主人公はダクソ3の不死人だと言ったな。あれは嘘だ。
「おい、もう一度言ってみろ」
カズマ少年は静かに、しかし確かな怒りを込めて呟いた。
先日ゾンビメーカー討伐のクエストを失敗した為、金が無いカズマ達は少しでも金になるクエストを受けようと、割のいいクエストが無いか探していた所。
「何度だって言ってやるよ。上級職が揃ったパーティで、何でゾンビメーカー討伐なんて簡単なクエスト失敗するんだよ。大方お前が足引っ張ってるんだろ? なあ、最弱職さんよ?」
そう言って、同じテーブルにいた他の仲間と笑い合う戦士風の男。
立ち上がって抗議しようとするアクアを騎士は諭しながら、注がれた水を飲む。
(……ぬるいな。)
……相手の言う事も一理ある。
ゾンビメーカー討伐クエストで、ウィズを見逃そうと言い出したのはカズマ少年と私だ。
ウィズを討伐とまではいかなくても、ゾンビメーカーではなくてリッチーだったと報告していれば、ここまでバカにされる事も無かっただろう。
だが、ウィズの事は秘密にしといてやろうと言い出したのはカズマ少年だった。
「ゾンビメーカー退治についてだが、貴公、少し勘違いしている。足を引っ張ってしまったのはカズマ少年ではなく私だ。」
カズマが驚き、目を丸くして騎士を見るが何も言わなかった。
だが、無言で耐えているカズマ少年を、その男はビビッて何も言えないでいると受け取ったらしい。
「おいおい、何とか言い返せよ最弱職さん。ったく、いい女ばっか引き連れ、腕っ節の良さそうな傭兵まで雇って貴族気取りか?どいつもこいつもいい女で、しかも全員上級職ときてやがる。さぞかし毎日、このお姉ちゃん達相手に良い思いしてんだろうなぁ?」
そしてギルド内に巻き起こる爆笑。
騎士が腰の得物に手を掛けながら立ち上がろうとすると、
「騎士さん!!……。騎士…さん、いいんです。」
カズマ少年が騎士を諭しながらも堅く拳を握る。
そんなカズマ少年にめぐみん達が声を掛ける
「カズマ、相手してはいけません。私なら何言われても気にしませんし」
「そうだカズマ。酔っ払いの言う事など捨て置けばいい」
「そうよカズマ。あの男、私達を引き連れてるカズマに妬いてんのよ。私は全く気にしないからほっときなさいな」
典型的な三下だ。
普通なら、相手する程の事じゃない。
何とか耐えようとしていたカズマ少年だったが、男の最後の一言には耐えられなかったようだ。
「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって。苦労知らずでよろしいこって! おい、俺と代わってくれよ兄ちゃんよ?」
「大喜びで代わってやるよおおおおおおおおおおおおっ!!」
冒険者ギルドの中が静まり返る。
騎士はぬるい水を飲み干した。
「……えっ?」
俺に絡んでいた戦士風の男が、思わずマヌケな声を出した。
「代わってやるよって言ったんだ! おいお前、さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばっか抜かしやがって! ああそうだ、ゾンビメーカーの討伐は、事情があって俺の判断でクエストキャンセルしたんだよ! それは認める! だがなあ、お前! お前その後なんつった!」
「カ……、カズマ?」
おろおろするアクアが、怒り狂うカズマ少年におずおずと声を掛ける。
そして、いきなり激怒したカズマ少年に若干引きながらも男が口早に言ってきた。
「そ、その後? その、いい女三人も連れてハーレム気取りかって……」
カズマ少年は思い切りテーブルに拳を叩きつけた。叩きつけた手には血が滲んでいる。
その音にギルド内の皆がビクリとする。
「いい女! ハーレム!! ハーレムってか!? おいお前、顔にくっついてるのは目玉じゃなくてビー玉かなんかなの? どこにいい女が居るんだよ、教えてくれよ! いいビー玉付けてんな、俺の濁った目玉と取り替えてくれ!」
「「「あ、あれっ?」」」
なぜか俺の後ろで俺のパーティメンバーの三人が、それぞれ自分を指差しながら小さな声で呟いた。
「なあオイ! 教えてくれよ! いい女? どこだよ、どこに居るってんだよオウコラッ! テメーこの俺が羨ましいって言ったな! ああ? 言ったなオイ!」
いきり立つカズマ少年に、背後からおずおずと声が掛けられた。
「あ……あのう……」
恐る恐る右手を上げて、三人を代表するかの様なアクアの声。
カズマ少年はそれを無視してなおも続ける。
「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって!? 苦労知らずだああああああああっ!?」
「……そ、その……。ご、ごめん……俺も酔ってた勢いで言い過ぎた……。で、でもあれだ! 隣の芝生は青く見えるって言うがなあ! お前さんは確かに恵まれている境遇なんだよ! 代わってくれるって言ったな? なら、一日。一日だけ代わってくれよ冒険者さんよ? おい、お前らもいいか!?」
言って、その男は自分のテーブルの仲間にも確認を取る。
「ま、まあ俺は構わないが……。今日のクエストはゴブリン狩りだしな」
「私もいいよ? でもダスト。あんた、居心地が良いからもうこっちのパーティに帰ってこないとか言い出さないでよ?」
「俺も構わんぞ。ひよっ子一人増えたってゴブリンぐらいどうにでもなる。その代わり、良い土産話を期待してるぞ?」
絡んできた男と同じテーブルに居た仲間達は口々に言った。
「ねえカズマ。その、勝手に話が進んでるけど私達の意見は通らないの?」
「通らない。おい、俺の名はカズマ。今日一日って話だが、どうぞよろしく!」
「「「は、はあ……」」」
絡んできた男の三人の仲間は、若干戸惑い気味の返事を返した。
騎士はどちらについて行くべきか難儀するのであった。
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「お願いします!!騎士さん!!今日だけで良いのでアイツらのおもりしてやってください!!!!」
「構わない……。が、タダでとなると少し、難しいかもしれない。」
「、、、分かりました。今回の報酬を差し上げます。それをおもりの依頼料として貰えませんか?」
「分かった。それでいい。ゴブリン退治、気をつけたまえよ、、、甘い仕事にほど危険が付き纏うものだ。」
よって騎士はカズマの居ないパーティについて行くことになった。
その時、クエストが張り出してある掲示板の方から聞き慣れた声がした。
「ええー。ゴブリン退治ー? 何で街の近くにそんなのが湧いてるの? もうちょっとこう、ドカンと稼げる大物にしない? 一日とはいえ他所にレンタルされるカズマに、私達が日頃どれだけ有り難い存在かを見せ付けないといけないのよ」
カズマ少年に絡んだ男にアクアが難癖付けているらしい。
「い、いや、あんたらが実力があるのは分かるが俺の実力が追いつかねえよ。アークプリーストにアークウィザードにクルセイダー。これだけ揃ってればどんな所でも行けるだろうけどよ、まあ今回は無難な所で頼むよ」
「ハッ!しょうがないわね!今回はゴブリン退治程度にしておいてあげるわ!」
騎士はこれから襲ってくるであろう"問題”に頭を抱えるしか無かった。
今回は短め。
次話は長めです。