501のウィザード   作:青雷

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2話投稿でお送りいたします。
…なんとか間に合いました。何がかは、お楽しみです



スレッジハンマー作戦

 ネウロイに奪われた領土を人類が奪還しているように、一度奪還した領土が再びネウロイに奪われる──そんな事態もまた起こりうる。

 

 その最たる例が、ロマーニャの南方に位置する孤島、マルタ島だ。

 マルタ島は過去、既に一度ネウロイに占領されたのを各国による共同作戦で奪還したのだが、紆余曲折あって再びネウロイの支配下となってしまったのだ。

 

 その紆余曲折というのが、また込み入った事情だった。

 

 昨年、501部隊がガリアを解放した直後のことだ。部隊解散までの間、ガリアの巣の残党ネウロイ掃討にあたっていた501は、カールスラント方面から現れた特異なネウロイと遭遇し、これと交戦。苦戦を強いられながらもどうにか退けることに成功した。

 その報告を耳にした西部統合軍司令部は危機感に駆られ、ガリアまで後退していた戦線を一気にライン川の向こうまで押し返し、カールスラント北西部に存在するエルベ川の巣を撃破してしまおうという"ライン川空挺突破作戦"を実行に移す。

 

 この作戦自体は悪くなかったのだ。入念な準備の上で実行すれば、カールスラント奪還への大きな足掛かりになったことだろう。

 

 だが当時、軍の上層部は、ブリタニアのモントゴメリー将軍を筆頭に「ガリア解放の余波で欧州のネウロイが沈静化している今こそ、一気に反撃に出るべき」という強硬派と、芳佳が接触した人型ネウロイの報告を受けて「ネウロイと和解できるかもしれない」という考えの下、後に"トラヤヌス作戦"を実行する事になる穏健派で2分してしまっていた。

 

 足並みも揃わないまま、ブリタニア陸軍主導で強行された"ライン川空挺突破作戦"は、やはりというべきか失敗に終わる。

 余りにも性急過ぎた強行軍は、ライン川に手が掛かった辺りで行き脚が止まってしまい、強硬派はライン川沿いに防衛線を構築することを余儀なくされる。その為に各地からウィッチを始めとする多くの戦力がライン川周辺へ集められた。

 だがここで、ブリタニアはある失態を犯してしまう。ライン川で防衛線を敷くにあたり、自軍が防衛を担当していたマルタ島の位置する地中海方面から戦力を引き抜き過ぎてしまったのだ。

 

 結果的に無事ライン川沿いの防衛線は整ったものの、防御が手薄になったマルタ島はその隙を突かれて再陥落してしまい、現在に至るというわけだ。

 

 そして──そんなマルタ島を再奪還すべく、ミーナは新たな作戦を上に申請していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ──」

 

「ふぅ……」

 

「これで今日のメニューは完了ですね。僕は坂本さんに報告に行ってきますから、お2人は休んでいてください」

 

 今日も今日とて美緒に課された朝のトレーニングメニューをこなした芳佳、リーネ、ユーリの3人。

 もうすっかり半年のブランクは鳴りを潜め、以前と遜色ない──それ以上に成長した芳佳達を見て、ユーリは小さく笑みを零す。

 

 席を外している美緒の元へ向かおうとした所で、エンジン音と、青空を舞う輸送機の姿が目に入った。

 

「あの機体……」

 

「ええ。ミーナ隊長が帰って来たようですね」

 

 ミーナが新たな作戦の為に司令部へ趣いていたのは、ユーリも聞き及んでいる。ヴェネツィア奪還に向けて本格的に動き出そうとしているのだろう。

 とはいえ、こうして上層部とのやり取りを終えた後は、いつもうんざりした顔で帰ってくるのがミーナの常だ。今回もまた例に漏れないのだろうと考えていたユーリは、次の瞬間驚愕に目を剥いた。

 

 丁度3人の真上を通り過ぎた辺りで、突如輸送機から人影が飛び出してきたのだ。

 

「嘘、飛んだ──ッ!?」

 

「ユニットも無しに!?」

 

 芳佳達の言う通り、パラシュートのような命綱はおろか、ユニットも無しに空中へ身を踊らせた人影は、真っ直ぐこちらへ飛んで──否、落ちてくる。近づくに連れて鮮明になっていく人影の姿。風に靡く長いプラチナブロンドの髪を見るに、どうやら女性のようだった。

