけているだろう。全てのリスクを、全てのメリットを天秤にかけて、答えを出す必要がある。

 長考は必至だと思っていたが、早くも結論は出たようだ。

 

「手伝ってもらいましょう、綾小路君」

 

 先に決定したのは堀北だ。

 リスクとメリットを天秤にかけ、メリットの方が大きいと考えたのだろう。

 堀北の意見に綾小路も頷き、一之瀬が満面の笑みを浮かべた。

 

「決まりだね! 堀北さん、綾小路君」

 

 これで形的にはA、B、Dクラスが同盟を組んだわけだ。

 Aクラスとは名ばかりのものだが、それでも効力は十分にある。

 連絡を取り合うために綾小路と一之瀬が連絡先を交換し、次は今後の方針について。

 

「私達Bクラスは明日以降手伝ってくれそうな人に声をかけて作戦を練るね。行動する度に何か連絡を入れた方が良い?」

「いえ、自由にやって構わないわ」

「俺も一之瀬の補助をしつつ、上級生に伝手があるからそこをあたってみる」

「分かったわ。私達も他に目撃者がいないか探してみることにするわ」

 

 他に、ということは一人いたのか。

 それにしてもここまで長居する予定はなかったのだがこれは予想外だ。

 また結果的に良い方向へと向かっているのではないだろうか。

 予想通り行かないのはあまり好きではないが、この事件がどのような結末を迎えるのか、以前よりも遥かに興味が生まれてきた。

 

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