501のウィザード   作:青雷

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いつかやろうと思っていました。ええ

…もしかしたら、若干キャラ崩壊入ってしまっているかもしれません。ごめんなさい



ペテルブルグ大戦略:Ⅱ

 ──結局、あれから色々と策を弄したものの、エイラはサーニャと市街を巡ることができないまま年越しを目前に控えてしまった。今日1日、502基地は年越しパーティーの準備で賑わっていた中、エイラだけはどこか不機嫌さを滲ませていた。

 

「ハァ……まぁ、今年最後の夕飯がサーニャの手料理ってだけでもラッキーダナ……」

 

 隊長であるラルの挨拶もそこそこに幕を開けた年越しパーティー。テーブルに並んだサーニャと下原の合作であるオラーシャ料理の数々に舌鼓を打ちつつ談笑していく。

 

「エイラさん、元気出してください。折角のパーティーなんですし、楽しんだ方が良いのでは?」

 

「分かってるけどサァ……こうも上手くいかないと、流石になァ……」

 

 エイラにしては珍しく本気の落ち込みようだ。実力不足を悟ったユーリが、この際サーニャ本人に元気づけてもらおうかと考えていたところ──

 

 

「──さぁて!パーティーも盛り上がってきた所で、ここはひとつゲームでも如何かな?」

 

 

 ワイングラス片手にそう声をあげたクルピンスキーに注目が集まる。

 

「ゲームって、何の?カードとか?」

 

「確かにトランプならありますけど、この人数じゃ流石に……」

 

 

「チッチッチ……ニパ君もサーシャちゃんもハズレだよ。大人数のパーティーでやるゲームといったら──ズバリ!王様ゲームさ!」

 

 

 王様ゲーム──プレイヤーの中からくじ引き形式でランダムに選出された者を"王様"として、王様は臣下である他のプレイヤー達に様々な要求を1つ命令できる。「王様の命令は絶対」というルールの下、命令を受けた臣下はその要求を遂行しなければならない──という、中々に変わったゲームだ。

 

「なんでも命令だぁ……?嫌な予感しかしねぇぞ」

 

「あれれー?もしかしてナオちゃんてば、クジ運に自信ないのかい?ボクとしては残念だけど、そこまで言うんならいいよ?仕方ないもんねぇ、もし負けたらって思うと、怖いんもんねぇ」

 

「あ゛ぁん……!?──誰が怖がってるっつったよ!?いいぜやってやらぁ!オレが王様になったら真っ先に吠え面かかせてやっからな!!」

 

 クルピンスキーの煽りにまんまと乗せられてしまった直枝が参加を表明したのを皮切りに、監視役として手を挙げたロスマンとサーシャを始め、他のメンバーも次々と参加を決める。

 

「さて、ユーリ君で最後だね。どうする?参加するかい」

 

「ゲームの内容的に僕はいない方が安心でしょうし。遠慮しておきます」

 

「でも、それじゃユーリさんだけ仲間外れみたいになっちゃうし……」

 

「別にいいじゃねぇか、参加しろよ。どーせお前のことだ、大したこと命令しねぇだろ」

 

「はい。ユーラなら大丈夫だと思います」

 

「まぁ、確かにナ」

 

 サーニャとエイラの脳裏では、501にいた頃、夜間哨戒前にサーニャの部屋で集まった時のことが思い起こされていた。あの時、ユーリは独りだけ部屋の隅でブランケットを被って女性陣へ配慮していたのをよく覚えている。

 

「そうね。ユーリさんならそこの偽伯爵の何十倍も信用できるし、折角のパーティーだもの。こういう時くらいは楽しんでいいと思うわ」

 

「……そこまで仰るのであれば、お言葉に甘えて」

 

 斯くして、502部隊の全員にエイラとサーニャを加えた12人による王様ゲームが幕を開けた。

 空き缶に入った12本の木の棒を各自1本ずつ手に取り、緊張の瞬間が訪れる。

 

「それじゃあ行くよ?──王様だーれだっ!」

 

