晴風艦長 岬明乃は夢を見ていた。暗い夜の海、晴風は波に揺れていた。
航海はいたって順調・・・だがそれは一遍した。前方に飛行船や気球とは違う飛行物体が映ったときに、突如赤い閃光が晴風、艦橋に直撃した。岬明乃は閃光の直撃と共に起きた爆発に吹き飛ばされ体を打ち付けた。本来このような事態が発生したら三重の安全装置が発動するはずなのだが発動しなかった。明乃は痛みに耐えながら艦橋の確認をした。
だが目に映ったのはところどころ小さな火の手があがり艦橋にいたクラスメイト、いや明乃にとって海の家族ともいえる大切な人達が血を流しながら倒れている光景だった。
「うわぁぁ、はぁはぁ」
仮眠をとっていた明乃は恐怖で目が覚めた。交代の時間までかなりあるが再び寝ることはできなかった。夢にしては妙にリアルだったからだ。明乃は艦橋にあがる準備をして今回の海洋実習が無事に済むことを祈り甲板にでて外の景色を見て時間をつぶして朝食をとり
時間を確認すると交代の時間になった。明乃は艦橋へと向かった。
「はぁぁぁ、またしても実習で遅刻とは、やはりついていない・・・」
晴風、副長宗谷ましろがため息をつく、そう今回も晴風は実習に遅れていた。
「でも今回は大丈夫じゃないですか、海難事故にあった漁船の乗組員の救助とブルーマーメイドへの引継ぎで一日ずれましたけど、学校側からの指示でしたし評価に響くようなことはないんじゃないですか」
「それはそうだが、なぜだか、私が知る限り晴風が実習に出るたびにトラブルが起きているような気がするのだが・・・」
「そうですね、最初の実習の時はもちろん、新しくなった晴風の初めての実習の時も行きと帰りで救助活動に参加することになりましたよね、海難事故で漂流して行方不明になった人の捜索や船上火災で海に逃げて漂っている人の救助、学生の間に経験するか分からないくらいに遭遇してますね」
記録員 納沙 幸子 が納得したようにうなずいた。
「私は怖いことがないならいいかな・・・」
航海長 知床 鈴がつぶやく 晴風の操舵を担当している彼女にとってはそれが一番大事だった。晴風最初の実習の時に起こったRATt事件の時に体験した砲撃の嵐、あの時のような体験はもう会いたくなかった。
「あははは、でもそのおかげで助かった人もいるから私はそれでいいかな、ふわぁぁ」
艦長の明乃が答えてすぐに明乃の口からあくびがでてきた。
「艦長 寝不足ですか」
「うん、ごめんねシロちゃん、ちょっと怖い夢見ちゃって眠れなくて」
「そうですか、私もちょっと前に怖い夢をみてしまって」
「そうなの?、ちなみにどんな夢」
「多門丸が五十六の影響でネズミを捕まえてきまして・・・」
「それ、怖いこと?猫っぽくて怖くはないと思うけど・・・」
「私の目の前でネズミをその・・・噛み殺しまして食べ終わったら元気に私にとびかかってきて口にネズミの血がついている状態で顔を舐められまして・・・」
その内容を聞いた艦橋にいた全員が思った。
思ってたよりエグイ
艦橋がなんとも言えない空気に包まれているころ見張り員の野間マチコは前方の上空になにかが落ちてきていることに気付いた
「なんだ、飛行船や気球じゃないな・・・」
マチコは目を凝らし対象をみるが、運悪く太陽光と重なってしまい見えなかった。
ただの気のせいかと思ったがマチコは再び空を見る
するとやはり気のせいではなく何かが落ちてきていた。
不思議なことにその落ちてきているものはわずか数秒だが落下スピードが落ちた。
本来あり得ない現象である。それが何らかの機械かなにかの影響で動いて空気抵抗の影響を大きく受けたか、生き物が自らの意思で動いたか、野間マチコはさらに目を凝らす
すると段々落下物の全体が見えてきた。
一番最初に何かの機械の部品らしきものが見えた。太陽光の影響で見えにくかった部分が見えたとたん見張り員の野間マチコは絶句した。本来あり得ない人間が落ちてきているのだから
「人!!、そんな馬鹿な」
