夏休みの癖して投稿が遅かったのは、まぁ内緒です。くれぐれも新しく始めたゲームにサーバー内とはいえランキングで上位になるほどやり込んでいた訳ではございません。
さて、魔王学院では色々と良くない事が起きてますが、この小説で少しでも盛り返せたらと思います。
それでは、第32話をどうぞ。
翌日。
授業開始の鐘の音が鳴ると、教室にエミリア先生が入ってくる。だが、その後ろから見知らぬ黒服の男子生徒が続いた。
昨日、ミサが言っていた転入生だろうか。
「おはようございます。今日は始めに転入生を紹介します」
エミリアは黒板に、レイ・グランズドリィと名前を書く。
黒服の生徒が一歩前へ出た。
「初めまして。僕はレイ・グランズドリィ。本当は初日から授業を受ける筈だったんだけど、事情があってこんな中途半端な時期に転入する事になってね。分からない事も多いから、色々と聞くかもしれないけど、教えてくれると助かるよ。よろしく」
レイは透き通るような声でそう言った。
白髪で薄い青の瞳。麗しく中性的な顔立ちと、それから薄く微笑んだ表情が、涼しげな印象を漂わせている。
「・・・おい、アイツ、七芒星だぞ・・・」
「馬鹿。何言ってんだ、当たり前だろ。レイ・グランズドリィだぞ。混沌の世代の一人。錬魔の剣聖。魔剣どころか、魔族には使えない筈の霊剣や神剣まで扱えるっていう規格外の化け物だ」
「入学するって話だったのに見ないと思ったら、まだ学院に来てなかったのか・・・」
サーシャと同じようにかなり有名のようだ。
「レイ君は〈
「そうだね。どうしようかな?」
爽やかな口調でレイが言う。
「既に班は決まっていますが、明日の班別対抗試験までは班員を揃える猶予はあります。勿論、今回はどこかの班に入って、次の班別対抗試験で班リーダーとして参加するということでも構いませんが、あなたの実力で他の班にというのも・・・」
どうやら、エミリア先生はレイを班リーダーにしたいようだ。
「まだ皆と仲良くなってもいないし、今回は何処かの班に入れて貰おうかな」
「え・・・?」
レイの発言が予想外だったのか、エミリア先生は戸惑ったような声を上げる。
「わ、分かりました。そうすぐには班員にしたい生徒も見つからないでしょうから、暫定的にどこかの班に入るという事で。たぶん、すぐにレイ君の班員になりたいという生徒が増えるでしょうから、そうしたら班リーダーになるということで」
「あまりリーダーは柄じゃないんだけどね」
率直にレイは言う。
「そんな事言っても、きっと入った班のリーダーも、あなたの方がリーダーに相応しいって言い出すと思いますよ」
やたらと、班リーダーをレイに勧めるエミリア先生。何かレイを班リーダーにしたい目的でもあるのだろうか?
「それでは、班を選んで貰いますから班リーダーは起立してください」
「いいや。それには及ばないかな」
エミリア先生はレイを不思議そうに見た。
「もう班リーダーの顔と名前を知っていますか?」
「いいや、まったく」
ますますエミリア先生は訝しげな表情を浮かべた。
「でも、一人だけ分かるよ」
そう言って、レイは歩き出す。
教室中の視線がレイに集中し、ひそひそと囁く声が漏れた。
「・・・誰の班に入るつもりだ・・・?」
「錬魔の剣聖だろ?あんな奴、御しきれる班リーダーがうちのクラスにいたか?」
「あ。もしかして、サーシャ様が班リーダーだと思ってるんじゃ・・・?」
「そっか。そうだよな。まさか、破滅の魔女が、白服の班員になってるなんて思いもしないだろうからな」
レイはサーシャの席へまっすぐ歩いて行き、そのままサーシャを通り過ぎると、アノスの席の前に立ち止まった。
「やぁ、初めまして。僕はレイ・グランズドリィ。君の名前は?」
レイは爽やかな笑みを浮かべながら、アノスに名前を訊く。
「アノス・ヴォルディゴードだ」
「じゃ、アノス君。君の班に入れてくれないか?こう見えて、剣の扱いはそこそこ得意な方なんだ。きっと、力になれると思う」
「俺が班リーダーとは限らないぞ」
「もしかして、班リーダーは彼の方だったかな?」
そう言って、レイは俺の方を向く。
「君の名前は?」
