今回はほのぼの回にしようと思ったらラブコメっぽくなりました
先日、501部隊の作戦のサポートという、ひと仕事を終えた504部隊。
未だゆっくりではあるものの、着実に機能を回復しつつある彼女達の基地は、ある1つの話題で持ちきりだった。
「──皆揃ったわね?」
談話室に揃った504の隊員達を前に、隊長であるドッリオは静かに口を開く。
「ついさっき、連絡があったわ。501部隊からね」
「501から……?また、何か大きな作戦でもやるんですか?」
成層圏にあるネウロイのコアの破壊と、それを成し得たウィッチの回収という共同作戦は、当事者たるフェル達赤ズボン隊3人の記憶に新しい。わざわざ基地に通達をしてくるということは、また同じような用向きなのだろうかという彼女達の予想は、意外な答えによって裏切られる。
「──明日、来るそうよ」
「来る……?」
「あっ、もしかして物資の大規模補給とかですか?」
そんなジェーンに、すかさずフェルが言葉を返す。
「だとしたら、どーしてその連絡が501から来るのよ?」
フェルの言う通り、504部隊に向けた大規模補給の話ならば、上層部なりロマーニャ公室からの連絡になるはずだ。501部隊からの連絡というのはおかしい。
501から504部隊へ物資を融通する連絡かとも思ったが、現状ロマーニャ防衛の最前線に立っているのは501部隊だ。優先度的にもその線は考えにくい。
真剣な顔の前で手を組むドッリオが、明日この基地を訪れるという客人の名を皆に告げると、全員が成程、と納得の表情を見せる。
「これは緊急任務よ!皆にも手伝ってもらうわ!」
大抵ドッリオの提案は突飛なもので、いつもなら戦闘隊長である醇子がそれを諌める役目を担っているのだが、珍しいことに今回は彼女も何も言わず、ドッリオの言う緊急任務に協力する姿勢を示すのだった。
翌日──
「──そろそろね。皆、準備はいい?」
「あ、あの……本当にやるんですか……?」
「当然よ。盛大に出迎えようって言ったでしょ?」
「そ、そうですけどぉ……」
「大丈夫よ。皆似合ってるから!」
ドッリオとルチアナを始め、心なしかヒソヒソとした声が飛び交う談話室。やがてそのドアが開かれた。迎えに出ていた醇子が客人を連れて戻ってきたのだ。
「皆、お待たせ──」
醇子がドアを開けた瞬間──
「おかえりなさい!」
そんなドッリオの言葉と共に、パァン!というクラッカーの音が鳴り響く。そして……
「ようこそ!──504部隊 バニー慰安会リターンズへ!」
物陰から、色とりどりのバニーガール衣装に身を包んだ504部隊の面々が姿を現した。
「快気祝いも兼ねて、今日は私達が目一杯おもてなしするから、楽しんでっt──」
──バタンッ!