再び確認するがやはり人であった。それも自分たちとほぼ同年代の少女に見えた。
そしてあることに気がついた。落下物は落ちてきているのではなく、晴風に向かってきていた。それに気がついた野間マチコはすぐに艦橋にいる艦長に報告した。
「艦長、右45度、距離3800、上空から落下物、本艦に接近、それも少女が落ちてきています」
その報告を聞いた艦橋にいた全員が耳を疑った。
「少女が空からこっちに落ちてくるだと、馬鹿を言うな」
晴風副長、宗谷ましろが叫ぶ、飛行船や気球もいない状態で少女が落ちてくるなどあり得ないからだ。
「ココちゃん、なにか見える?」
「ちょっとまってください、いました確かに女の子が落ちてきてます」
「そんな馬鹿な、あり得ない・・・」
「これはあれですよ、きっと空を飛ぶ謎の敵と戦うために人類の総力をもって開発した空を飛ぶ兵器を纏って戦っていた少女が謎の力でこちらに飛ばされてきた的なやつですよ」
「そんなわけあるかー、あったらそんなもの逆に見たいわ」
納沙幸子のいつもの妄想癖に反論するましろだが、実は今回に限ってはほぼ正解と言っていいほど当たっていたがそれを知るのはまだ少し先であった。
「謎の飛行物体、甲板に墜落、やはり人間です」
見張り員、野間マチコの報告がされる
それを聞いていた晴風艦長 岬明乃は自らの目で確かめることにした。
「シロちゃん、美波さん呼んで、私は確認に行ってくる」
「わかりました」
晴風、艦長 岬明乃は艦橋を出て落ちてきた少女のもとへ向かった。
岬明乃が落ちてきた少女のところにつくとそこには見張り員の野間マチコが少女の様子を見ていた。どうやら心配で見に来ていたらしい
「野間さん、その子が落ちてきた子?」
「あぁ、どうやら墜落の衝撃で気絶したようだ、それに足になにかよくわからない機械を履いている、それと艦長、向こうを見てもらっていいですか、この子が持っていたと思うんですが・・・」
野間マチコがそういうと視線を落ちてきた少女から反対側の壁に向けた。
そこにあったのは・・・
「もしかしてこれ、機関銃?なんでこんな私達と近い歳みたいな女の子が・・・」
なぜ、こんな物をもっているのか、岬明乃はわからなかった。考えているうちに副長の宗谷ましろと記録員 納沙幸子が衛生長の鏑木美波を連れてきた。納沙幸子はおそらく副長の付き添いかなんかだろう
「艦長、この子が報告できいた子か」
「美波さん、ちょっとみてもらえる、あとシロちゃん、ココちゃん、これなんだけど・・・」
「これは・・・もしかして機関銃ですか、なんでこんなものが・・・」
「ちょっと待ってください、今これと同じ銃を調べます、あっ、ありました。かなり古いもののようですね、名称は九十九式二号二型改13mm機関銃というものらしいです」
「やっぱり本物かなこれ、」
「艦長、その機関銃を貸してください」
副長 宗谷ましろが機関銃を受け取ると弾倉を取りだして中に装填されていた薬莢を確認した。
「本物ですね、美波さん、その子の様子は」
「あぁ、特に骨折とかは見当たらん、気絶しているだけのようだ」
「美波さん、その子を医務室に連れて言ったら手首をベットかなにかに紐で拘束しておいてくれ」
「あぁ分かった、どうやらただの少女ではないようだ」
鏑木美波が副長の持っている機関銃に視線を向けその指示を了承した。
「納沙さん、学校に連絡を、私達だけでどうこうできそうもない、どこかでブルーマーメイドに身柄を引き渡そう、それと艦長、万が一、艦で襲ってきたら大変なんで弾丸と機銃は私と艦長別々に保管しましょう」
「うん、わかったよ、シロちゃん」
「そんなことしないでその銃、海にでも捨てません?そのほうが確実に安心できますし」
「いいわけないだろ、重要な証拠品だぞ」
「取りあえず、医務室に運ぼうか、足についているこれ、引っ張れば取れるかな?」
明乃は少女の足についている機械を試しに引っ張った。すると足についていた機械を簡単に外せた。外した機械の中を見ていたらあることに気が付いた。
