ゴメンね
2人目
「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐。クエストの完了を確認致しました。ご苦労様でした」
騎士がカズマ少年に一応謝ったあと、私達はギルドへ報告に来ていた。
報告を終えた後は粘液まみれのアクアとめぐみん少女を大衆浴場に追いやった。
「しかし本当にモンスターを倒すだけで強くなるんだなぁ」
カズマがそんなことを漏らす。
(確かに不思議な感覚だ。)
しかし騎士はどこかでこの感覚を感じたことがあった。
それは例えば─。
敵の武器を持った時。
かつての持ち主の記憶。
思い出が流れ込んでくる。
思い出を継ぐからこそ初めて使う武器でも騎士は使いこなすことができる。
カエルにトドメを刺した時そんな感覚を騎士は感じていた。
「ではジャイアントトード二匹の買い取りとクエストの達成報酬を合わせまして、十一万エリスとなります。ご確認くださいね」
十万。金貨のを換金したときが五十万だったからあの金貨1枚にはこのクエスト5回分の価値があった訳か。
「割にあわねー」
カズマ少年がそう漏らすのも無理ないな。
そんなことを話しているとアクア達が風呂から帰ってきた。
するとカズマ少年は思い出したかのように
「なあ、スキルの習得ってどうやるんだ?」
と聞いてきた。騎士はスキル自体あまり詳しくないので分からないと答えた。
「え。じゃあカエルを爆散させた火球ってなんだったんですか?」
「【呪術】と呼ばれるものだ。だが、恐らく貴公らが言うスキルの類ではないだろう。」
「あんたって愚かな上に謎がほんとに多いわね」
アクアが話を割って入ってきた。それに続くようにしてめぐみん少女が
「スキル習得? そんなもの、ギルドカードに出ている現在習得可能なスキル欄を……。ああ、カズマのクラスは初期クラスの冒険者でしたね。冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうんです。まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらう。すると、カードに習得可能スキルって欄が現れるので、スキルポイントを使ってそれを取ればいいんです。そして、一度習得したスキルは使えば使うほどに鍛えられ、スキルレベルが上がっていく。頑張ってスキルを鍛えていけば、冒険者でも本職のスキルに匹敵する力が得られるはずです!」
(ふむ。スキルというものは使えば使うほど成長するのか。)
そんなことを考えていると
「ねえ、スキルが欲しいんでしょ? 盗賊スキルなんてどうだい?」
銀髪の女性が、話しかけてきた。
少し寒そうな服装に、腰にはタガー。頬には傷がある。
その隣には、ガチガチのフルプレートメイルを着込んだ金髪ロングの女騎士。
冷たく、取っ付きにくい印象の酷薄そうな女性だった。
二人とも、俺より一つ二つ年上だろうか。
カズマ少年がドギマギするのを必死に隠しながら冷静に
「盗賊スキル? えっと、どんなのがあるんでしょう?」
カズマ少年の質問に、上機嫌で。
「盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。キミ、まだクラス冒険者なんだろ? 盗賊のスキルは習得にあんまりポイントもかからないしお得だよ? どうだい? 今なら、クリムゾンビア一杯でいいよ?」
カズマ少年はさきほどのドンヨリした空気を吹き飛ばすように
「よし、頼む! すんませーん、こっちの人にクリムゾンビアお願いします!」
と言った。
─────────────────────
スキルの習得というものに興味があった騎士はカズマに着いてきていた。
「まずは自己紹介しとこうか。あたしはクリス。
見ての通りの盗賊だよ。で、こっちの無愛想なのがダクネス。こいつのクラスはクルセイダーだから、キミに有用そうなスキルはちょっと無いと思うよ」
「ウス! 俺はカズマって言います。んでそこの怖そうな人が騎士さんです。クリスさん、よろしくお願いしやっす!」
冒険者ギルドの裏手の広場。
カズマとクリス、そしてダクネスと騎士の四人は、今は誰もいない広場に立っていた。
