501のウィザード   作:青雷

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501JFW
ウィザード


「──ご苦労、中佐。今回君に来てもらった理由は他でもない。君の部隊に新たに加わる戦力についての話だ」

 

「新たな戦力…ですか?つい先日、扶桑からの物資と新人隊員1名を迎えたばかりですが」

 

 ブリタニア連邦の空軍司令部──将官2人と向かい合っているのは、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐。ネウロイに対抗すべく世界各国から優秀なウィッチ達を集めた501統合戦闘航空団(J F W)──通称ストライクウィッチーズの指揮官を務める若き女軍人だ。

 

「ああ、確か扶桑から連れてきた娘だったか…聞く所によれば、その娘は戦闘訓練も何も積んでいないそうじゃないか。戦場に連れ出したところで弾除けが精々、即戦力にはなり得ない」

 

「……何が仰りたいのでしょう?」

 

 何やら含みのある言い方をした空軍大将トレヴァー・マロニーを小さく睨むミーナ。過去のやり取りを思い返しても決して友好的とは言えない2人を見かねたもう1人の将官が、

 

「気に障ったのならすまない。だが今回こちらから派遣する隊員は、間違いなく即戦力として活躍してくれるだろう。1人分の訓練に費やす時間も削減できる。その点は君自身、延いては501にとっても悪い話ではないはずだ──」

 

 話を終え、部屋を後にしたミーナに、軍服を着た男が1通の封筒を差し出す。あの将官達の話では、この中に新しく配属される隊員の情報が入っているらしい。短く礼を言って封筒を受け取ると、入口の前で待っていた迎えの車に乗り込んだ。

 

「ふぅ……一体何を考えてるのかしら。私たちに何も言わずに決定を出すなんて」

 

 胸の内で憂鬱そうに呟いたミーナは、おもむろに封を解いて中の書類に目を通す。

 先頭の1枚目には、先程も聞かされた501に新たな隊員を配属させる旨が記されており、不穏な内容が書かれていないか気にしつつ流し読みしていく。特に変わったことは書かれていないことに安堵を覚えながら書類を捲ったミーナは、驚愕に見舞われた。

 

「ちょっと、これって……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後の朝──ブリタニアのドーバー海峡に設置された501JFW拠点の滑走路に、2人の人影があった。1つはミーナ、もう1つは彼女の副官であり友人でもある坂本美緒少佐だ。

 

「予定ではそろそろ着く頃合か」

 

「ええ……にしても驚いた。まさか司令部がこんな人材を寄越してくるなんて」

 

「世界的に見ても希少な()()()()()()()()──実際に見るのも会うのも初めてだな」

 

 経歴を見る限り、その男はこれまでどこかの部隊に所属していたわけではない。かと言って、全くの素人というわけでもないようなのだが、ミーナも美緒もそこに違和感を覚えた。

 

「例えどんな僻地にいようと、魔法力を持った男というだけで多少なりとも話題になりそうなものだが……その存在が今まで全く耳に入ってこなかった。ましてや突然部隊に派遣されるとはどういうことだ?」

 

「上層部が何か知っているのは確実でしょうね……とにかく、悪いことが起きないのを祈るわ」

 

 そう言って朝焼けの空を見上げた2人の目には、真っ直ぐこちらを目指して飛んでくる大型の輸送機が映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は移り、ブリーフィングルーム。

 壇上のミーナは501の面々が全員揃っていることを確認してから話を始める。

 

「ついこの間、宮藤さんがこの501に入隊したばかりですが、また1人新しい仲間が加わることとなりました。今日はその新人を紹介します──入りなさい」

 

 ミーナの呼び声に応じ、後方の扉が開かれる。少し前に美緒が扶桑から物資と共に連れてきた新人の宮藤芳佳は、501の戦闘隊長である美緒をして「才能がある」と言わしめた期待の新人だ。

 そんな彼女に続く新しい仲間がどんな人物なのかと好奇心に胸を躍らせていた隊の面々だったが、部屋に入ってきたその姿を見るなり、全員漏れなく驚きの表情を浮かべることとなる。

