暴虐の魔王と世界の破壊者   作:カトポン

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 どうも、おはこんばにちは。
 今回は、サブタイトルにもあるように原作のサーシャの真意とミーシャの秘密部分を1つに纏めました。そのせいで文字数が、約7千500字と長くなってしまいました。おかしいな、この小説の平気文字数3千600ぐらいなのに・・・。
 まぁ、そんな前置きは置いといて大学19話をどうぞ。
 
 


第19話 真意と秘密の二重奏

 宝物庫の壁にもたれかかり、俺達はぼんやりと宙を眺めていた。

 

「なぁ、遅くね」

 

 余りにも暇過ぎ&着替えが長過ぎるのでアノスに聞く。

 宝物庫に入ってからもう10分程経っている。いくら、女性の着替えが長いとはいえ、上着を着替えるだけで10分も掛かる物なのか?

 

「確かに妙だな」

 

 アノスが催促するように扉を叩いてみたが、返ってくるのは静寂ばかりだ。

 まさかとは思うが俺達を置いて、帰った訳じゃないだろうな。

 

「ミーシャ、居るか?開けるぞ」

 

 返事が返ってこないので、俺達は宝物庫の扉を開けると祭壇に目を向ける。其処はさっきまでとは明らかに印象が異なっていた。

 祭壇の前には、水たまりのように溢れた血があり、その中心にミーシャががっくりと項垂れるように膝をつき、右胸にはナイフが突き刺さっていた。

 見たところ生きてはいるようだが、すぐに治療が出来ないようにか、ご丁寧にミーシャの周囲には魔法障壁が張り巡らされていた。

 

「あら? ようやく出てきたの。ずいぶん素直に言うことを聞いたものだわ」

 

 〈不死鳥の法衣〉を纏い、王笏を握っているサーシャが声を発する。

 

「余りにも長いとはいえ、レディの着替えだと思ってたからな。まさか、着替えを終えて殺人未遂事件を起こしていたとは」

「ふむ。なんの真似だ、サーシャ」

 

 すると、サーシャは嘲笑するように言った。

 

「男なんて単純ね。ちょっとぐらい仲良くしてやっただけで簡単に騙されるんだもの。ぜんぶダンジョン試験で1位になる為のお芝居に決まってるじゃない。この私が本当にこんなガラクタ人形と仲良くしたいとでも思った?誕生日プレゼントなんてホント・・・反吐が出るわ!」

 

 それを聞いたミーシャの指がピクリと動く。

 

「あら、まだ生きてるの?しつこいわね」

「大した女優だな、サーシャ。だが、裏切るにしてはどうも手ぬるい。やるならミーシャは殺し、蘇生が難しいように肉体を細切れにして、その肉片を1つずつ岩の中に封印し、探し出せないように世界中にバラまいて、まぁようやく序の口だ。そうしなかったのは何故だ?」

 

 サーシャは顔をしかめる。

 それを聞いた俺は内心ドン引きではある。

 

「そこまでする必要があるかは知らんが、何故ミーシャを完全に殺さなかったんだ?私は非情に徹しきれていませんって言ってるようなもんだぞ」

「・・・うるさいわ。ダンジョン試験で1位になればそれで目的は達成なだけよ」

「それも妙な話だな。王笏の所有権は班リーダーのアノスにある。持ち帰ったところでサーシャが班員である限り無駄に終わるぞ」

 

 俺がそう言うと、サーシャはにっこり笑い、魔法陣を展開した。

 

「〈契約(ゼクト)〉を破棄するわ」

 

 そう口にすると、ミーシャとサーシャの間で交わされた〈契約(ゼクト)〉の効力が消えた。

 しかし、見たところではあるが、ミーシャは〈契約(ゼクト)〉の破棄に同意していない。〈契約(ゼクト)〉は原則、両者の合意がなければ、破棄する事が出来ない筈だ。魔力に大きな差があれば、一方的に破棄出来るようだがミーシャとサーシャにそこまで差があるようには思えない。

 

「なるほど。興味深いな」

 

 どうやら、アノスは大方の推測がついていそうだ。

 しかも、アノスがそう漏らしただけで優位に立っていたつもりのサーシャが、逆に追い詰められたような顔になった。

 

「貴方達・・・頭がおかしいんじゃないかしら?その子放っておいたら死ぬわよ。そんなに余裕ぶっている状況じゃないのが、分からないの?」

「ふむ。この状況のいったい何が問題なんだ?見たところ、普段と何も変わらない、退屈で眠たい午後の授業だろうに」

 

