サトゥルヌス祭が終わり、年越しを1週間後に控えた某日。
502部隊の基地では、珍しい光景が……
「──さぁさぁ!早く部屋を空けてください!大掃除は時間との勝負なんですから!」
「え、あの、ジョゼさん……?」
日課の早朝トレーニングを終えて部屋に戻ってきたユーリは、息つく間もなくジョゼによって部屋から追い出されてしまっていた。
日頃物静かなジョゼが見違えたように生き生きしているのを見て呆然とするユーリの元へ、聞き馴染んだ声が飛んでくる。
「オマエも追い出されたのカ……何なんだよアイツ?」
「おはよう、ユーラ……」
つい先日、スオムスから補給物資を届けに来てくれたエイラとサーニャは、そのまま年末の休暇に移行するということでこの基地に留まっていた。この2人の顔を見るだけでも、ブリタニアで501の皆と過ごしていた時の事を思い出す。
「おはようございます──正直、僕にも何が何やら……というか、サーニャさんはまた随分眠たそうですね」
「んゅ……」
「寝てるとこを叩き起されたからナー。只でさえサーニャは朝弱いってのニ」
「そこは相変わらずですね……ふふっ」
「……何笑ってんだヨ?」
「ああ、いえ。何だかお2人と話していると、あの頃に戻ったような……そんな気持ちになってしまって」
「確かに、こうしてワタシ達3人だけで話すのは久しぶりかァ。昨夜は周りで502の皆が騒いでたし」
「それに、エイラさん達のお陰──と言うのも変ですが、少しだけ肩の荷が下りたというか」
「ずっと1人で、大変だったものね……」
これまで胸の内で燻っていた、部隊の皆へ隠し事をしている負い目。ユーリ自身に何ら悪意があったわけではないが、エイラ達がここに来たことで必然的にユーリの身の上が全員に知れる事となった。あの嫌な腹の探り合いをもうしなくて済むと思うと、気持ち的にかなり楽になる。
「ま、そういう意味じゃナイスタイミングだったみたいだナ?」
「そうね。まさかここでユーラとまた会えるとは思ってなかったから、嬉しい誤算だわ」
「……何のことですか?」
「あー、まぁアレだ。今502が必要としてるモンが、あの物資の中に入ってんダヨ」
「大きい声では言えないけど、きっと皆の役に立つと思うわ。ユーラもいれば尚更ね」
結局、その"必要なもの"が何なのかは教えてもらえなかった。
そんな3人が一息つこうと食堂へ向かっていると、ふとサーニャが足を止めた。
「──サーニャ?」
振り返ると、サーニャはジッと窓の外を見つめていた。その視線の先には、雪化粧を施されたペテルブルグの街が広がっている。
「サーニャさん、もしや過去にこの街へ来たことが……?」
「ううん。ただ……大きいけど、寂しい街……って思って」
数年前は多くの人々で賑わっていたペテルブルグの街も、今やその面影は無い。ネウロイの襲撃によって、住民達は皆国の東へ疎開してしまったからだ。
「でも…いつかきっと、皆この街に戻って来れるよね」
「……そうですね。いつかきっと」
「──よし、サーニャ。今日は街に行ってみよっカ!」
「エイラ……?」
「誰もいないけどサ、久々にオラーシャの街を散歩しよーぜ!──その、ふ…ふたりで……」
「そうね……折角だし、ユーラも一緒にどう?」
「僕もですか?」
正直、ユーリとしてもサーニャ達と休日を謳歌するに吝かではないのだが……
「………」
すぐ横でがっくりと肩を落としているエイラをチラリと見たユーリは、
「……折角のお誘いですが、生憎この後私用がありまして。是非、エイラさんとお2人で楽しんで来て下さい」
「……!──じゃあ仕方ないナー!いやぁ、ワタシも502部隊の面白い話とか聞きたかったけど、用事があるんじゃナー!」
言葉とは裏腹に嬉しそうなエイラは、サーニャからは見えないようにサムズアップした指をユーリの背中にグリグリと押し付ける。──よくやった!という意味だろうか。