ウィンクと投げキッスを送るドッリオの言葉が終わるのを待たず、勢いよくドアが閉じられる。ドアを閉じた張本人である醇子は呆れ果てたように顔を手で覆い、盛大なため息をつく。
「……ごめんなさい。来て貰ってすぐ悪いんだけど、ちょっと待っててもらえる?」
断りを入れた醇子が素早く部屋の中へ滑り込むと、ドア越しに怒号が聞こえてきた。その内容を聞くに、どうやらあのバニーガール衣装は醇子の聞いていた段取りには含まれていない、完全なドッリオの独断だったようだ。
……「またあなたは!」「前にも言いましたよね!?」という言葉が聞こえるあたり、しっかり前科もあるらしい。
やがて怒号が止み、暫しの沈黙が流れたかと思うと、ドアの内からにこやかな笑みを浮かべた醇子が顔を覗かせた。
「恥ずかしい所を見せちゃってごめんなさいね。さ、入って」
部屋の中へ通されて最初に目にしたのは、先程のバニーガール衣装ではなく、見慣れた軍服に着替えた504部隊の面々だった。部屋の端で正座をさせられているドッリオに代わり、醇子が口を開く。
「それじゃあ改めて──しばらくぶりね、ユーリさん」
「は、はい。ご無沙汰してます、竹井さん。──皆さんも」
客人──ユーリは苦笑いを浮かべながら、部隊の面々に挨拶をする。
「来てくれたのは嬉しいけど、
「はい。坂本さんが今日は1日自由行動と仰ってましたので、いい機会と思いまして」
基地で建設中だった大浴場が完成したことを受け、今日の501は実質オフとなっている。無論、緊急時には出動するが、今日は日課の早朝トレーニング以外、美緒の訓練も入っていない。
そういう事で、以前隊の皆に黙って出て行ってしまった事のお詫びと挨拶を兼ねて、ユーリは道中市街で購入した手土産片手に504部隊の基地を訪れたというわけだ。
「ま、折角来たんだから。ゆっくりしてきなさいよ」
「そうだよー!パティとアンジーだけズルいって思ってたんだから!ね、ルチアナ!?」
「ふぇっ!?あ、えと……そ、そうですね」
突然マルチナから話を振られたルチアナは、しどろもどろになりながらも抗議の声を上げる。その行き先であるパティは
「だからあれは偶然だって言ったでしょ。ネウロイが来たせいでそんなに長いこと話も出来なかったし」
「そもそも、マルヴェッツィ中尉達が市街への買い出しを面倒臭がったから、私とシェイド中尉が代わることになったんだ。文句を言われる筋合いは無い」
「うっ…痛いとこ突いてくるじゃない」
ブーブーと文句を言うマルチナ達を正論で黙らせたアンジーだが、その視線は先程からユーリの手元──手土産の紙袋に向けられていた。
「……こちら、どうぞ」
アンジーの視線に気付いてか否か、ユーリは紙袋を差し出す。その中には、504部隊人数分のプリンが入っていた。
「こ、これは……ッ!」
「あら、久しぶり!あそこのプリン美味しいのよねー!」
「はい。ルッキーニさんにおすすめされたので、これにしてみました」
いつの間にか正座を解いてプリンを手に取るドッリオ。
ユーリが買ってきたプリンは、以前アンジーがまとめ上げた美味しいお店リストに極僅差でランクインを逃した逸品だ。同じスイーツ部門としての競合相手があのケーキだった事からも、味に関して疑いようがない事は理解出来るだろう。
「あムッ──んん~!この味、懐かしいわ~!」
ドッリオが一足先にプリンを口にし、懐かしの味に感激していた所へ、一旦席を外していた天姫がお盆を持って戻って来た。
「皆さん、お茶が入りまし──きゃあっ!?」
床の微かな段差に躓き、天姫は扶桑茶の乗ったお盆諸共バランスを崩してしまう。そのまま大惨事になるかと思われたが、倒れかかっていた天姫の体は横から伸びた手に支えられ、事なきを得た。
「──っと、大丈夫ですか?」
「うぅ……ありがとうございます。ユーリさん。私ってばまたドジを……」
「いえ、お気になさらず。火傷もしてないようで、良かったです」
「はい。お陰様で」
よくドジをしてしまう天姫だが、ユーリが咄嗟にそのフォローに入れたのは、やはり502部隊での経験が大きい。
(ある意味、またニパさんに感謝だな……)
