昨日始めて髪を染めたカトポンです。ただ、あんまお金に余裕がないので自分でやったら、少し失敗して、後頭部の辺りが地毛のままになってしまいました。
さて、そんな私の近況話もこれぐらいにして第16話をどうぞ。
アイヴィス・ネクロンによる大魔法教練も終わり、昼休みとなった。
アノスはアイヴィス・ネクロンと廊下で話をしており、俺はやる事もないのでその様子を遠目で見ていた。
「つまり、お前が我が主、暴虐の魔王だというのか?」
「あぁ、暴虐の魔王の名はアノス・ヴォルディゴード。それが2千年の間に何者かによって、アヴォス・ディルヘヴィアへと書き換えられた」
頭ごなしに否定することなく、アイヴィス・ネクロンはアノスに訊いた。
「何者かというのは?」
「まだ分からぬが、お前の記憶を消した奴だろうな」
「なるほどな」
アイヴィス・ネクロンは考え込むように口元に手をやった。
「確かに我の記憶が消された事も、その説明で納得がいく。だが、アノス、記憶を消したのはお前の仕業ということはないか?」
アイヴィス・ネクロンは魔眼でアノスを洞察しながら続ける。
「時を超越する力を持つ者の言葉を軽んじる事は出来ぬが、お前が暴虐の魔王に仇なす存在である可能性も否定出来ぬ」
「良い推論だ。お前の立場ならそう考えるのも理解出来る」
「今のところは中立としておこう。そなたには、何か懐かしさを感じる」
「そうしてくれれば助かるがな」
「さらばだ」
アイヴィス・ネクロンは去って行った。
「フィリウス君」
アノスとアイヴィス・ネクロンの会話の様子を見ていた俺の後ろから声を掛けられた。後ろを見るとそこにはエミリア先生が立っていた。
「貴方と同じ班員の落とし物です。渡しておいてください」
エミリア先生から校章を受け取る。
十字ではないので、ミーシャかサーシャのどっちかだろう。
「どっちですか?」
「サーシャさんではない方です」
「妙な言い回しをしますね。普通にミーシャと言えばいいのに」
エミリア先生はムッとした表情を浮かべて顔を背ける。
「まぁ、良いです。ミーシャに渡しておきます」
俺はミーシャを探しにその場を後にした。
生徒達がいっぱい居るであろう中庭から探そうとしていると、ベンチに座っているミーシャを見つけた。
「ミーシャ。落とし物だ」
俺はエミリア先生から受け取った校章をミーシャに渡す。
「・・・ありがとう・・・」
ミーシャは校章を受け取り、制服に付ける。
「それは、入学試験の時に俺が拾った手紙か?」
ミーシャはこくりと頷く。ミーシャの手には茶封筒の手紙があり、俺が来るまでずっとそれを眺めていた。
「親代わりをしてくれた人から」
「読まないのか?」
「・・・お守りだから・・・」
そう言って、ミーシャは手紙を眺める。
「残念だけど、私にはどうしようもないわ」
聞き覚えのある声が聞こえてきたので、俺とミーシャは声のする方へ顔を向ける。
俺達の視線の先には、中庭に生えている木の下でサーシャと何人かの黒服の生徒がいた。
「ですが、サーシャ様。あの不適合者、全く取り合う気がないんです。サーシャ様の方から、何卒お口添えを・・・」
「そ。じゃ、仕方ないわ。私が言っても聞かないもの」
どうやら、あの黒服の生徒達はサーシャ班の元班員のようだ。
たぶん、アノスの班に入りたいというよりサーシャと一緒の班になりたいからあんな事を言ってるんだろう。
「サーシャ様。あんな不適合者の班員のままで満足なのでしょうか? 何かお考えがあるのではないですか?」
サーシャはうんざりといった表情を浮かべている。
「契約だから仕方がないわ。それに、アノスを只の不適合者と侮りたいのなら、融合魔法を完成させられる者だけがそうしなさい」
途端に生徒達は沈黙する。まるで、ぐうの音も出ないとはこの事だと体現しているかのようだった。
「もう良いでしょ。行きなさい」
渋々と言った風にサーシャ班の元班員達は去っていった。
自分の班の元班員達が去ったのを確認し、はぁ、と溜め息をつくサーシャ。
「俺の配下らしい、なかなか痛快な断り文句だな」
此処に居ないアノスの声が聞こえると思ったら、アノスが俺達の方に近づいてきた。
「・・・うるさいわね・・・あいつらがうっとうしかっただけだわ・・・」
弱々しくサーシャが言う。
「迎えに来た?」
「なんのことだ?」
「・・・午後はダンジョン試験・・・」
ダンジョン試練とは、簡単に言えば、デルゾゲードの地下深くまで設けられた迷宮に挑む試験のことだ。
班別対抗試験同様、班で行動しダンジョンに置かれた魔法具や武器、防具などを集め、その得点を競う。迷宮探索の技術を訓練するのがどうのこうのと講釈を垂れていたが、早い話がただの宝探しだ。
「そういう訳じゃなかったが、ちょうどいいかもな」
「ん」
「確か、集合場所はダンジョンの入り口だったよな」
