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それでは、第20話をどうぞ。
地下ダンジョンの上層へ向かい、俺達は階段を上っていた。
「追いつく?」
ミーシャが俺達に尋ねる。
サーシャは〈
「あぁ。脚の速さには自信があるんでな」
俺はネオディケイドライバーを腰に装着するとライドブッカーからディケイドのカードを取り出すと、ネオディケイドライバーに挿入する。
「変身」
『KAMEN RIDE DECADE』
ディヴァインサイドバンドルを押し込んで、走りながらディケイドに変身すると、すぐさまライドブッカーからカードを取り出し、ネオディケイドライバーに挿入する。
「F1カーの速さ、舐めんなよ」
『FORM RIDE DRIVE FORMURA』
ディヴァインサイドバンドルを押し込み、ディケイドドライブ タイプフォーミュラにフォームライドした俺は凄まじい速さで駆け上がる。
「もうちょっと速くしたいんだが・・・」
充分早いんだが、速く追いつきたい俺はシフトブレスに刺さっているシフトフォーミュラを倒しても何も起きない。
「ドライブが出来たんだからなんかねぇのか」
ライドブッカーからドライブのライダーカードを数10枚取り出す。
「シフトアップ・・・これか」
『ATACK RIDE SIFTUP』
「俺の推測通りならシフトフォーミュラを倒せば出来る筈」
俺はシフトブレスに刺さっているシフトフォーミュラを3回倒す。
『フォ!フォ!フォーミュラ!』
加速して更に速くなった俺は一気に階段を上り終え、自然魔法陣の部屋に辿り着くと前方にサーシャを見つけた。
「逃がすか」
俺は速度を緩めずに、サーシャの首根っこを掴むと、そのまま自然魔法陣の部屋にポイッと放り投げると、急ブレーキをかけて立ち止まり振り返る。
「なんでこんなに早く私に追いつくのよ」
「なに、脚の早さには少し自信があるんでな。さて、アノスとミーシャが来るまで大人しく此処に居てもらうぞ」
『KAMEN RIDE DRIVE』
ディケイドドライブ タイプスピードにカメンライドするとライドブッカーからカードを取り出す。
『ATACK RIDE JUSTICEHUNTER』
『タイヤコウカーン!ジャスティスハンター』
俺の胴体に装備されていたタイプスピードタイヤが、ジャスティスハンタータイヤと交換されディケイドドライブ タイプスピードハンターとなった。
俺は右手に持っていたジャスティスゲージをサーシャの頭上に放り投げ、檻を作り上げるとサーシャをその中に閉じ込める。
「出しなさいよ」
「出したら逃げるだろ。アノスとミーシャが来るまでの辛抱だ」
そう言うと、サーシャは諦めたのか大人しくなった。
程なくしてアノスとミーシャが自然魔法陣の部屋にやって来た。俺は変身解除するとサーシャを閉じ込めていた檻が消失する。
「それで、私に何の用なの?」
「なに、ミーシャがお前と仲直りをしたいと言うからな」
アノスの言葉にサーシャは目を丸くし、そして苛立ちを露わにした。
「馬鹿じゃないの。貴方、ついさっき私に何をされたか、もう忘れたの?」
「本当の事が知りたい」
ミーシャに鋭く発せられた言葉。
けれども、ミーシャはただまっすぐサーシャを見返すばかりだ。
「呆れたわ。本っ当に馬鹿なお人形さん。アノス、フィリウス、貴方達もよ。こんな子の言う事を真に受けるなんてね。いい?貴方達が随分と入れ込んでいるその子は存在しないの。命も魂もない。明日になれば消えるだけの、ただのガラクタ人形よ」
「それは、さっきミーシャから聞いたけど、だから何?だぞ」
俺の言葉が予想外だったか、サーシャは返事に窮する。
「・・・そう、話したの。お人形さんのくせに、随分と生きているみたいに振る舞うじゃない。消えるのが怖くなったのかしら?」
