暴虐の魔王と世界の破壊者   作:カトポン

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 どうも、おはこんばにちは。
 今回から、第二章である魔剣大会編が始まります。果たして、第二章は何話かけて終わるのか、全然予測がつきません。
 それでは、新章1発目の第29話をどうぞ。


第二章 魔剣大会編
第29話 皇族派に抗いし者達


 ミーシャを家に招いて現像体験させたり、出来上がった写真を渡したりしている内に連休はあっという間に終わった。

 写真を渡した時・・・特に、サーシャとのツーショット写真を見た時は凄く嬉しそうだった。きっとあの写真は、ミーシャにとってサーシャと本当の意味で仲直り出来た思い出のカタチなのだろう。

 という訳で連休明けの今日はダンジョン試験後、初めての登校である。また、今日はダンジョン試験の結果発表が行われる予定だが、王笏を提出した俺達は満点確定なので試験結果にドキドキしたりする事は無かった。

 

「よっ」

 

 第二教練室へ入り、既に席に座っていたアノス達に声を掛ける。

 

「よう」

「・・・おはよう・・・」

 

 2人も俺に気づき、挨拶を交わした。

 

「おはよう。フィリウスの方は大丈夫だったかしら?」

 

 サーシャが俺にそう聞こえてきた。

 

「大丈夫だったって何がだ?」

 

 俺が訊き返すと、サーシャは呆れたような表情を浮かべる。

 

「何がだじゃないわよ。貴方がミーシャの左手の薬指に指輪をはめたせいで色々とややこしい事になってるじゃない」

「ややこしい事にしているのは、アノスのご両親だろ?それに、家の両親にはちゃんと話してあるから誤解は解けてる」

 

 俺とミーシャの件は現状、家の両親は俺が意味も知らずにはめてしまっただけで婚約関係ではないと知っているが、アノスの両親は俺とミーシャが婚約関係・・・なんなら、俺がミーシャの左手の薬指に指輪をはめる場面を見てしまったせいで、結婚まで秒読みとか思っているんじゃないだろうか。

 けど、俺からしたらアノスの両親は血縁関係がある訳なので最悪、誤解されたままでも大丈夫だろう。

 

「誤解といえば、アノス。お前の嫁がサーシャって事になってるが、どうするんだ?」

「そうよ、アノス。私は貴方と結婚する事になってるじゃない。全く意味が分からないわ。どうするの?」

 

 サーシャも俺に便乗してアノスに訊く。

 

「ふむ。嫌なのか?」

 

 アノスが訊き返すと、サーシャは顔を赤らめ、そっぽを向いた。

 

「・・・そんなこと訊いてないじゃない・・・馬鹿・・・」

 

 サーシャから弱々しい呟きが漏れた。

 

「アノス。サーシャはアノスの嫁になるのは嫌じゃないみたいだから、誤解を解く必要は無さそうだぞ」

「ちょっと何言ってるのよ!」

 

 と、サーシャがぎゃあぎゃあ喚く。

 

「ふむ、ならば俺もサーシャの左手の薬指に指輪をはめた方が良いか?」

「良いわけないでしょ!」

 

 サーシャはアノスにキレのあるツッコミを放つ。

 

「ほんの冗談だ。それにしても、左手の薬指の指輪に意味があったとはな」

「呆れたわ。貴方もそんな事を知らなかったの?」

「あいにくと転生して間もないからな」

 

 一応、俺も転生して間もない筈だが前世の記憶がないので、黙っておく事にした。

 

「2千年前は無かった?」

 

 ミーシャがアノスに訊く。

 

「あぁ。2千年前の婚約は〈契約(ゼクト)〉で行う。そうすれば、裏切られる心配もないからな」

「何それ?2千年前って情緒の欠片も無いのね」

 

 サーシャの言葉に、アノスは笑いながら頷いた。

 婚約でこの有様だと結婚式とか絶対に無いだろうな。この時代にあるのかは定かではないが。

 

「神話の時代は誰も彼もが戦渦の中にいた。好いた惚れたで行動をしていては、いの一番に死ぬことになっただろうな」

「アノスがそんな世界に嫌気がさして転生したってのも分かるわ」

 

 ホント、俺はそんな世界で生きたくない。そう考えると、平和って良いものなんだな、としみじみ思う。

 