ドジを超えた数々の不運に見舞われる彼女の事を思い出すと同時に、心の中で礼を言いながら、ユーリは天姫を手伝ってお茶の入った湯呑やカップを並べていく。
「──へぇ、扶桑のお茶ってあまり飲んだ事ないんだけど、プリンにも合うのね」
「ああ。扶桑のお茶は大抵のものに合うんだ。プリンみたいな甘味は勿論、ご飯に掛けてお茶漬けにしても美味いし、中には酒をお茶で割って飲んでる人もいたなぁ」
「なる程、扶桑の茶か……中々に興味深い」
錦が披露する扶桑茶の話に熱心に耳を傾けるアンジーと、その様子を微笑ましげに眺めるパティ。
更にその隣では……
「ジェ~ン、食べさせてくれ~」
「大将ってば。子供じゃないんですから……はい、どうぞ」
「ん、じゃあ私からも食べさせてやるよ。ほら、あーん」
「えっ…!?あの、大将……そんな、皆の前で……!」
「……なら、2人になれる所に行くか?」
「だっ、だから~~~!」
なんてことを言いながらもジェーンは満更でもない様子。この2人の夫婦っぷりは相変わらず──というか、寧ろ拍車が掛かっているように思える。
「何だか悪いわね、一応お客さんなのに」
「いえ。喜んで頂けたようで何よりです──竹井さんもどうぞ」
ユーリのお言葉に甘えて、醇子もプリンを一口。丁度そのタイミングで、ルチアナはある事に気がついた。
「そういえば隊長……ユーリさんの分は?」
「袋の中にあるんじゃないの?」
「はい。私もそう思ったんですけど……」
ルチアナはプリンの入っていた紙袋の中身をフェルにも見せる。フェルもルチアナも、てっきりまだ手のついていないプリンが1つ残っていると思っていたのだが、袋はもぬけの殻となっていた。逆さにして振ってみても、何も落ちてこない。
「ま、まさか──マルチナッ!?」
「んー?どしたの隊長。ルチアナも、そんな慌てた顔して」
スプーン片手に幸せそうな表情を浮かべるマルチナだが、対照的にフェルとルチアナは何か良くない事を想像してしまったかのような慌てぶりだ。
フェルはマルチナの肩をガッシリ掴むと、
「"どしたの?"じゃないわよッ!──アンタ、そのプリン何個目ッ!?」
「えっ、何で?」
「いいからッ!正直に言いなさい!何個目ッ!?」
「い、1個目だけど……?だって、人数分しかないって……」
「本当ね!?嘘ついたら承知しないわよ!?」
「ホ、ホントだってば~!」
素早くマルチナの近くを見回してみるも、プリンの空き容器らしきものは見つからない。彼女の証言通り、勢い余ってユーリの分のプリンまで食べてしまったわけではないらしい。
では誰が?他に思い当たりそうなのは……ドッリオしかいない。日頃から何かと部隊の皆を振り回しがちな彼女だ、ユーリの分のプリンをこっそり頂いても違和感はない。
しかしドッリオに疑惑の眼差しを向けたフェルは、ここで大いに葛藤した。
憧れのドッリオの悪戯を告発するような真似をしていいものか、と。普段ならいざ知らず、ここは一応祝いの場でもある。その空気をぶち壊してしまう可能性を考えると、フェルは安易に踏み出せなかった。
しかして黙っておこうにも、ユーリが自分のプリン消失に気づくのも時間の問題だ。同時にそれまでの時間が長引けば長引く程、後に訪れる怒りも相当なものになるだろう。
「──どうかされたんですか?」
「ひっ!?──ユ、ユーリ……おど、脅かすんじゃないわよッ」
「いえ、驚かせるつもりは全く無かったんですが……えっと、すみません……?」
疑問符を浮かべながら謝罪する何も悪くないユーリを尻目に、フェルとルチアナは小声で囁く。
「ど、どうしましょう……!?」
「どうするもなにも無いわよ……!と、とにかく!まずは謝りましょ。アイツのことよ、きっと許してくれるわ」
「もし許してくれなかったらどうするんですか……?」
「その時は……私のプリンを、献上するわ」
「って、隊長もう半分以上食べちゃってるじゃないですかぁ……!」
「仕方ないでしょ美味しかったんだから!最悪、アンタの分も……!」
「うぅ……分かりました……」
作戦会議と呼ぶのも憚られる打ち合わせを終えた2人は、ユーリの方に向き直ると、フェルが前に進み出る。
「あ、あの……
「僕の……?ああ、それなら──」
──ごめんなさい!