あれ思ったより足を入れるスペースがない、入れたら動いて入るようになるのかな
明乃がそんなことを思っていると取り外した機械の一部が破損していることに気がついた
墜落の影響か、一部に穴が開き中の配線などが切れているのが見えた。明乃は少し考えたあと・・・
「ココちゃん、悪いんだけどこれ、ヒメちゃんのところに持って行ってくれない」
「それは構いませんけど、直すんですか、これ」
「うん、もしあの子が悪い人じゃなかったら壊れていたら困ると思って」
「いや、艦長、本物の機関銃を持っている時点でダメでしょ」
「うん、シロちゃんの言うとおりなんだけどなんだか悪い人には見えないし、それに少しでもこの機械のことを調べて、わかったことを引き渡すときにブルーマーメイドに報告したいから」
「まぁそういうことなら、いや、でも、うーん・・・わかりました。それで構いません」
「ありがとう、シロちゃん」
「はぁ、それじゃ、美波さん、納沙さんよろしく頼む、連絡の方はやっぱり私からしておこう、艦長我々も持ち場に戻りましょう、野間さんも戻ってくれ」
「わかった、私は持ち場に戻らせてもらう」
野間マチコが持ち場に戻ると同時に艦橋から声が聞こえてきた
「艦長ぉぉ、学校から連絡だよぉぉー
水雷長の西崎芽依からだった。学校からの連絡ということで二人は急いで戻っていった。
岬明乃が落ちてきた少女のもとへいっているころ横須賀女子海洋学校の校長室にて
宗谷ましろの母、宗谷真雪がある要請を受けていた。ブルーマーメイドからの海難救助協力要請である。協力要請じたい珍しいことではないのだが・・・
「豪華客船の謎の爆発による火災、レアメタル発掘プラントでの爆発事故、漁業船団三隻の謎の爆発による転覆、海洋養殖プラントの火災、すべて客船の爆発事故から20分以内に発生しているわね、こんな偶然あるのかしら」
「ブルーマーメイドではテロの疑いも視野に入れて捜査しているようですが、今現在犯行声明等は出ておりません、それと現在客船で救助された乗客から雲から赤い光が放たれそれが爆発したという報告がきています」
「光で爆発、そんなSFであるビームではあるまいし、それよりうちで現場に向かわせることのできる船は」
「海洋養殖プラント以外は武蔵、比叡 時津風、天津風が近くにいます、次に教員艦が近いですね、ただ客船の方は爆発の影響で救命ボートの4割が使用不能で全乗客の避難ができない状態です、収容と治療等を考えると武蔵にむかってもらうしかありません」
「わかりました。武蔵と教員艦は客船の方を、比叡は発掘プラントへ、時津風、天津風は漁業船団へ、海洋養殖プラントは」
「現在、ブルーマーメイドから二隻、近くで別任務中だったべんてんが向かっています、それと実習に遅れていた晴風、とあとから合流予定だったドイツのアドミラル・グラフ・シュペーがいますね、距離的には晴風とシュペーが近いですね」
「わかりました。シュペーと晴風に養殖プラントに向かうように言ってください」
「了解しました」
宗谷真雪は今回おきた現場の位置と時間に違和感を覚えていた
「最初の爆発から4分後にプラントで爆発・・・それも他の位置もみるとだんだん北北東に向かってきている、まさか移動している・・・」
宗谷真雪は嫌な予感がした。これがテロや事故ではなく何者かの攻撃なのではないかと
「校長、晴風から通信です、いま繋げます」
晴風からの通信をきいて真雪は驚いた。それもそうだろう、機関銃をもった少女が落ちてきたと聞けば、するとすぐに備え付けの端末に少女の写真と機関銃、謎の機械の写真が送られてきた
真雪は後からやってくるブルーマーメイドに少女を引き渡すように指示をだし、通信を終えた。
「なんだか嫌な予感がするわね、生徒達になにもなければいいけど」
航洋艦晴風がこの世界の歴史に名を残す大事件の始まりまであと少し・・・
早くストライクウィッチーズ出したい