「では、まずは敵感知と潜伏をいってみようか。罠の解除なんかは、こんな街中に罠なんてないからまた今度ね。じゃあ……、ダクネス、ちょっと向こう向いてて?」
「……ん。分かった」
ダクネスという女騎士が、言われたとおりに素直に向こうを向く。
すると、クリスがちょっと離れた所にあるタルの中に入り、上半身だけを出す。
そして向こうを向いているダクネスの頭に、何を思ったのか石を投げた。
そして、そのままタルの中に身を隠す。
すると
(ッ?!たしかにクリスの気配が薄くなった。これが潜伏か)
「……………………」
すると石をぶつけられたダクネスが、無言のままスタスタと、ぽつんと一つしかないタルへと向かって歩いていく。
「敵感知……。敵感知……! ダクネスの怒ってる気配をピリピリ感じるよ! ねえダクネス、分かってると思うけどこれはスキルを教える為に仕方なくやってる事だからねお手柔らかにああああああああああああ、やめてえええええええええええええええ!」
隠れていたタルごと、ダクネスに横に倒されてそのままゴロゴロと転がされ、クリスが悲鳴を上げている。
カズマ少年は
これでほんとにスキルを覚えられるのか?という顔をしていた。
「さ、さて。それじゃあたしのイチオシのスキル、窃盗をやってみようか。これは、対象の持ち物を何でも一つ奪い取るスキルだよ。相手がしっかり握っている武器だろうが、鞄の奥にしまい込んだサイフだろうが、何でも一つ、ランダムで奪い取る。スキルの成功確率は、スキルレベルとステータスの幸運に依存する。強敵なモンスターと相対した時とか、モンスターの武器を奪ったり、もしくは大事に取っといたお宝だけかっさらって後は逃げたり。色々と使い勝手のいいスキルだよ
。じゃあ、あなたに使ってみるからね? いってみよう! 『スティール』っ!」
クリスが手を前に突き出し叫ぶと同時、その手に小さな物が握られていた。
それは……。
「あっ! 俺のサイフ!」
(なんと。一瞬でカズマ少年の財布が移動しただと?)
「おっ! 当たりだね! まあ、こんな感じで使うわけさ。それじゃ、サイフを返……」
クリスは、俺にサイフを返そうとして、そしてにんまりと笑みを浮かべた。
(まずいな。クリスは仮にも盗賊だろう。なら恐らく…)
「……ねえ、あたしと勝負してみない? キミ、早速窃盗スキルを覚えてみなよ。それで、あたしから何か一つ、スティールで奪っていいよ。それが、あたしのサイフでもあたしの武器でも文句は言わない。この軽いサイフの中身だと、間違いなくあたしのサイフの中身や武器の方が価値があるよ。どんな物を奪ったとしても、キミはこの自分のサイフと引き換え。……どう? 勝負してみない?」
(やはりな…。)
騎士は面倒事に巻き込まれそうな予感と共に【霧の指輪】を付ける準備をした。
しばらくカードを弄っていたカズマだが準備が整ったらしい。
「準備できました。」
「いいねキミ! そういう、ノリのいいヤツって好きだよ! さあ、何が盗れるかな? 今ならサイフが敢闘賞。当たりは、魔法が掛かってるダガーだよ! こいつは40万エリスは下らない一品だからね! そして、残念賞はさっきダクネスにぶつける為に多目に拾っといたこの石だよ!」
(ふむ。ランダムに盗むからそういう事もできるわけか。)
「ああっ! きったねえ!! そんなの有りかよっ!」
カズマ少年が抗議する
「これは授業料だよキミ。どんなスキルも万能じゃない。こういった感じで、どんなスキルにだって対抗策はあるもんなんだよ。一つ勉強になったね! さあ、いってみよう!」
(ごもっともだ。どんなことにも対価は伴う。)
カズマが助けを求めたが騎士は首を横に振るしかなかった。
すると観念したように
「よし、やってやる! 喰らえ、『スティール』っ!」
カズマ少年はその手を広げた。
その手に握られていたのは
「……なんだこれ?」
一枚の黒い布切れだった。
カズマ少年はそれを掲げると
「ヒャッハー! 当たりも当たり、大当たりだあああああああああ!」
「わああああああああああああああ! ぱ、ぱんつ返してええええええええええええええええええええっ!」
騎士は素早く、それはそれは素早く【霧の指輪】を付けるとその場から速やかに離れた。
次話はちょっと遅れます