 アノスの言葉に、ますますサーシャが視線を険しくする。

 

「まぁ、少々派手な姉妹喧嘩だとしか思わんが・・・何で、お前がミーシャの心配をしてるんだ?あぁ、もしかして()を死なせたくないのか?」

「そのガラクタ人形を妹だと思った覚えはないと言ったでしょ!」

 

 怒気を込めて、サーシャは言った。

 

「いい?それはね、私に利用される為だけに生まれてきたの。使うだけ使って、役に立たなくなれば、ボロ雑巾のように捨てられる。哀れで、惨めな、魔法人形だわ」

 

 吐き捨てるように、憎しみを込めるように、サーシャはただただ論う。

 

「ふふっ、あはは、あはははは!許してなんて言葉、本当に信じるなんてね。何度騙されれば気が済むのかしら。本当に馬鹿なお人形さん。私と貴方が仲良く出来るとも思っているのかしら?あぁ、でも良かったわ。もう使い道も無いと思っていたけれど、この雑種達を騙すのに役立ってくれた」

 

 サーシャの視線は俺達ではなく、まっすぐミーシャを射抜く。

 

「ねぇ、まだ生きてるの?最期だから言っておくわ。何度騙されたって、そうやって信じてくる、あなたのその良い子ぶりっ子なところが、私は虫酸が走るぐらいに大嫌いだったわ!」

 

 感情を高ぶらせ、刺すように発せられたサーシャの言葉。だが、その瞳に〈破滅の魔眼〉は発現していなかった。

 さっきから、ただの一度でさえ。

 

「で?本音のところはどうなんだ?サーシャ」

 

 俺が一歩、前に出る。

 俺の問いに、〈破滅の魔眼〉が発現したサーシャは俺をキッと睨む。

 

「どうした?俺に見透かされて感情でも高ぶったか?」

 

 サーシャは俺を睨み続けるが、途中でふっ、と微笑した。

 

「あら?もしかして、貴方は私が〈破滅の魔眼〉を制御出来ないと思っているのかしら?」

 

 そう言って、サーシャは静かに目を閉じる。

 ゆっくり目が開かれると、サーシャの瞳からは<破滅の魔眼>が消えていた。

 

「ほら、ご覧の通りよ、こんなのを制御するぐらいなんでもないわ」

「なるほど。フィリウスの思い違いと言いたい訳か。それで・・・」

 

 アノスが一歩、前に出る。

 

「本音のところはどうなんだ?」

 

 サーシャはきゅっと唇を引き結ぶ。

 アノスが迫ってくるのを警戒しているからなのだろうか?

 

「何にせよ、サーシャ。俺の配下でありながら、俺の友達に手をあげておいて、まさか、ただで済むとは思っていないだろうな」

「〈条件(レント)〉!」

 

 ミーシャの右胸に刺さったナイフの上に魔法陣が出現する。

 

「条件付けの魔法か。お前に手を出すとナイフが深く刺さる仕組みだな」

「先にあっちを何とかする事ね。いくら貴方達でも、魔法障壁を壊して、ミーシャを治すのに10秒はかかるでしょ。それだけあれば十分だわ」

 

 サーシャが〈飛行(フレス)〉を使って、離脱しようとするが、飛び上がるどころか地面に叩きつけられる。

 同時に条件が満たされ、〈条件(レント)〉の魔法が発動する。

 しかし、ミーシャは無事だった。魔法障壁にはなんの変化もない。

 

「貴方達何をしたのよ。それに〈条件(レント)〉は確かに発動したのに・・・」

 

 サーシャは魔眼をミーシャに向ける。

 よく深淵を覗けば、その魔法障壁と胸のナイフ、そして血が、アノスの幻影魔法で作った偽物だということが分かるだろう。

 ミーシャはとっくに回復魔法〈治癒(エント)〉によって、傷が治っている。

 当然、連動するべき魔法障壁が壊されていては、〈条件(レント)〉が発動したところで何も起こる訳がない。

 

「〈幻影擬態(ライネル)〉・・・嘘でしょ・・・いつの間に・・・?」

「見た瞬間に決まっているだろう。友達が死にかけているというのに、放っておいては良い奴ぶることも出来ないからな」

 