「ふーん。じゃ、アノスは、その・・・」

 

 サーシャがアノスの顔を上目遣いで覗きながら訊く。

 

「・・・好きな女の子とか、居なかったの・・・?」

 

 サーシャの質問にアノスは真顔で見返すと、サーシャは顔を隠すように俯いた。

 

「な、何とか言いなさいよ・・・」

「いや、そんな質問をされるとは思わなくてな。なかなか新鮮だ」

「訊かれた事ないの?」

「あぁ。暴虐の魔王が誰かに恋をするなどとは思わなかったんだろう。まぁ、実際、その通りだったがな。あの時代にそんな余裕はなかった」

 

 まぁ、そんな荒んだ時代だと恋をする余裕なんて無いだろう。ましてや、アノスは一国のリーダーだ。ディルへイドを守る為に精一杯で、それ以外に手間を割けるような余裕はいくらアノスでも無かった筈だ。

 

「ふむ。アヴォス・ディルヘヴィアが動きを見せるまで暇もあることだしな。せっかくの平和だ。恋をしてみるのも悪くはないかもしれないな」

 

 アノスがサーシャの目を見てそう言うと、サーシャはかーっと顔を赤くした。

 

「な、何で私に言うのよ・・・?」

「何か問題か?」

「・・・べ、別に問題はないけど・・・」

 

 弱々しくサーシャが呟く。

 

「なぁ、サーシャ」

「な、何よ?」

「顔が赤いぞ」

 

 アノスにそう言われ、サーシャは自らの腕で顔を隠す。

 

「・・・あ、赤くないわよ、馬鹿・・・!」

 

 サーシャは腕越しからアノスを睨むが、アノスが動じないと分かると、逃げるようにまたそっぽを向いた。

 それから程なくして、鐘の音が鳴り、教室にエミリア先生が入ってきた。

 

「おはようございます。早速ですが、本日はこの間のダンジョン試験の結果発表をします」

 

 エミリア先生が順々に班ごとの点数を発表していく。

 俺達以外の班で最下層にある宝物庫まで辿り着けた班は居らず、大体が30〜50点。

 現時点では70点が最高得点だ。

 

「では、最後のアノス班の得点です。アノス班は最下層にあると言われる王笏(おうしゃく)を手に入れてきました」

 

 エミリア先生がそう口にすると、教室中がざわついた。

 

「ですが、非常に残念な事ながら、鑑定を行う前に王笏は何者かに盗まれてしまいました」

 

 今度は教室にどよめきが漏れた。

 

「只今、デルゾゲードの総力を挙げて犯人を捜しています。それまで、アノス班の点数は暫定として現状での最高点の70点とします」

 

 ダンッと机を叩く音が聞こえたと思ったら、サーシャが立ち上がっていた。

 

「納得出来ないわ」

 

 立ち上がったサーシャが声を発する。

 

「王笏が盗まれたのは学院の落ち度でしょ。暫定で点数をつけるなら、満点にするのが当たり前じゃないかしら?」

「サーシャさんのお気持ちも分かりますが、様々な可能性が考えられますので、今回はこのように処理させていただきました」

「様々な可能性って何?」

「それは説明出来ません。学院の決定です」

 

 学院の決定、ねぇ。

 胡散臭いというかエミリア先生が俺達に満点与えたくないだけだろ。なんなら、盗むように仕向けたのもエミリア先生の仕業なんじゃないかと思ってしまう。

 エミリア先生は混血を見下している節があるし、エミリア先生ならやろうと思えばやれるだろうしな。

 サーシャはというとエミリア先生をじっと睨む。その瞳には今にも〈破滅の魔眼〉が浮かびそうだ。

 その時、ボソッと揶揄するような呟きが聞こえた。

 

「満点を取る為に自分で盗んだって事も考えられるからな。偽物の王笏だっていうのがバレる前によ」

 

 それをきっかけにして、次々と声が漏れる。

 

「あ・・・そっか。そういう見方もあるか」

「そう、だよね。いくら魔法が凄いからって不適合者だし・・・」

「・・・白服だもんね。正直、皇族以外に王笏を見つけられる筈がないし、自作自演って考えた方が妥当なのかも・・・」

「でも、サーシャ様が居るんだし」

「サーシャ様も不適合者の班に入るなんて、どうかしちゃったのよ」

 

