501のウィザード   作:青雷

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今回は羽休め?回です。


家庭の味

 某日──日課の早朝トレーニングを終えたユーリが足早に食堂へ向かうと、美味しそうな匂いが鼻腔を擽った。

 

「おはようございます──遅れてすみません。皆さんもう食べ始めてますか?下原さん」

 

「おはようございます、ユーリさん。──ちょうど今出来たところです。今日は蕎麦の実を使ったシチーとカーシャで、オラーシャ風にしてみました」

 

「シチーとカーシャ…確か、どちらもオラーシャの伝統的な家庭料理でしたね」

 

 楽しみにしてます。と席に着くユーリに、下原は訝しげな視線を向けていた。

 

 全員の手元に料理が行き渡り、各々朝食をとり始める。

 

「──美味しい!下原さんって、オラーシャ料理も得意なんですね」

 

「喜んでもらえて嬉しいです」

 

「"シチーとカーシャ、日々の糧"──小さい頃によく家族で食べたのを思い出します」

 

「本当はユーリさんが502に入った時の歓迎会で作ろうと思ったんですけど、あの時は材料が足りなくて……」

 

「同じ家庭料理でも、家毎に味付けが微妙に違ったりして面白いんですよ──そういえば、ユーリさんのご家庭はどうだったんですか?」

 

 サーシャの質問に、黙々とカーシャを食べていたユーリは一旦手を止める。元ブリタニア空軍とはいえ、ユーリの出身はオラーシャだ。あまり過去を語らないユーリの"家庭の味"の話を聞けると思っていた一同だったが……

 

「……お恥ずかしい話ですが、実はシチーもカーシャも食べるのはこれが初めてなんです。両親が幼い頃に他界しまして。以降はずっと父方の故郷であるブリタニアで育ちましたから」

 

「すみません……!私ったら──」

 

「いえ、お気になさらず。寧ろ、折角の美味しい朝食を台無しにするような話をしてしまいました」

 

「……あ、ってことはユーリさん、オラーシャとブリタニアのハーフなんだ?」

 

「私、ブリタニアの料理がどんなのか知りたいです!」

 

 重くなっていた空気をニパとひかりが持ち直し、ユーリも挽回のチャンスだということを感じ取った。

 

 ──感じ取りは、したのだが……

 

「……すみません、食文化にはあまり詳しくなくて。そういったことは深く考えずに食べていたものですから」

 

「なんだよ、お前みたいなのでも意外と食い意地張ってんのな」

 

「ええ、まぁ……そうなのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を終え、ブリーフィングルーム──

 

「──現在、"グリゴーリ"から現れるネウロイの侵攻はラドガ湖の北方で止まっていますが、湖の凍結が始まれば一気に南下してこちらへ進出してくると考えられます」

 

「湖が凍りだすのって、12月の頭くらいだっけ」

 

「あと1ヵ月足らずですね」

 

「その為、本格的な冬に備えて新たな防衛網を構築する必要があります」

 

 ひと月あれば時間は十分に思えるが、次の物資補給を待たなければ防衛網を敷くことができない。実際作業にかけられる時間は1ヶ月よりも短いと考えていいだろう。

 

「今日の定時偵察当番は……下原さんとジョゼさんね。今日は偵察範囲をラドガ湖北東のペトロザヴォーツクまで広げます。何か気付いたことがあったら、些細な事でもいいから報告してちょうだい」

 

 

「「了解」」

 

 

「それと──ひかりさん。あなたも同行するように。遠乗りの訓練にいい機会だわ」

 

「はい!──ジョゼさん、下原さん、よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ!」

 

「よ、よろしく……」

 

 ひかりの同行を快諾する下原だったが、一方でジョゼは承諾こそしたものの、その表情はどこか浮かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひかり達3人が基地を発ってから、3時間程経った頃──

 

「下原さーん。今日のお昼は──って、そっか。今偵察出てていないんだった」

 