 クルピンスキーの掛け声で、一斉に棒の先端が開示される。王様の棒は1本だけ、先端に王冠のマークが描いてあるのが目印だ。当たりを最初に引き当てたのは──

 

「あっ、私だ!私が王様ですっ!」

 

「おめでとうひかりちゃん!さぁ、我ら臣下に何なりとご命令をどうぞ」

 

「あはは……でも、改めて王様になると何を命令するか迷っちゃいますね」

 

 記念すべき最初の王様の座を引き当てたひかりは、少し考えた後に命令を下す。

 

「じゃあ……菅野さん!」

 

「オレかよ……何だ?馬鹿な命令したら分かってんだろうな」

 

「しませんよ……えと、前にサトゥルヌス祭でもらったプレゼントありましたよね?ほら、あのブタの人形!」

 

「だから犬だっつってんだろ!──ったく。んで?人形がなんだってんだ?」

 

「ああいうの、もう1個作って欲しいなって。ほら、2つ並んだら狛犬っぽくなりませんか?」

 

「あー……まぁそんくらいなら今度作ってやるよ。けど、出来にはあんま期待すんなよな」

 

「やった!約束ですからね!」

 

 1周目が終了し、王様権限がリセット。再度抽選に移行する。

 

「皆、今ので王様ゲームの感覚は掴めたかな?あんな感じで、誰かを直接指名してもいいし、棒に書いてある番号でテキトーに指名するのもアリだからね。──それじゃ2回目。王様だーれだっ!」

 

 引き続き、クルピンスキー主導でゲームは進められていく。次に王様の権利を手にしたのは──

 

「あ、私ですね」

 

 2代目の王様となったサーシャは予め命令を考えていたらしく、考える時間は必要なかった。

 

「では、王様として命令します。──菅野さん」

 

「またオレかよっ!?」

 

「それからニパさんと、クルピンスキー中尉も。──ブレイクウィッチーズの3人は、もう二度とユニットを壊さないように。修理する私の身にもなってください」

 

「う……ごめんなさい」

 

「悪りィとは思ってるよ……けどよぉ──」

 

「けど……何です?王である私に口答えする気ですか?」

 

「ぐっ……ナンデモナイデス」

 

「まぁまぁサーシャちゃん。楽しいゲームの最中なんだから、そういう硬いことは言いっこ無しだよ」

 

「これは切実な問題です!いいですか。そもそも王というのは国を運営する役目を担っているんですから、502部隊という国の財政が脅かされている現状に対処するのは当然でしょう!」

 

「サーシャさん、これゲーム!ゲームだから…!」

 

 ニパによって何とか平静を取り戻したサーシャ。彼女が落ち着いたところで、3周目──

 

 

『──王様だーれだ!』

 

 

「……次は誰だよ?」

 

「えっと……私じゃないです」

 

「私でもないよ?」

 

 ひかりでもなければニパでもない。まだ王様を引き当てていないロスマンや下原、ジョゼも違うようだ。

 

「サーニャはどうダ?」

 

「ううん、違うわ。ユーラは?」

 

「僕も違いますね。後残っているのは──」

 

 

「フッフッフ……ハーッハッハッハ!ついにボクの時代が来たということさ!」

 

 

 高らかに笑うクルピンスキーの手には、王冠の描かれた棒が。3周目の王様の座は、この場の全員が危惧していたクルピンスキーの手に渡ってしまった。

 

「さぁて……どの娘に何をしてもらっちゃおうかなぁ~?」

 

 酔いが回っているらしいクルピンスキーは舐めるように皆を見回す。

 

「まぁ1回目だしね。ここは名指しではなく、番号で行かせてもらおう。──3番の娘に、料理を食べさせてもらっちゃおうかな!勿論、可愛い笑顔と"アーン♥"の言葉も付けてね!」

 

「マジか……!」

 

「で、でも、思ったより酷くなくてちょっと安心だったなぁ……」

 

「わかってないなぁニパ君。こういうのは段階を踏んでいくのが醍醐味なのさ。──さぁおいで!ボクの可愛い子猫ちゃん!」

 

