501のウィザード   作:青雷

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502部隊

 ユーリが502部隊の基地に身を置くようになって1週間程──静養に努めた結果、問題なく歩き走れるくらいにまで回復した。

 これまでは空いた時間を使い、簡単な筋トレなどをして少しずつ体を鍛え直していたユーリだが、今日は気分転換も兼ねて朝早くから外に出ていた。無論、未だ部外者の身であるユーリが1人で基地の外に出る事を許されるはずもなく──

 

「──おはよう。ユーリさん」

 

「おはようございます、ニパさん。それと……」

 

「おいニパ!何でコイツが居るんだよ」

 

 ニパの隣には、マフラーを巻いた小柄なウィッチがいた。顔立ちからして下原と同じ扶桑のウィッチだろうか。

 

「何でって、今日からユーリさんも一緒に走るからだよ」

 

「聞いてねぇぞ!」

 

「夕べ言おうとしたら、菅野もう寝ちゃってたんだから仕方ないだろ」

 

 ニパに食ってかかる彼女の名は管野直枝少尉。ユーリの見立て通り扶桑のウィッチで、出撃の際は必ずと言っていい程一番槍を買って出る勇敢な少女だ。

 

「あの……お邪魔でしたら別の場所で走りましょうか?」

 

「ああ、気にしないで!──菅野、別にいいじゃん一緒に走るくらい。それに、ロスマン先生からユーリさんに付き添うよう言われてるんだって」

 

 そう。ユーリが外に出る条件として、必ず隊の誰かが同伴することが義務付けられていた。今回その相手として選ばれたのがニパだったというわけだ。付け加えるなら、室内でのトレーニングに限界を感じていたユーリに外での運動を提案してくれたのも彼女だった。

 

「ったく……おい、ついて来んのは勝手にしろ。だがオレはお前が遅れようが容赦なく先に行くからな!」

 

「……置いていかれない様、頑張ります」

 

 フンッ!とそっぽを向いて、直枝はいつも通っているルートを走り出す。その後に続いて、ユーリとニパも朝練を開始した。

 

「ハッ、ハッ──そういえば今更だけど、聞きたいことがあったんだ」

 

「なんですか──?」

 

「その、ユーリさんってさ……男の人、なんだよね?」

 

「はい。そうですけど……やはり、珍しいですか」

 

「あはは…そりゃあね。私も最初はユーリさんの事、女の子だと思ってたもん。肌白いし、顔立ちもちょっと女の子っぽかったから」

 

「僕からしても珍しいですよ。そんな風に言われたのはニパさんが初めてです」

 

「あ…ごめんね。やっぱり男子的にはこういう事言われるの、嫌だった?」

 

「別に気にしてません。新鮮ではありますけどね」

 

 実際、ユーリの顔立ちは女性的──とまではいかないが、男としては中性的な方だ。加えて身長も高くなく、体の線もやや細い。発見当時、魔法力を発動させている証である使い魔の耳と尻尾を生やしていたことからも、ニパ達がユーリを女と見間違うのは無理もなかった。

 

「おいニパ!ダラダラしてっとソイツと一緒に置いてくぞ──!」

 

「あ、待ってよ菅野ー!」

 

「僕のことは気にせず、先に行ってください。このままじゃニパさんのトレーニングにならないでしょう」

 

「でもまだ本調子じゃないんだし、途中で倒れたりしてたら……」

 

「……なる程。なら、僕が菅野少尉に追いつけばいいわけですね」

 

「……え?」

 

 次の瞬間、これまで軽いジョギング程度のペースを保っていたユーリの体が急加速する。隣にいたニパを後ろに捨て置き、前方遠くに離れた直枝との距離を詰め始めた。それを見たニパも慌ててペースを上げユーリについていく。

 

「ねぇ!いきなりこんなにとばして大丈夫なの!?最初なんだし、少しずつ慣らしてった方がいいんじゃ──」

 

 ニパの言うことはもっともだ。室内である程度運動してきたとはいえ、本格的に動くのは暫くぶり。下手すれば途中でダウンしてしまう可能性も十分考えられるが、当のユーリはそんな心配は無用とばかりにペースを下げる様子はない。

 

「──っ!?」

 