 普段通りの偵察であれば戻ってきている時間帯だが、今回は偵察範囲が広がっている。それも冬に備えての重要な偵察とあれば、時間がかかるのも頷けるというものだ。

 

「下原さんがお昼を作り置きしてくださってますよ」

 

「ホント?流石下原さんだなぁ」

 

 食堂では、ユーリを始め他の隊員達も下原が残していったサンドイッチを摘んでいた。軽食ではあるが、出撃までの短時間できちんと人数分用意してくれた下原に感謝の念を送りながら腹を満たしていく。

 

「もぐもぐ……ひかり達、大丈夫かな?」

 

「さっき下原さんから定時連絡があったわ。ジョゼさんもいるし、何かあってもカバーしてくれるはずよ」

 

「……そうだよね!下原さん頭いいし」

 

「ま、お前が一緒じゃないなら大丈夫だろ」

 

「ちょ、どーいう意味だよ菅野ー!?」

 

 直枝の冗談で飛ぶ笑い声。誰もが、この時はまだ「今日の夕飯は何だろう」等と考えていたのだが……

 

「……ねぇ、流石に遅くない?」

 

「えぇ……偵察範囲拡大を加味しても、基地を発ってからこれだけ経っても戻らないとなると……」

 

 心配したユーリがロスマンに確認したところ、どうやら定時連絡が途絶えてから4時間が経つらしい。これはいよいよ非常事態だ。

 

「搜索に行きましょう。もしかしたら、ネウロイに足止めを食らっている可能性も考えられます」

 

「そうね……日没も早くなってきてるし、満足に夜間戦闘を行えるのは下原さんだけだわ」

 

 下原の固有魔法である〔魔法視〕は、遠距離視と夜間視の複合型だ。その特性上、ナイトウィッチを擁さない502部隊にて夜間哨戒を行える唯一の隊員として重宝されている。

 

 ロスマンの声がけで集まった4人──直枝、ニパ、クルピンスキー、そしてユーリは、すぐさまユニットを履き出撃しようとするが……

 

「──待ってください!出撃は中止です」

 

「はぁ?どういうことだよ!?」

 

「これを見てください──」

 

 突如飛んできた鶴の一声に、誰もが怪訝な顔をして説明を求める。そんな彼女達に、声の主であるサーシャは言葉ではなく、格納庫のゲートを開けることで答えた。

 

「これは……!」

 

 重々しい音を立てて開いていくゲートのむこうでは、曇り空の下で白い雪が踊り狂っていた。その壮烈さを物語るように、格納庫に吹き込んできた冷たい空気が肌を撫でる。

 

「……確かに、この吹雪では無理ね。視界不良に加えて、ユニットが凍結しかねないわ」

 

 一刻も早く吹雪が止むことを祈りながら、ユーリ達は渋々基地の中へと引っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──時は進むこと夜の9時。依然として外は吹雪いており、歯痒い状況が続いている。雪が止むのを今か今かと座して待ち続ける502部隊の面々だったが、彼女らはここに来て新たな問題に直面していた。

 

「……もう9時だよ。夕飯、どうしよう?」

 

 日頃502部隊の食事──特に夕食は下原が担当していたこともあり、炊事班は彼女らの分の食事を用意していない。整備兵など他の兵士達の食事の時間もとっくに終わっているであろう今、わざわざ炊事班を呼び出すのも気が引けた。

 

「フッフッフ……仕方ない。ここはボクが一肌脱ぐとしようじゃないか」

 

「クルピンスキーさん。料理できたの?」

 

「流石に下原ちゃんには及ばないけどね。その代わり、子猫ちゃん達への愛情はたっぷり込めさせてもらうよ」

 

 意気揚々とキッチンへ向かったクルピンスキー。この際空腹を満たせれば贅沢は言わない、と料理完成を心待ちにしていたのだが……

 

「……なぁ。なんか変な臭いしねーか……?」

 

「言われてみれば……」

 

 一瞬、嫌な予感が直枝とニパの脳裏をよぎる。そして──

 