 そんなざわめきを聞き、サーシャが睨み殺すような勢いで教室中に〈破滅の魔眼〉を向けた。

 

「ねえ。貴方達、1つ言っておくわ」

 

 あっという間に辺りは緊張に包まれる。

 

「アノスは何の不正もしていない。皇族じゃないから、不適合者だからと、いつまで思考停止をするのかしら?常に結果を出し続けている彼の力に疑問があるなら、まずわたしの目を真っ直ぐ見てから言いなさい」

 

 生徒の誰もがサーシャから目を逸らし、室内はシーンと静まり返った。

 

「く。くくく、ははははは」

 

 そんな中、アノスは声を上げて笑い出す。

 

「ちょっと、アノス。なんで貴方がここで笑うのよ?」

「いや、ずいぶんな変わりようだと思ってな。さすがは俺の配下だ。よくぞ言った」

 

 不服そうにサーシャは唇を尖らせる。

 

「なんだか、茶化されてる気がするわ・・・」

「まぁ、その物騒な目をしまえ。たかだか試験の点数ぐらいで、何がどうなる訳でもないだろう」

 

 アノスにそう言われたサーシャは、毒気が抜かれたように椅子に座ろうとしていた時だった。

 

「あたしも、今回の学院の決定は間違ってると思います!」

 

 俺の知らない白服の女子生徒が立ち上がり、エミリア先生に抗議する。

 その白服の女子生徒は肩ぐらいまでの長さがある栗色の髪をツーサイドアップにし、くり愛嬌のある顔立ちをしていた。

 

「誰だアイツ?」

「ミサ・イリオローグ」

 

 ミーシャが小声で教えてくれた。

 ミーシャに言われて思い出したが、確かにそんなキャラがいた気がする。

 

「エミリア先生は様々な可能性が考えられるとおっしゃいましたが、もし王笏を持ってきたのが黒服の生徒だった場合は同じ対応になりましたか?」

 

 ミサは堂々とエミリア先生に発言する。

 

「混血だからと差別をしていらっしゃるのではありませんか?」

 

 鋭く声を発したミサに続き、「そうだ、そうだ」という声が白服の生徒達から上がった。

 

「いつもいつも俺達を馬鹿にしやがって!」

「皇族がそんなに偉いのかよ!先生どころか、七魔皇老だって、誰も不適合者のアノスに敵わないじゃねーかよ」

「案外、自分達の立場を守る為に本当の魔王を認めたくないだけなんじゃねーの?」

 

 まるでこれまでの鬱憤を晴らすかのように白服の生徒達が次々と声を上げる。

 しかし、それにも一切動じず、冷たい口調でエミリア先生は言った。

 

「ミサさん。皇族は始祖の血を完全に受け継ぐ者です。始祖の器になる可能性のある魔族を優遇するのは当然でしょう。お分かりかと思いますが、皇族と貴方達、混血を平等に扱えというのは、皇族批判に当たりますよ?」

「それが間違ってるって言ってるんです。どうして同じ魔族なのに、始祖の血が薄い濃いで冷遇されなきゃいけないんですか」

 

 ふぅ、とエミリア先生はため息をつく

 

「学院で統一派の活動は認められていませんよ。席につきなさい。でなければ、相応の処分をくだしますよ?」

「皇族が正しいって、皇族が悪い事をしないって、どうして言えるんですか?今回のことだって、白服に満点を与えない為に、皇族が企んだのかもしれませんよ?」

「絶対にありえません。今日はもう帰って結構ですよ。後々処分を言い渡します」

「絶対にありえないってどうして言えるんですか?」

「以上です。では、授業を始めます」

「エミリア先生っ! 逃げるんですか?」

 

 ミサにはまったく取り合わず、エミリア先生は黒板に魔法文字を書いていく。

 

「アノス、王笏の行方は分からないのか?」

 

 正直、こんな有り様だとこれから先エミリア先生にとって不都合な事が起きたら毎回揉み消そうとするだろう。

 

「王笏には〈痕跡(メイズ)〉をかけてある」

「〈痕跡(メイズ)〉?」

「魔力の痕跡を残す事で、対象物が何処にあるか魔眼で追跡出来るようにするための魔法だ。俺の魔力と魔眼なら、地の果てにあろうとも見つけ出す事が出来るだろうな」

「なら、それで何処にあるのか分かるのか?」

「うむ。その通りだ」

 