そう言って頭を下げようとしたフェル。しかしユーリの言葉の方が先だった。
「──それならご心配なく。
「そうなの!アンタの分は買ってな──え?」
「ですから、プリンは皆さんの分だけです。元々、挨拶を済ませたら長居せずにお暇するつもりでしたから」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするフェルは、一度ガクリと顔を俯けてから……
「お──脅かすなって言ったでしょ~がァ~~~~ッ!!」
「ちょっ、フェルさ──ぼ、僕が一体、何をしたと……ッ!?」
ユーリの肩を掴み、力の限りブンブン揺さぶるフェル。一頻り怒りを吐き出し終えた所で、軽く目を回してフラつくユーリの背中をドッリオが受け止めた。
2人の会話から事態を把握しているらしいドッリオは、
「確かに。一応ユーリはお客さんなんだし、せめてプリンくらい食べてもいいわよねぇ──あ~、どこかにユーリにプリンを分けてくれる娘はいないかしら~?」
悪戯っぽく光らせた目でどこかわざとらしく口にした。
それを聞いた504部隊の面々──フェル、ドミニカ、ジェーン、パティ以下「プリン残ってる組」は、彼女の狙いを即座に理解したらしく……
「あー、私としたことがー!あまりに美味しいもんだからつい全部食べきっちゃったわー!」
「た、隊長……!?」
ここまでの僅か数秒で残っていたプリンを完食したフェルに、驚愕の視線を向けるルチアナ。更に周りでは……
「──おいジェーン。あんな事言ってるが、誰にも渡すなよ?ジェーンのプリンは私ので、私のプリンはジェーンのだからな」
「わ、分かってますよ……!」
と、リベリアンカップルは拒否の姿勢を貫き……
「ご、ごめんねユーリ!私のプリン、かき混ぜてグチャグチャにしちゃったから……アハハ」
「シェイド中尉……!?これほどの逸品にそのような惨い仕打ちを……何故だ!?」
「あ、いや違うのよアンジー!これには色々事情というか……!」
パティもパティで、代償として信頼できる仲間からの顰蹙を買いながらも、どうにか矛先を逸らした。
必然的に、残るはルチアナと、実はまだ完食していないプリンを隠し持つドッリオのみとなる。
「こうなったら仕方ないわねぇ──ルチアナ、アンタのプリン、一口分けたげなさいよ」
「えぇっ!?わ、私ですか……!?」
「アンタまだ半分近く残ってるじゃない、一口くらい減ったって問題ないでしょ」
「そ、そうですけどぉ……食べかけですよコレ!?」
「あのルチアナさん、僕のことは気にしなくて大丈夫ですから。無理はしなくても……」
「えっ、あ、いえその──別にユーリさんにプリンをあげるのが嫌ってわけじゃなくてですね……!」
突然降りかかる感情の嵐に戸惑うルチアナ。この状況を後ひと押しと見たドッリオは、とっておきの切り札を使う。
「──じゃあ私の分をあげるわ。それなら問題ないでしょ?」
「しょ、少佐ッ!?」
「ホントに気を使って頂かなくてもいいんですが……そこまで仰るなら──」
そう言ってプリンを受け取ろうとするユーリだったが、ドッリオの手にあるプリンはユーリの手を避けた。
「……隊長?」
「そんな顔しなくてもちゃんとあげるわよ──はい、あーん」
プリンの乗ったスプーンをユーリの口元に差し出す。
「少佐ァ──!?!?」
悲鳴にも似たルチアナの声が響き渡る。
「あ、あのドッリオ隊長、自分で食べられますから……」
「いーからいーから!現状もてなしらしい事も出来てないし、これくらいはさせて頂戴」
「お気持ちは非常に嬉しいんですが、他にも方法はあるのでは……?」
「細かいことはいーの!美女にプリンをあーんしてもらえる事なんてそうそう無いわよー?──それとも、私じゃ嫌?」
「……分かりました。いただきます」
数秒の葛藤の後、観念したユーリ。その間、ドッリオが心底楽しそうな顔をしていたことなど、目を伏せたままのユーリは知る由もない。
「ほら、口開けて。あーん──」
ドッリオに言われるまま、口を開けたユーリ。そこへドッリオの持つスプーンが運ばれていき──