 クルピンスキーの呼びかけに応じ前に進み出た3番の臣下は、スプーンで料理を掬い、クルピンスキーの命令を実行する──

 

「──あーん」

 

「………」

 

「……どうしたクルピンスキー。食わんのか?」

 

「い、いえその……ちょっと思ってたのと違うかなぁ……って」

 

「む……あぁ、そういえば笑顔もご所望だったな──」

 

 3番の臣下──502部隊隊長であるラルは、普段のクールな表情からは想像できないにこやかな笑顔を浮かべ、再度スプーンをクルピンスキーに差し向ける。

 

「──あーん」

 

「たっ、隊長……?なんだか笑顔が怖いよ……?」

 

「ちっ……我儘な王様だ──」

 

 小さく舌打ちしたラルはクルピンスキーを椅子に座らせると、彼女の膝の上に自身も腰を下ろす。そして密着状態とも言える超至近距離から、こう囁いた──

 

 

「──私にここまでさせたのはお前が初めてだ、クルピンスキー。さっさと口を開けろ。これ以上私の手を煩わせればどうなるか……分かっているな?そら、あーん、だ」

 

 

「うぅ……あムッ──」

 

「どうだ、美味いか?」

 

「ごくんっ……料理に込められたサーニャちゃんの愛情が身に染みるよ……」

 

「もう一口食わせてやろうか……」

 

「だっ、大丈夫大丈夫!さっ、次行こう次──!」

 

 最早どっちが王様か分からなくなった所で4周目に突入。各自引いた棒を開示すると……

 

 

「~~~ィヤッタァー!ありがとうボクの愛の女神様ァ~!」

 

 

「おい2連続なんてアリかよ!──何か細工でもしたんじゃねーだろうな!?」

 

「してないしてない!今さっき棒を回収したのは先生だよ?」

 

 豪運を発揮し、またも王様となったクルピンスキーの言う通り、抽選用の棒が入っていた缶は今もロスマンの手にある。これではクルピンスキー本人が何かしら細工をすることは当然不可能だし、ロスマンがわざわざクルピンスキーの手に王様の棒を渡すとも思えない。

 

「このチャンスはしっかりモノにしなきゃね。──次はキミだよ、ユーリ君!」

 

「……まさかの僕ですか。何をすれば?」

 

「フッフッフ……コレさ──ッ!」

 

 

 

 ~数分後~

 

 

 

「……あの……」

 

「どーしたユーリ?早く入ってこいよ」

 

 椅子にふんぞり返る直枝の視線の先では、食堂のドアから顔だけを覗かせたユーリがいた。

 

「……やっぱり止めませんか、こんな事?命令はちゃんと実行したんですし……」

 

「それはダメだよユーリくぅん!王様の命令は絶対──臣下が命令を実行したか、ちゃあんと確認しなきゃねぇ?」

 

「くっ……」

 

「オラとっとと入れってんだよ!男がいつまでもグダグダ言ってんじゃねぇぞー!」

 

 命令をしたのはあくまでクルピンスキーなのだが、その内容を知った直枝は完全に面白がって同調している。他の面々に縋るような視線を送ってみるが、誰一人としてそれに応じてくれる者はいない。ただ気の毒そうな視線が返ってくるだけだった。

 

「まぁ、ユーリ君がどうしてもって言うならボクはいいよ?ただ──皆楽しんでいるパーティーゲームでルールを拒否するような真似をしたら、すっごく空気が冷えるだろうねぇ……?」

 

 尊厳を取るか、場の空気を取るか。普通の人間なら考えるまでもなく前者を優先するところだが……困ったことに、彼はユーリ・ザハロフだ。自分よりも他者を優先しがちな人間だ。

 年越しを祝うパーティー、そこには久しぶりの再会を果たしたエイラとサーニャもいる。彼女たちがいる中で、折角の楽しいパーティーに水を差すべきではないのではないか……そんな考えが浮かんでしまった時点で、ユーリの敗北だった。

 

