501のウィザード   作:青雷

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※本項は機密事項につき、当事者を除く第3者への不用意な開示を固く禁ずる※


顛末

 1944年 9月

 第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズに所属する12人のウィッチ達の活躍により、ネウロイの巣の撃破及び占領されていた欧州ガリア地方奪還に成功。

 

 同時に、ブリタニア空軍トレヴァー・マロニー大将によって非公式に入隊し任務に当たっていたユーリ・R・ザハロフ曹長は行方不明。ガリア奪還の翌日から身柄の捜索が行われたが、ザハロフ曹長の身柄は発見できず。

 マロニー大将の計画していたウォーロック計画の一端を担っていたという事もあり、軍人としてのザハロフ曹長に関する情報は機密指定の処分がなされた。それに伴い、同氏の身柄の捜索は僅か3日で終了する運びとなった。

 

 ユーリ・R・ザハロフ曹長は戦死とみなされ、以降捜索が行われることは無かった。

 

 

 

 

 

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──声が聞こえた──

 

 

 

──「絶対に生きて帰って」──

 

 

 

──そうだ。死ぬわけには行かない──

 

 

 

──命令は、守らないと──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同年9月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ周辺地域

 

 

「──ここら辺はもう大丈夫そうだね」

 

「だな。ネウロイの奴ら、オレ達の強さにビビっちまったのか、少し大人しくなったみてーだ。逆に気味悪りィぜ」

 

 昼間の哨戒任務に趣いていた2人の航空ウィッチ──水色の制服に身を包んだ短い金髪のウィッチと、マフラーを巻いた黒髪のウィッチは、哨戒地域をあらかた回り終えてそろそろ戻ろうかと話していた。

 

「だったらいいんだけどねー、気味悪いってのは同感。こういうの、何て言うんだっけ?ホラ、扶桑の諺で……嵐の後には、なんだっけ?」

 

「嵐の前の静けさ、って言いてぇのか?」

 

「そうそれ!不幸が起こる前触れ、って意味だったっけ」

 

「ヘッ!どんな敵が来ようが、オレの敵じゃねーよ。それより、お前は未来よりも今現在の不幸を心配した方がいいんじゃねーのか?」

 

「へ……?」

 

 間の抜けた返事を返した金髪のウィッチ。直後──ボンッ!という音と共に彼女のストライカーユニットが突然煙を上げる。そこへ追い打ちをかけるように、ユニットの出力がみるみる低下していき、彼女の体は眼下の森へ真っ逆さまに落ちていく。

 

「ちょっ……またぁ!?ウソでしょ──ッ!?」

 

 絶叫の尾を引いて落下していった金髪のウィッチ。通常なら大慌てで助けに行くところだが、黒髪のウィッチは至極冷静だった。

 

「ったく、言わんこっちゃねぇ……おーいニパー、無事かー?」

 

 森へゆっくりと降下していくと、大木の枝に引っかかっている金髪のウィッチを見つけた。

 

「うぅ……今日もツイてない」

 

「いつものコったろ、ンなもん。で、飛べそうか?」

 

「無理……完全に止まっちゃった。あぁ……また怒られる」

 

「ま、だよな。取り敢えず掴まれ、下ろしてやるから──」

 

「ありがと菅野ォ……うぅ……木の皮の破片が口に入ったみたい。なんかじゃりじゃりする」

 

 不幸中の幸いとはこういう事を言うのだろう。黒髪のウィッチの助けを借りて何とか木から下りることに成功した金髪のウィッチは、近くに海があるのを発見した。少量の海水を口に含み、塩辛さに耐えながら口を濯ぐ。

 

 

 ……因みに、濾過していない生の海水で口を濯ぐのは衛生上宜しくないので絶対真似しないように。彼女たちはウィッチだから大丈夫なだけだ。

 

 

 話は戻り、何とか口腔内の異物を全て追い出した金髪のウィッチは、少し離れた浅瀬に何かが浮かんでいるのを見つける。よくよく目を凝らしてみると……

 

「──菅野!人が浮いてる!」

 

「あぁ!?人が浮くわけねぇだろ!ユニット履いてるならまだしも」

 

「そうじゃなくて!海!誰か流れ着いてるんだってば──!」

 

「って……マジかよ──っ!?」

 

 2人で協力し、何とか漂流者を陸に引き上げた。まとわりついていた海藻などを引き剥がすと、頭部には白い動物の耳が生えている。更に腰からは尻尾も伸びていることから、どうやらこの漂流者はウィッチらしい。

 

「息はあるみたいだけど、身体が冷え切ってる……!菅野!今すぐ戻って救助呼んで来て!」

 

「お、おう!待ってろ──!」

 

 ユニットを全開にして基地まで引き返した黒髪のウィッチを見送り、残った金髪のウィッチは今自分に出来る事を考える。

 

「とにかく、身体を温めないと……!」

 

 火を起こせれば一番良かったが、火種があっても着火剤がない。今から集めに行ってはその間に彼女が死んでしまうだろう。

 少し考えた末に、金髪のウィッチは漂流者の身体を強く抱きしめた。これで少しは温まるはず。後は一刻も早く救助が来るのを祈るのみだ。

 

 弱々しい心臓の鼓動を感じながら、金髪のウィッチは呼びかける。

 

「頑張れ!絶対に死んじゃダメだっ!」

 

 一層強く抱きしめられた漂流者の体から、何かがポトリと落ちる。

 金髪のウィッチは、拾い上げたそれを漂流者の手に握らせた。

 

 それからしばらくして、漂流者は無事にペテルブルグの基地へと運び込まれた。昏睡状態で眠る漂流者の枕元には──白い菱形のヘアピンが置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Next unit code: 502JFW "Brave Witches".




はい。これにて本当の意味で無印ストーリーが終了いたしました。
果たしてペテルブルグへ流れ着いた謎の漂流者は何者なのでしょうね?

話が一段落ついた事もあり、次回更新はまた暫く間が空くかもしれませんし、そうでもないかもしれません。

一先ず、拙い話をここまで読んでくださった方にお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
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