マウンテン・ティムに相棒がいてもいいじゃない 作:不知東西屋
医者を呼んでマウンテン・ティムを治療させた後、夕方に街を出発した。
夏も終わりとはいえ、まだまだ日中の砂漠は暑い。
快適な夕方の間、完全な日没までに出来るだけ距離を稼ぎたかったからだ。
マウンテン・ティムとは出発の前にちょっとした話をした。
「それで、ちょっと聞いておきたいんだけど」
「なんだ?」
「この陰謀を、一体誰のために止めたいんだい?」
虚を突かれたように瞬きをするマウンテン・ティム。
珍しい表情に僕はにやっと笑う。
「カウボーイとしての正義感?嘘じゃないけど、それだけじゃないだろう。アナタにここまでさせるなにかがあるんじゃないか?」
今までの経験から十中八九、女性のためだと思いながら問いかける。
「……、なかなかイイ趣味してるな。」
「アナタがベッドで休んでいる間に、こっちは砂漠を旅しようっていうんだ。これくらいは聞かせてもらわないとね。」
マウンテン・ティムは白旗を揚げるように肩をすくめた。
「…、ルーシー・スティール」
大切なものであるかのように、そっと彼は口にした。
それはスティール・ボール・ランの主催者であるスティール氏の妻の名前。
(若干14歳の美少女だ。)
「なるほど。彼女はレースの中心に近いところにいる。当然、この陰謀に巻き込まれる可能性は高い。いや、すでに巻き込まれている可能性もあるか。」
本当はもっと茶化そうと思っていたが、やめにした。
マウンテン・ティムの表情があまりに切実だったからだ。
「答えてくれてありがとう。おかげで気合いが入った。」
そう言って部屋を出ようとする僕をマウンテン・ティムが呼び止めた。
「おいおい、ちょっと待てよ。」
「まだ何かあったかい?」
振り返ると、先ほどまでとは一転してにやっと笑ったマウンテン・ティムがいた。
「俺だけ秘密を話して終わりか?そうはいかないぜ。お前もなにか秘密を言えよ。」
「どうして僕がッ?」
「おいおい、オレたちは相棒だろう。相棒ってのは平等なもんだ。一方だけ秘密を話して終わりって事はないだろう」
相手が折れそうにないので、僕は諦めることにした。
ため息をついて、肩をすくめる。
「秘密ね…。」
「ああ、なんでもいいぞ。」
「僕が時々、修道院に手伝いに行ってる事は知ってるよね。」
「ああ、ワイオミングの人間なら大概知っている。メアリー・ロバート目当てだろう?」
流石にそこまで知れ渡ってはいないと信じたい。
メアリー・ロバートは修道院で一番若い修道女だ。
可愛らしい女性で修道院の外で奉仕活動をするときなど、ちょっとでも言葉を交わそうと若い男が周りをうろちょろする。
「いや、実は僕の目当てはメアリー・ロバートじゃなくてメアリー・パトリックの方なんだ。」
「え?メアリー・パトリック?あの4○歳近くて、デ…ふくよかな体型の?」
「そう、年といい体型とジャストなんだ。あの柔らかそうな体で抱きしめて欲しいっていうか。」
そこまで言って改めてマウンテン・ティムの顔を見ると完全に理解できないものを見る顔をしていた。
「あ、引いたな。ひどいぞ。自分のことを棚に上げて。そっちだって一体いくつ年の差があると思ってるんだ。」
僕が抗議の声を上げると、マウンテン・ティムは快活な笑い声を上げた。
「すまん、すまん。ちょっと驚いただけだ。」
「アナタにだから打ち明けたんだ。誰にも言わないでくれよ。」
「もちろん。誰にも言わないさ。」
大げさに真面目ぶった口調でそこまで話して、お互いに口元に微笑が出た。
「…、それじゃあ僕は行くよ。」
「ああ、ぬかるなよ」
「ああ、そっちも油断するなよ」
最後にそう交わして、僕たちは別れた。
列車に向かう前にジャイロとジョニィが秘密を打ち明け合うシーン、好きなんですよ。