 その後、サーシャがなにか企んでいるのだろうと思い、アノスが〈幻影擬態(ライネル)〉で暫く泳がせたという訳だ。

 

「じゃあ、私のは一体何なのよ」

「それはコイツのせいだな」

 

 俺が少し横にズレるとそこには俺が召喚したユートピアドーパントが居た。サーシャが〈条件(レント)〉を発動した時にバレないようにこっそり召喚し、サーシャがこの場を離脱しようとした時にユートピアドーパントの重力操作で地面に叩きつけたのだ。

 

「さて、ミーシャの方はアノスが0.1秒でなんとかしたが、お前が逃げるまでの残り9.9秒、もっと強い力で床に叩きつけられたいか壁にめり込みたいかどっちが良い?」

 

 とりあえず、ユートピアドーパントにサーシャを壁にめり込ませると、サーシャは苦痛で顔を歪める。

 

「・・・待って・・・」

 

 祭壇の方から、声が聞こえた。

 ユートピアドーパントにサーシャを壁にめり込ませながら、祭壇の方を見る。

 アノスが〈幻影擬態(ライネル)〉を解除すると、ミーシャが立っていた。

 

「・・・許してあげて・・・」

「許すのは構わないが、洗いざらい話してもらった方が良いと思うぞ」

 

 ミーシャはふるふると首を横に振った。

 

「無理矢理は良くない」

 

 切実な目で俺に訴えてくるミーシャ。

 

「・・・だめ・・・?」

 

 ミーシャの願いを無碍にする訳にもいかないので、 俺はユートピアドーパントの重力操作でサーシャを壁から離すと、ユートピアドーパントにはオーロラカーテンでお帰りになっていただいた。

 ユートピアドーパントが居なくなると、ユートピアドーパントの操作していた重力も元に戻り、サーシャは床に倒れ伏せ、王笏もカランカランと音を立てて床に落ちた。

 

「サーシャ」

 

 ミーシャがサーシャの元に駆け寄るが

 

「近寄らないで!」

 

 心配するミーシャを拒絶し、サーシャは立ち上がる。

 

「ミーシャ。貴方って、本っ当に馬鹿ね!せいぜい最期の瞬間に、後悔するといいわ!」

 

 そう言って、サーシャは〈飛行(フレス)〉でこの場を去る。

 

「さて、ミーシャ。お前にも質問がある」

 

 アノスが俺達の近くまで歩いてきていたミーシャに言う。

 

「・・・サーシャの事・・・?」

「お前の事だ」

 

 アノスの言葉にミーシャは無表情のまま黙り込む。

 

「・・・知りたい・・・?」

「友達だからな」

 

 それを聞いたミーシャは僅かに俯く。

 

「やっぱり、言いたくないか?」

 

 ふるふるとミーシャは首を横に振った。

 

「言いたくなかった」

 

 なかった、ということは、

 

「気が変わったのか?」

 

 こくり、とミーシャは頷く。

 

「・・・アノスとフィリウスは友達。それに優しい・・・」

 

 ミーシャは、無表情な目を俺達に向け話し始めた。

 

「・・・15歳の誕生日、午前0時に、私は消える・・・」

 

 ミーシャの誕生日はサーシャと一緒だから明日。で、時計が無いから定かではないが、今の時刻は午後5時ぐらい・・・つまり、後7時間ぐらいでミーシャは消えてしまうって事か。

 

「魔法人形と呼ばれていた事と関係があるのか?」

「魔法人形というのは正しくない」

 

 サーシャが良くミーシャの事を人形と言っていたが違うのか?

 

「ミーシャ・ネクロンは存在しない」

「ん?存在しない?ミーシャはミーシャじゃないのか?」

 

 どういう事か全く分からない俺にミーシャが説明しようと口を開いた時だった。

 

「なるほど。お前は元々サーシャだったという訳か」

 

 アノスがそう口にすると、驚いたようにミーシャが二度瞬きをした。

それにミーシャが元々サーシャってどういう事だ?

