沈黙に耐えかねて出てきてしまった騎士は仕方なくギルドの外で情報集めをする事にした。
(それにしても嫌に視線を感じるな)
それもそのはず。スラリと伸びたその身に甲冑を纏い、ユラりユラりと歩く姿はさながら亡霊だ。
初心者冒険者の街には全くそぐわない風貌の男が街道を歩いているのだから視線を向けるのは仕方ないだろう。
(この甲冑が原因か…。しかし脱ぐ訳にはいかない。)
そう。脱ぐわけにはいかない。防御力を失うことは死に直結する。まだここが完全に安全かは分からない
とりあえず腰を下ろす場所とこの街の情報が必要だ。そんなことを考えながら亡霊は街をユラりユラりと歩いた。
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騎士は街を徘徊し町外れの宿を取った。
騎士が文字通り路頭に迷っているとそれを見つけた宿の主が、新人さんならと一泊タダで泊めてくれたのだ。
(ありがたいものだ。)
久しく受ける優しさに騎士は感慨に浸った。
騎士はランプの光と木の匂いにつつまれながらとりあえず今日得た情報をまとめることにした。
・【螺旋剣の破片】【帰還の骨片】は使えなかった。
・火が陰っていない。
・始まりの火を知っているものが居ない
・正常な人が居る
・ステータスと呼ばれるものがある。
…こんな所だろうか。
とくに不思議なのは火が陰っていないことだ。
街をある程度歩いたが狂っている者はいなかったし亡者化した者がいる訳でもない。
平和そのものだ。
そんなことを考えていると宿の主から呼ばれた。
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ギイギイと軋む階段を降りていくと声を掛けられた。
「っと。まだその甲冑付けてんのか?頭だけでもいいから脱げよ。誰も盗みやしねぇよ。」
「だが、「だがじゃねぇ。脱げ。そんなんじゃ俺様特製のシチューは食えねぇぞ?」」
騎士は仕方なく警戒しながらも頭の鎧だけ外すことにした。
「ハッハッハ!ビビりすぎだぞあんちゃん!そんなんじゃ冒険者はやってけねぇぜ?それよりも、部屋の方はどうだ?問題ないか?」
「ああ、私には勿体ないぐらいの良い部屋だ」
「ハッハッハ!褒めてもなんも出ねぇぞ?ほら飯にしよう。」
そう言って主は食卓に夕食を並べ始めた。
「ん?どうした?そんなとこに突っ立って。もしかして夕飯、もう済ませちゃってたか?!」
「いや。貴公、違うんだ……。違うんだ。」
「?…。そうか。違うならいいんだが。ならさっさと食おうぜ?」
「ああ」
そう言って夕飯を並べ終わった主は食べ始めた。
騎士は久しぶりに食べ物を食べた。
100年?200年?
もっと長い間。騎士は食べ物を食べなかった。
使命を受けてから。1度も食べなかった。
食べる必要がなかったから?
そうだろう。
食べたくなかったから?
そうだろう。
思い出してしまうから?
……そうだろう。
思い出してしまっては折れてしまったからだろう。何年も何年も何千年も何万年も永遠に近い時間同じ使命を果たし切るため。
騎士は人間らしさを捨てなくてはならなかった。
食べることなんてしてしまったら。
かつての平和な頃の記憶を思い出してしまうから。友人や家族と囲んだ食卓を。
でも、たまには
「思い出すのも悪くないな。」
「ん?なんか言ったか?」
短くてすみません!
リアルがかなりかなり忙しいのです!