「ぐうぅ……っ!──分かりました……」

 

 数秒に渡る葛藤の末、ユーリは観念してドアに隠れていた首から下を露わにする──

 

「おぉ~~ッ!やっぱり似合うじゃないかユーリくん──いや、ユーリきゅん!」

 

「きゅん……!?」

 

「ちぇっ、何だよ……普通に似合ってんじゃねぇか。期待して損したぜ」

 

「偽伯爵が服を出してきた時はどうなる事かと思ったけど……男性でもユーリさん位の体型なら無理なく着れるのね」

 

 皆口々に賛辞の感想を送る中、ユーリは羞恥に顔を俯けながら直立不動で縮こまっている。そんな彼が身に纏っているのは、いつもの軍服──ではなく、カールスラントの民族衣装であるディアンドルだ。言うまでもなく、本来は女性が着る衣装である。

 

 即ち、ユーリは暴君クルピンスキーの命令によって女装をさせられているのだ。しかも予想に反し似合ってしまっている。

 基本的に男性は女性よりも肩幅が広くガッシリした印象を受けるが、ユーリは男性としては小柄且つ華奢で、線が細い。お陰で大きく露出した肩も、裾から覗くピッタリ閉じられた脚も、元々白い肌や、中性的な顔立ちと相まって十分女性として通用するレベルだった。

 クルピンスキー的に惜しむらくは、せめてもの抵抗としてユーリがスカート(ベルト)の下にいつものズボンを履いていたことだろうか。

 

「とても似合ってるわ。ユーラ」

 

「まぁ悪くないんじゃないカ」

 

「そう言って頂けるのは恐縮ですが……あまり見ないでください……」

 

 サーニャ達からの褒め言葉を複雑な気持ちで受け取ったユーリ。そんな中、不意に"パシャッ"というシャッター音が耳に入った。息を飲んだユーリがすぐさま音のした方を確認すると、そこには──

 

「フフ~ン。こいうのは記念に撮っとかないとね!」

 

 満足気な表情でカメラを構えるクルピンスキーの姿が。そのレンズは真っ直ぐユーリに向けられている。

 

「ちょ、撮らないでくださいクルピンスキーさん──!」

 

「大丈夫だって!可愛く撮ってあげるからさ!」

 

「そういう問題ではなく──!」

 

 クルピンスキーはどうにかしてカメラを奪おうとするユーリを難なく躱していく。見かねたロスマンが背後からカメラを奪い取ったことで、これ以上写真が量産されることはなかった。

 

「調子に乗り過ぎよ、偽伯爵。あなたの命令は"ユーリさんに女装をさせる"だったんだから、皆の前に出てきた時点で命令は達成されているはず──よって、命令に無いこのフィルムは没収します」

 

「あぁ~っ!そんなぁ~!」

 

「度が過ぎた暴君は、最も近しい臣下によって討ち果たされる……よく覚えておきなさい」

 

 フィルムを抜き取られたカメラを前に悔し泣きするクルピンスキー。酒の影響か、泣き方が大袈裟に感じるが、無情にもクルピンスキーに同情する者はいなかった。

 

「……ありがとうございます。ロスマン先生」

 

「同僚が迷惑をかけたわね。早く着替えてらっしゃい」

 

 ユーリが別室へ向かおうとした瞬間──基地内にネウロイ出現の警報が鳴り響いた。

 

「こんな時にネウロイ……!?」

 

「パーティは一時中断だ。出撃準備をしろ!」

 

「誰を出しますか?燃料の節約で、あまり大人数での出撃は出来ませんが……」

 

「今回は夜間戦闘だ。となると──」

 

「ボクがでるよ!このくやしさ、ネウロイに八つ当たりでもしなきゃ晴らせないね!」

 

「そんな明らかに酔ってる状態で出撃させられるわけないでしょう」

 

 ロスマンの言う通り、今のクルピンスキーは些か情緒不安定だ。視界が不明瞭な分、連携が重視される夜間戦闘には不向きだろう。

 