 咄嗟に助けに入ろうとしたユーリだったが、その必要はなかったようだ。落ちてくる女性の体を、魔法力の青白い光が包み込む──そして空中で器用に身を翻すと、何事もなかったかの様にストン、と着地してみせた。魔法力で着地時の衝撃を極限まで弱めたのだろう、見事な制御技術だ。

 

「すごい……」

 

 思わず口から漏れ出た芳佳の言葉。それに応えるかのように、石畳の上に降り立った女性は着けていたゴーグルを外す。その下から、キリっとした端正な顔立ちが現れた。

 

「やぁ。初めまして、子猫ちゃん達」

 

「こ、子猫ちゃん……!?」

 

「おっと失礼。いきなり子猫ちゃんは馴れ馴れしかったかな、お嬢さん?」

 

「わぁ、カッコイイ……!」

 

 開口一番キザなセリフを披露した女性は「悪いけど、サインはしない主義なんだ」とどこかズレた言葉を続けた。

 

「そうだ、君達に聞きたいことが──」

 

 

「──マルセイユ!何故お前がここにいる。お前はアフリカにいるはずだろう!」

 

 

 不意に飛んできた声の主──眠そうなハルトマンを伴ったバルクホルンは、厳しい目で彼女──マルセイユを睨んでいる。一方、当のマルセイユはというと……

 

「おおっ!久しぶりだな、ハルトマン!」

 

 と、先程までの凛々しい様子とは打って変わって、嬉しそうに顔を綻ばせた。そしてバルクホルンそっちのけでハルトマンの手を取る。

 

「航空学校以来か?いや違うな……そうだ、JG52の第4中隊だ!懐かしいなぁ、覚えてるか?あの融通の利かない上官の、ほら、何て言ったっけなぁ──」

 

「……バルクホルンだっ!」

 

「ああ、それそれ。そうだった。久しぶりだなぁバルクホルン。元気だったか?」

 

 飄々とした態度で差し出されたマルセイユの手を、バルクホルンは握り返す。形だけ見れば、かつての戦友達の再会という感慨深いシーンなのだろうが……

 

「ああ、大いに元気だとも。誰かさんがいなかったお陰でな」

 

「奇遇だな、私もだよ。アフリカ(あっち)にはお前みたいに頭の固い奴がいないからな」

 

 ……と、見ての通りだ。そんな2人の様子を、着陸した輸送機の窓から眺めていたミーナは、先が思いやられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ──カールスラント空軍に所属する大尉であり、ハルトマンと同じくカールスラント四強の1人。撃墜スコア200機を誇るスーパーエースである。

 彼女自身が言っていたように、以前はカールスラント空軍第52戦闘航空団(J G 5 2)にてハルトマンやバルクホルンと肩を並べて戦っていた経歴を持つ。

 他のメンバーには、現502部隊隊長のラルや、同隊のロスマンとクルピンスキー。更に、前線から身を退きながらも503部隊の副司令を務めるフーベルタ・フォン・ボニン中佐、現在もJG52にて飛行隊長を務めるヨハンナ・ウィーゼ少佐と、そうそうたる顔触れであることからも、彼女の実力の高さが伺える。

 第31統合戦闘飛行隊(J F S)"アフリカ"──現在はストームウィッチーズと呼ばれている──のエースとして、苦しい戦況の続いていたアフリカ戦線を支える大活躍を見せたことから、"アフリカの星"という通称までつけられる程だ。

 極めつけにあの美しい容姿ときた。強さだけでなく美しさまで兼ね備えた彼女の人気はカールスラントに留まらず世界中に広がっており、道行く市民に「会ってみたいウィッチは?」と聞けば、2人に1人はマルセイユと答えることだろう。

 

 詳しい話は割愛するが、彼女が身を置く部隊が、501を始めとする統合戦闘航空団(J F W)という部隊構想を固める一因にもなったという事で、実は囁かながらも501とは関係があったりする。

 

 部隊の面々が揃うブリーフィングルームで本を読んでいた芳佳は、偶然見つけたマルセイユの記事を読んで感嘆の声を漏らす。

 

「ほぇ~……本に載るくらい凄い人だったんだ。後でサイン貰おうかなぁ」

 

「──残念だったな宮藤。あいつサインはしないよ」

 

「えっ、シャーリーさん知り合いなんですか?」

 

「あたしとルッキーニは、ここに来る前はアフリカにいたんだ。その時にちょっとな」

 

「マルセイユさんって、どんな人なんですか?」

 