 どうやら、王笏を見つける手立てはありそうだ。

 

「王笏を見つけた方が良いと思うぞ。エミリア先生は不都合な事が起きたら今みたいに揉み消そうとするし」

「ふむ。一理あるな」

 

 アノスは、そう言って手を挙げる。

 

「何ですか、アノス君。王笏の件でしたら、今説明した通りです。学院が犯人を見つけるまで、成績は暫定とします。これは決定事項ですよ」

「ふむ。つまり、犯人を見つければ良いのだろう?」

 

 エミリアは面食らったような表情を浮かべる。

 

「それは、そうですが・・・」

「こんな事もあろうかと、ちょうど王笏には〈痕跡(メイズ)〉をかけてある」

「え・・・?」

 

 アノスは魔眼で〈痕跡(メイズ)〉をかけられた王笏を追跡する。

 

「なるほど。そこか」

 

 アノスは立ち上がって歩き出す。

 

「な、何だよ、アノス・・・?」

 

 アノスは黒服の生徒の前で立ち止まる。

 その生徒は、「満点を取る為に自分で盗んだって事も考えられるからな。偽物の王笏だっていうのがバレる前によ」と言っていた奴だ。

 

「言っておくが、俺は盗んでなんかないぞ。盗んだって言うなら、証拠を見せ・・・がっ・・・!」

 

 アノスは問答無用と言わんばかりに、右腕でその黒服の生徒の腹部を貫いた。

 

「悪くない隠し場所だが、体にしまうのならもっと反魔法を厳重にしろ。丸見えだぞ」

 

 アノスは黒服の生徒の体内から、王笏を引き抜いた。

 がくん、とその場に崩れ落ちた男の頭をアノスは靴で踏みつける。

 

「俺の物に手を出してただで済むと思ったか、盗人」

 

 血で汚れた王笏を魔法で洗浄し、アノスはエミリア先生の元へ歩いていく。

 

「皇族がこんな事を企むなどありえない、だったか。ふむ。絶対にありえない事が起きてしまったようだが、さて、どうするつもりだ、エミリア?」

 

 エミリア先生は何も言えず、ただ口をぱくぱくとさせる。

 アノスは、エミリア先生に王笏を握らせると耳元で何か囁くと、びくっとエミリア先生が体を震わせた。

 アノスは、右腕で貫いた黒服の生徒の腹を魔法で治療してから、自席に戻った。

 

「アノス、エミリア先生の耳元で何か囁いていたが、何を言ったんだ?」

「なに、エミリアにわざと盗ませるなら、もっとうまくやれと言っただけだ」

「そしたら、図星だったと」

「カマをかけただけなのだがな」

 

 いやまぁ、あるかもしれないとは思っていたが本当にやったとはな。

 それと、いつもだったらザワザワしている教室には黄色い歓声が響いていた。

 

「どうしようぉ、アノス様、素敵すぎるよぉ・・・!!」

「ほんと、もう超格好いい!強いし、頭良いし、その上あたし達と同じ白服なんだもの!」

「それにあんな奴を治療してやるなんて、すっごく優しいよね」

「うんうんっ。でも、あいつ、ちょっと羨ましいかも」

「え?何が?」

「だってだって、アノス様の御手をお腹に入れてもらえたんだもの。あたしも、入れてもらいたい!」

「ええ?絶対、痛いわよ?」

 

 などと、ちょっと頭のおかしな意見も混ざってはいるのだがアノスが白服の中では認められつつあるって事なのだろうか?




 如何でしたか?
 ハーメルンで魔剣大会編を誰も書いている人が居ない事に気づき、これが俗に言う先駆者かと、勝手に思ったりしているカトポンでございます。
 ハーメルンでは原作カテゴリに無い事から分かる人もいるかと思いますが、魔王学院の小説が少ないんですよ。だから、少しでも魔王学院の小説が増えて欲しいです。
 さて、今回新たな主要キャラであるミサも登場し、この小説も少しずつ話が進んでいっておりますが、まだまだ序の口。登場していない主要キャラもまだまだいるので頑張っていきたいです。
 それでは、また次回お会いしましょう。
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