 

 

「──ご紹介に預かりました、ユーリ・R・ザハロフです。本日付で501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズに入隊させて頂きます。よろしくお願いします」

 

 

 前に進み出てきたのは、グレーの男性用の軍服に身を包んだ少年だった。外見をして14~15歳といったところ。肌は白く、背丈も特別高くない。

 

「男だと…!?」

 

「中佐!これは一体どういうことですの!?」

 

「言いたいことはよく分かりますが、バルクホルン大尉もペリーヌさんも落ち着きなさい。彼は連合軍の上層部から派遣された男のウィッチ──ウィザードです。階級は上の進言もあって宮藤さん達より1つ上の曹長。部隊所属の経験こそありませんが基本的な戦闘訓練は既に受けていますから、すぐ実戦に出てもらうことになります」

 

「ここはネウロイとの戦いの最前線だぞ。そんな奴が使い物になるのか?」

 

「──発言、よろしいでしょうか」

 

 厳しい言葉を投げかけるバルクホルンを諭そうとするミーナだが、それに先んじて口を開いたのはユーリだった。

 

「大尉殿の仰るとおり、皆さんから見れば私は精々素人に毛の生えた程度でしょう。それは自覚しています。ですから私のことはどうぞ、使える駒が1つ増えたとお思い下さい」

 

「……駒だと?」

 

「はい。私は階級こそ曹長ですが、この部隊に於いて一番の新参者です。上官・先輩方のご命令があれば、私はそれに従います」

 

 ユーリは言葉を続ける。

 

「それに、急に私のような異分子が入ってきたことに不快感を示されるのも無理はありません。ですから、私は出動と訓練の時を除き、原則自室内で自主待機する所存です。最低限の衛生確保などのやむを得ない場合は目を瞑って頂く他ありませんが、それ以外では一度たりとも皆さんの前に姿を現さない事をお約束します。ご命令の際はお声掛け頂ければ応じますので、ご心配なく」

 

 ユーリの自らを人として見ていないかのような物言いに、一同は呆然とする。彼の言っていることは即ち、無期限の禁固刑を自らに課すようなものだ。それでいて過酷な戦闘や訓練には参加し、あまつさえ上官や先輩からの命令には絶対服従を誓う。

 

 まるで洗脳に近い訓練を徹底的に施された軍用犬のようだ。

 

「……何はともあれ、皆さん仲良くしてあげてください。基地の案内は──」

 

「事前資料で大部分把握しています。問題ありません」

 

「そう…では、これにて解散とします。ユーリ曹長は、まず隊の皆とコミュニケーションを取ることからね。分かってると思うけど、実戦では隊員間の連携が重要になるわ」

 

「それは上官命令でしょうか?」

 

「…ええ、そういうことにしておきます」

 

「了解しました」

 

 困ったような顔をしたミーナは会議室を後にする。その後に美緒が続き、パタンとドアが閉まったところで、部屋の中に重苦しい空気が充満し始める。

 もしユーリが女であったならここまで静かになることはなかっただろう。皆始めてのウィザードである上に、ユーリはここまで表情をピクリともさせない完璧な無表情を貫いている。そんな彼に対してどう接していいのかわからないのだ。

 

(さて…中佐殿からはああ言われたものの、コミュニケーションというのはどうすればいいのだろう?名前は先程伝えたし、他に何か話すようなことも──)

 

 と、ユーリもユーリでそんな事を考えていたところに、背後から音もなく忍び寄る影が……

 

 

「──ウリャッ!」

 

 

「っ──?」

 

 可愛らしい声と共に、何者かが背後からユーリに組み付いてきた。ユーリよりも小さいながら血色のいい両手は彼の胸部に回されており、モニョモニョと揉みしだく──もとい、何かを確かめるように力を込める。

 

「どうだ?ルッキーニ」

 

「カチカチのぺったんこ……ペリーヌよりも無い」

 