「そうよ」
というわけで、俺達は集合場所である地下ダンジョンの入り口へと向かう。
「ところで、アノス。貴方、ちゃんと試験の説明聞いてたかしら?」
「あぁ。最下層のの祭壇に供えられた
「全然聞いてないじゃない。満点だけど、絶対に無理だわ。最下層には生徒どころか、教師だって行ったことがないんだもの。本当に
「なら、なぜ評価項目にある?」
「・・・そんな事、私に言われても知らないわ。地下に王笏があるっていう伝承があるからでしょ」
「随分と適当な試験だな」
それを聞いた俺は思わず呟いてしまった。
下手したら、絶対に満点を取れないクソ試験とか随分と杜撰だな。
「王笏は〈
「えぇ。始祖が作った魔王の杖と言われているわ」
「それならある」
「・・・また適当なこと言って」
サーシャが呆れる素振りを見せる。
まぁ、普通ならサーシャのようにアノスが適当な事言っているように思うだろう。俺はアノスが始祖だという事を知っているので伝承通りあって良かったと安堵していたが。
「・・・どうして分かる・・・?」
「俺の城だぞ」
自分の城だったら何があるのかぐらいは把握してるか。
そんな事を考えていると、集合場所の地下ダンジョンへの入り口に到着した。既にそこには2組の生徒たちが集まっており、俺達が所定の位置につくと、ちょうど授業開始の鐘が鳴った。
「それでは、これからダンジョン試験を始めます。班ごとにデルゾゲードの迷宮に置かれた魔法具や武器、防具などを持ち帰ってその得点を競います。手に入れたアイテムの所有権は班リーダーが有します。制限時間は明日の朝九時まで。早めに戻った生徒は帰宅して構いません。ギブアップする者は〈
エミリア先生は地下ダンジョンの扉を開く。
「それでは始めてください」
エミリア先生の合図とともに、各班の生徒達が一斉になだれ込んでいくが、アノスは特に急ぐことなく、ゆるりと歩いていた。
「ちょ、ちょっと!?ダンジョン試験は早い者勝ちの勝負なんだから、こんな悠長に歩いている場合じゃないわ!」
「大丈夫だ」
「大丈夫って・・・」
「行きたいなら先に行ってもいいぞ」
「1人で行っても仕方ないわ」
ぷいっと振り返り、サーシャは俺達よりほんの少し先を歩いていく。試験には魔物が配置されているそうなのだが、先陣を切った生徒達が倒してくれているため、俺達はのんびりとダンジョンを進むことが出来た。
「そこを右だ」
「なんで分かるのよ?」
「来たことがあるからだ」
今一つ信じられないといった表情をしながら、それでもサーシャは渋々アノスの言う通りに歩いていく。
そして、10層程降りた時、アノスが振り向き口を開いた。
「そういえば誕生日の件だが、最下層の宝物庫に良い物がある」
「聞いてたのか?」
「隣で話していたら、否でも耳に入る。まだ残っていたらお前にやろう」
「・・・ほんと・・・?」
「あぁ。ミーシャの分も見繕ってやろう。誕生日はいつだ?」
「・・・明日・・・」
明日ってことはサーシャと一緒。つまり・・・
「ミーシャとサーシャは双子なのか?」
ミーシャは首を縦に振る。
「いくつになる?」
「・・・15・・・。私の分はいらない」
「遠慮はいらぬ」
「・・・会えないから・・・」
別に明日会えなくても、誕生日プレゼントぐらい当日じゃなくとも良いだろう。もしくは、欲しいものが無いのか。
せっかく、宝物庫があるみたいだし2人に何かプレゼントしよう。
「アノス?ここ行き止まりだわ」
突き当りでサーシャが振り返る。
「あぁ、隠し通路だ」
「そんな訳ないわ。魔眼で見てみても、何にも無いもの」
「魔眼じゃ分からないように対策してるんだ」
そう言って、アノスは突き当たりの壁に向かい、まっすぐ進む。
「え・・・ちょっと、アノス・・・?」
ドガンッ、とアノスの頭が壁に当たり、壁が破壊される。アノスがそのまま力任せに歩いていくと、壁はドドドドド、ゴゴゴゴゴとアノスの体の形に破壊されていく。
「はぁ・・・!?」
「・・・頑丈・・・」
「確かに馬鹿みたいに頑丈だし、凄いは凄いけど・・・あれ、隠し通路って言うのかしら?」
「・・・魔眼じゃわからない・・・」
「いや・・・アレは言わないだろ・・・」
「魔法の仕掛けも何にもないものね・・・」
唖然とした表情を浮かべ、立ちつくす俺達にアノスは言った。
「早く来い」
狐につままれたような顔をしながら俺達は歩き出した。
「ただ壁をぶっ壊してるだけだわ」
「・・・ん・・・」
アノスの超脳筋プレイで俺達は先に進むのだった。
如何でしたか?
アノスの脳筋プレイには、流石のフィリウスも驚きを隠せなっかたようです。
さて、次回は王笏を手に入れる為に最下層をめざす訳ですが果たしてそう簡単に王笏は手に入るのでしょうか?
ほら、王笏とか狙いそうな奴とか何処であろうと現れる訳ですし。
それでは、次回もお楽しみに。