「なら仕方ないわね。それじゃあエイラ、一緒に──」
「──あ、いたいた。イッルー、サーニャさーん!」
お出かけの確約までもう少しというところで、エイラ達を呼ぶ声が。声のする方を見ると、ニパがこちらへ向かって手を振っていた。その後ろにはラルとロスマンの姿もある。
「隊長達が2人に話があるってさ」
「はい、なんでしょうか?」
「スオムス方面の戦況を聞かせて欲しくてな。すまないが、少し時間を貰えるか?」
「あー、えーっとだなァ……何か色々タイヘン……?」
「ええ、それは分かっているつもりなのだけど……」
「──正直、あまり余裕はありません。この時期になると周辺の湖も凍りつく為、ネウロイの進行に伴う陸戦ウィッチの稼働率も損耗率も、通常より高くなっています」
航空ウィッチを主体に構成されている502部隊では中々目にする機会がないが、スオムスを始めとする各国の基地では陸戦ウィッチ達が日夜戦線を支えている。ネウロイが苦手とする水も、凍ってしまえば何ということはない。進行ルートが増える冬の季節は、毎年ネウロイからの襲撃が激化する傾向があった。
「ラドガ湖が凍結した
「その分、空に関してはハンナ大尉が中心になって何とか凌いでくれています」
ハンナ・ヘルッタ・ウィンド大尉──スオムス空軍に於いてエイラと並び立つスーパーエースだ。
「射撃のハンナ、回避のエイラ」という謳い文句の示す通り、非常に射撃の腕に秀でている。更には個人携行レベルの武装であれば小銃から対装甲ライフルまで幅広く使いこなすなど、どんな状況にも対応できる高レベルのオールラウンダーとしても名高い。
そんな彼女が前線で戦っているお陰で、サーニャとエイラもこの基地へ赴くことができたのだという。
「やっぱ
「え?アー…っとォ──」
「リトヴャク中尉、立ち話もなんだ。続きは隊長室で」
「分かりました」
あれよあれよと話が進み、ラル達と一緒に隊長室へ向かってしまうサーニャ。一緒に出かける予定だったエイラには
「街にはエイラだけで行ってきていいから、私のことは気にせず楽しんできて」
そう言い残し、サーニャは行ってしまった。
「いや、1人じゃ意味ないじゃんかヨ……」
「そんなに街に行きたかったの?──じゃあ、私が付き合うよ!1人で町に行くのが寂しいだなんて、イッルはいつまで経っても子供だなぁ」
「や、そういうことじゃなくてダナ……」
「──で、イッル!ハッセは何だって!?」
当初の目的だったサーニャと2人きりでの外出が叶わなくなったことで、残されたエイラは先程よりも深く肩を落とす。その日は1日、事情を知るユーリと事情を知らないニパで気落ちしたエイラを励ます事となった。
翌日──気を取り直してサーニャを街に誘おうと意気込んでいたエイラだったが……
「サーニャー!逃げろーッ!危ない奴がいるゾーーーッ!」
現在彼女は、鬼気迫る表情でサーニャの部屋へ走っていた。その後ろには──
「ハーッハッハッハ!アブナイ恋こそ燃えるものだよ!待っててね、サーニャちゃ~~~ん!」
心底楽しそうにエイラと並走するクルピンスキー。その手には、真っ赤な薔薇の花束が携えられていた。言葉から分かる通り、彼女の目的はサーニャをデートに誘うこと。奇しくもエイラと同じ目的だったが為に、2人はいち早くサーニャの元へ向かおうと走っているのだ。
「させるカァ~~ッ!」
負けじと速度を上げるエイラは、通り過ぎた曲がり角の先に助っ人の姿を垣間見る。
「おいユーリ!ちょっと手伝ってくれ──!」
「……今のは、エイラさん……?」
何の説明もなくあっという間に遠のいていくエイラの声。彼女と一緒にクルピンスキーの後ろ姿も見えることから、大方の状況は察したが、一先ずちゃんと事情を聞くべくユーリは2人の後を追った。
一方、一足先にサーニャの元へ到着したエイラ達はというと──
