謝
火で暖まった騎士は気まずい別れ方をしてしまったカズマ達に一応謝っておこうとギルドへ訪れた。
ギルドへ入り辺りを見渡すとカズマ達は端の方のテーブルに突っ伏していた。
「…………来ないわね……」
アクアが寂しそうに呟いている。
騎士が近づくと
「ッ!?!!近づいてきたという事は仲間になりたいの?!そうでs……。あぁ、誰かと思えば私という崇高な存在のお誘いを断ったただの愚か者じゃない。」
すかさずアクアにカズマがゲンコツをいれた
「騎士さんすみません。こいつ結構根に持つタイプで…。「ちょっと!!私のことをぶつのよ!!最低!!冷酷!! ヒキニート!!」」
「はいはい……おい、ヒキニートはやめろ」
「うんぁぁん!またぶったわね!崇高な私のことを!」
(ヒキニート……どんな意味だろうか。まあ、いい)
騎士は軽く咳払いをした後
「カズマ少年よ。見たところ仲間を募集しているようだな。それになかなか仲間になってくれる人がいないようにも見える。」
「…。そうなんですよ。この自称女神がハードルを上げすぎたせいで面接どころか希望してくる人も居なくて」
「うう……。だってだって……」
アクアの設定した条件は至ってシンプルで【上位職のみ募集してます】だった。
この世界の上位職というものは普通の人には成れない、かなりレベルの高いものであるらしい。
「…。そうか、それは……大変だな。」
「他人事?!」
そんな会話を続けていると
「上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」
どことなく気怠げな、眠そうな赤い瞳。
そして、黒くしっとりとした質感の、肩口まで届くか届かないかの長さの髪。
俺達に声をかけてきたのは、黒マントに黒いローブ、黒いブーツに杖を持ち、トンガリ帽子まで被った、典型的な魔法使いの少女だった。
カズマが
「そうだけど」と応えると
少女はいきなりマントを翻し、
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」
騎士は兜を付けておいてよかったと思った。
なぜなら自分は今。カズマやアクアと同じ微妙な表情をしているだろうから。
「冷やかしか。」カズマがそう告げると
「ち、ちがわい!」少女が言い返す。
するとアクアが
「……その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」
アクアの問いにその子はこくりと頷くと、アクアに自分の冒険者カードを手渡した。
「いかにも! 我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん! 我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く……! ……という訳で、優秀な魔法使いはいりませんか? ……そして図々しいお願いなのですが、もう三日も何も食べていないのです。できれば、面接の前に何か食べさせては頂けませんか……」
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カエルのもも肉を満足そうに頬張るめぐみん少女を見ながら騎士は謝るタイミングを見失ってしまったことを後悔していた。
「……飯を奢るぐらい構わないけどさ。その眼帯はどうしたんだ? 怪我でもしているのなら、こいつに治してもらったらどうだ?」カズマが切り出した。
「……フ。これは、我が強大なる魔力を抑えるマジックアイテムであり……。もしこれが外される事があれば……。その時は、この世に大いなる災厄がもたらされるだろう……」
(なんてことだ。その幼い身体に呪いを封じ込めているとは。)
「へえー……。封印みたいなものか」
「まあ噓ですが。単に、オシャレで着けているただの眼帯……、あっあっ、ごめんなさい、止めて下さい引っ張らないでください!」
(カズマ少年がもしやらなかったら私がやっていた。)そんなことを騎士は思う。
「……ええと。カズマに説明すると、彼女達紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ。紅魔族は、名前の由来となっている特徴的な紅い瞳と……。そして、それぞれが変な名前を持っているの」
めぐみんの眼帯を引っ張っているカズマに、アクアが言った。
(……なるほど。名前といい眼帯といいおかしいのはそういう訳なのか。)
それを聞くとほらと言いながらカズマは引っ張っていた眼帯を話した。
ベチッと眼球に眼帯がぶつかり
「いったい!目がァァ!」
眼帯を解放され、悶絶した後。気を取り直しためぐみんは。
「変な名前とは失礼な。私から言わせれば、街の人達の方が変な名前をしていると思うのです」
と目を抑えながら答えた。
「……ちなみに、両親の名前を聞いてもいいか?」
「母はゆいゆい。父はひょいざぶろー」
「「…………」」
思わず沈黙するカズマとアクア。と私。
「…………とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな? 仲間にしてもいいか?」
「おい、私の両親の名前について言いたい事があるなら聞こうじゃないか」
カズマに顔を近付けているめぐみんに、アクアが冒険者カードを返す。
「いーんじゃない? 冒険者カードは偽造できないし、彼女は上級職の、強力な攻撃魔法を操る魔法使い、アークウィザードで間違いないわ。カードにも、高い魔力値が記されてるし、これは期待できると思うわ。もし彼女の言う通り本当に爆裂魔法が使えるのなら、それは凄い事よ? 爆裂魔法は、習得が極めて難しいと言われる爆発系の、最上級クラスの魔法だもの」
「おい、彼女ではなく、私の事はちゃんと名前で呼んで欲しい。それにずっと気になっていたがそこの怖い人はなんなんですか。怖いです。」
「あぁ。そこの怖い人は騎士さんだ。」
(怖い人か。たしかにそうかもな)
「私の誘いを断った愚か者でもあるわ。」
アクアが補足する。
「まぁ、とりあえずなんか頼むといいよ。俺はカズマ。こっちはアクア。それに騎士さんだ。よろしく、アークウィザード。」
そう言いながらカズマはめぐみん少女にメニューを手渡す。
少し不機嫌そうなめぐみん少女を見ながらいつ謝ろうかと騎士は考えを巡らせた。
お気に入り保存ありがとうございます!
こんなつまんない小説ですが読んで下さってありがとうございます。
次回戦闘描写があるので頑張ります。