暴虐の魔王と世界の破壊者   作:カトポン

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 どうも、おはこんばにちは。
 今回のサブタイにある『Pensait』はフランス語で想いという意味です。
 大学の試験も終わり一安心です。単位がちゃんと取れてるか知りませんが。
 それでは、第31話をどうぞ。


第31話 半分の魔剣に込められたPensait

「す、すみません。お騒がせしてしまって……」

 

 調印(サイン)の件が一段落つくと、ミサがアノスに声をかける。

 

「皆、初めての生アノス様に動転してしまったみたいです」

「その言い方、なんか嫌だわ・・・」

 

 サーシャに同調するように、隣でこくこくとミーシャが頷く。

 

「お酒みたい」

「生アノス酒ってか?」

「そこ、掘り下げなくて良いわ」

 

 サーシャがピシャリと言う。

 まぁ、サーシャの言う事はごもっともである。

 

「そもそも、何人かは同じクラスなのだから、会うのが今日初めてという訳でも無いだろう。何が生なのか分からないな」

「あー、何て言いましょうか。アノス様は世界から隔絶した雰囲気があって、あたし達の事なんか、目に入っていないような所がありますし。ずっと同じ教室に居ましたが、今日初めて存在を認めて貰ったような気がします」

「まぁ、正直、俺の眼中には無かったな」

「あはは・・・ですよね・・・」

 

 アノスに眼中に無かったと言われ、若干落ち込むミサ。

 

「気にするな。興味の無い事は無視する主義なだけだ」

「それ、フォローになってないぞ」

 

 俺がぼそりと呟くが、アノスはスルーする。

 

「しかし、今日で覚えたぞ。これからは存分に生の俺を味わうがいい」

「その言い方、なんか卑猥だわ・・・」

 

 ミーシャが不思議そうに小首をかしげる。

 

「生のアノスは卑猥?」

「何でもないわ。ミーシャは知らなくていいの」

 

 ミーシャは無表情のまま視線を宙に向け、ぼそっと言った。

 

「・・・気になる・・・」

「あ、でしたら、ミーシャさん。アノス・ファンユニオンに入りますか?色々と教えてあげられると思いますよ」

 

 ミサの言葉に、慌ててサーシャが食いついた。

 

「絶っ対、駄目だわっ!私のミーシャに変な事吹き込ませる訳無いでしょっ!そういう隙あらば勧誘みたいなの、やめてくれるかしらっ?」

「あ、それなら、サーシャさんも入りませんか?」

「はぁっ!?なんでそうなるのよ?」

 

 サーシャが驚いたように声を上げる。

 

「だって、ミーシャさんが心配なんですよね。一緒に入れば安心じゃありませんか」

 

 ニコニコとミサが言う。

 

「お断りだわ。大体、こんな所に入る理由なんて無いもの」

「そうですか。残念です」

 

 そう言ったミサは、サーシャに近づくと小声で囁く。

 

「・・・今なら、隠し撮りしたアノス様の魔法写真が特典でついてきたんですが・・・」

 

 ミサの囁きだが、俺の耳にも届く。

 コイツら、アノスを盗撮していたのかよ。

 

「そんなもの・・・」

 

 サーシャが一瞬、アノスの方を向く。

 

「全く興味ないわ」

 

 と言いながら、ミサに顔を近づけ、サーシャは小声で言った。

 

「・・・ちなみにどんな写真よ?」

「ふふふー、見ますか?着替え中の一瞬を撮った半裸もありますよ?」

「半裸・・・!?な・・・そんな、不健全な・・・ふ、不埒だわ・・・!」

 

 顔を真っ赤にしてサーシャが声を上げる。

 

「あ、そういうのはお嫌いですか。じゃ、もっと健全で凛々しい表情の物をご用意しますから・・・」

「ま、待ちなさい・・・」

 

 ミサがきょとんとした表情を浮かべる。

 

「はい?」

「念の為、見るわ。念の為」

 

 サーシャは念の為を強調している。

 サーシャの奴、本当はアノスの半裸を見たいんだろうな。自分から、はっきり見たいというのは恥ずかしくて言えないみたいだが。

 

「分かりました。では、二階にありますから、ご案内しますね。アノス様、少々お待ちいただけますか?」

「あぁ」

 

 サーシャはミサにつれられて2階へ上がっていく。

 

「ミーシャは行かないのか?」

「2人が行かないから」

「俺達の気を使ってるなら行っても良いんだぞ?」

 

 俺の言葉にミーシャはふるふる、と首を横に振る。

 

「気を使ってる訳じゃないなら良いが・・・」

 

 それから暫くして、ミサが階段を駆け下りてきた。

 

「お待たせしました」

「サーシャはどうしたんだ?」

「ふふふー、お楽しみ中みたいです」

 

 意味深にミサが言う。

 

「あの・・・アノス様、実は一つ、お願いがあるのですが・・・」

 

 先程までとは打って変わり、ミサは真剣な表情を浮かべた。

 

