ーーピコーンーーーピコーンー
俺の機械に繋がれた心臓の音が聞こえる。末期ガンで入院してからというもの入退院を繰り返して来たが、ついに年貢の納め時ってやつだ。
周りには今まで家族として町工場から一流企業まで一緒に育てて育って来た社員達がなにやら叫んでいる…
「社長!!!あんた誰よりも長生きするって言ったじゃないっすか!!なんなんすか!なんすか!」
「社長!!!!今行ってるプロジェクトどうするんですか!!!!!科学設計チームなんて休み返上でやってたんですよ!!」
「俺達てめぇがぶっ倒れたからわざわざほったらかして見舞いに来てやってるってのに何だよそれ!!」
「瀕死の重体とかふざけてるんですか!?そうですよね!?絶対そうだ!」
ああ…最後までうるさい奴らだ…
すかすか言ってんのは息子みたいに可愛がってたサバゲーが趣味の山田だな…ソフト方面に関してはピカイチなのに結局その頭悪い口調は治らなかったとは…勿体無いやつだ…
俺を心配する言葉を言わずに怒ってるのは秘書の鈴木さんか…
くりくりしてて可愛い見た目とは裏腹の鬼のように厳しいんだよな…俺が無茶言うたびにマシンガンのように怒ってくるし…今だに頭が上がらないわ…
俺のことを一切社長として扱ってないおっさんは俺と一緒に始めの町工場からやってきた鬼頭…きとうって読むのを知らずにおにがしらって言っちまって殴られたのはいい思い出だ…本当に手先が器用でずっとロボット命のやつだったよ…
勝手に決めつけて自己完結してんのはいじられ役ですぐ突っ走る塩野だな…頭をいつもみたいに小突いて訂正したいところだが、今日は間違えちゃいない…すまんな…
他にもいろんな年代も性別もバラバラな奴らが泣いてやがる…鈴木さんなんて今までライバル社の奴らのどんな扱いにも冷静に対処してたのに俺に怒りながら鼻水と涙でぐちょぐちょで可愛い顔が台無しだ…
みんなすまんな…俺はもう死ぬ…自分の死に際くらい、アホだなんだと言われた俺にも流石にわかるよ…
「お前達…」
「社長!!!!!」
ぼそり、と吐きまくって胃酸でボロついた喉から聞こえるかどうかの声を出すと皆が気付いてこっちを向いてくれる…いい奴らだ…本当…
「今までありがとよ…俺のわがままに付き合ってここまで来てくれて…若い奴らもありがとな…この会社に入ってくれて…」
「そんな!そんな事ないっす!俺、俺、社長だから、社長達がいたからこの会社に入ってよかったっす!!だから!だからぁ…!!!」
ぐずぐず泣きながらぎゅぅ、と山田が手を握ってくる…俺には握り返してやる力はない…弱ったな…本当に…こんなに泣かてしまった…
「お前らは俺の仲間であり家族だ。俺の一生の宝物だ。本当にいままでありがとう。」
わぁっ、とさらに泣き出す皆につられて来て俺の顔がダメになって涙やら鼻水やらとにかく出るもん全部が流れてくる。
もうおっさんもいいとこの75だ…孫の1人や2人がいたっていていい年の俺の顔がどうなってるかなんて考えたくもない…まぁ奥さんすら捕まえられなかったがな…
「最後のわがままってやつだ…。笑ってくれ…。俺の門出だ…。」
ヒュー、ヒュー、と喉から音を出しつつ皆に頼む。もう、本当に終わる…。
「じゃあ、行ってくるよ、お前達…。」
『『『いってらっしゃい社長!!!!!』』』
そうして俺の人生は幕を閉じた。
いきなりしにます。