 

「お待たせ皆!さぁ、召し上がれ」

 

 

 ──そして、その予感は形となって目の前に現れた。

 

「……これ、食っても大丈夫なやつだろうな……?」

 

「もちろん!見かけはちょっと不格好だけど、ナオちゃんへの愛をたっぷり込めたからね。よく味わってくれたら嬉しいな」

 

「ちょっと……?」

 

「不格好……?」

 

 ニパとサーシャが息を飲むのも無理はない。何しろ目の前に並べられたクルピンスキーの料理(スープ)は、未だかつて見たことのない色をしているのだ。

 より具体的には一般的なスープらしからぬ紫色の液体に、何やら具材らしきものが浮いている。

 何にせよ、お世辞にも食欲をそそるとは言えない──寧ろ食べる気が失せるナニかが、502部隊の面々の前に鎮座していた。

 

「ま、まぁ…食べてみれば美味しい可能性もある、わよね……」

 

 一縷の望みをかけ、意を決したロスマンがスープを一口。固唾を飲んでその様子を見守っていた隊員達だったが、顔を青ざめさせ小さく嘔吐(えづ)く彼女を見て、やはりこのスープは見た目通りの味なのだという事を悟った。

 

 対して、これを生み出した張本人であるクルピンスキーはというと……

 

「どう、美味しいでしょ?このスープには先生ご自慢の食材もたっぷり入ってるんだよ」

 

「なんですって──ッ!?」

 

 鬼気迫る形相でキッチンへと駆け込むロスマン。次の瞬間、彼女の悲痛な叫びが聞こえてきた。

 

「あぁ…わ、私が1年かけて集めた、貴重なオラーシャキャビアが……!」

 

 呆然と立ち尽くすロスマンの眼前には、見るも無残に開封されたキャビアの空缶が積み上げられていた。

 怒りと怨嗟に満ちたロスマンがクルピンスキーにお灸を据えているのを尻目に、直枝達も恐る恐るスープを口にしてみるが……

 

「う…っ!?なにコレ…!?」

 

「やっぱ下原じゃなきゃ無理だ……ッ!」

 

 やはり結果は同じ。とても食べられたものではない。キャビアの塩味を中和しようと手当たり次第に調味料をぶち込んだのか、そのせいで筆舌に尽くしがたい酷い味となってしまっている。これでは犠牲になった大量のキャビア達も浮かばれないだろう。

 

 直枝、ニパ、サーシャが揃って口元を押さえる中、ラルとユーリだけは黙ってスプーンを動かしていた。あろう事か、この劇薬(スープ)を事も無げに飲んでいるではないか。

 

「……流石です、隊長。こういう時も冷静ですね」

 

 サーシャの言葉で手を止めたラルは一言、

 

「──まずい」

 

 そう呟き、それっきりスプーンを持ち上げることは無かった。

 ラルがこれでは、もう誰ひとりとしてこの暗黒物質(スープ)を処理できるものはいない──そう思ったのだが。

 

「──菅野さん、スープ(ソレ)を」

 

「んぁ?おう──って待て!お前ソレ全部食ったのか!?」

 

 言われるままに自分の皿を差し出そうとした直枝は、慌ててユーリの皿を覗き込む。なんと、ユーリの皿からはあのスープが消えていた。

 

「ユ、ユーリさん……!?」

 

「あの、気を悪くしないで欲しいんだけど……まずいよね?コレ」

 

 緊張の面持ちのニパが投げかけたこの問いに対するユーリからの回答は……

 

 

「……不味いです。正直、かなり」

 

 

 やはり、YESだった。

 

「──ですが個人的に、何とか、ギリギリ、紙一重で食べ物の範疇と判断しました。恐らくですが、皆さんの分を僕が頂くことも可能かと」

 

「なっ…!?バカ言うんじゃねぇ!死ぬ気かてめぇ!?」

 

「そうだよ!無理しないで!」

 

「どうか早まらないでください!」

 

 全力でユーリを止める直枝達。だがユーリは制止を振り切り、直枝の皿を自分の手元に引き寄せる。

 

「食材は貴重な物資です。例え惨たらしい姿になってしまったとしても、料理として食べられる以上、無駄にはできません」

 

 ユーリの言うことも一理ある。近くに次の補給が控えているとはいえ、物資は節約できるに越したことはない。加えて今基地にいるメンバーの中では、ユーリだけがこのスープに対抗できる唯一の存在なのだ。

 

(皆さんの胃は、僕が守ってみせる──!)