「あムッ──」
口を閉じた瞬間、滑らかながらしっかりとした食感と濃厚な味わいが口の中に広がった。なる程、これは確かに美味しい。と感想を言おうとしたユーリが閉じていた目を開くと──
「えっ──ル、ルチアナ……さん?」
目を丸くするユーリの前には、未だプリンを乗せたままのドッリオのスプーンがあった。代わりにユーリの口にプリンを運んだのは、横から差し込まれたルチアナのスプーンだったのだ。
「あ、あの……やっぱり、部隊長に押し付けるのは部下として良くないっていうか……その、残ってる量も私の方が多いですし!だ、だから──っす、すみません──ッ!」
「あっ、ルチアナさん──!?」
恥ずかしさに耐えかねたのか、ルチアナは談話室を出て行ってしまう。それから気分を落ち着かせて皆の元へ戻って来たのは、ユーリがそろそろ基地へ帰ろうかという時だった。
「──もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「もう十分過ぎるくらいゆっくりさせて頂きましたから」
「またいつでも来なさい。次こそはユーリも一緒にバニー慰安会を──って、タケイ?ちょっと、まだ話が──!」
背後でただならぬ威圧感を発していた醇子が、ドッリオを隊長室へ連行していく。あの様子ではユーリが来た時以上にこってりと絞られるのは間違いないだろう。
「……ま、まぁ何はともあれ!楽しんでくれたなら良かったわ。
「はい。──皆さん、今日はありがとうございました!」
ドッリオの役目を引き継いだフェルと、その後ろに肩を並べる504部隊の面々に礼を言ったユーリは、基地の出口へと向かう。フェルに言われて見送りについて来てくれたのは、どこか気まずそうな顔をしたルチアナだった。
(ど、どうしよう……!?何か話した方が?でもあんな事しちゃったのにどんな顔して何を話せば~~!?)
「──ルチアナさん?」
「ひゃいっ──!?」
唐突に声をかけられ、間抜けな声を上げてしまう。その事にまた恥ずかしさを覚え、ルチアナは顔を俯けてしまった。
「わざわざお見送り、ありがとうございます。ここで大丈夫ですよ」
そう言われて、もう基地の出入り口に着いてしまったのだということを理解する。
「あ……えっと、その……!」
折角2人きりで話をするチャンスだったにも関わらず、それを棒に振ってしまったルチアナは、せめて何か言葉を交わそうと、必死に話題を探す。
そんな時だった──顔を俯けていたのが幸いしたのだろうか。ルチアナの目が、ユーリの手に留まった。
「その手袋………」
「ああ──はい。頂いてから、ありがたく使わせて貰ってます。あの時"すぐに解れるかも"と仰ってましたが、全くそんな気配はありませんし、流石ルチアナさんですね」
「なら良かったです。後になってから、ちょっと地味すぎるかな、なんて思ったんですけど……」
「そうですか?僕はそういった観点には疎いので、よく分からないんですが──例えそうだとしても、僕はこれがいいです。何より、ルチアナさんが僕の為に作ってくださったものですから」
「っ──、あっありがとう…ございます……」
どんどん体温が上がっていくのが分かる。以前501基地では気付かなかったくせに、今回はルチアナの変化に気づいたらしいユーリが、何か言いかけるが──
「──あ、あまり遅くなったら、501の皆さんも心配しますよねっ!帰り道、気をつけてください!それじゃ──ッ!」
ユーリの言葉を待たず、早口にまくし立てたルチアナは基地の中へ引っ込んでしまった。
廊下の曲がり角に身を引っ込めたルチアナは、恐る恐る自分の胸に手を当ててみる。
「私──こんな……見られちゃったかな……?」
これだけ心臓が早鐘を打っているのだ、きっと顔もすごいことになっている。そしてあの距離なら、十中八九ユーリにも見られているだろう。
せめて幾分か「見れる顔」であったことを祈るルチアナだったが、その思考とは裏腹に、とにかく笑みが止まらなかった。