 

「・・・どうして分かった・・・?」

「〈契約(ゼクト)〉を一方が強制破棄するのはまず不可能だ。莫大な魔力の差があれば別だが、お前とサーシャの魔力は似たり寄ったりだからな。にも関わらず、アイツは〈契約(ゼクト)〉を代償も支払わずに破棄した。〈契約(ゼクト)〉を使った者同士の合意によって、契約は破棄された。お前とサーシャが同一人物であるなら、どちらか片方の判断で簡単にそれが出来る。自分自身で調印した〈契約(ゼクト)〉の破棄が容易いようにな」

「・・・アノスは賢い・・・」

「ミーシャが元々サーシャだとして、何で同じ人物が2人も居る事になるんだ?」

 

 アノスの言う通りだとしたら、この世界にサーシャ・ネクロンは2人居るって事になる。

 世界には自分とそっくりな人間が3人居ると良く言うが、自分と同じ人間が2人いるってのは聞いた事が無い。いやまぁ、ドッペルゲンガーとかあるけどそれだったらサーシャは死んでるぞ。

 

「〈分魂分体(ディエルガ)〉か、それに類する魔法で体と魂を分けたのだろう。そして、分けられた体と魂は、次第に本来あるべき形に戻っていく」

 

 こくり、とミーシャは頷く。

 

「私は魔法で分けられた疑似人格、本来は存在しない。15歳の誕生日にはサーシャに戻るだけ。だから、サーシャは私を魔法人形と呼んだ」

 

 ミーシャは魔法で分けられた擬似人格、仮初めの命でしかないからミーシャは、魔法人形と呼ばれていたのか。

 ミーシャが白服なのも、15歳の誕生日に消える事が分かっていたからなのだろう。

 

「けど、そんな事一体誰がやったんだ?魔法で元々1つの体と魂を分けるなんて事そうそう出来ないだろ?」

「うむ。〈分魂分体(ディエルガ)〉は簡単な魔法ではない。この時代にそれが使える者は限られているだろうな」

「じゃあ一体誰が・・・」

「アイヴィス・ネクロンだろうな」

 

 アノスが間髪入れずに答える。

 

「・・・どうして・・・?」

 

 またしてもミーシャは驚く。どうやら、アノスが言った事は正しかったようだ。

 

「さっきも言ったが、〈分魂分体(ディエルガ)〉は簡単な魔法ではない。また、胎児の時でなければ成功率が低くなる。お前達はアイヴィスの血族だしな。奴がやったと考えるのはそう的外れじゃないだろう。それに、奴には理由がある」

「理由?どんな?」

「〈分魂分体(ディエルガ)〉と一緒に、お前達に融合魔法を施しているのだろう。魔力と魔力を融合させる融合魔法だが、その術式には融合時間が有限という欠陥がある」

 

 確かに、それは今日のアイヴィス・ネクロンの大魔法教練で言っていた。アノスが、改良して3〜5秒しかなかった融合時間を数100倍にも引き延ばしたが、融合時間が無限になった訳じゃない。

 

「だが、本来1つの物を二つに分ければ話は別だ。ミーシャとサーシャが1人の人物に戻ろうとする力を利用し、融合魔法の欠点をなくす事をアイヴィスは思いついた」

「因みに、2人が融合したらどうなるんだ?」

「〈分魂分体(ディエルガ)〉で2つに分け、融合魔法で魔力を増幅させるからな。本来の人物よりも何10倍、あるいは何100倍といった魔力が得られるだろう。本来は1つの者であった為、融合魔法の欠点により再び分離してしまうという事もない」

 

 なるほど。つまり、今のサーシャの数十〜数百倍の魔力が手に入るのか。再び分離する事もないし良い事ずくめだが・・・

 

「それ、かなり無茶してないか?」

「術式の複雑さはもとより、魔法行使の難度、そしてサーシャへのリスクは莫大な物になっているだろうな。身に余るだけの魔力を得て、体が持たないかもしれぬし、その前に精神がやられるかもしれぬ。まぁ、アイヴィスは腐っても、俺が直接生み出した魔族だからな。その辺りは上手くやったのだろう」

 

 仮に上手く出来なかったら大変な事になるよな。いや、そもそも融合なんかさせないんだが。

 

「それ以外にも可能性は考えられるが、どうだ?」

 

 ミーシャは頷く。アノスの推測が正しいという意味だろう。

 

「〈分離融合転生(ディノ・ジクセス)〉」

「それがサーシャにかけられた魔法か?」

 

 ミーシャがこくり、と頷く。

 アノスの説明通りなら、〈分離融合転生(ディノ・ジクセス)〉は〈分魂分体(ディエルガ)〉と融合魔法を組み合わせた魔法なのだろう。より強い魔族を生み出す為に。

 

「だから、ミーシャは誕生日に会えないって言ったんだな。誕生日にはもう、ミーシャは居ないから」

 