「ふむ……では、出撃メンバーを伝える──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ま、こうなるよナー」

 

「502部隊にはナイトウィッチがいないから、今は私達がちゃんとしないと」

 

「ダナ。──ユーリ。久しぶりの夜の空だからって、ワタシ達は助けてやれないかんナー?」

 

「ご心配なく──またお2人と一緒に飛べて嬉しいです」

 

 ラルが選出した出撃メンバーは全部で6人。

 夜間戦闘の経験が豊富なサーニャとエイラの2人を筆頭に、502からは夜間視を行える下原。同じく夜間戦闘の経験があり、更にエイラとサーニャとの連携面も考慮してユーリ。そして貴重な夜間戦闘の経験を積ませるという目的でひかりと、現場指揮としてロスマンが同行している。

 

「わぁ……っすごい星!こんなの初めて見──ウワァ──ッ!?」

 

 初めて飛ぶ夜の空に興奮を禁じえないひかりは、慣れない環境で平衡感覚を失いユニットの制御を失ってしまう。姿勢を制御できずグルグルと回転するひかりに、見かねたロスマンが助け船を出した。

 

「一度目を閉じて深呼吸!体の力を抜いたら、後はユニットに聞きなさい!」

 

「はっ、はい!──すぅ──はぁ──……っと、戻った……!ありがとう、チドリ!」

 

「夜の空は位置を見失い易いわ。常に自分や仲間の位置を把握すること。──夜間戦闘の経験を積む為に来たのだから、しっかり身体に叩き込みなさい。いいわね?」

 

「はいっ!」

 

 そんなひかりを見て、サーニャは小さく笑みを零した。

 

「どうした、サーニャ?」

 

「芳佳ちゃんと、初めて夜空を飛んだ時の事を思い出したの」

 

「あぁ──そういや宮藤の奴も、最初はバタバタしてたっけなァ。ユーリも感動して、泣きながら"ありがとう"って言ってたナ」

 

「泣いてませんよ──でも、ほんの数ヶ月前の事のはずなのに、なんだか随分昔のように感じますね」

 

「えぇ。……覚えてる、エイラ?あの時、一緒に手を繋いだね」

 

 当時を思い出すかのように、サーニャがエイラに向かって手を伸ばす。驚きながらも顔を輝かせたエイラは、その手を握ろうとするが──

 

「──見えました!前方3000、ネウロイです!」

 

 下原が敵影を発見し、サーニャの意識が戦闘状態へシフトしたことで、エイラの手は虚しく空を切ってしまった。

 

「私とユーラで援護するわ!エイラ、お願い──!」

 

「ああクソッ、空気読めヨ!コンニャロ──ッ!」

 

 沸々と滾る怒りを胸に、エイラが先行してネウロイに突撃する──!

 ネウロイ側も攻撃を開始し、幾筋もの真紅の閃光がエイラに向けて放たれる。並のウィッチならば堪らずシールドで防御するところだが、相手はあの無傷のエースたるエイラだ。光線は難なく躱され、その進行を止めることはできない。

 

「くらえ──ッ!」

 

 至近距離でエイラのMG42が火を噴くが、吐き出された弾丸は全てネウロイの装甲に弾かれてしまう。

 

「この距離で効いてない……嘘ダロ!?──うぉっと!」

 

 お返しとばかりに繰り出された光線もエイラは見事な身のこなしで躱してみせる。

 

「私がいきます──!」

 

 エイラに続き、下原もネウロイへ突撃──より近距離からの銃撃を浴びせるが、ネウロイの装甲には傷一つ付いていない。

 

「装甲が硬い……!」

 

「下原さん下がって!──サーニャさん!」

 

「えぇ──!」

 

 ユーリとサーニャが息の合ったタイミングで攻撃を繰り出す。ユーリの徹甲弾が作った亀裂がロケット弾の爆発によって広がり、ようやく目に見えてダメージが入った。

 

「敵は防御特化型──全く攻撃が効かないわけじゃないわ!」

 

「そうと分かれば──!」

 

「えぇ!装甲が割れるまで攻撃を続けて、コアを探し出すだけのこと!」

 

「行くわよ──!」

 

 ロスマンの指示の下、6人は攻勢に出る──!