「なんだ?」

 

 アノスがミサに聞く。

 

「厚かましい申し出とは重々承知していますが、あたし達をアノス様の班に入れてもらえないでしょうか?」

 

 なるほど。確かに、アノス以外の班リーダーは全員皇族だからな。それに従うのは統一派としては不本意だろう。

 

「俺が配下を迎え入れるには条件がある」

「何でしょうか?」

「強いか、面白いかだ」

 

 そう口にすると、ミサは困ったように笑う。

 

「やっぱり、そんなに簡単じゃなさそうですよね・・・」

「1つ訊くが、お前は何故こんな活動をしているんだ?」

「こんな、とおっしゃいますと、統一派の事ですか?」

「あぁ。確かにディルヘイドは皇族が支配していて、魔族は二分されている。だが、さほど困る事がある訳でもあるまい。統治は行き届き、ディルヘイドは平和だ。権力を持てないという点に目をつむれば、生活はなかなか快適だろう」

 

 アノスからしてみれば、皇族の問題があるにせよ、2千年前に比べれば、随分と良い時代と思っているだろう。

 

「大した力を持っていないお前たちが、魔族を正しく統一しようなどというのは、危険ばかりが先に立つんじゃないか?」

 

「・・・そうですね。アノス様の言う通りです」

 

 一瞬、ミサは俯く。

 けれども、すぐ気を取り直すように顔を上げ、笑みを浮かべた。

 

「良かったら、あたし達のユニオン塔を案内させていただけませんか?見せたい物があるんです」

 

 ミサはひたむきな視線をアノスに向ける。

 どうやら、答えたくない訳ではなさそうだ。

 

「なら、案内してもらおうか」

「はい!こちらです!」

 

 ミサは階段を上り、ユニオン塔の中を簡単に説明する。

 2階、3階にはアノス・ファンユニオンに関連する物が置いてあり、普段の活動はここで行うらしい。アノスの姿を模した彫刻やら、入学してから今日までのアノスの武勇伝を纏めた日誌などを簡単に見せてもらった。

 4階は寝泊まりの出来る居住スペースとなっており、5階にはディルヘイドの歴史書や魔族関連の書物で溢れていた。アノス曰く、2千年前の事がまともに載っている歴史書は無かったようだが。

 更に階段を上り、最上階へやってくる。

 部屋の中央には、石の台座があり、そこに一本の魔剣が刺さっていた。

 だが、その魔剣は縦に真っ二つに割ったかのような奇妙な造りをしていた。言うなれば、半分の魔剣である。

 

「これが、見てもらいたい物なのか?」

「はい」

 

 ミサはゆっくりと歩いていき、半分の魔剣の前で立ち止まると、彼女は半分の魔剣をじっと見つめる。

 そうしたまま一向に口を開こうとしないが、俺達は黙って待つ事にした。

 やがて、静かに彼女は言った。

 

「・・・もしかしたら、アノス様なら気がついていらっしゃるかもしれませんが、あたしは純粋な魔族じゃありません。父は魔族ですが、母は精霊です」

「そんな事あり得るのか?」

 

 魔族と人間もこの世界では別の種族だが、外見の違いが殆ど無い為まだ分かる。だが、魔族と精霊って外見も違うーー精霊に会った事無いので断定出来ないがーーだろうし、種族的に交わる事が出来るのか?

 

「人間と魔族の混血が居るからな。魔族と精霊の混血である半霊半魔が居ても不思議ではない」

 

 アノスはそう言った後に、魔族と人間の混血がいると分かった時以上に驚いていると付け加えたが。

 

「母はあたしが生まれてまもなく亡くなったそうです」

 

 少し悲しげにミサは言う。

 

「父とは、一度も話した事がありません。顔も名前も知らないんです」

「どうしてだ?」

「父は皇族で、そしてかなり身分の高い立場のようです。もしかしたら、ディルヘイドの何処かを統治する魔皇かもしれません」

 

 それが、父と一度も話した事が無いのにどう影響しているのか分からない。

 

「それがどうかしたのか?」

 

 アノスも俺と同じく、ミサとミサの父親が話した理由が分からないようだが、ミーシャがその理由を教えてくれた。

 

「皇族は皇族の子孫を残すのが責務。血族に皇族以外の血を入れた場合、その一族は当人から三親等まで皇族から除外される」

「なるほど。自分だけではなく、血族にまで影響が及ぶわけか」

「それで、ミサが父親と一度も話した事が無かったのか」

 

 ただ、ミーシャの話を聞いて皇族以外の血を入れた場合、三親等まで皇族から除外するのは流石にやりすぎだと思うんだが。

 俺からすれば、当人とその皇族以外の配偶者とその息子・娘だけを除外すれば良いだろ、という考えだ。ミサの場合だと、ミサの父親と母親ーー母親は故人のようだがーーにミサといった感じにだ。

 