「「サーニャ(ちゃん)!」」
我先にと押し開けたドアの向こうでは、どうやら寝起きらしいサーニャが下着姿で立っていた。日頃は起きてから暫くの間欠伸をする事の多かったサーニャだが、この状況を受けて流石にバッチリと目が覚めたようで……
「……エイラ」
「チ、チガウンダサーニャ!ワタシはただ、
微かだが、しかし明確な怒気を孕んだサーニャに、大慌てで釈明するエイラ。そんな彼女を他所に、クルピンスキーは悠然と前へ進み出た。
「これはこれは──正にオラーシャの新雪の如き、穢れない、美しい──」
サーニャは先程とは一転して戸惑いの表情を浮かべる。クルピンスキーの行動は言葉だけならば紳士のそれだが、その視線はあられもなく晒されたサーニャの肢体をバッチリと目に焼き付けているせいで台無しである。
当然、エイラがそれを看過するはずもなく──
「サーニャヲソンナメデミンナーーー!」
「ちょ、独り占めはずるいじゃないかぁー!」
エイラが彼女の両目を覆い隠す。身長で勝るクルピンスキーは立ち上がって目隠しを外そうとするが、エイラも負けじとクルピンスキーにしがみつくことで視界を封じ続ける。
そこへ………
「──エイラさん?大体の予想は付きますが、一体僕に何を手伝えと?」
「ウワバカ!今入って来んナ──!」
「あのですね。アレコレ言う前にまずは説明を………ッ」
エイラの制止も空しく、何も知らないユーリは開けっ放しになっていたドアの中を覗き込む。
まず、エイラとクルピンスキーが取っ組み合う光景が目に入った。ここまではユーリの想定内で、驚く事は無い。だがしかし──その向こうで佇むサーニャがあられもない姿だという事までは、流石に予想していなかった。
「ユ、ユーラ──」
「──何も!ギリギリ、手前のお2人に隠れて何も見ていませんから!──というか、エイラさんもクルピンスキーさんも何してるんですか本当に!?全く……!」
ようやく状況を把握したユーリは慌てて廊下へと引っ込む。
「ユーリ!とにかくコイツどうにかするの手伝え!──ただし、ゼッッッタイに目ェ開けんなヨ!?」
「無茶言わないでくださいよ……!」
「フフフ…いくらユーリ君といえど、僕の燃えるハートは止められないよ──ッ!」
ここまで来ても退く様子のないクルピンスキーに、ユーリはどうしたものかと思案する。
目を瞑ったまま、という問題はこの際置いておくにしても、エイラがクルピンスキーにしがみついている以上、強制連行の難易度は上がる。抵抗する人間をあまり無理な方法で引っ張り出してよろけでもすれば、クルピンスキー共々エイラまで転倒、大なり小なり怪我をする危険性がある。
かと言って、クルピンスキーが説得でサーニャを見逃してくれるとも思えない。実力行使しか手段がないのもまた事実だ。ユーリが男でなければ、シンプルにエイラと2人でクルピンスキーを抑えることもできただろうが……無いものねだりも甚だしい。
「何か方法は……」
考え込むユーリの元へ、足音が近づいてくる──
「ユーリさん、こんな所で何を……?」
その声を聞いて、全ての問題が一気に解決した。
「いいところに……!僕の代わりに、クルピンスキーさんを止めてください!」
事情を話す暇も惜しく、ユーリはその人物の背中を押し、部屋の中を見せる。幸い、その人物はすぐさま大まかな事情を理解してくれたようだ。
「クルピンスキー中尉、何しているんですか!?」
突如飛んできた
「そ、その声は……サーシャちゃん……!」
このピンチに偶然通りかかった救世主サーシャは、厳しい目でクルピンスキーを睨む。
「ウ、ウィッチ同士、親交を温めようとしただけです!大尉殿」
間違ってはいないが正解でもないクルピンスキーの釈明に嘆息したサーシャは、ベッドの上に畳まれていたブラウスをサーニャに羽織らせる。
「ありがとうございます。ポクルイーシキン大尉」