 ニパの声を聞いて後方を振り向いた直枝の目には、驚異的な追い上げを見せるユーリの姿が映る。確かに見事な加速ではあるが、いくら男といえど所詮は病み上がりの人間。どうせすぐにバテて失速するだろう、と踏んだ直枝は、ユーリを引き離すべく更に一段ペースを上げた。

 数秒の後、離れているであろうユーリの姿を見てやろうと再び後ろを向いた彼女だったが……

 

「っ……ンだと!?」

 

 ユーリの姿は先程と同じ位置にあった。寧ろ、さっきよりも自分に近付いているようにさえ見える。

 徐々に詰まっていく直枝とユーリの距離。後ろを追いかけるニパは、いつの間にか自分と直枝が普段走っているのとほとんど変わらないペースになっている事に気づく。

 

「ハッ、ハッ──すっご……!」

 

 そのまま走ること数分──3人は基地の外周をグルリと一周した。因みに着順は直枝、ユーリ、ニパの順。最終的に直枝とユーリの差は多少開き、ユーリと彼に付き添っていたニパが同着となった形だ。

 

「ハァ…ハァ……ッ!」

 

「大丈夫?無理しちゃダメって言ったのに……」

 

 膝に手をつき、肩で息をするユーリ。ブリタニアで毎朝走っていた頃と比べて距離こそ増えたものの、あの時は走った後に美緒の訓練が控えていたのだ。全体としてみれば、運動量はコッチの方が少ない。にも関わらずこの疲労困憊っぷり……まだ回復しきっていないというのもあるだろうが、それ以上に体が鈍ってしまっているようだ。それを裏付けるように、同じペースで同じ距離を走ったはずの直枝とニパは、多少息が弾む程度で収まっている。ユーリとは雲泥の差だ。

 

(鍛え直さねば……できる限り早急に)

 

 疲れた頭で、かつて美緒の指導で行った訓練の中からここでもできそうなものをピックアップしたり、バルクホルンに教えてもらった効率のいいトレーニング方法を思い出す。

 そんなユーリの事をジッと見つめる直枝もまた、改めてトレーニングに打ち込む決意をすると同時に、ユーリの身体能力に驚いていた。

 確かに、序盤は万が一の時助けに入れるよう、後方を伺いながら意図的にペースを落として走っていた。だが終盤は普段と同じか、それ以上のペースで走っていたのだ。にも関わらず、ユーリは病み上がりの本調子でない体でそれに付いて来た。

 

ちっ……やるじゃねぇかよ──オレの勝ちだ!これに懲りたら、病人は部屋で大人しくしてるんだな」

 

「もう菅野ったら……勝負とかそういうんじゃなかっただろ」

 

ユーリ(そいつ)が先に噛み付いてきたんだろうが!勝負って思うのが普通だろ!」

 

「それは……!──確かに」

 

「いや納得すんのかよ……」

 

「菅野少尉の……仰る通りです。正直、予想以上に保ちませんでした」

 

「無理しないで、少しずつ調子戻してこうよ。私達も手伝うからさ」

 

「おい!それオレも入ってねぇだろうな!?」

 

「手伝うくらいいいじゃんか!それに、ユーリさんがこんなになったのは菅野にもちょっとは原因あるんだし」

 

 最終的にユーリがバテる未来は変わらなかっただろうが、確かに直枝が変な対抗意識を燃やさなければ、ユーリの疲労も幾分マシだったかもしれないのもまた事実。

 

「うぐっ……ワーッたよ!付き合えばいーんだろ付き合えば!ったく……」

 

「ご迷惑を、おかけします……」

 

「そう思うんならとっとと養生しやがれ。飯食って寝ろ!」

 

 彼女の言葉に反応するように、ユーリの腹が音を上げる。つられるようにして、ニパと直枝も腹の虫が鳴き始めた。

 

「いい時間だし、食堂行こ。ユーリさんはどうする?キツいなら部屋に持ってくけど」

 

「何度も面倒を掛けるわけにも行きませんし、ご一緒させて頂こうと思います。……もちろん、ご迷惑でなければ。ですが」

 

「迷惑なんて事ないよ。あ、そうだ。いい機会だし、隊の皆を改めて紹介するね」

 

