赤く不気味に光る生気のない目が男を見下ろす。
(相手の技量を見誤ったか。ここまでとはな)
掠れゆく意識の中で男は呑気にもそんなことを考えていた。
(寒い。いつになってもコレだけは慣れないものだ)
──怖くは無かった。
男にとって死は帰還でしか無く大した意味を持たないからである。灰へ伏し、火へ還る。
(ザクッ)
突き立てられた剣がトドメとなり男はそこで事切れた──。
一面白銀の世界でパチパチと子気味良い音を立てて燃える焚き火。火というものは人の心を落ち着けてくれるという。
「くそぅ!あんの駄女神め!クエストの報酬全部酒場で溶かす奴があるか!?」
しかし、青年の心は全く穏やかでは無かった。
問題の張本人は未だに納屋でグースカ寝ている、それが更に彼を怒りへと駆り立てる。
「よし。決めた。あの羽衣売ってやる。」
そう宣言し、女神(笑)の衣服を剥ぎ取りに行こうとしたその時、
火がよりいっそう激しく燃え上がった。
(どういうことだ。)
男は困惑していた。
(最後に休息した篝火はここじゃないはずだが)
彼のような不死人は事切れた時点で最後に休憩した篝火に帰還する。
そのはずが、
(ようこそ冒険者の街アクセルへ…か。)
全くもって知らない場所に飛ばされたのだ。
男は少し考えたあと周りを見渡した。
そこには、パチパチと音を立てながら燃える焚き火と驚愕し目を見開いたままで固まっている男がいた。
「あ、あ、あんたどこから出てきたんだ!?」
どこから。と聞かれても男自身焚き火から出てきたとしか言いようがないのだが、、、
「貴公。質問に質問で返すようで申し訳ないがここはどこだ。」
「やっぱり異世界だからテレポートとかあるのか...ん?あぁ、ここはアクセルっていう場所だけど…。」
アクセル。やはり聞いたことの無い場所だ。
男は試しにロスリックという場所に聞き覚えはないかと聞いた。
「ロスリック…?知らないな。聞いたことも無い。それよりあんたどうやって出てきたんだ?魔法か?テレポートの魔法なのか?!」
知らない…か。
「貴公。私はこの地に踏み入れてまだ日が浅いのだが、情報を集めるのに適した場所などあるだろうか?」
「おい!質問に…まあいいか。情報収集ならギルドがいいと思うぜ。」
「ふむ。ギルド…か。向かってみるとしよう。貴公、休息中のところ邪魔をして済まなかった。これはほんの礼だ。」
男は青年に礼として金貨を渡した。
「礼なんて…え。あ、いや、やっぱり貰っておきます。」
青年に礼をした男はその場を去りギルドへ向かうべく早速アクセルという名の街へ足を踏み入れた。