サーシャが論うように言う。
「違う」
「何が違うのよ?」
「私が消えるのは決まってる。怖い物は無い」
淡々とミーシャは言った。
「でも、その前にサーシャと仲直りしたい。それだけ」
キッとサーシャはミーシャを睨みつける。
「本当の事が知りたい」
「何よ?」
珍しく躊躇したように、ミーシャは怖ず怖ずとサーシャに訊いた。
「サーシャは私の事、嫌い?」
その質問にサーシャは答えない。
サーシャはアノスの方を向き、こう言った。
「ねぇ、もう一度勝負しないかしら?」
サーシャの意図が見えない。俺とならともかく、アノスと勝負したって絶対に勝てる筈無いのに。
「どんな勝負だ?」
「私がこれから魔法陣を描くわ。その魔法陣を初見で魔法行使出来れば貴方の勝ち。出来なければ、私の勝ち」
なるほど、他人の構築した魔法陣を使って勝負するのか。何の魔法か分からなかったら、初見で術式を理解しなければならない。
普通なら、魔法陣を描く側が圧倒的に有利な勝負だろう。相手がアノスでなければ。
「良いのか?そんな俺に有利な方法で。もっとハンデを付けてやっても良いぞ」
「問題ないわ。貴方にだって絶対に出来ないもの」
随分と自信があるみたいだが、イカサマでもするのだろうか。
「何を賭ける?」
「貴方が勝ったら、あの子の質問に答えてあげる」
「お前が勝ったら?」
「私の命令に従って、魔法を一つ使ってもらうわ」
奇妙な条件だな。サーシャが何を企んでいるのか分からない。
「何の魔法だ?」
「あら?確かめないと、怖くて勝負も出来ないのかしら?」
サーシャがアノスを煽る。
「良いぞ。受けて立とう」
サーシャは満足そうに微笑し、〈
「それで? その魔法陣は?」
「これから描くわ」
サーシャは踵を返し、歩き出す。
サーシャが立ち止まったのはちょうど部屋の中心だ。静かに瞳を閉じ、まっすぐ立てた王笏を両手で持つ。
魔力の粒子が立ち上り、サーシャの足元に魔法陣になる原形の魔力円が浮かんだ。その円は次第に大きく広がっていき、部屋全域に及ぶと魔力円に魔法文字が浮かんでいき、次々と魔力門が現れていく。
「いつまでかけるつもりだ?」
「心配しなくても、明日の0時までには間に合うわ。その子が消えるまでにはね」
ここまで、時間をかけるのはアノスの時間を奪う作戦だからなのだろうか。ミーシャが消える前に魔法行使を行おうとすれば、焦って失敗するかもしれないと考えたら納得がいく。
もしかしたら、それ以外にも何か企んでいるかもしれないが。
「あら?ちょっとは焦ってきたかしら?」
「俺に勝負を挑むんだから、せいぜい万全を期すが良い。どんな小細工を弄そうと、無駄な事だ」
「大した自信ね。見てなさい。今度ばかりは私が勝つわ」
班別対抗試験であれだけアノスか実力差を見せつけたというのに、何処からその自信が出てくるのか。サーシャはアノスの力が分からない訳ではないからな。
「面白い。その無謀な勇気に免じて、魔法陣が完成するまで見ないでおいてやろう」
そう言ってアノスはその場に座り込み、
俺はというと〈
サーシャは魔法陣の構築に集中していた。これだけ大規模な魔法陣なので、少しでも間違えれば時間に間に合わないからだろう。
日が暮れ、この部屋に月明かりが差し込んでも、サーシャはミスなく魔法陣を描き続ける。
その姿をミーシャはじっと見ていた。必死に魔法陣を構築する、その光景を、目に焼きつけようとするように、瞬きすら惜しみ、視線を注ぎ続けている。
そうして、刻一刻と時は過ぎ、〈
「アノス」
サーシャがアノスを呼ぶ。
余りにも暇すぎて、途中こっくりこっくり船をこいでいた俺は立ち上がり、大きく伸びをする。
「まさか、間に合わなかったと言うんじゃないだろうな?」
どういうこと?完成してないの?