 ユーリがこの基地に運び込まれたという旨は502部隊全員に周知されているが、その中で顔を合わせたのはニパを始め5人のみ。まだ話したことのない隊員とも顔合わせをしておけば、今後ユーリが基地の中を動きやすくなるだろう。

 

 そのままの足で食堂に向かった3人は、入口でロスマンと鉢合わせる。ニパの説明を受け、彼女もユーリを皆に紹介する事に同意してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──斯くして、今ユーリは502部隊の面々の前に立たされていた。

 眼前のテーブルには下原の作った朝食が並んでおり、きちんとユーリの分も用意されている。

 

「──皆さんも聞いていたと思いますが、ここで改めて紹介しておきます。彼はユーリ・ザハロフさん。先日ニパさん達が保護した漂流者よ」

 

「ご紹介に預かりました。ユーリ・R・ザハロフです。最初に、満身創痍の自分を助けてくださった事を感謝します。ありがとうございました」

 

 そう言って頭を下げたユーリに、テーブルからやや気の抜けた声が飛んでくる。

 

「いやぁ、あの時は驚いたよ。ナオちゃんが血相変えて戻ってくるんだもん」

 

「仕方ねーだろ。人命救助だ」

 

「またまた~照れちゃって。──それで?ここに連れて来たって事は、ボク達にもちゃんと紹介してくれるってことでいいのかな、先生?」

 

 ユーリは初めて目にする502部隊の食卓には、初対面の顔が3つあった。今しがた話していた褐色肌のウィッチと、それとは対照的に真っ白な肌とカチューシャが特徴的な金髪のウィッチ。そしてブラウンの髪をツインテールにしたウィッチだ。

 

「ええ。けどそれより先に、皆の自己紹介を済ませましょう。クルピンスキー、あなたからよ」

 

 既に見知った間柄であるニパと菅野、そしてロスマンとラルを除いた4人が順番に名乗り始める。

 

「初めまして。ボクはヴァルトルート・クルピンスキー、中尉だよ。気軽に"伯爵"と呼んでくれたまえ」

 

「……中尉は爵位をお持ちなんですか?」

 

「彼女の言う事は9割聞き流していいわ、真に受けないこと。──次はサーシャさんね」

 

「はい。──アレクサンドラ・I・ポクルイーシキンです。階級は大尉。この部隊の戦闘隊長を務めています」

 

 皆から「サーシャ」の愛称で親しまれる彼女は、故郷であるオラーシャ陸軍ではトップエースに位置づけられる程の実力者だ。過去の戦いによる負傷から頻繁に出撃できないラルに代わり、彼女が現場指揮を務めることも多い。そんな歴戦のウィッチであるラルからの信頼もまた、彼女の実力の高さを裏付けている。

 

「改めまして、下原定子といいます。少尉です。よろしくお願いしますね。…それと、隣の彼女は──」

 

「ジ、ジョーゼット・ルマールです……少尉、です」

 

 下原の隣にちょこんと座る小柄な少女──日頃「ジョゼ」と呼ばれている彼女は、基本的に男子禁制であるこの空間にユーリが居る事で緊張しているようだ。先程からチラチラと目線をユーリに向けているが、一度として目を合わせてくれない。彼女の心状はユーリとて重々理解しているのだが、それでも少しだけ──ほんのちょっとだけ、傷ついた。

 

(いやいや…寧ろ初対面なのに抱きついてきたり気さくに話せるシャーリーさんやルッキーニさんがいじょ──凄いんだ。これが普通の反応だ。うん。これが普通……)

 

 そう思うことで心の平常を保ったユーリは、続けられるロスマンの言葉に耳を傾ける。

 

「自己紹介も済んだところで、さっきの話を続けるわよ。彼には暫くこの502基地へ滞在して、回復に努めてもらいます。その後経過を見てから、我々の部隊に加わって貰う予定です」

 

「はぁ!?おいどういう事だ!?」

 

 堪らず椅子から立ち上がった菅野。他の隊員達も、事情を知るか否かを問わず彼女と胸中を共にしているようだ。一言一句違わず──どういう事だ?──と。それは当のユーリも同様だった。

 

「彼を発見した当事者である菅野さんやニパさんは知っていると思うけど、改めて説明するわね。彼の体には魔法力が宿っています。全快に至ればこの場の全員を上回ると推測されているわ」