「サーシャで構いませんよ。愛称が似ていて呼びづらくなければですが……」
「いえ……じゃあ、私のこともサーニャって呼んでください」
「ありがとう。──なんだか、サーニャさんとは他人の気がしませんね」
「……私達、似てますか?」
「もしそうであれば、光栄です」
オラーシャ出身のウィッチ同士で友好を深める2人。騒ぎの中心にいたはずのエイラとクルピンスキーは、いつの間にか蚊帳の外になっていた。
「ああ、それと──ユーティライネン少尉を少しお借りしてもいいですか?」
「えっ、ワタシ?」
「ええ、どうぞ」
「即答!?」
当初はデートに誘う予定だったサーニャ本人に快諾されてしまっては、エイラとしても突っぱねることはできない。何をすればいいのかと聞いたところ……
「いい機会ですので、少尉の飛行技術を教授していただこうかと──恥ずかしながら、502には問題児が多くて……」
「まぁ、教えるのはいいケド……」
「ありがとうございます!では、早速行きましょう──!」
エイラの手を引いて部屋を出ていくサーシャ。クルピンスキーは勝ち誇ったような笑みでそれを見送ろうとしたが、
「貴女だって他人事ではないでしょう。行きますよ、ブレイクウィッチーズ!」
「えぇっ!?ちょ、そんなぁ~~~!」
クルピンスキーの襟首もしっかり掴んだサーシャによって、事の発端であった2人はブリーフィングルームへ強制連行。エイラの想定とは大きく違うものの、取り敢えずクルピンスキーの毒牙からサーニャを守るという最重要目的は果たされた。
エイラを見送ったサーニャは、手早く服を着て身なりを整えるとドアの外へ呼びかける。
「……ユーラ、いる?」
「………はい」
気まずそうな返事と共に、ユーリは覗かせた手を小さく振る。
「あの……本当に申し訳ありませんでした」
「事故だもの、ユーラは悪くないわ。──でも、その…あまり思い出さないでね?恥ずかしい、から……」
「……可及的速やかに忘れるよう努めます」
この話はこれで終わり。ということで、ユーリは教鞭をとっているエイラの様子を見にブリーフィングルームへと向かった。
「皆さん、大丈夫だろうか……」
講義の邪魔にならないよう静かに扉を開けると……
「だ~か~ら~!こう、ビュン!と飛んでスルッ!と躱してシュパッ!と捲れば、ネウロイの攻撃なんか当たんないって!──なんで分かんないかナァ……?」
「擬音ばっかじゃねぇか!分かんねぇよ!」
直枝の抗議に、他の皆も同意を示す。
そもそもエイラの回避技能は彼女の固有魔法である〔未来予知〕に依るところが大きい。敵の攻撃や動きを予見し、それに合わせて回避行動を取ることで、エイラはこれまで被弾数ゼロという世界で彼女だけの偉業を保持し続けている。
とはいえ、分かっていても回避が困難な状況というのは往々にしてあるものだ。どのような攻撃であっても見事に躱してみせるエイラの身のこなしは、間違いなく彼女が実戦で培ってきた後天的な技術であり、そのノウハウを周囲に共有できれば大きな戦力アップに繋がること間違いなしなのだが……今しがたの説明を聞けば分かる通り、肝心のエイラ本人はバリバリの感覚派。理論派のロスマンとは真逆の、誰かに物事を教えるのに向かないタイプであった。
「あ、ユーリさん……少尉の説明を我々でも分かるように翻訳できませんか……?」
「それが、僕にもさっぱりで……一番付き合いが長いであろうニパさんが分からないなら、恐らくサーニャさんでも分からないのではないでしょうか」
もしかしたらサーニャならばエイラの言っている事を理解できる可能性もあるが、それを他者にも分かるよう言語化できるかは本人のみぞ知る。といったところだ。
サーシャに加え、生徒としてここに集められたユニット破損常習犯達がロスマンの凄さとありがたみを身に染みて感じていたところ、後学の為にと同席していたひかりが口を開く。