──
──ルチアナさんが作ってくださったものですから。
どうしてよりによってソレなのだ。これでは──いくら「後ろ向きなルチアナ」だろうと、前向きにしか捉えられないではないか。そのせいで、今ルチアナは嬉しくて嬉しくて堪らなかった。
──本当に、彼はずるい。
──実際に私の手を取って捕まえてくれる保証なんて無いのに
──私の心だけは、しっかりと捕んで離してくれないのだから。
504部隊、隊長室──
「全く、今度許可なく
「だってタケイ、絶対許可してくれないじゃない~」
「当然です」
椅子にもたれてブーブーと文句を言うドッリオに、醇子は予てより抱いていた素朴な疑問をぶつける。
「そういえば、ユーリさんの快気祝いというのは分かりますけど、いくらなんでも急過ぎませんでしたか?こちらで準備できるようなものも無かったのに……」
「準備ならしてたじゃない、あのバニーガール──じょーだんじょーだん、そう怖い顔しないでってば──」
姿勢を直したドッリオは、胸に秘めていたある目的を語り始めた。
「今のユーリは501部隊として任務に当たってるけど、ヴェネツィアの巣の件が片付くか、私達が完全に復活すれば、501部隊は再解散。また宙ぶらりんになる訳じゃない?」
「そうですね……現状、ユーリさんは特定の国の軍に所属するウィザードではありませんから、501部隊が解散すれば、再び総司令部の指揮下に戻るはずです」
「で、私は考えた訳──ユーリを
「な……本気ですか……?」
「ええ。そりゃあ、簡単に決められる事じゃないのは分かってるわよ?世界で1人だけのウィザードだし、私達が知らないしがらみとかだって色々あるんでしょうけど……まぁどうせなら、あの子が楽しく過ごせる場所に置いてあげたいっていう……親心?みたいなものね」
今やヴェネツィアが陥落したことで状況も変わってしまったが、それ以前のロマーニャは然程ネウロイの脅威に晒されていない国だ。現役のウィッチ・ウィザードである以上、戦いと縁遠い暮らしができるわけではないが、それでもドッリオを始め504部隊の面々──ある程度気心のしれた仲間が一緒にいられる環境は、ユーリにとっても悪いことではない。
何より、ロマーニャ公との繋がりがある自分が彼を引き入れることによって、間接的に公室の権限でユーリをよからぬ企みから守ることもできるかもしれない。もし赤ズボン隊に入るならより安心だ。
「一応、501が解散したタイミングで、ガランド中将に具申はしてみるつもりだけど……流石に本人の意思が第一だからね。いくつかある選択肢の1つとして提示した時、選びやすいように予め好感度をアップしておこう──って作戦だったわけ。因みに私視点では、経過は良好ってとこね」
「はぁ……慣れない事をして、問題は起こさないでくださいね?」
「ひどーい!私だって504の隊長よ?前の基地が壊されてから、私が色んな所で交渉してるの、タケイだって知ってるでしょ!?」
「はいはい。よく分かってますとも。──取り敢えず、隊長の企みはわかりました。もし仮にユーリさんが504に正式配属されるというなら、私としても喜ばしいです」
「でしょでしょ?タケイなら分かってくれると思ったわー!」
「それはそれとして、バニーガールは絶対不許可ですからね!?」
「えー?」
「えー、じゃありません!」
※ドッリオ少佐の前科に関しては、コミカライズ「紅の魔女」をお読みください
それと、当時まだ建設中だった501基地の浴場にフェル隊長達が入ってた事に関しては「お風呂としての機能はあの時点で完成してたけど、内装やらがまだ未完成だった」ということでひとつ。
いやぁ、オリストってイマイチ文量書ける自信ないので、いつも「短めでいいかな~」なんて思いながら書いてるんですが、どういうわけか大抵いつもと大差ない文字数になるんですよねぇ…悪い事はないんでいいんですけども。
ってかルミナスウィッチーズ7話見ました皆さん!?
すごくないですか!?めっちゃ豪華!ありがとうございます!ありがとうございます!