 ミーシャは頷く。

 

「・・・ごめんなさい・・・」

「どうして謝るんだ?」

「・・・黙ってた・・・」

「そんな事、気にしなくて良い。言いたくない事を無理に言う必要は無いんだから」

 

 ミーシャは目を伏せ、呟くように言った。

 

「普通に過ごしたかった」

 

 俺が視線で問いかけると、ミーシャは続きを述べる。

 

「私が生まれた時から、運命は決まっている。私は消えてサーシャだけが残る。それでも、良いと思った。15年が私の一生」

 

 改めて、聞くと短い。

 人間ですら、短いと思うだろうに長寿な魔族からしたら15年なんて一瞬だろうな。

 

「その分だけ、思い出が欲しかった。でも、私に話しかける魔族は居ない。ネクロンの片割れは、存在しない事になっているから。それは魔王学院でも同じ」

 

 確かに、ミーシャが俺達以外と話している所を見た事がない。

 エミリア先生だって、サーシャさんではない方と妙な言い回しをしてたからな。

 

「そう思ってた」

 

 ミーシャの目が強く、まっすぐ、俺達を見つめる。

 

「アノスとフィリウスが話しかけてくれた。友達になってくれた。フィリウスのカメラで写真を撮らせてくれた。アノスの家に連れて行ってくれて、ご両親と楽しくお話しした」

 

 ミーシャは笑う。

 他の人からしたら、頭の片隅に残るかどうかも怪しい思い出を大切に抱えるように。

 

「私の一生には、奇蹟が起きた」

 

 ミーシャが言った事なんて、全て気まぐれだ。俺が転生して関われたら良いな〜とは思っていたが、ミーシャだと思ってぶつかった訳じゃないしミーシャだから手紙を拾った訳じゃない。

 そんな俺とアノスの気まぐれを奇蹟だというミーシャが、これまでどんな過去を歩んで来たのか、それは想像に難くない。

 

「アノス、フィリウス」

 

 ミーシャが俺達の名前を呼ぶ。

 

「私の名前を呼んでくれてありがとう。嬉しかった」

 

 まるで明日が来るまでに言っておきたかったとばかりに、ミーシャは言う。

 

「2人は私と友達になって後悔した?」

「なんで、そんな事を訊くんだ?」

「・・・ミーシャ・ネクロンは存在しない・・・」

 

 無表情でただ淡々と告げるミーシャは、自分が消える事よりも、俺とアノスが消えてなくなる友達と仲良くなってしまった事を案じていた。

 そうと分かった俺は気づけばミーシャを抱き寄せていた。原作では、アノスがやっていたような気がするが、そんな事はどうでも良い。

 

「・・・フィリウス・・・?」

「俺は全てを破壊する力があってな。俺に立ち塞がるものなら何であろうとも全て破壊する」

「俺には知らぬ事が2つある。後悔と不可能だ」

「だから、俺が・・・いや、俺達がミーシャの願いを叶えてやる」

 

 抱擁を解き、ミーシャの目を見て言う。

 ミーシャは無表情のまま考える。戸惑っているようにも思えた。

 

「仲直りがしたい」

 

 それは、サーシャという事だろうな。

 

「それが、私のお願い」

 

 この後に及んで出した願いがそれか。

 俺はともかく、アノスが始祖だという事をまだ信じていないのだろう。

 

「・・・難しい・・・?」

「言っただろう。立ち塞がるもの全て破壊するって。だから、心配するな。それと1つだけ約束してくれ」

 

 ミーシャが俺に目を向ける。

 

「最期の瞬間まで明日があると思って生きてくれ」

 

 ミーシャは沈黙する。

 

「普通に過ごしたいんだろ?」

 

 そう口にすると、ミーシャは頷いて言った。

 

「分かった」

「よし、なら、とっととサーシャを捕まえるか」

 

 俺達は祭壇を離れ引き返す。

 ミーシャの願いを叶える為に。そして、ミーシャとサーシャが15歳の誕生日を迎えても、笑い合えるハッピーエンドにする為に。




 如何でしたか?
 第一章も少しずつ終わりに近づき、第30話までには、第一章が終わりそうだなと思っております。
 さて、次回ですが今回と同じく原作の2話分をまとめて1話にする予定です。いつ書き終わるのか分からないですが、早めに投稿出来るように努力します。
 それでは、また次回お会いしましょう。
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