まさかあれだけ、自信満々に言っておいて完成しませんでしたとか言うんじゃないだろうな。
「そんな訳ないじゃない。これで完成よ」
サーシャは手をかざす。
サーシャが発動した魔法は部屋に注ぎ込んでいた月明かりを無数の光に枝分かれさせ、魔法陣の足りないピースを一気に埋めた。
完成したのは、部屋一帯を埋め尽くす巨大な自然魔法陣である。
それを一目見たアノスは、突然笑い出した。
「く、くくく。くははははっ。なるほど。なるほどな、サーシャ。初めからお前は勝負に勝つつもりなどなかったという訳だ」
アノスの言葉にサーシャは微笑した。
「自分の力ぐらい弁えているもの。こんな勝負、いくら負けたって良いわ。でも、私は運命にだけは負けたくないの」
運命に負けたくない、か。サーシャの言う運命が俺の予想通りなら、それは・・・。
「お察しの通り、わたしの目的はこの大魔法をあなたに行使してもらうことよ」
物思いにふけっていたが、サーシャの言葉で一旦それを中断する。
「良く考えたものだ。俺が勝負に勝つには、この魔法を発動しなければならない。そして、勝負に負ければ、お前はこの魔法を発動しろと命じる」
〈
「良いだろう。お前の知恵と勇気に敬意を表し、勝ちを拾わせてもらおう」
アノスは魔法陣に向かって、手を翳すと魔法陣を起動させた。
「初めて見るが、コレは何という魔法だ?」
「〈
〈
〈
だから、アノスに魔法を使わせたかった。
因みに、〈
「その覚悟、存分に示すがいい」
アノスは、〈
青い粒子が蛍のように飛翔し、魔法陣の中心にいたサーシャの体が光り輝く。
更に光は強くなっていき、部屋全体が蒼く染まった後、ふっと視界は元の色を取り戻した。
「・・・終わったの・・・?」
「あぁ、勝負は俺の勝ちだ。分かっているだろうな?」
サーシャは頷く。
「嘘をつけないように、〈
〈
「構わないわ」
「ミーシャも良いか?」
「・・・ん・・・」
こくり、とミーシャは頷く。
「なぁ、アノス。これって俺も聞こえるように出来たりしないか?」
「出来るが、どうしてだ?」
「単純に聞いてみたいから」
「ふむ。2人は良いのか?」
「別に構わないわ」
「・・・ん・・・」
2人も良いとの事だったので、〈
「ミーシャ」
月明かりが幻想的に降り注ぐ広大な部屋の中央で、ネクロン姉妹は向かい合う。
「あと10分ちょっとで貴方は消えるわ」
ミーシャはこくりと頷く。
「どんな気分かしら?」
いつものように淡々とミーシャは答えた。
「怖い物は無い」
「そ」
まっすぐサーシャはミーシャを見つめる。
「本当の事が知りたいんだったわよね?」
「・・・ん・・・」
「良いわ。これが最後だもの。答えてあげる」
すっとサーシャは息を吸い込む。
せっかくアノスに〈
――これが、最後――
――貴方は、初めから存在しない。
――ただ私は元の形に戻るだけ。
――自分と似たような存在が、いつも側に居るほど、目障りな事はない。
――あぁ、そんな風に思えたら、どれだけ良かったんだろう。
――子供の頃、私がまだ〈破滅の魔眼〉を全く制御できなかった頃・・・
――貴方だけが私の側に居てくれた。
――貴方だけが私の目を見てくれて、貴方だけが私に笑いかけてくれた。
――貴方が練習に付き合ってくれたおかげで、私は目を合わせさえしなければ、誰かを傷つける事が無いようにまでなれた。
――外に出て、他の魔族達と笑う事が出来るようになった。
――でも、存在しない貴方は、使用人が付けられただけで、いつも独りぼっちで過ごしていた。
――15年、私は十分に楽しく生きた。
――だから、もう良い。もう良いんだ。
――残りの人生は貴方にあげるわ。
――運命だからと貴方は言うけれど、私はそんな物認めない。
――私達の魂と体は2つに分かれた物。
――私がオリジナルだけど、それを変える術がある筈だと思って、ずっと魔法を研究していた。
―― 〈
――だから、〈
――私だけの力じゃ無理だったけれど、アノスのおかげで間に合った。
――あとはもう一つの魔法、〈
――きっと、出来るわ。
―― 〈
――私を、サーシャ・ネクロンを拒絶する事。
――その為に、ずっと今日まで準備をしてきたんだもの。
――ずっと、貴方に嫌われる準備を――
――大丈夫。出来るわ。
――これで、最後だけど――
――ごめんね、ミーシャ。私は本当の事なんか言わないわ。
――例え、〈
「ねぇ、お人形さん」
ーーねぇ、ミーシャーー
「私は貴方の事が、ずっとずっと、大嫌いだったわ」
――私は、貴方の事が、ずっとずっと、大好きだったわ――
言ってる事と思ってる事が正反対だが、サーシャはミーシャを縛り付けるぶち壊す為にここまでしたのだ。
自分を犠牲にしてでも、ミーシャに生きていて欲しいから。
因みに、アノスはサーシャが契約に背いた時に、〈
「だから」
――だから――
「ごきげんよう」
――さようなら、ミーシャ。大好きな、私の妹。
サーシャはミーシャを抱きしめる。
悟られないよう、気がつかれないよう、嘲笑しながら。
――上手く笑えているかしら?