 芳佳の問いに、シャーリーは少し考える。

 

「ん~、まぁ色々噂は聞いたけど……やっぱ馴染みの奴の方が詳しいだろ──なぁ?」

 

 そう言ってシャーリーが声を投げかけた先には、不機嫌そうに腕を組むバルクホルンと、その横で居眠りをするハルトマンがいた。

 

「そういえばバルクホルンさん達、同じ部隊だったって……」

 

「……ああ。私とハルトマン、マルセイユは、かつてカールスラントで同じ飛行中隊にいた」

 

「やっぱり!お友達なんですね!」

 

「友達じゃない!あんなチャラチャラした奴……!」

 

「それって、どういう……?」

 

「──皆静粛に!ブリーフィングを始めます」

 

 詳しい話を聞こうとする芳佳だったが、ミーナ達隊長陣が入ってきたことで話は中断された。

 

 

「中にはもうミーナから聞かされている者もいると思うが、我々の次の作戦が決まった。作戦名は"スレッジハンマー作戦"──目的は、マルタ島の再奪還だ」

 

 

 現在、マルタ島には2体のネウロイが陣取っている。先日ロマーニャに向かっていた戦艦大和率いる扶桑艦隊を襲撃したネウロイも、ここから現れたのだろうと推測されている。

 ネウロイはどちらもドーム状の形をとっており、頑強な装甲で外からの攻撃が通用しない。当然コアはドームの中だ。お手上げに思えるこの状況だが、突破口が1つだけある──海だ。

 

「──このように、ネウロイはどちらもマルタ島の陸地だけでなく、僅かだが海上にも足を踏み入れている状態だ。と言っても、水を嫌う奴らのことだからな。海中にまで根を張っている訳ではないだろう。つまり、海の中からなら装甲をくぐり抜けてネウロイの内部に侵入が可能というわけだ」

 

 そこで、潜水艦を使い海中からネウロイ内部に突入。待ち受けているであろう護衛の小型ネウロイ達を撃破し、本体のコアを破壊する。以上が"スレッジハンマー作戦"の概要だ。

 

 説明を終え、質疑を確認する美緒に芳佳が手を挙げた。

 

「あの、坂本さん。この作戦って……」

 

「……ああ、そうだ。今回、直接ネウロイと戦うのは我々の中から選ばれた3名のみとなる」

 

 この作戦に於いて、ある意味最大の問題点がそれだった。ネウロイ内部へ突入するのに使用する扶桑の伊-400潜水空母は、潜水艦でありながら艦載機発進用のカタパルトを備えているという、まさに今回の作戦に打って付けの艦なのだが、搭載できるのは僅か3機のみ。黒板に掲示されている資料を見る限り、どちらも中型以上の規模を誇る目標のネウロイを相手取るには、過小戦力と言わざるを得ない。

 

「幸いと言うべきか、2体のネウロイは規模に差がある。3人を2人と1人に分けて作戦に当たる他ない」

 

「……それでは、突入メンバーを発表します。まず、規模の大きい第1目標と戦う2名は──今回の作戦の援軍として参加することになった、第31飛行隊のハンナ・マルセイユ大尉」

 

「──待て、どういうことだ!?突入メンバーは私とハルトマンの筈では!?」

 

 予てよりマルタ島奪還作戦が行われることを聞いていたバルクホルンは、てっきり501部隊に於ける最高戦力といっていい自分とハルトマンのコンビで事に当たるとばかり思っていた。

 

「これは上層部からの指示です──マルセイユ大尉と組むのは、我が501部隊からバルクホルン大尉、あなたです」

 

「私が、マルセイユと……」

 

 かつて共に戦っていた頃から反りの合わない2人だが、今回ばかりはそんなことも言っていられない。何せマルタ島は欧州とアフリカ方面を繋ぐ、人類にとっても重要な場所なのだ。それを取り戻す為を思えば、気に入らない相手だろうと組む他ない。幸い実力は確かなのだから──そう自らに言い聞かせ、マルセイユに歩み寄ろうとしたバルクホルンだったが……

 

「──無理だ」

 

「何……ッ!?」

 

 バルクホルンの意思を無下にするかの如く即座に異を唱えたのは、他ならぬマルセイユ本人だった。

 

「バルクホルン、あんたじゃ私のパートナーは務まらない」

 

「ッ……何が言いたい、マルセイユ」

 

「言葉通りさ。あんたの力量じゃ、私と一緒に戦うのは無理だって言ってるんだ」

 