 急速旋回してこちらへと向かってくるネウロイの攻撃をロスマン達がシールドで防ぐ中、ひかりは光線の威力を殺しきれず弾かれてしまう。

 そこを的確に狙ってきたネウロイの攻撃をひかりは懸命に避ける続けるが、激しさを増した攻撃のせいで近づくに近づけない。

 

「おいオマエ!」

 

「エイラさん!」

 

「いいか、攻撃ってのはこうやって躱すんだ。よく見てロ──!」

 

 そう言って急上昇したエイラは、ネウロイの直上から攻撃を仕掛ける──!

 エイラの接近に気づいたネウロイも、光線を上向けて迎撃しようとするが……

 

「当てられるモンなら当ててみナ──ッ!」

 

 どれだけ光線を集中させようと、回避の達人であるエイラにはかすり傷一つ負わせることができない。気づけば、ネウロイの攻撃の矛先は銃弾と共に周囲を飛び回るエイラに引き付けられていた。

 

「ユーリ!1()0()()()()()()()()──!」

 

「ッ……──了解!」

 

 その隙を逃さず、ユーリとサーニャ、ロスマンの後方支援組が集中砲火を浴びせる。空から飛来した槍の如き徹甲弾が漆黒の装甲に突き立てられ、それを目印に一斉射撃された大量のロケット弾が着弾。ダメ押しの〔炸裂〕による爆発で、全く銃弾を通さなかった磐石の装甲が崩壊。遂に弱点であるコアが姿を現した。

 

「今よ──!」

 

「いえ、あれは……!」

 

 一気に畳み掛けようとしたロスマン達の視線の先で、破壊された装甲がどんどん修復されていく。装甲が硬いだけでなく、再生速度もこれまでの個体より速いようだ。

 

「だったら──!」

 

 もう一度、同じように攻撃して装甲の破壊を試みるが、ネウロイは突如急加速。ロスマン達を振り切り、戦場を離脱し始める。逃げた方向を下原が遠距離視で追跡した結果、ネウロイの目的が判明した。

 

「っ……あっちには基地があります!」

 

 すぐさま後を追おうとする502の3人だが、それをサーニャが制止する。

 

「大丈夫です。だって──」

 

 サーニャは広域探知によって、ネウロイの進む先に何が待ちまえているかを知っている。彼女の表情は、勝利を確信していた。

 

 

「──悪いナ。オマエの行動、全部()()()んダ」

 

 

 基地を目指して突き進むネウロイの前には、コアのあった1点に狙いをつけたエイラが待ち構えていた。だがネウロイの装甲は再生が終わっており、エイラの銃撃が通用しないことは既にわかっている。

 だからこそ、ネウロイもエイラを無視して基地の破壊を優先しようとしたのだが……

 

「──10秒ドンピシャ。流石だな、ユーリ」

 

 エイラが呟くと同時に、上空から一筋の光がネウロイに突き刺さる──エイラから指示を受け、こちらも敵を待ち構えていたユーリの狙撃だ。しかし一撃の威力に秀でた対装甲ライフルさえも、このネウロイの装甲を貫くことはできない。これも既に実証済みだ。

 

 だが、今ネウロイの周囲には誰もいない。いるのは、前方で自らを待ち構えるエイラのみ。

 であれば、あらゆる攻撃をシャットアウトするこのネウロイの絶対的な防御もその限りではないのだ。

 

 漆黒の装甲に突き立てられたユーリの牙が、内包した魔法力を一気に〔炸裂〕させる──!