 

「男性のウィッチ……ウィザード、ということですか?」

 

 一口にウィッチと言っても、在り方は様々。当然、ユニットを駆動させるに至らない微弱な魔法力を宿して生まれる者もいるし、そのボーダーをクリアしても全員が航空ウィッチになれるわけではない。事実、全世界に存在するウィッチの過半数以上は空ではなく陸で戦っているのだ。そんな陸戦ウィッチ達の為に陸戦用ストライカーも日夜開発・配備されている。

 同じストライカーではあるが、陸と空ではエンジンを駆動させるのに要求される魔法力が桁違いとなる。陸戦型が脚部ユニットの履帯を回すのに対し、航空型は人一人を空高く浮かせるのだ、それも当然と言えるだろう。

 ユーリが身を置いていた501や、ここ502部隊の面々を始めとする航空ウィッチ達は、ウィッチ全体で見れば少数派──航空ユニットを長時間稼働させ、そのまま戦闘を行えるだけの膨大な魔法力を宿した文字通りの逸材なのだ。

 そんな彼女達をも凌ぐ魔法力となると、現実離れして聞こえるのも無理はない。ユーリ以上の魔法力を持つ扶桑の少女の話をすれば、目が眩むのではないか。

 

「──今は幸い目立った活動がないけれど、ネウロイの攻撃は着実に激しさを増してきてるわ。我々攻性部隊にとって戦力はあって困るものではないし、悪い話ではないでしょう」

 

「確かに人手が増えるのは助かりますけど……」

 

「ユーリさんは早く元の部隊に帰してあげた方がいいんじゃないかな?きっと心配してるよ」

 

「……と、ニパはこう言ってるが?お前はどうだ、ザハロフ」

 

「僕は……」

 

 この場に於いてユーリが501部隊に所属していたという事実──厳密には推測だが──を知る者は本人を除けばラルとロスマンのみ。サーシャもニパも、ユーリがどこかの部隊での戦闘で海に落ち、ここへ流れ着いたと思っているのだ。魔法力の目覚めは個人差がある。流石にユーリ程歳を重ねてからの覚醒は珍しいケースだが、海に投げ出されるという極限状態に追い込まれたことで発現したと考えれば辻褄は合う。

 

「……少し、考えさせてください」

 

 結局その場では答えが出せず、今日の夕飯まで回答は保留という事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べ終えて部屋に戻ったユーリは、ベッドの上で考え事をしていた。件の話の答えはもちろんだが、主だった原因は食堂を出る際にラルに言われたことである──

 

 

 ──戦場を離れるなら止めはせんが、ネウロイと戦うつもりなら我々に着いた方が懸命だぞ。悪いようにはしない──

 

 

 かれこれ数時間、声も発さずに考え続けているユーリは、ラルのこの言葉の真意について1つの推測を見出している。

 

 ずばり、自分はもう死んでいるのではないか?と。

 

 より正確に言うならば、自分は()()()()()()()()()()のではないかという事だ。

 

 501部隊は、世間的に見ても各国のエース隊員達が結集した精鋭中の精鋭部隊。言ってしまえば宝のようなものだ。入隊した経緯が経緯とはいえ、ユーリのブリタニア戦線に於ける功績は決して小さくない。そんな彼を縛り付けていた直属の上官が失脚したのだ。彼の活躍を聞いた各国の上層部はもちろん、何よりブリタニア空軍にとって、ユーリは是非とも正規所属の軍人として手に入れたい・手元に置いておきたい戦力だろう。行方不明になっているならば、血眼になって捜索してもおかしくない。当然、各地の基地にも通達が行くはずだ。

 だというのに。ユーリを見つけたニパ達は勿論、上層部と表立って相対するラルでさえもユーリの存在を全く知らなかった。軍の権力をもってすれば素性を偽装するなりしてユーリ(捜索者)の正体を隠すこともできただろうに。

 

 これらの事を踏まえ、ユーリは自分が既に戦死認定を受けているか、ウォーロック共々機密として歴史の闇に葬り去られた存在なのではないか、という結論にたどり着いたのだ。自分で考えておいて変な気分だが、これが一番しっくり来た。

 