 重ねて言い渡された、明確な拒絶の意思。見かねたミーナもマルセイユを制止するが、彼女は構わずに言葉を続ける。

 

「私と釣り合うのは──」

 

 挑戦的な視線を向ける先には、めんどくさそうに頬杖をつくハルトマンの姿が。どうやらマルセイユは彼女をご指名らしい。しかしその視線の間に、バルクホルンが割って入ってきた。

 

「貴様……JG52にいた頃もそうだ。上官を上官とも思わないその態度。変わってないな……!」

 

「ふん。変わったことならあるさ。あの時と違って、もう同じ階級だ──!」

 

 怒り心頭といった様子のバルクホルンは、マルセイユに詰め寄りながら魔法力を発動させる。対するマルセイユも魔法力を発動させ、互いの手を掴み合う力比べが始まった。2つの力がせめぎ合い、辺りを駆け抜ける衝撃は、石造りの床にヒビを入れた。最早誰の制止の声も届かず、負傷者すら出るかに思われたその時──!

 

 

「すとーーーーーっぷ!!!」

 

 

 突如飛んできたこの一声によって、驚く程あっさり事は収まった。声の主であるハルトマンは、

 

「……私がマルセイユのパートナーをやるよ。それでいいだろ?」

 

 と、マルセイユからの指名を了承した。

 

「ああ、それなら私も文句は無い──当日が楽しみだな、ハルトマン?」

 

「はぁ……」

 

 要望が叶ってご満悦のマルセイユに対し、ハルトマンはやれやれといった様子で溜息をついた。

 ひと悶着あったものの、無事にマルセイユのパートナーが決まった所で、美緒が2体目のネウロイに突入するメンバーを発表する。

 

「続いて2体目──比較的規模の小さい第2目標を担当する者だが……ユーリ、頼めるか?」

 

「それって……」

 

「ユーリさんが、1人で戦うってことですよね……!?」

 

「その通りだ。先も言ったように、こちらから送り込めるのは3人。対して敵は2体で、それぞれ規模に差がある──であれば必然、規模の大きい方に人員を割くことになる、よって残る3人目は、単独での戦闘能力の高さから選ばせてもらった」

 

 確かにユーリの火力であれば、単独でも申し分ない戦闘能力を発揮できる。美緒達隊長陣の判断は理に適ったものだが……如何せん状況が状況だ。

 最初に説明された通り、ネウロイの内部に入るには潜水艦を使った海中のルートしかない。そして一度内部に突入すれば、ネウロイを倒すまで外には出られず、また友軍からの支援も受けられない。コンビを組むハルトマンとマルセイユはともかく、単独で突入するユーリは完全な孤立状態になってしまうのだ。

 

 物理的な距離こそ離れていないが、外部と隔絶された空間に少数戦力を送り込む以上、戦いに於いて愚策とされる二正面作戦は避けられない。その点は美緒もミーナも重々理解している。その上でユーリに白羽の矢を立てた。そうせざるを得なかった事実もある。

 

「……分かりました。全力を尽くします」

 

 彼女達の思いと、自分しかいないという事実を受け取ったユーリは、力強く頷いてみせる。こうして、マルタ島奪還に向けた"スレッジハンマー作戦"が本格始動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 先行きが不安に思われた"スレッジハンマー作戦"だが、明日の作戦に向けたマルセイユとハルトマンの連携訓練が始まってからも、その不安は拭いきれずにいた。それを示すように、2人の姿は普段隊員達が生活している部屋ではなく、ベッド2つだけというなんとも殺風景な部屋にあった。

 

 彼女達が営倉替わりのこの部屋に入れられた理由は、昼の訓練に於けるマルセイユの行動だ。最初こそ、息が合わないながらも真面目に訓練に励んでいたのだが、マルセイユは何を思ったのか、突然ハルトマンに銃口を差し向けたのだ。勿論、本当に引き金が引かれる事はなく、口頭で「ダダダダッ!」とまるで子供のごっこ遊びのようなやり取りをするだけに終わったが、模擬戦でもない訓練中に仲間へ銃を向けるのは許されることではない。とミーナから叱責を受けた。

 本来罰を受けるのはマルセイユだけの筈が、これを機にしっかりチームワークを養うようにと、とばっちり同然の形でハルトマンも叱られたという訳だ。

 

「全く、ハンナの所為で私まで怒られたじゃないか……」

 