「ミーシャさんの言う通りです。勿論、父もその事は良く分かっていたと思いますよ。本当なら、皇族以外と恋をするべきではありません。それでも、どうしても母を好きになってしまったんでしょうね」

 

 ふふふっ、とミサは笑う。

 

「なんて、これは、只の妄想なんですけどね。だったら、良いなって、そう思って・・・」

 

 ミサはそう言ってるが、本当に好きにならなければ、そんなリスクを冒そうとはしないだろう。自らの立場さえ、危うくなるのだから。

 

「父はあたしと話す訳にいきません。半霊半魔の娘が存在するなんて知られたら、何もかも失う事になります。だから、会う事さえなく、顔も名前もあたしに明かすことはありませんでした」

 

 自分だけならともかく、血族を巻き込む事は出来ないと考えたんだろうな。

 

「唯一、あたしの10歳の誕生日に、誰にも知られないように使い魔のフクロウを使って、この半分の魔剣を贈ってくれたんです」

 

 その柄に、ミサは優しく触れる。

 

「本当は、こんな痕跡を残さない方が良いんでしょうけどね。でも、だから、これは、何も口にする事の出来ない父からのメッセージだと思ったんです。この剣の残り半分はきっと父が持っています。今は2つに分かれたこの魔剣が、きっといつか、1つになる日がやってくる。皇族と混血が、正しく手を繋げる日がやってくる。その為に、父は戦っているって。必ず迎えに行くから待っててくれって、あたしにそう言ってくれたんだと思ったんです」

 

 ミサは振り返って口を開く。

 

「ディルヘイドは平和です。皇族の統治は優秀で、確かに親の保護がないあたしでも、学院に通い、なに不自由なく暮らしていく事が出来ます」

 

 そこで言葉を切り、彼女は悲しそうに笑った。

 

「でも、あたしはなに不自由のない暮らしより、貧しくても父と笑いあえる毎日が欲しかったんですよ」

 

 それは感情を絞り出すような言葉だった。

 

「父親と娘が、引き裂かれて話す事さえ出来ない。そんな悲しい事は、あたしで終わりにしたいんです。皆、そうです。統一派の皆は、皇族の平和な統治の影に追いやられ、親と会えなかったり、家族をなくしたりした、そんな経験を持つ人ばかりです」

 

 訴えるような視線でミサがアノスを見つめる。

 

「それでも、理想と現実の溝は深いです。だから、アノス様。あなたを学院で見た時、あなたが皇族を圧倒的な魔力で蹂躙していた時、あたし達はようやく希望の光を見つけたと思ったんです。あなたを暴虐の魔王と信じる事が出来ました」

「ふむ。では、俺が始祖でなかったら、どうするつもりだ?」

「構いません。あたし達は、このささやかな幸せを勝ち取る為なら、始祖とも戦います」

 

 ミサははっきりと断言した。

 

「あたし達が信じたのはあなたの言葉です。あなたが、自分は暴虐の魔王だとおっしゃったから信じたのです」

 

 始祖を必要とした訳では無いという事か。

 確かに統一派にとって、皇族である始祖を求める理由はない。

 

「アノス様。どうか、力なきあたし達をお許しください。そして、共に戦ってくださいますよう・・・」

「ふむ。次の班別対抗試験はいつだ?」

 

 突然、アノスがそんな事を言い出した。

 ミサにとって予想外な質問だったのか、ミサはすぐに答えられなかったので代わりに俺が答えた。

 

「明後日だな」

「なら、ミサ。明後日、俺に挑むといい」

「ですが・・・」

「勝てとまでは言わないがな。俺の力をあてにするような配下はいらん。始祖とでも戦うと言った言葉が嘘でないのなら、その覚悟を示せ」

 

 口を噤み、ミサは決意したように頷いた。

 

「分かりました。必ずアノス様のご期待に応えてみせます」

「さて。サーシャを呼んで、昼飯にするか」

 

 俺達は最上階を後にし、階段を下っていく。

 

「そういえば、アノス様は剣の扱いは慣れていますか?」

 

 ミサがアノスに訊く。

 

「いや。俺の剣は力任せに振り回すぐらいだな。なぜだ?」

「その、明日は大魔剣教練ですから、アノス様の勇姿が見られるのかと思いまして」

 

 そういや、そんな事言ってたな。

 

「確か、外部から講師が来るんだったな?」

「ええ、メルヘイス様のお話では、大魔法教練のときと同じように七魔皇老が来るかもしれないそうです」

 

 七魔皇老か。ソイツらはアイヴィス・ネクロンと同じように操られているのだろうか。

 

「それと、これは多くの生徒がまだ知らないと思いますけど、転入生が来るんですよ」

 

 転入生か。いったい誰が来るんだろうな。

 転入生の事がきになりつつも、俺達はサーシャの元へと向かうのだった。




 如何でしたか?
 次回は、あの主要キャラが登場予定です。主要キャラがどんどん登場してきて、この物語も少しずつ進んでいっております。
 それでは、また次回お会いしましょう。
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