 ネウロイと戦うなら軍のサポートは必要不可欠。しかし今のユーリは帰るべき部隊が存在しない上に、そもそも存在しないことになっている。軽はずみに外部へ連絡してしまえば、権力者達が奪い合うパイとなってしまう可能性が高い。そういった理由から、ラルはユーリを502部隊に引き入れようとしているのではないだろうか。少なくともこの欧州戦線に於いて、戦力は多いに越したことはない。上層部もユーリの存在を知ったからといって無闇に引き抜くような真似はしないはずだ。

 軍属ではなくあくまで民間──今のユーリは事実上軍の人間ではない──からの入隊という例では、丁度芳佳という前例もある。客観的に見て彼女に匹敵する才能と資質を持つユーリならば、兵学校を介せずに直接入隊させることにも違和感はないだろう。

 

「……何というか、随分知能派な人だな」

 

 一緒にするのは本人に失礼極まりないだろうが、彼女はどこかマロニーと通ずるものを感じる。バリバリの現場で戦うタイプかと思いきや、アレで中々謀略も得意なタイプと見た。そんな彼女と同じ土俵でユーリが優位に立てるはずもない。ユーリに残された道は実質1つだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は夕刻──朝と同じように食堂に集まる部隊の面々。食事が始まる前に、ユーリは例の件に対する回答を伝える。

 

「答えは決まったか?」

 

「はい──少佐のお誘い、お受けします。502部隊の一員として、一緒に戦わせてください」

 

「……ほんとにそれでいいの?」

 

「ええ。……僕のいた部隊は既に解体されてますし、他に行く宛もありません。それに、助けて頂いた恩返しもしたいですから」

 

「決まりだな──」

 

 心配そうな顔をするニパを納得させたユーリは、隊長であるラルに真っ直ぐ向き直る。

 

「ユーリ・ザハロフ。貴様はこれより我が502部隊の隊員として私の下で戦ってもらう。だが病み上がりの者を戦場に出すわけにもいかん。よって──」

 

「──貴方には本格的な訓練の前に、私のテストを受けてもらいます」

 

 ラルの言葉の続きは、ロスマンが引き継いだ。

 

「テスト…ですか」

 

「ええ。と言っても、そう難しいものではないわ。万全じゃないとはいえ、()()()()()問題なくクリアできるはずよ」

 

 どこか含みのあるロスマンの言葉。とにかく、彼女の課すテストとやらに合格すれば、ユーリは本格的にこの部隊の戦力として数えられるようだ。因みにもし不合格だった場合は、戦場に出ない整備兵として働く事になるらしい。

 

「それじゃあ食事にしましょ。テストは明日の一○○○(ヒトマルマルマル)から。しっかり食べて、体調を整えておきなさい」

 

「了解」

 

 暫定ではあるが新たな仲間を迎えた502部隊の夕食は、以前より少しだけ賑やかだった。主にクルピンスキーやニパから前いた部隊に関する質問が幾度となく飛んできたが、どうにかやり過ごすことに成功。内心で変な汗をかきながらも、その日は眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──隊長。彼が501にいたという事、皆に伝えなくて本当に良かったんですか?」

 

「構わん。奴とてまだ完全に信用できるわけではないからな。交渉用のカードは残しておくべきだろう?」

 

「……あなたって、本当に狡猾ね」

 

「ふ…いつも言ってるだろう。これも戦略だ」

 

 先日行われた事情聴取にて、ユーリが語った嘘──に見せかけた真実。つまり、ユーリには自分が501部隊にいたという事を公言したくない理由があるのだろう。流石にその真意まで探ることはできなかったが、あたりがついただけでも収穫だ。

 

「奴が戦場に身を置けば、遅かれ早かれ化けの皮は剥がれる。願わくば、それまでに懐柔しておきたいものだな」

 

「……一応、私の生徒になる予定の子にあまり酷い事はしないでちょうだいね」

 

「ほう…?早くも情が沸いたか?先生」

 

「違うわよ。将来有望な後輩を潰されるのは、教練担当としていい気持ちがしないってだけ」

 

「将来有望…か。明日が楽しみだな」

 




なんかこう、ユーリと隊長の腹の探り合いみたいな方向になっていってる感じが…そういうの好きとか得意ってわけじゃないんですけどねぇ
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