 

 決死の覚悟で、まずは直枝の分を食べ始める。一口しか手をつけられていないスープは見る見るその量を減らしていき、わずか3分弱で直枝の皿を平らげてみせた。

 

「ふぅ……次、ニパさん!」

 

 続けてニパの分、サーシャの分、テーブルを離れているロスマンの分と、次々スープを飲み干していくユーリ。

 

「っ…あと、ひと皿……!」

 

 明らかに顔色を悪くしながらも4人分のスープを片付けたユーリは、残るひと皿──ラルの分に手を伸ばそうとするが、

 

「……私の分はやらんぞ」

 

 と、伸ばされた手は空を切った。見れば、ラルの皿は既に空になっているではないか。ユーリが必死にスープを口にしていた傍らで、密かに完食していたらしい。

 

「もしかして、隊長はユーリさんの負担を少しでも減らそうと…?」

 

「あぁ、流石隊長だ。それに比べてオレ達は…ッ!」

 

「ユーリさん……なんて無茶を」

 

「ごめん……ごめんね。ユーリさん」

 

 テーブルに突っ伏すユーリを見て自らの非力さを悔やむ直枝達。せめて部屋でゆっくり休ませようとユーリを運ぼうとした時だった──

 

 

「──おや、もう食べちゃったのかい?喜んでもらえて嬉しいよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 絶望とは、最も効果的な瞬間にこそ降りかかる。

 ユーリがその身を犠牲にして撃破したスープは、ほんの氷山の一角に過ぎなかったのだ。全兵力を鍋の中に総動員してテーブルに降り立った絶望(スープ)は、一瞬にして直枝達から血の気を奪い去った。

 

「僕なら、まだ……ッ!」

 

 青い顔のユーリは満身創痍の体に鞭打って絶望(スープ)に挑もうとするが、伸ばすその手を制止する者がいた。

 

「ユーリ…もういい。お前は休んでろ」

 

「か、菅野──さん」

 

「──ニパ、サーシャ、()るぞ。腹ァ括れ!」

 

「ッ……うん!」

 

「はい…ッ!」

 

「さぁナオちゃん、ニパ君、サーシャちゃん!ボクの愛情(スープ)をたっぷり召し上がれ!」

 

 

「ッ…やってやらァァァ──!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はっ!?」

 

 目を覚ますと、そこは自室だった。カーテンの隙間からは薄明るい空が覗いており、今が朝なのだということを理解する。

 

(まだ少しクラクラする──そうだ、下原さん達は無事に戻れただろうか)

 

 クルピンスキーが引き連れてきた本隊(スープ)との戦いを目前にして気を失ったユーリは、その後ラルによって部屋に運びこまれていたのだ。

 

 まだ口の中にアレの味が残っているような感覚を覚えながら、一先ずユーリは水を求めて食堂へ向かう。

 

「ん…この匂いは……」

 

 ふと鼻についた美味しそうな匂い。発生源である食堂を覗いてみると、そこには──

 

「──あ、ユーリさん。おはようございます」

 

「下原さん…!良かった、ご無事だったんですね」

 

「心配をかけてすみませんでした。ひかりさんもジョゼも無事ですよ」

 

 そう言って笑う下原の前では、火の上で煙を燻らせる蒸し器があった。匂いの元は下原の料理だったようだ。

 

「──ロスマン先生から聞きました。色々と、大変だったみたいですね?」

 