「んなっ!?…どうしてそこでワタクシの名前を出すんですの!?」

 

「よかったじゃないかペリーヌ!これで最下位脱却だぞ」

 

「最下位じゃありませんっ!大体あなた(ルッキーニさん)の方が──ああもうっ!」

 

 何やら憤慨した様子で会議室を出て行ったペリーヌ。そんな彼女のことは他所に、ユーリは背後から奇襲をかけてきた人物を肉眼で確認する。

 

「……あの、この行為には一体どのような意味が?」

 

「あぁ悪い悪い。ルッキーニの奴が、お前が本当に男なのかどうしても気になるって言うモンだからさ──あたしはシャーロット・E・イェーガー大尉だ。お前の胸を揉んだ奴はフランチェスカ・ルッキーニ少尉。よろしく」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。イェーガー大尉、ルッキーニ少尉」

 

「気安くシャーリーでいいよ。これから長い付き合いになるかもなんだし──さっ!」

 

 差し出された手を握り返したユーリ。彼の手を握る自らの手に、シャーリーは一瞬だけ力を込めた。以前入隊したばかりの芳佳にも同じことをして、彼女は顔をしかめていたが……

 

「ご命令であれば、そのように」

 

 と、平然と言葉を返す。女性とはいえ銃器を持って戦う軍人の握力だ。その鉄面皮から少しくらい反応を見せてくれるのを期待したシャーリーだったが、期待に沿う結果にはならなかった。

 

「堅苦しいなぁ。もっと気楽に行こうぜ?そんな肩肘張ってちゃ疲れるだろ」

 

「ご命令であれば、善処します」

 

「ご、強情な奴め……」

 

「ちょっといいかー?サーニャが聞きたいことがあるってサ」

 

 寝ぼけ眼で今にも眠ってしまいそうなサーニャに代わってエイラが言うには、ユーリは自分と同じオラーシャ人なのではと思ったらしい。事実、ユーリの名前はオラーシャ帝国のものだし、前髪で目元が隠れてしまっているが、顔立ちも整っている。

 

「どうでしょう。私自身、どこの生まれなのか判断がつきません」

 

「なんだそりゃ?じゃあお前の親はどこの生まれなんダ?」

 

「それもわかりません。私は両親の顔も名前も知りませんから。今生きているのかすらも」

 

 その言葉を聞いて、エイラはユーリの家族がネウロイの攻撃で離ればなれになってしまったのだろうと推測した。他のメンバーも同様らしく、辺りを気まずい空気が流れる。

 

「……すまん、変なこと聞いタ」

 

「お気になさらず。些細なことです」

 

 暗くなってしまった雰囲気をどうやって明るくしようかと考えていると、輪の外で芳佳がおずおずと手を挙げた。

 

「あの~、そろそろ朝食にしませんか?ほら、みんなで一緒にご飯を食べれば、仲良くなれるんじゃないかなぁ……って」

 

「ああ、そっか。そういやまだ何も食ってなかったな。よし、食堂行こうぜ──あ、お前も来いよ?」

 

「命令でしたら──」

 

「もう何でもいいからとにかく来いって」

 

 シャーリーに首根っこを掴まれたユーリは、そのままズルズルと引き摺られ連行。501部隊は新たなメンバーを加えての朝食となった。

 




前書きでも言いましたが、まずは本作を読んでいただきありがとうございます。
ストパンは少し前に2のアニメが再放送しているのを見て興味を持ち、3期も現在視聴中です。
因みに作者はこういった作品で中々推しが絞れず、501ではミーナさん、バルクホルン、エイラーニャ、シャーリー、リーネちゃん等好きなキャラが乱立する始末です…w
502はニパちゃんとロスマン先生の2人まで絞れてるんですけどねぇ(あ、でも最近ラル隊長もいいなって…)

本作は無印の5話と6話の間というなんとも微妙な時系列からのスタートとなり、下手くそな部分もあるかと思いますが、こちらでもおかしな部分を見つけたら適宜修正していく予定です。何卒よろしくお願いします
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