「フィリウス・マーロウだ。言っとくが、班リーダーは俺じゃなくてアノスだ」
「そうなんだ。間違ってなくて良かったよ」
レイは心底安心したような素振りを見せる。
「ふむ。何故、俺が班リーダーだと分かった?」
「君の魔力がこのクラスで一番強いから」
レイが即答する。
「白服でもか?」
アノスにそう言われ、レイは今初めて気がついたというような表情を浮かべた。
「ああ、言われてみれば。魔力しか見ていなかった」
フッとレイは自分の失敗を笑い飛ばす。
「だけど、アノス君は凄いね。普通、白服は班リーダーになれないのに」
「なに、決まりがあるなら破ればいい」
くすっ、とレイは笑う。
「やっぱり、君の班に入りたいな。面白そうだ」
レイはアノスに握手を申し出る。
「れ、レイ君。その、どの班に入っても構いませんが、アノス君は烙印が烙印なので・・・」
「烙印・・・?」
「校章の印を見れば分かるだろうが、アノスは不適合者の烙印を押されてるんだよ」
「ああ、じゃ、君が噂の?魔王学院始まって以来の不適合者?」
「そうらしいな」
「へえ。そんなに強い魔力でも、不適合者になるんだったら、何の為の適性検査なんだろうね?」
素朴な疑問といったレイの発言に、驚いたのはエミリア先生だ。
「れ、レイ君っ。その発言は皇族批判に当たりますよっ?」
「ああ、ごめんね。じゃ、聞かなかった事にしてくれるかな」
「聞かなかった事って・・・」
皇族でもこんな事を言う奴も居るんだなと不思議に思っていると、アノスが笑い声をこぼす。
「なかなか面白い奴だ」
「そう?大丈夫かな?よく空気が読めてないって言われるんだけど」
「そこが面白い」
レイは爽やかな笑みを覗かせる。
「そんなところを褒められたのは初めてだな」
レイはエミリア先生の方を向く。
「別に不適合者の班に入れないって事はないんだよね?」
「それは、規則上はそうですが・・・。皇族として、魔王の始祖の生まれ変わりと目される混沌の世代の一人として、相応しい判断をしていただければと考えています」
エミリア先生が暗黙の了解を押しつけるように言った。
「分かった。相応しい判断だね」
レイはそう返事をした後、表情を引き締めて、再びアノスに顔を向けた。
「じゃ、そういう事で、改めてアノス君の班に入れてくれないかい?」
「レイ、相応しい判断ってのは皇族に相応しい顔つきにさえなれば良いって事じゃないぞ」
レイがよく空気が読めないと言われるのにも納得である。
「・・・ど、どういう事だよ?なんであの錬魔の剣聖が、いきなり不適合者の軍門に下ろうとするんだ・・・?」
「・・・あぁ、いくら暫定だからって、それはないだろ・・・」
「レイ・グランズドリィが来たんなら、ようやくあの不適合者にでかい顔されずに済むと思ったってのに・・・」
黒服の生徒から情けない呟きが漏れ、
「さすが、アノス様!戦わずして、どちらが格上か見せつけるなんて超格好いい!!」
「うんうん!アノス様の魅力で錬魔の剣聖もイチコロだよね!」
「待って!あたし大変な事に気づいちゃった」
「何よ?」
「魅力でイチコロッて事は、一目惚れって事じゃない!?」
「ええぇー、じゃ、レイ君、あたし達のライバルってこと!?」
「で、でも、ほら男だから・・・!!」
「そんなの愛の前には無力だよっ!!」
ちょっと何を言ってるのか分からないアノス・ファンユニオンの声が響く。
「いいのか?がっかりしている連中が居るようだぞ」
皇族の連中の事をほのめかすアノスにうーん、とレイは頭を捻る。
「僕も正直、ダメな班リーダーしか居なかったら、どうしようかとは思ってたんだけどね。でも、アノス君って、僕より絶対強いだろ?なんなら、フィリウス君も」
飾らぬ口調でレイが言う。アノスが不適合者である事など気にもとめないといった様子だ。
正直、どこまで本音か分からないが、不思議と嘘をついているようには聞こえない
「まぁな」
「レイより強いかは分からないが、戦うのはそれなりに得意だ」
「それなら、願ったりかな。有能なリーダー達のもとで、命令通りにやるのが僕の性にも合っている」
リーダー達って俺を副リーダーとでも思ってんのか?