「え~っと、つまり──どーん!と行って、グイッとやって、バーン!──としちゃえばいいんですか……?」
「おお、分かってんじゃン!ソレだよソレ!オマエ見所あるなァ!」
「ありがとうございます!」
驚くべきことに、唯一ひかりだけがエイラの説明を理解できたらしい。──もっとも、その理解の仕方までもが一緒だったわけだが。これではひかりに翻訳を頼むのも無理だろう。何より、ひかりがエイラの言うことを正しく理解できているのかさえ傍目には判断できないのだ。
「うんうん……なるほど!」
「ク、クルピンスキーさんも分かったんですか……!?なら説明を──!」
「うん!──教鞭を執るエイラ君も可愛いなぁ!メガネとか掛けてみたらより教師っぽくていいかも!」
「……ダメ、みたいですね」
「ああもう、この人は……!」
思っていたのとチガウ──後の世で"コレジャナイ感"と呼ばれる感情を抱いたサーシャは、力なく机に崩れ落ちるのだった。
更に翌日──首尾よくサーニャを部屋から連れ出したエイラは、周辺を警戒しながら出口へと進んでいた。持ち前の未来予知を駆使してラルやクルピンスキーといったサーニャを狙う者達を躱し、今度こそサーニャとの外出を実現させようと奮闘する。
「エイラ、そんなに街に行きたかったの?一昨日は結局行かなかったみたいだけど……」
「あ、あの時はその…急に気が変わったんダ。今日こそは2人で街へ行くゾ!」
「う、うん……」
サーニャの的確な問いに、一瞬エイラの気が動転する。すぐに持ち直したものの、その一瞬が命取りとなった──
「うわっ!?──っと、悪イ」
「いえ、こちらこそ──」
曲がり角で誰かとぶつかったエイラは反射的に謝罪の言葉を口にするが、そのすぐ後にしまった、と身構える。基地の出口まであと少しの所で鉢合わせたのは、502部隊の良心、下原定子だった。
(コイツなら大丈夫そうダナ──)
「2人でお出かけですか?」
「──ああ、ちょっとナ!」
「そうですか。行ってらっしゃい!」
「オウ!アリガトナー。……よし、もうすぐだぞサーニャァッ──!?」
出口は目と鼻の先。ようやく叶うサーニャとのデートに思わず歩みを速めたエイラだったが、突然何かに後ろ手を引かれる。何事かと後ろを振り向いた先では──
「あぁ~!幸せ~~ッ!」
「え、えっと……」
──感激の声と共にサーニャを抱きしめる下原の姿があった。
「アァーーッ!?!?サーニャニナニシテンダヨオマエーーーッ!?」
「ああもう、サーニャさん可愛いです小さいです私もう我慢できません!ごめんなさい、実は最初見た時からずっとこうしたかったんですぅ~~!」
「コラーーッ!サーニャから離レロ~~ッ!」
「ああん後生です!もう少し、もう少しだけこの小さ可愛さを堪能させてくださ~~い!」
「ハ~ナ~セ~~ッ!!」
サーニャを抱きすくめる下原をどうにか引き剥がそうとするエイラだが、下原も素直に従う様子はない。それどころかサーニャに対し頬ずりまで始める始末。
502部隊の中では有名な話なのだが、実は下原は"小さくて可愛いもの"に目が無く、また抱きつき魔でもある。普段の清楚な立ち振る舞いを見ていれば分かる通り、平常時は完璧に欲望を抑えているのだが、時折発作的に欲望の発露が起こる。どうしようもない時は一緒にいることの多いジョゼの協力で発散していたところが、今回は運悪く近くにいた+初対面からくる新鮮味という2つの要素を兼ね備えたサーニャに矛先が向いてしまったということだ。
因みに、502きっての低身長である直枝とロスマンも過去しっかり被害に遭っている。
「お願いです!あと5秒…10秒だけもいいので~!」
「増えてんじゃねーカ!ハ~ナ~レ~ロ~ヨ~!」
「あゥ……」
未だに下原の腕の中にいるサーニャは、気疲れしたような息を漏らすことしかできなかった。