 

 刹那、徹甲弾を起点に巻き起こった爆発でネウロイの装甲は機体前部諸共崩壊。そのままの速度で向かって来るネウロイへ、エイラはすれ違いざまに剥き出しのコア目掛けて短く引き金を絞った。

 

 凄まじい風圧でエイラの銀色の髪を靡かせ遥か後方へと飛んでいくネウロイ。その機体が、無数の金属片となって弾けた。

 

 舞い散るネウロイの残骸を、エイラはしてやったりな表情で見据える。そこへユーリを始め、仲間達が合流してきた。

 

「ハハ……結局、1人で年越しかァ……」

 

「1人ではないでしょう」

 

「んぇ……?」

 

 ユーリの声を聞いて、伏せていた瞳を開けたエイラ。すると、不意に左手が柔らかな感触に包まれた。

 

「へっ?あっ……サ、サーニャ!」

 

「お疲れ様、エイラ。──まるで本物の花火みたいね」

 

 ネウロイの金属片が光の粒子となって舞い散っていく様は、確かに花火を彷彿とさせる。

 この年越しで何とかサーニャへアプローチを掛けたかったエイラは、パーティーで花火を打ち上げられないだろうかとこっそりラルに相談していたのだが、物資が厳しいこの状況でそんな余裕は無い。と一刀両断されてしまい、すっかり諦めていた。

 

「フフッ……今年もよろしくね。エイラ」

 

「サーニャ……エヘヘ──うんっ」

 

 笑顔で手を繋ぐ2人を見て、こちらも満足げに笑みを零すユーリ。

 結果的に、ここ数日連敗だったエイラの望みが最後の最後で叶って良かったと、そう思っていると……

 

「──おいユーリ、いつまでそんなとこに居んダヨ?」

 

「えっ……?」

 

「ほら、ユーラも──」

 

 ユーリに向かって、繋がれた2人の手が小さく掲げられる。彼女達の言わんとしている事を理解したユーリは、おずおずと自分の手をそこに重ねた。

 

「これで、あの時と同じね」

 

「流石に宮藤はいないけどナ」

 

「それは仕方ありませんよ」

 

 エイラ達から、芳佳はあのあと軍を離れたと聞いている。きっと彼女も、扶桑で家族と共に年越しを過ごしているはずだ。

 

「………あのね、ユーラ。もし、ユーラさえ良ければ、なんだけど……」

 

「はい……?」

 

 少し逡巡した末にサーニャの口から出てきた言葉は、少々以外なものだった。

 

「もし良かったら、私達と一緒に来ない?」

 

「僕が、スオムス空軍に……という事ですか?」

 

「ワタシ達501がガリアを開放したお陰…ってのも変だけど、ちょっとだけ上に口利き出来るようになったからナ。オマエ1人くらいなら、今からでもウチの所属にできると思う。少なくとも拒否されるってことは無いダロ」

 

「……お気持ちは嬉しいですが、すみません。僕は一緒には行けません。──僕にはまだ、ここでやらなきゃいけない事が残ってますから」

 

 ……正直、魅力的な提案ではある。だがユーリは、瀕死の自分を救ってくれた502部隊への恩返しとして、最低でも"グリゴーリ"の破壊までは彼女達と共に戦おうと決めていた。

 

「そう……それじゃあ、また暫くの間、お別れね」

 

「オマエ、ちゃんと約束覚えてるだろうナ……?」

 

「勿論ですよ。──大丈夫、僕は死にません。またこうしてお2人と会えるまで、絶対に死にませんから。502部隊の皆さんも一緒ですしね」

 

 そう言って、再会を誓ったユーリは重ねた手にそっと力を込めるのだった。

 




いつかやろうと思っていました。ええ(2回目
衣装に関してはメイド服という案もあったんですが、こっちの方がクルピンスキーさん用意しやすいかなと思い、ディアンドルに落ち着いた次第です。

それはさておき、予想以上に長くなったブレイブウィッチーズ特別編のお話でした。
時系列的にはこの後、ユーリ君の手紙が全国の元501メンバー達へ送られます。

正直「2」以降の話は書こうかどうか迷っている部分もあったんですが、サトゥルヌス祭から一連の話を書いてたら「やっぱりちゃんと面と向かって再会させてあげた方がいいよなぁ」と思いましたので、今のところ取り敢えず「2」までは続く予定です。…予定、です!

頑張ります
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