何を勘違いしているのか知らないが、俺はヒラだ。後でこの誤解を解く事にし、今は黙っておこう。
「そういう訳だから、良いかな?」
「ふむ。そうだな。断る」
「・・・ん?」
レイはきょとんとした表情になった。
「ただ命令通り気楽にやりたいなら、そこらの班に入ればいい。どうしても俺の配下に加わりたいというのなら、相応の力を示すんだな」
「アノス君」
唐突に迫真の表情を浮かべ、レイは芝居がかった口調で言った。
「命令通りやりたいとは言ったけど、決して気楽な訳じゃない。僕にはどうしてもやらなければならない事があるんだ。そう、使命が。その為には君の手となり足となり、この魔王学院を上り詰めなければいけない。是非、君の班に入れて欲しい!」
「そうか。なら、相応の力を示せ」
レイはまた爽やかな笑顔に戻った。
「・・・おかしいな。演技は得意な方なんだけど・・・」
「只の猿芝居にしか見えないんだが?」
それで演技が得意って言えるなら誰でも言える。
「それと俺は副リーダーなんかじゃない。只のヒラだ」
「あ、そうだったのかい?」
「そもそも副リーダーなんて誰も決めないだろ」
もしかしたら、副リーダーを決めてる班があるかもしれないが関係ない。アノスの班には副リーダーなんて居ないのだから。
「・・・れ、錬魔の剣聖が、班に入りたいって言うのに断っちゃったよ!?」
「流石、アノス様!お高い!お高いでしょ!」
「待って!あたし大変な事に気づいちゃった」
「今度は何よ?」
「・・・レイ君、今、入れて欲しいって言った・・・」
「受けってこと!?」
相変わらず意味不明で理解不能ーー理解したくもないがーーな会話をしているアノス・ファンユニオンにアノスは声をかけた。
「ちょうど良い。ミサ、お前達はレイの班に入れ」
「え? あの・・・はい。アノス様がそうおっしゃるのでしたら、そうしますが・・・」
戸惑いつつも、ミサが言う。
「力を合わせ、班別対抗試験で俺に挑め。うまくやれば、配下に加えてやる」
「・・・分かりました」
今度はレイを見て、アノスは口を開く。
「それで構わないな?」
「あまりリーダーは柄じゃないんだけどね・・・」
「まだ言うか。そんなにリーダーになるのが嫌なら別の班に入れば良いだろ」
「だから、この魔王学院を上り詰めなければ・・・「それはもう良い」・・・じゃあ、何が良いかい?」
「そうだな。もう口を閉じて黙ってろ。お前が班リーダーになりたくないのは良く分かった」
口を開いてもふざけ出すだけなので、このまま黙らせて置いた方が良いと嫌でも分かった。
「お前はなかなか面白い。ちょっと遊んでみたくなっただけだが、まあ、やる気がないのなら無理強いはしないぞ」
「・・・・・・」
アノスの言葉にレイは口を閉ざしたまま俺達を見つめる。
「何か言ったらどうだ」
「フィリウス君が口を閉じて黙ってろって言うから」
「もう良い。好きにしろ」
黙ったままでは会話が続かない。
「本当はリーダーなんかやりたくないけど、君達には興味が出てきたからね。お手柔らかに」
清々しく微笑んだレイはそう言った。
「安心しろ。全力で叩き潰してやる」
「それは困るな。実は帰りを待っている一歳の娘が居て・・・」
レイは不思議そうな顔をしながら、そう言い直した。
「それはそれは、何としてでも生きて帰るために、全力で戦ってくれるという訳だな」
「なんなら、その娘を人質にして全力以上の力が発揮出来るようにしてやろうか?」
くすっ、とレイが噴き出すように笑った。
これも嘘なのだろう。というか、嘘じゃなかったら色々と問題がある。
「何でかな?」
「何がだ?」
「いや、なんだかアノス君達とはうまくやっていけそうな気がしたんだ」
「ふむ。奇遇だな。俺もちょうどそう思っていた」
「あぁ。俺もそんな気がする」
ついでに長い付き合いになりそうだと胸の中で思う俺だった。
如何でしたか?
新主要キャラであるレイが登場し、嘘ばっかり言ってますがこれに乗せられるような主人公ではありません。主人公を乗せようと思うなら、某監察医のドクターライダーを呼んで来いって奴です。
それでは、後書きで語るネタが無いので今回はこの辺で。次回もお楽しみに。