――分からないけど、この状態なら顔も見えない。
―ー変えてみせる。貴方が死ぬなんて、そんな運命、ぶち壊してやるわ。
「・・・〈
ーー元気でね、ミーシャ。ばいばい――
サーシャが〈
その輝きが次第に収まっていき、光に飲まれた2人の影が見え始める。
10数秒が経過し、やがて光は完全に消えた。
そこにあったのは、変わらない2人の姿である。
驚いたような表情で、半ば呆然としながら、サーシャはミーシャの顔を見つめる。
「・・・・・・そんな・・・」
――ずっと、準備をしてきたのに。
――万全を期して、絶対に間違えないように、完璧に計画を練ってきた。
――それなのに・・・。
「・・・どうして・・・?」
自分の計画が失敗し、今にも泣き出しそうになるサーシャ。
「何の魔法?」
ミーシャが尋ねるも、サーシャは悔しそうな顔を浮かべるばかりだ。
そんなサーシャをじっと見つめた後、ミーシャは言った。
「サーシャは嘘が下手」
ミーシャは淡々とした口調で、けれどもとても優しくて、
「どうして嘘をつくのか分からない」
その瞳は、姉であるサーシャの好意だけが溢れている。
「でも、私は不器用なサーシャが好き」
サーシャは唇を噛み、ぐっと涙を堪えた。
だが、我慢しきれず、ぽたぽた頬に雫がこぼれ落ちる。
サーシャの立てた計画は完璧だった。妹のミーシャを縛り付ける運命をぶち壊す為に、魔法を研究し、大好きな妹を救う為にずっと憎まれ役を演じてきた。ミーシャがサーシャを拒絶し、〈
だが、この計画には1つ誤算があった。
それは、ミーシャが思った以上に姉の事が好きで、そしてサーシャも演技で取り繕えないぐらい妹の事が大好きだった事だ。皮肉にも、サーシャがミーシャを助けたいという想いそのものが、この計画に破綻をもたらしたのだ。
「・・・馬鹿・・・」
絞り出したような声が、ただ響いた。
「・・・馬鹿よ、貴方・・・あんなに・・・あんなに、私、ひどい事をしたのに・・・!」
サーシャはミーシャに訴える。
「ひどい事を言ったのに・・・貴方を傷つけたのに・・・どうして・・・どうして・・・?」
絶望に打ちひしがれるように膝をつき、サーシャはミーシャの胸に顔を埋める。
「・・・お願い・・・ミーシャ、私を嫌いになって。拒絶して・・・」
涙をこぼしながら、懇願するようにサーシャは言う。
「じゃないと、貴方を助けられない。私は貴方の代わりに消えても良いから」
しかし、ミーシャは姉の頭にそっと手をやり、優しく撫でた。
「よしよし」
サーシャの肩を抱いて、ミーシャは言う。
「気にしないで。最初から居なかったのは私」
「そんなの、そんなの関係ないわ!だって、ミーシャは此処に居るでしょ!私は守りたいの!大好きで、大切な、妹だから。こんな運命、ぶち壊してやりたいの!!」
ぎゅっとサーシャはミーシャにしがみつく。
「・・・お願い・・・居なくならないでよ・・・私を置いて行かないで・・・」
困ったようにミーシャは微笑む。
「私は居なくならない。サーシャになるだけ。ずっと貴方の側に居る」
もうすぐで12時になる。それは、ミーシャがミーシャで居られるのは僅かだという事を意味していた。
泣きじゃくるサーシャを撫でながら、ミーシャは満足そうな顔をする。
「仲直りが出来た」
ミーシャが俺達を振り向く。
「2人のおかげ」
「それは良かったな」
こくり、とミーシャは頷く。
「他に何か願いはあるか?」
アノスの問いに、ミーシャは首を横に振った。
「思い残す事は何も無い」
まっすぐ、俺達を見据え、ミーシャは言った。
「もう仲直り出来ないと思った。でも、私の人生には、二度も奇蹟が起きた」
「何を言う」
不思議そうにミーシャはアノスに視線で問いかける。
「本当の奇蹟は、これからだ」
アノスはそう言って、〈
如何でしたか?
ミーシャはサーシャの事が大大大好きで、サーシャもミーシャの事が大大大好きでした。
ミーシャの為に憎まれ役を演じていた訳ですが、何年程演じていたんですかね?大好きな妹に嫌われても構わないという鋼メンタルで憎まれ役を演じていた訳ですが、私だったら好きな人に嫌われたら絶対メンタル崩壊して、数日はベッドで横になって泣いてますね。
なんせ、お気に入りが1人減っただけでもメンタルが折れそうになる豆腐メンタルですから。
それでは、お気に入りが減らない事を願いつつ。今回はこの辺で締めさせていただきます。
次回もお楽しみに。