「……えぇ、それはもう。改めて下原さんの凄さを痛感しました」

 

「ふふっ、大袈裟ですよ」

 

 下原から水の入ったグラスを受け取り、ゆっくり飲み干す。

 

「あ、そうだ。今日の朝ごはんの玉子焼きが少し余ってるんですけど、食べますか?」

 

「それはジョゼさんの分では…?」

 

「1つくらい大丈夫ですよ。あ、でも一応ジョゼには内緒にしてくださいね?」

 

 そう言って口の前で指を立てる下原の厚意に甘え、玉子焼きを一切れつまみ食いする。

 

「……甘い」

 

「お口に合いませんでしたか?砂糖は少なめにしたんですけど……」

 

「ああ、いえ。玉子焼きはだしの味がするものだとばかり思ってたんですが、甘いのも美味しいですね」

 

「よく知ってますね。扶桑料理、お好きなんですか?」

 

「……そうですね。前いた部隊に扶桑出身の方がいたんです。下原さんと同じく料理が好きな方で、いつも部隊の食事を作ってくれていました」

 

 その人物とは言うまでもなく芳佳のことだ。彼女の玉子焼きは甘くないタイプで、ユーリはそれが当たり前だと思っていた。

 

「……あの、良かったら教えてくれませんか?ユーリさんの好きな食べ物とか」

 

 少し迷った末に、ユーリは自分の過去を断片的に語り始めた。

 幼い頃から厳しい訓練を課されたこと。その中で与えられた食べ物が軍用食だけだったこと。その影響か、今の自分は若干味音痴の節が見られること。大抵のものは美味しく頂けるのだが、そのせいで食に関する嗜好や拘りが殆ど無いこと。

 ……そんな食生活を送ってきたことで、所謂"家庭の味"というものを知らずに生きてきたこと。

 

「……それじゃあ、ユーリさんの好きな味を再現するのは難しそうですね」

 

「……何故そんな必要が?」

 

「前にも言ったと思うんですけど、ユーリさんが502に来た時にオラーシャ料理を作ろうと思ったのは、故郷の料理を食べれば皆と打ち解けやすいかなって思ったからなんです。まあ、結局作れなかったんですけどね……」

 

「そうでしたか……お気遣い、ありがとうございました。──でも、僕は下原さんの料理好きですよ。お味噌汁は特に。欲を言えば()()()()()()()()()()()()()

 

「え……っ!?」

 

 突如、下原の顔が赤くなっていく。同時に、蒸し器から溢れる煙も激しさを増したように見えた。

 

「……下原さん?」

 

 これといって特定の味を好むことのなかったユーリだが、実は数少ない"好きな食べ物"の中に下原の味噌汁がランクインを果たしていた。同じ味噌汁でも、芳佳と下原では若干味が違う。味噌汁というカテゴリで一括りにするのも惜しいということで、両者共別枠となっている。

 

 だがユーリは知らなかった──「美味しいから」という単純な気持ちで口にした「毎朝味噌汁を作って欲しい」という文言が──

 

「ええと……その……ユーリさん、実はですね──」

 

 

 ──扶桑に於いて、求婚を意味するものだということを。

 

 

 下原から説明を受けたユーリは雷に打たれたような衝撃を受け、すぐさま深く頭を下げた。

 

「申し訳ありませんでした!女性に対しなんという非礼を……!」

 

「い、いえそんな。仕方ありませんよ。頭を上げてください。──嬉しいです。私の料理を気に入って貰えて」

 

 どうにかユーリを宥めた下原は、お詫びの名目でユーリに食器の用意を頼む。2つ返事で了解したユーリがテーブルにスプーンやフォークを並べる最中、朝食の仕上げに取り掛かる下原は、照れながらも嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 




下原さん達が雪の中頑張っている裏を書いてみようと思った当初、まさかあんなギャグシーンが挟まることになるとは想像だにしていませんでした。
文字数だってざっくり4000文字くらいで短めにしようかなって思ってたんですが…
勢いって怖いですね。
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