「ハハハッ、やっぱりミーナは怖いなぁ」

 

 原因は自分にあるというのに、マルセイユは全く悪びれる様子がない。笑いながらベッドに寝転んでいる。

 

「本気で怒ったらもっと怖いんだぞ」

 

「そんな事があったのか。何したんだ?」

 

「アレは……」

 

 トラブルメーカーとしての面を持つハルトマンは、これまでもミーナに怒られた経験がある。その中で1番だったのは……

 

「……やっぱ教えないっ」

 

 脳裏に浮かんだ記憶を見て、ハルトマンはそっぽを向いた。

 

「はぁ?なんだよ、逆に気になるじゃないか!」

 

 ブーブーとごねるマルセイユだが、ハルトマンは頑として口を割らない。やがて諦めたのか、マルセイユはこれ以上の追求を止めた。代わりに、ずっと聞こうと思っていた事を口にする。

 

「……どうして戦わない?」

 

「んぇ?」

 

「さっきの訓練の事だ。お前の実力なら、私が狙ってから回避する事も、反撃だって出来たはずだ」

 

「昔っから勝負勝負って……ハンナは変わんないなぁ」

 

「別に変わる必要もないからな」

 

「どーしてそんなに拘るのさ?」

 

 ハルトマンの問いに、マルセイユは先程とは打って変わって真面目な表情で体を起こした。

 

「戦場では勝利以外に価値はない。私は常に勝利し、最強であり続ける。そうでなくてはならないんだ──負けられない。お前にも、あのウィザードにも」

 

「……何でそこでユーリ?」

 

「……いや、こっちの話だ。気にするな──それともう1つ聞きたい」

 

「今度は何さ?」

 

「あのユーリって奴の事だ。あいつが本当にペテルブルグの巣を破壊したウィザードなのか?」

 

「そーらしいよ。私は直接見てないけど……ロスマン先生と伯爵が一緒だったと思う」

 

「ああ知ってる。502部隊……ラル少佐の部隊だ」

 

「急にどしたの?そんなこと聞いてくるなんて」

 

「……正直、イメージと違う。もっと強そうな奴だと思ってた」

 

「え~、どんなの想像してたわけ?」

 

「そりゃあ、アレだ。私達より背が高くて、体がガッチリしてて、陸戦ユニットの武装を両手で2門、軽々と扱えるような……」

 

「アハハハハハハハッ!!」

 

 マルセイユの想像していたユーリ像を聞いて、ハルトマンは堪らず笑い転げる。

 

「そ、そんなに笑うかっ!?502部隊だぞ!?ラル少佐やロスマン先生がいる部隊で戦って、巣を倒したなんて聞いたら、こういうのを想像するだろ普通!」

 

「いやッ、だって……だってさァ…~~~ッ!!!」

 

 ハルトマンは笑っているが、実際マルセイユはイメージしたような男だと思っていたのだ。

 対装甲ライフルでネウロイを一撃の下に粉砕し、自分にとって恩師でもある上官のラル率いる武闘派部隊ブレイブウィッチーズでネウロイの巣を屠ったウィザードが、まさか自分より10センチ近く背の小さい、ぱっと見男とも女とも取れるような顔をした少年だとは思わなかった。輸送機から飛び降りた先で最初にユーリの姿を目にした時は、普通に501のウィッチ──女だと思っていたのだから。

 

「アハハハハハッ!!!」

 

「おい笑い過ぎだぞッ!真面目に勝負はしないし、笑うし、お前も大概変わらないな!」

 

「ふぅ……まーねー」

 

 ようやく笑いが収まったらしいハルトマンに、マルセイユはもう一度問う。

 

「……本当に勝負する気はないのか?」

 

「だから無いってば。そんなに勝ちたいならハンナの勝ちでいいよ。私別にキョーミないし」

 

 あくまで勝負する気のないハルトマンを見て嘆息するマルセイユは、それ以上勝負を迫ることはしなかった。代わりに──

 

 

「……ならまずはアイツだ」

 

 

 と、誰にも聞こえない小さな声で呟くのだった。

 

 




※今回の作戦で使用される伊-400潜水艦はアニメ劇中だと搭載できるのは2機までと言っていますが、実際の艦には艦載機を3機まで搭載できたとのことですので、こちらに寄せています

因みに、ハルトマンが言おうとして止めた「1番怖かったミーナさんのお叱り」が何なのか、分かりますかね?答えは……やっぱ教えないっ!

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